戦姫絶唱BLACK SHADOW 作:ロヒシ&かづ えい子しょうゆ味
読者の方には大変申し訳ない事を致しました。
実はかねてより自動車学校に通っていたわけですが、この度無事卒業検定に合格する事ができました!
と言っても、学科試験を受けていないので免許の取得には至っていませんが(笑)
まぁ、何はともあれ一区切りついたので投稿の方を再開しようと考えております。
自分の中でしっくり来るまではなるべく感覚を開けずに投稿をしていこうかなと思っています。
目が覚めると、病室がオレンジ色に染まっていた。
もう夕方か……どうやら俺は相当眠っていたようだ。
ここ最近、寝る間も惜しんでクリスちゃんを探していたから疲れが溜まっていたのかもしれない。
ひょっとしたら、オバさんは俺の身体の事を考えて安静にさせるように風鳴さんにお願いをしたのかもしれないな。
少し外の空気でも吸おうかと思い屋上に向かうと何やら話し声が聴こえてきた。
扉を開けると、誰かが勢いよく駆けてきたのでぶつかりそうになる。
「わわっ!」
「おっと!」
慌てて身体を抱き留めると、響ちゃんだった。直ぐそばにはベンチに座っている風鳴 翼さんの姿もあった。
「あっ、光太郎さん!」
「響ちゃん、どうしたんだい?そんなに慌てて」
「私、今から翼さんにふらわーのお好み焼きをご馳走しようと思って!あっ、ついでにおばちゃんに光太郎さんの無事を伝えておきますね!」
「あっ、響ちゃん!」
「はい?」
「えっと、その……」
「ひょっとして、光太郎さんが仮面ライダーだった事ですか?だったら、何も気にしなくて良いですよ!だって、光太郎さんは光太郎さんじゃないですか!ノイズの危険からみんなを守る仮面ライダーだったとしても、私には美味しいお好み焼きを焼いてくれる私達のお兄さん的な存在の光太郎さんに変わりないですよ!」
太陽のように眩しい笑顔をでそう告げる響ちゃん。そんな彼女の笑顔にどこか救われたような気がした。
響ちゃんがふらわーに向かった後、屋上には俺と翼さんの2人が残されてしまった。少し気まずい空気が流れる。
すると、彼女方から俺に声をかけてきた。
「お話は叔父様…風鳴司令から聞いています。南…光太郎さんですね」
「あ、はい…」
「その節はお世話になりました。それから、立花の事も……」
その節とは、あの流星群の日の事を指してるのだろうか?だとしたら申し訳なく思う。
あの日、俺は彼女の絶唱を止める事ができなかったのだから。
「少し、南さんにお訊きしたい事があります」
彼女は自身の過去の話を聞かせてくれた。
2年前に起きたノイズによるライブ襲撃事件。その事件に於いて、彼女は天羽 奏という親友を失っていた。それ以降、彼女は親友の死は自分の力が無かったからだと思い、己を鍛え続けてきた。
だから、覚悟の足りない響ちゃんが親友が纏っていたガングニールというシンフォギアを手にした事が許せなかったらしい。
あのギクシャクした感じはそういう事だったんだ。
「私は、この身を一振りの剣として一人で戦ってきました。でも、それだけではいけない。親友にそう言われたんです。でも、戦うことしか知らない私には戦いの裏側、その先にあるものが何なのか分からないんです。南さんは、別の世界で私と同じようにずっと一人で戦ってきたと聞きました。だから、何か分かるのではないかと思ったんです」
戦いの裏側か……
正直、俺にもよく分からない。でも、一つだけ分かることがある。
「風鳴さん、戦いの裏側とかの事は俺にはよく分からない。けど、俺も君もずっと一人で戦ってきた筈じゃない。いつも傍には一緒に戦ってくれる仲間がいた筈だ」
そう。確かに俺は仮面ライダーとしてゴルゴムと戦ってきた。
でも、ずっと一人で戦ってきたわけじゃない。
俺と一緒にゴルゴムと戦ってくれた大勢の仲間がいた。
杏子ちゃんや克美さん、竜介さんに大門さん、少年戦士のみんな、沢山の人達が力を貸してくれたから、俺は戦ってこれたんだ。
人間だけじゃない。バトルホッパーやロードセクター、それにゴルゴムを裏切ったクジラ怪人。彼らの力が無かったら、俺はゴルゴムを倒すことはできなかっただろう。
いや、全部言わなくても彼女はとっくに気付いているはずだ。
自分を支えてくれる風鳴さん達、特異災害機動部の人達、それに響ちゃん、色んな人が彼女と共に戦ってくれている事に。
と言っても、先程かけた言葉は竜介さんの受け売りなんだけど。
「そうですね……私は、奏に依存していたのかもしれません。だから、他の事にはなかなか目を向けられずにいたのかも……南さん、私は今このような状態でとても万全とは言えません。ですので……」
「分かってる。響ちゃんの事でしょ?俺にできる事なら協力する。一緒にノイズと戦っていこう。勿論、風鳴さんにもいつでも手を貸すからね!」
「ありがとうございます。それとその……私の事は翼と呼んでください。風鳴さんだと司令と同じになってしまいますので」
「分かった。じゃあ、翼ちゃんで良いかな?」
と、名前を呼んだ瞬間、彼女の目が見開き、顔がどんどん赤くなっていくのが見えた。
もしかして、響ちゃん達と同じように『ちゃん』付けしたのが良くなかったのかな?
確かに、世界の歌姫って言われてる子を『ちゃん』付けって言うのはあまり良くないのかもしれないな。
「い、いえ、大丈夫です。今までそう呼ばれた事が無かったので少し恥ずかしくて……」
すると、お互いの視線が重なると自然と笑い声が溢れた。
彼女の笑う顔を見ていると、孤高の歌姫なんかじゃなく、年相応な一人の女の子なんだと思った。
刹那、遠くの方で爆発音のようなものが聴こえた。戦闘?まさかノイズ⁉︎
俺は現場にクリスちゃんがいるのではと思い、ロードセクターを呼ぶ。
「南さん、良ければ私も連れて行って貰えませんか?」
「いや、翼ちゃんはまだ安静にしていないと……」
「仲間の危機に伏せってなどいられません!違いますか?」
そう言って真っ直ぐな瞳が俺を見据える。
「それに、あのネフシュタンの少女の他にビルゲニアという男も現れるかもしれません。応援は多い方が心強いかと」
「分かった。じゃあ、振り落とされないように気をつけてね!」
俺は彼女を後ろに乗せ、ロードセクターを走らせた。
ロードセクターのモニターを確認すると、響ちゃんがクリスちゃんと戦っているようだった。
すると、俺の耳に歌声が聴こえてきた。この歌声は……クリスちゃん⁉︎
しかし、その歌は以前から知っている彼女の歌では無かった。
まるで歌を、世界を嫌っているかのような、何もかもを破壊しようとするような歌声……
どうしたんだクリスちゃん?君はそんな悲しい歌を歌うような子じゃなかった筈だ!
脳裏に残る彼女の楽しそうに歌う笑顔が蘇る。俺のせいで、彼女の歌が変わってしまったのか?
すると、銃撃音と共に木々が薙ぎ倒されていくのが見えた。
クリスちゃんの纏うシンフォギアの力なのか?早く向かわないと…!
「南さん、先に向かいます!」
そう言うと、翼ちゃんが歌を歌いながらロードセクターから飛び立った。
シンフォギアを纏い、手に持った剣が巨大化すると、その後部に取り付けられたブースターと彼女の脚部にあるブースターが連動し、猛スピードで2人が戦っている場所へと滑空していく。
俺もロードセクターのスピードをさらに上げる。
そして、現場に到着すると同時に上空にノイズが現れたのが見えた。
だけどそのノイズは何故かクリスちゃんに襲いかかっていた。
螺旋状になったノイズが槍のようにクリスちゃんに襲いかかり、彼女の両手に持っていたガトリング砲を砕いていく。
さらにもう一体が彼女に襲い掛かろうとしていた。
「危ない!」
俺は彼女の身体を抱き抱えるようにしてノイズを躱した。
「クリスちゃん、大丈夫か⁉︎」
「何でアタシの名前を……ッ⁉︎光太郎…兄ちゃん……?」
信じられないというような目で俺を見るクリスちゃん。
どこにも怪我がない事に俺は安堵の息を漏らす。
「光太郎さん、危ない!」
刹那、俺達を突風が襲い掛かった。
クリスちゃんを抱き留めたまま背後にあった木に思いきり激突した。衝撃と痛みが背中に走る。
今の突風は何だ?
視線を向けると、そこに立っていたのはクリスちゃんが持っていた杖を持ち、不敵な笑みを浮かべたビルゲニアだった。
「ビルゲニア、テメェ何の真似だ⁉︎」
「クククッ、何の真似だと?用済みの貴様の後始末をしにきてやったんだ」
「なっ、あたしが…用済み……?」
「そうだ。フィーネはお前を見限ったのさ。いつまでも与えられた使命を果たせないお前はお払い箱だとさ。だから俺がお前を始末しに来たのだ、このソロモンの杖を持ってな!」
ビルゲニアの言葉にクリスちゃんの顔色が見る見るうちに悪くなっていく。フィーネという奴は余程クリスちゃんにとって大切な人間なのか?そいつがクリスちゃんの歌を変えてしまったのか?
そして、クリスちゃんをまるで道具のように扱う奴の言い分に俺は怒りを覚えた。
すると、ビルゲニアが手を翳すと、奴の手に向かって光が集まっていた。あの光はいったい何だ?
「ネフシュタンは回収した。後は役立たずの貴様を始末するだけだ。あの世にいる両親に会わせてやるから感謝するんだな」
「ビルゲニア、貴様ぁっ!クリスちゃんを利用し、彼女の歌を変えたお前を、俺は絶対に許さんッ‼︎」
「ほぅ?だったらどうすると言うのだ南 光太郎?」
俺を挑発するように不敵な笑みを浮かべるビルゲニア。
怒りを覚えた俺は両手に力を込め仮面ライダーへと変身する。
「仮面ライダーBLACKッ‼︎」
ビルゲニアを倒すべく、奴に向かって構えを取ったその時だった。
「えっ……光太郎兄ちゃん……黒い…悪魔……」
「ッ⁉︎」
「ハーッハッハッハッ!小娘の前で変身したな南 光太郎!そうだクリス、お前が家族の仇だと思っていた黒い悪魔の正体は、お前が兄の様に慕っていた男、南 光太郎だ!」
しまった!コレはビルゲニアの罠だったんだ!
俺を怒らせ、クリスちゃんの前で変身させる事が奴の狙いだったんだ。
「クリスちゃん、俺は……」
「あたしに近寄るんじゃねぇバケモノ!」
「ッ⁉︎」
「………何で……いったい何がどうなってんだよ……!うわぁぁぁぁぁぁぁっ‼︎」
叫びながら夕陽の中に飛び立っていくクリスちゃん。後を追おうとした時、ビルゲニアに操られたノイズが俺達に襲い掛かってきた。
何とかノイズを撃退したが、クリスちゃんの姿もビルゲニアの姿も見えなくなってしまっていた。
「光太郎さん、もしかして貴方は彼女の事を知っていたのですか?」
戦いが終わった後、翼ちゃんがそう訊いてきたけど、何も答えられなかった。
ーーあたしに近寄るんじゃねぇバケモノ!
そう言って、目から大粒の涙を流していた彼女の表情が頭から離れなかった。
「どういうことだよフィーネ⁉︎」
あたしは息を切らせながらフィーネの館へと戻った。
肩で息をするあたしを他所に、フィーネは不適な笑みを浮かべながらあたしを見やる。
「何がかしら?」
「あたしが用済みって、それに黒い悪魔の正体が光太郎兄ちゃんだったなんて……お前、知ってたんじゃないのか⁉︎」
するとフィーネは、ため息を一つ吐くともの凄く冷たい眼差しをあたしに向けた。
「どうしてみんな、私の思い通りに動かないのかしらね………そうよ、私はビルゲニアからあの男の正体を聞いていた。貴女に教えなかったのは、その方が都合が良かったからよ」
「都合が…良い……?いったい何を……?」
「私の作ったギアを纏いながら毛程の役にも立たないなんて……だから貴女はもう用済みなの。カ・ディンギルは完成したもの同然だしね」
すると、フィーネの身体が光に包まれたかと思うとネフシュタンの鎧が姿を見せた。
それと同時に不気味な笑い声を上げながらビルゲニアが姿を見せる。
「小娘、お前は知りすぎた。だからコイツらの実験に付き合ってもらうぞ?」
ビルゲニアがソロモンの上を振るうとそこか数体のノイズが現れた。
だけど、そのノイズは今までに見たこともない姿をしていた。
ネコやサル、カマキリみたいな姿をしていてまるで怪人のようにも見えた。
「フッフッフッ、コイツは今までの雑魚ノイズとは違うぞ?ヤれッ!」
ビルゲニアの声と共にノイズが奇声を上げながら襲いかかってくる。
あたしは自分がただ利用されていただけだということを理解し、悔し涙を流しながら大嫌いな歌を口ずさんだ。
次回予告
追われる身となってしまったクリス。
そんな中、彼女は響と喧嘩し苦悩する未来に助けられる。
彼女達との触れ合いはクリスの心に変化をもたらせるのだろうか?
だがクリス達を嘲笑うかのようにビルゲニアの魔の手が迫る。
果たして、クリスと光太郎は無事に昔の絆を取り戻す事はできるのだろうか?
変身、仮面ライダーBLACK!纏え、イチイバル!
次回、戦姫絶唱BLACKSHADOW
第8話『クリス、心の向こうに』お楽しみに!