戦姫絶唱BLACK SHADOW 作:ロヒシ&かづ えい子しょうゆ味
色々とあって全く何も出来ずにいて申し訳ありません。
これからは新体制で作品を投稿していこうと考えております。
しとしとと雨が降る中、あたしはイチイバルを纏いながら路地裏を駆け抜けていた。
もうどれほどの間一人で走り続けていたんだろうか?足がもつれ、水溜りの中に倒れ込む。
休むことなく走り続けていたせいか横っ腹が痛い。
すると、背後から奇声が聴こえてきた。振り返ると、そこにはサルのような姿をしたノイズがあたしを見ていた。
「クッ、いい加減しつこいんだよ‼︎」
あたしはギアを展開させ銃弾の雨をありったけノイズに叩き込む。
今までのノイズなら軽く粉砕できるんだけど、ビルゲニアがソロモンの杖から召喚したこの新しいノイズは耐久力が他のノイズとは比べ物にならないくらい高かった。
銃弾の雨を受け、ノイズが絶叫を上げながら炎を上げて消滅する。それを見てホッとしていると、エネルギー切れのせいかギアが解除された。
「ハァ…ハァ………」
雨に打たれながら、あたしはこれからどうしたらいいのか分からなかった。
あたしに力をくれたフィーネは、ただあたしを道具のように利用したかっただけだった。
家族のように、兄のように慕っていたあの人は、あたしの家族の仇だった。
もうあたしは何を信じたら良いのか分からない。頭ん中がぐちゃぐちゃで今にも吹き出しそうだ。
すると、どこからともなく奇声が聴こえてきた。
上を見上げると、カマキリのような姿をしたノイズが不気味な声を上げながらあたしを見ていた。
「ヤバい!早いとこギアを纏わねぇと……」
だけど、そんなあたしの考えとは裏腹に身体は鉛のように重く動かなくなり、意識が段々と遠のいていく。
チクショウ……あたしは、ここまでなのかよ……
そこで、あたしの意識は遠のいた。
しばらくすると、耳にカシャン、カシャンという金属音が聴こえてきた。
いったい何の音だ?音の正体を確かめたいけど、何故か目が開かない。
だけど、自分が何か温かいモノに包まれているのを感じた。
硬く冷たい鉄のような感触だけど、触られているととても温かい気持ちになった。まるであの頃の、光太郎兄ちゃんと一緒にいた頃を思い出させるような……
「光太郎…兄ちゃん……」
そう呟いた後、あたしの意識はまた暗い闇の中へと沈んでいった。
「ッ⁉︎」
気がつくと、知らない天井が目の前に広がっていた。
どこだ此処?あたし、どうしてこんな所に……?
戸惑っていると、白いリボンをした黒髪の女の子が目を覚ましたあたしを見て安堵の表情を浮かべていた。
話を聞くと、どうやらこの女の子が倒れているあたしを見つけてここまで運んできてくれたようだ。
ちょっと待てよ?あの時、あたしを襲おうとノイズがいたはずだ。そのノイズはいったいどうなっちまったんだ?
まさか、目の前にいるこの子が?よく見ると、この子はこの間あたしがあの女との戦いに巻き込んでしまった子だった。
じゃあ、この子もギアを使って?いや、フィーネの話によれば今現在ギアを纏えるのはあたしとあのバカと剣女の3人だけ。じゃあ、ノイズはいったい誰が……?
「未来ちゃん、どう?お友達の具合は」
考え事をしていると、家主らしき女の人が声をかけてきた。
手に持ったカゴを見ると、どうやらあたしの服を洗濯してくれたみたいだ。
女の子は濡れたタオルであたしの身体を拭いてくれた。
アザだらけのあたしの身体を見てもこの子は何も訊かないでいてくれた。
「私は、そういうのは苦手みたい。今までの関係を壊したくなくて……でも、一番大切なモノを壊してしまった……」
「それって、誰かと喧嘩したってことなのか?」
「……うん」
服が乾いたので身体を拭いてもらった後、あたしは元の服に着替えた。
「喧嘩か……あたしにはよく分からない言葉だ」
「友達と喧嘩した事ないの?」
「…友達いないんだ」
「え?」
そしてあたしは何故かこの子に自分の愚痴を溢すかのように今までの事を話した。
「小さい頃、地球の裏側で両親を殺されたあたしはずっと一人で生きてきた。あたしを理解してくれると思った人は、あたしを道具のように利用しただけだった。兄のように慕っていた人は、家族の仇だった。大人は…どいつもこいつもクズ揃いの嘘つきだ!」
光太郎兄ちゃん……南 光太郎、あいつも嘘つきだ!
本当の家族のように思っていたのに、あいつはあの『黒い悪魔』だった。
『黒い悪魔』は、かつてバルベルデという国の軍を壊滅させた謎の怪人だった。
奴の目的はよく分からなかったけど、政府の軍事施設を手当たり次第破壊して回っていた。
その中にはあたしみたいに軍隊に捕らえられていた子供達もいたけど、奴が破壊した施設の崩壊に巻き込まれて死んだ子もいた。
火の手が上がり、瓦礫となった施設の中で佇む奴の姿をあたしは一度だけ見た事がある。
巻き添えをくらって死んでしまった子供達を奴は冷たく見下ろしていた。
それを見た瞬間、あたしは奴が難民キャンプを襲い、あたしの家族を奪った仇だと直感した。
その後、フィーネに引き取られたあたしはフィーネから黒い悪魔の事を聞かされた。
あたしが睨んだ通り、奴が諸悪の根源だった。
あたしは奴に復讐する事を誓った。その為にイチイバルを纏い、ネフシュタンの鎧を纏い、ソロモンの杖を起動させられるよう血反吐を吐く程の辛い日々に耐えた。
だけどフィーネに捨てられ、家族の仇と思っていた黒い悪魔の正体が南 光太郎で……あたしは今まで何の為に生きてきたんだ?
もうどうしたら良いのか分からなくなってきた。
「なぁ、お前その喧嘩の相手ぶっ飛ばしちゃえよ」
「え?」
「どっちが強いかハッキリさせたらそこで終了。とっとと仲直り。そうだろ?」
「……できないよ。そんな事」
「…わかんねぇなぁ」
「でもありがとう。相談に乗ってくれて」
「あらあら、女の子がぶっ飛ばしちゃえなんて物騒な言葉使っちゃダメよ?」
と、あたし達の会話を聞いていた女の人ーーおばさんが苦笑していた。
でも、あたしには他に喧嘩の仲直りの方法なんて……
「本当に知らないのかい?」
まるであたしの心を見透かしたようにおばさんが言ってきた。
その時、脳裏に昔の光景が蘇った。
あれは、あたしがまだ家族と一緒にいた頃、ママと喧嘩をした時の事だった。
泣いているあたしにあいつが優しく頭を撫でながら話を聞いてくれたんだっけ?
ーークリスちゃん、仲直りの方法なんて簡単だよ!こうやって手を握って「ごめんなさい」って謝れば良いんだ!
ーー……でも、ママはもうあたしのことなんてきっときらいになってる
ーーそんな事あるもんか。ソネットさんだって、クリスちゃんに謝りたいって思ってるよ
ーー…ホント?ママ、許してくれる?
ーーあぁ!俺も一緒に謝りに行ってあげるよ。そうしたら勇気も出るだろ?
ーーうん!ありがとう光太郎兄ちゃん!
「ッ⁉︎」
何であたし、あの時の事を思い出しているんだ?
すると、部屋の隅にある一つの写真立てが視界に入った。
そこに写っていたのは、おばさんと南 光太郎だった。
じゃあ、此処は……!
「その子はね、私が息子のように思っている子なんだ。とても心の優しい子でね。でも、過去に色々と辛い事があったみたいなんだ。出会った頃は色々と苦しんでいたんだよ。でも、それを乗り越えようと頑張って、笑顔になる事が増えたんだ。でも最近また昔のような辛い表情を見せる事が多くなってね……」
「何の話だよ」
「昔ね、光ちゃんから聞いた事があるんだよ。妹のように大切に思っていた女の子の事。その子を助けてあげられなかったって事をね」
「ッ⁉︎」
「光ちゃんと会ってやってくれないかい?あの子はね、今のお嬢ちゃんの身を案じて探し回っているんだよ」
「今さら会ってどうするんだよ!あいつは、あたしの家族を……!」
その時だった。急にサイレンが鳴り響き、人々の逃げ惑う声が聴こえてきた。
「いったい何の騒ぎだ?」
「何って、ノイズが現れたのよ!警戒警報知らないの?」
女の子の言葉にあたしはハッとした。
しまった!あたしってば何をやらかしてんだ!
ビルゲニアの奴があたしを燻り出す為に大量のノイズを放ちやがったんだ!
あたしはこれ以上関係ない人を巻き込まないように急いで商店街から出て行く。
背後で何か叫んでいるみたいだったけど、そんなヒマはねぇ。今は少しでも巻き添えを出さないように離れないと……
商店街を駆け抜けている間、至る所で炭の塊をみかけた。それはノイズの犠牲になった人達を表していた。
あたしが…あたしがしたかった事は、こんな事じゃなかったのに……!
ただ…ただ、世界から争いを無くしたかっただけなんだ!だけど、あたしのやる事はいつもいつも……!
「ハーッハッハッハッ!どうだ?自分のせいで周りに被害が出てしまった感想は?」
商店街を抜け出すと、ビルゲニアが下卑た笑い声を上げながら姿を現した。
怪人ノイズの他にも大量の雑魚ノイズが商店街の影から姿を現す。
「関係ない奴をこれ以上巻き込むんじゃねぇ!」
「クックックッ、その身体でまだそこまで威勢が晴れるとはな。ヤれッ‼︎」
ビルゲニアが声を上げると、雑魚ノイズ達が襲いかかってきた。
あたしは聖詠を唱えようとするが、歌が上手く口ずさめない。
クソッ、こんな時に…!
飛行ノイズが矢のように形を変えて襲ってくる。
刹那、巨大な人影があたしの前に立つと、勢いよく地面を踏んだ。
その瞬間、地面が壁のように盛り上がると、まるで盾のようにノイズの攻撃から防いでくれた。
「大丈夫か⁉︎」
髭を生やした赤毛のオッサンがあたしの無事を確認してくる。
このオッサンはいったい…?
すると、ネコの姿をした怪人ノイズが壁を破壊して襲いかかってきた。
「危ねぇ!」
「トァッ!」
刹那、ヘルメットを被った男が怪人ノイズを蹴り飛ばした。
生身でノイズに触れて無事って事は…!
そんな人間は一人しか心当たりが無かった。
男がヘルメットを脱ぐと、あたしと赤毛のオッサンに視線を送った。
「風鳴さん、大丈夫ですか⁉︎」
「あぁ、すまない」
「風鳴さん、彼女を…クリスちゃんを頼みます!変…身ッ‼︎」
目の前が眩しい光に包まれると、その中から黒い鎧の戦士が姿を見せた。
「仮面ライダーBLACKッ‼︎」
黒い悪魔ーー仮面ライダーが一人でノイズに立ち向かう。
それを見ながらオッサンはあたしを保護しようとその場から離れようとするが、怪人ノイズとの戦いに夢中になっていたせいか飛行ノイズが仮面ライダーを狙っている事に本人は気づいていない。
すると、自分でもよく分からないけど、気がついたらあたしは聖詠をくちずさんでいた。
イチイバルを纏い飛行ノイズ達を撃ち落とす。
「ッ⁉︎クリスちゃん!」
「……ザコはあたしが纏めて片付けてやる!」
「しかし…!」
「ノイズの相手をできねぇオッサンは黙って救助活動でもしてな!ついて来いザコ共‼︎」
あたしは商店街からノイズを引き離すようにして戦う。
引鉄を弾きながら、何でこんな事をしているんだろうと思った。
あれだけ憎いと、仇と思っていたはずの黒い悪魔ーー仮面ライダーを助けるような真似をするなんて……
でも、あの時見えたあの後ろ姿は昔見た時とは全く違って見えた。
破壊の限りを尽くす悪魔ではなく、大切なモノを守ろうとする一人の戦士……いや、昔の心優しい光太郎兄ちゃんそのものだと。
そう思った瞬間、頭に激痛が走った。
違う……あたしはやつを助けようとしたんじゃない。奴にさっきの借りを返そうとしただけだ!
だってあいつはあたしの家族の仇、生身でノイズに触れられるバケモノなんだから!
あたしはまるで何かに頭の中を塗りつぶされるように無心で引鉄を弾き続けた。
次回予告
一人逃亡生活を続けるクリス。
そんな彼女前に現れた弦十郎は彼女に光太郎の真実を語る。
真実を知り混乱するクリス。
そして彼女を闇に引きずりこもうと何者かの魔の手が迫っていた。
次回、戦姫絶唱BLACKSHADOW
第9話『仄暗い闇の底から』お楽しみに!