夢を……見ている。彼女と幸せな日々を過ごしていた頃の夢。内容は千差万別ながら終わりはいつも決まってあの瞬間である。そう……彼女を、刹那を喪ったあの瞬間、永遠に墓守でいようと誓ったあの瞬間である。
夢を見ている。如何程の年月がたったのだろうか。そんな事は気にする必要は無い。彼女の眠るこの地をあらゆる害から守り抜くことのみが我が使命……それ以外のことなどどうでもいい。
夢を、見ている。
「……エモン……」
「……ウェザエモン」
「ウェザエモンってば! 」
「……っ!? あ、ああすまない刹■。少しぼんやりしていた」
「もう……ねぇ、大丈夫? 最近忙しいのでしょう? ちゃんと休んでる? 」
「気にするな、これくらいは何ともない。それより刹■の方こそ大丈夫か? 」
「ええ! このくらいでへばってられないわ! 実はそろそろ新理論が完成しそうで……」
……意識が呼び起こされるほどの強敵が出てくることも無い。だが守り続ける。それが彼女に誓ったことなのだから……
夢を見ている……
「ねぇ、ウェザエモン? 私行くね。……ばいばい」
……意識すらも凍結されているはずの世界の中、ただひたすらに繰り返される記憶。
……なぜあの時手を伸ばさなかったのか、なぜあのような嘘をついてしまったのか、なぜ、なぜ……!
……無数の後悔は泡と消え、再び奥底から湧き上がる。幾年月がたったのだろう、どれほどの敵を切り捨ててきたのだろう。
……守ると決めた者の名すらも泡沫の夢と消え、それでも刀を振るう。
……未来など、要らぬ。過去からの敗残兵はただ無闇に全てを切り捨てるのみ……
……夢を見なかった。久方ぶりに意識が浮上する程の強者との邂逅があった。ただそれもまた一瞬のこと。咆哮ひとつにすら耐えられぬ惰弱なる開拓者達。嗚呼、■那よ……何故死んでしまったのだ。このような弱者しか居ない世界にお前が死んでまで希望を残す必要はあったのか……!
……夢はもう来ない。何故かそう確信した。目の前に立つは3人の開拓者。その力は酷く弱く、然れどその目に宿る意志は正しく武人のそれだった。天鬼夜咆すらも阻まれた。だが其れもさしたる痛痒ではない。
……拙者は、拙者は……世界が終わるその時まで……!"墓守"で居続けねばならないのだ……!! このような所で、終わる訳には行かないのだ、刹那!!!
……夢は終わりを迎えた。天晴は防がれ、拙者の役目ももう終わる。何故だろうか、不思議と不満感は無い。嗚呼、刹那は、刹那は無事に成仏しているだろうか。決して同じところに還ることなど出来はしないだろうが、それでも貴方の無事を祈って……
「もう、ウェザエモンったら! いつまで私を待たせるの? もう待ちすぎておばあちゃんになっちゃったじゃない! 」
「……な……ぜ……」
「何故って……私があなたを置いていくはずがないでしょう? 本当にしょうがない人ね、こんなにボロボロになって……ずっと、ずっと……私のために……」
「……刹那」
「……刹那! 刹那!!」
言いたいこと、謝りたい事、無数にある! それなのに……どうして拙者の体はもうないのだ、どうして拙者の口は動かないのだ……どうして拙者は……刹那の涙の1つも拭いてやれないのだ……っ!!
「……ふふ、いいのよウェザエモン。時間なら沢山あるわ、これからずぅーっと」
「もう彼らに私達は必要ない。きっと世界はどうにかなるわ? だから行きましょう、ウェザエモン」
そうか……そうであるか……
「……刹那」
「なぁに? ウェザエモン」
「……ずっと待たせた。すまなかったな」
返答は無く、然れど向けられた表情はいつも夢の中で見ていた笑顔の何千倍も輝かしい笑顔だった。
夢を見ていた。
「……あら、ウェザエモンたら居眠りかしら。ふふ、少しは柔らかくなったのかしらね」
「……刹那」
「きゃっ! な、何だ起きてたの? 」
「ああ……刹那、思えば生前はほとんど言えなかったが……拙者はそなたを愛している」
「……っ……ふふふ、私もよウェザエモン」
―――墓守の永く終わりのない夢は今ここに刹那の輝きと共に終わりを迎えた―――
解釈違いとかは許してね