語られなかった者たちの饗宴   作:ゆくゆく

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暁ハートってピンポイントで差し込むならいいけど会話の中だと絶対長くて言いにくい


暁の心、美しき瑠

 ◆

 

 「あ"ー……」

 

 クソ、いくら休みとはいえぶっ続けでクソゲーやりすぎたな。ねむい、あたままわってない、とりあえずエナドリ飲んで寝よう。ライオットブラッドは……今はいいか。

 

 「あ、やっと起きてきた。ねーねー、お兄ちゃんこの人知ってる? 」

 

 「あ"ーー? 」

 

 後から考えるとこの時の俺は本当に疲れていたのだろう。もしタイムマシンがあるならぶん殴ってでも止める。だが実際はそんなことは出来ないわけで。

 

 「暁ハート……あー、雑ピか……知ってる知ってるじゃあ俺寝るかるぐぇ」

 

 ちょ瑠美お前、首締まったぞ今……

 

 「え!? 絶対知らないと思ってたんだけど! ていうかえ? 知り合いだったりするの? 」

 

 だがそんな俺の苦情は届かず、瑠美が質問攻めにしてくる。だからねみぃんだよ……寝かせろぉ!

 

 「あ"ー……後で話すんじゃダメか? 」

 

 「え? んー、まぁ別にいいけど……今のお兄ちゃんに聞いてもなんかろくに答え帰ってこなさそうだし」

 

 よし勝った。勝訴だ。あとは任せた数時間後の俺。今の俺はこの眠気に抗わない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「さてお兄ちゃん、どういうことか聞かせてもらうよ? 」

 

 おのれ、数時間前の俺ェ!! とんでもねぇ事口走ってんじゃねぇか! さて、どう説明したものか。これがカッツォ辺りならプライベートを明かすことも躊躇いは無いのだが……雑ピはなぁ……外道共と違って少し心が痛むというか。

 

 「あー、何だ。俺の知ってるやつと違うかもしれないからそちらの暁ハート先生について語ってもらっても? 」

 

 「そうだねぇ、私も知ったのは最近なんだけど……」

 

 やばい、選択肢をミスった。非常にわかりやすく瑠美の目の色が変わってる。なんつーか鉛筆の素晴らしさについて語ってる時の雰囲気を弱めたみたいな……

 

 そこからは長かった。暁ハート先生のポエムの素晴らしさやどういう所がいいのか、これこれこういう表現が素晴らしい。若者的視線から見た作品を出したかと思えば非常に老獪な作品を出すレパートリーの広さなどなど……雑ピを煽るネタが非常に増えたと喜ぶべきなのだろうか。というか少し興味湧いてきたじゃねえか。どうしてくれるんだ。

 

 「……とまぁざっとこんなもんかな。それで? どうだった? 」

 

 あ、やべぇ。結局なんも考えてなかった。さて、どう誤魔化したものか……流石に紹介するのはねぇよなぁ。前にあいつ瑠美に興味あるみたいな発言してたような……あれ?他のやつだっけ……まあいいか。紹介できないとなると他の手段になるが……うーむ。

 

 「あ、別に無理ならいいよ? 元からお兄ちゃん知ってるかなー、くらいの軽い気持ちだったし」

 

 「あ、そうか? じゃあスマンがそうしてくれ。一応個人情報だからな」

 

 「はーい。まぁ、お兄ちゃんが暁ハート先生に興味を持ってくれたみたいだしそれでいいかな」

 

 げっ……バレてやがる。明日は学校か……雑ピに何となく顔が合わせにくいな。

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

 「お、楽郎おはよう」

 

 「お、おう。おはよう」

 

 「……? 」

 

 くっ……雑ピ=暁ハートの図式を信じられなくなってきた。思った以上に良いポエムが多くて読み込んじまったんだよ。

 

 「そうそう、ちょっと聞きたいことがあるんだよ」

 

 「何だ、言ってみろ。今の俺は少し寛容だぞ」

 

 「何かゲームでもクリアしたのか? まあいいや、お前の妹のことなんだけどさ、お前の妹の名前って陽務瑠美だったりする? 」

 

 「……!? 」

 

 コイツ、なんで知ってやがる……? まさかストーカー? 何てこった、雑ピのことを見直した翌日にこんな事実が発覚するなんて。とりあえずどうしようか。打首獄門しかないか? しかないな。うん。

 

 「よし雑ピ。お前の刑は決まった。何か言い残すことがあれば聞いてやろう」

 

 「なんで俺いきなり処刑されそうになってるの!? 」

 

 何でじゃねーよ、己の犯した罪の重さを分かれ。

 

 「お、どうした陽務。雑ピが何かやらかしたのか? 」

 

 おお、ちょうどいいところにクラスメイトどもが。よし、こいつらも巻き込もう。

 

 「まぁ、聞いてくれ。雑ピのやつときたら……」

 

 …………(説明中)…………

 

 「なるほど、処刑だな」

 

 「何でだ!? 」

 

 「うるせぇ! 陽務の妹には手を出さないって言うのは俺たちの共通認識だろ!? それを破ったんだ、処刑しかあるまい! 」

 

 うんうん、良い事言うね。ところでその共通認識って何かな?

 

 「……場合によっては犠牲者が増えることになるな……」

 

 「「……!? 」」

 

 何やら驚愕してるが知らんな。まぁいいとりあえず今は雑ピの処刑だ。

 

 「最後に言い残すことはあるか、被告人」

 

 「いやだから違うんだって! ……その、SNSでフォローされたんだよ。 読モやってるって聞いてたし苗字も同じだからもしかしてって思って」

 

 ……そういや昨日瑠美のやつ暁ハートがどうのとか言ってたな……まさかソレが?

 

 「ああ、暁ハート先生案件だったか……」

 

 「それだと罪には問いにくいな……」

 

 「「何せ暁ハート先生だしな!! 」」

 

 「何だろう、助かったのに助かった気がしねぇ! 」

 

 ええい、うるさいうるさい。これは非常にマズいんだ。何がマズイって俺を介してこの2人の関係が生まれるフラグが立ちかけている事だ。……いや、流石に大丈夫だろ。うん。SNS上で繋がったくらいでそんな。クソゲーのやりすぎだな。現実ではそんなフラグなんて簡単に立ちはしないさ……

 

 

 

 

 

 

 ◆ 数週間後

 

 「ねぇ、お兄ちゃん。暁ハート先生と会うかもしれないんだけどさ」

 

 「……でじま? 」

 

 何てこった、事実は小説よりも奇なりとは言うが現実はクソゲーよりもクソだと言うのか。

 

 「いや、何でそんなことに……」

 

 「うーん、何か色々と話してたら妙に気があってオフ会しようか? みたいな話が出てさ。私も普段ならそんな話乗らないんだけどお兄ちゃんの知り合いならお兄ちゃん連れてけるから大丈夫かなって」

 

 ……色々と突っ込みたいところはある。あるがっ……!

 

 「俺も着いてくことが前提なのか……? 」

 

 「いや、当たり前でしょ。大丈夫大丈夫。ちゃんと予定は合わせるから」

 

 「そういう問題じゃ……」

 

 「お兄ちゃんは黙って座ってるだけでもいいからさ。場所代とかも奢るから! ね? 」

 

 ……くっ。断ることは簡単だが……うーむ、瑠美のお願いとかほとんど聞いたことないし少しは兄らしいことをしてやるべきか? まあそれに雑ピなら気心も知れてるからな。初対面のやつよりかはマシだろう。

 

 「あー、分かった分かった。いいぞ、着いてってやる」

 

 「ホント!? やった、じゃあ日程とか場所とかは決まったら言うね! ありがとう、お兄ちゃん! 」

 

 早まっただろうか……クソ、不安でしかない。どうすりゃいいんだマジで……

 

 

 

 

 

 ◆◇

 

 「で? 待ち合わせ場所はここでいいんだよな? 」

 

 「うん、そろそろ時間だし来てもおかしくないと思うけど……」

 

 おやおや、見慣れた後ろ姿がマップアプリらしきものが表示された携帯端末を持ちながらウロウロしてますねぇ。普段なら絶対驚かした後に煽ってるけど今は瑠美がいるしな……そんなことしたら絶対後で絞られる。

 

 「んんん……あ、楽郎。てことはここでいいのか? 」

 

 「おー、やっと気づいたか。ウロウロしてるのを見るのは結構面白かったんだがな」

 

 「いや、気づいてたなら声掛けてくれよ。えっとそれでこちらがいも……う……と……」

 

 あ? どうしたんだ急に黙って。そういや瑠美も何かさっきから妙に静かだし……あれ? 待って、ねぇ待って。何かこいつら見つめあってない? 何でさも一目惚れしましたみたいな感じで見つめあってるの? 瑠美はともかく雑ピのそんな顔見たくないんだが?

 

 「……あっ、す、すみませんジロジロ見ちゃって! えっと暁ハートです。 よろしくお願いします」

 

 いや、誰だよ。そんなキャラじゃないだろお前。

 

 「あぅ……あ、い、いえ! こちらこそすみません! えっと、陽務瑠美です! 暁ハート先生の作品は全部見てます! 」

 

 お前もどうした。初対面でももっとハキハキ喋ってるじゃん。

 

 「あ、じゃ、じゃあとりあえず入りましょうか」

 

 「あっ、はい! 入りましょう」

 

 「「ほら、行くぞ(よ)楽郎(お兄ちゃん)」」

 

 え? この状態のコイツらと一緒に行くってマジですか? 地獄の予感しかしねぇわ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇◆

 

 「……」

 

 「……」

 

 「……」

 

 順に俺、瑠美、雑ピである。いやそんなことはどうでもいい。最初は良かったんだ。少しぎこちない雰囲気はあるものの2人ともいつもの調子を取り戻し互いのことを誉めつつ色々と語っていたんだ。

 

 だが小一時間経った頃から会話が徐々に減っていき、今では互いに微妙に目を逸らしながらチラチラと相手のことを見ては目が合って逸らし……という言わば両片思いかテメーらと言いたくなるような状況になっている。そしてそんな空間に放り込まれている俺。正直に言おう。めっちゃ帰りたい。もう雑ピと瑠美が付き合うとかどうでもいい。この微妙な甘さのある空間にこれ以上いると精神が削られそうだ……

 

 「あ、あの瑠美さん! 」

 

 おお! 雑ピィ!! ついに動いてくれたか。もう告白でも何でもしろ。とりあえずこの状況の打破を頼む!

 

 「その……れ、連絡先を交換しませんか! 」

 

 小学生ぃー!! 恋愛小学生かよ、暁ハート先生!

 

 「えと……はい。喜んで」

 

 いや、瑠美お前もそれでいいのか!?

 

 嬉しそうに連絡先を交換し、そのままさっきまでの雰囲気が嘘のように談笑し始める2人……あーかえっていいかなー

 

 

 

 

 

 

 「暁ハート先生、今日は楽しかったです! また今度会いましょうね! 」

 

 「はい、ぜひ! 楽郎もありがとな、わざわざ付き合わせちまって」

 

 「あ、そうだった。お兄ちゃんありがとね」

 

 「イーヨイーヨ、キニシテナイヨー」

 

 「そっか、じゃあ瑠美さんまた今度」

 

 「はい! ほら、お兄ちゃん帰るよ」

 

 「ハーイ」

 

 

 

 「いやー、楽しかった楽しかった。暁ハート先生カッコよかったなぁ……」

 

 「ソッカー」

 

 「そうだよー、それに趣味も合うしー……あ、暁ハート先生もトワ様のファンらしいよ! 何でもお姉さんがよく買ってくるんだとか」

 

 「ソウナノカー」

 

 「もう! お兄ちゃんちゃんと聞いてるの? 」

 

 「キイテルヨー」

 

 あはははは、もう知らねぇ!




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