語られなかった者たちの饗宴   作:ゆくゆく

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楽紅だよ。付き合ってる時空だよ。


たな……ばた……

 本日7月7日は七夕である。……もう一度言おう、七夕である。幕末では報酬「流星刀・綺羅星」が獲得できる一日限定イベが行われ、ネフホロではモデル:Shooting-Starのネフィリムが獲得できる。ギャラトラ?あそこはどうせまたチーム彦星とチーム織姫に別れて天の河大戦争だろ?やってられっか。

 

 ……とまぁ、ゲーマーにとっての七夕とはイベントが重なる日であり、当然去年までの俺なら一日中フルダイブしていた。そう、去年までの俺なら。

 

 「そろそろか……?ぅおっ!」

 

 ちょうど携帯端末を持ち上げたタイミングで電話がかかってきたもんだから少しわたついてしまったが何とか電話に出る。

 

 「あー、もしもし?」

 

 『楽郎さん、こんばんは!私です!』

 

 今夜の俺は普段とは一味違う。秋津茜……隠岐紅音と電話デートの予定なのだ……!

 

 「おう、こんばんは紅音。どう最近?」

 

 『最近ですか?……あっ!今日ですね、練習の時に自己ベストを更新したんです!』

 

 「へぇ、そりゃ凄い。みんなからも褒められたろ?」

 

 『はい!でも自己ベスト更新したって聞いた時に1番最初に楽郎さんに褒めて欲しいなって思いました!』

 

 「んん"っ……そ、そうか。よくやったな紅音!凄いじゃないか!」

 

 まだこういうのに慣れてないせいかついつい語彙力が消失してしまう。……慣れる時来るのか?これ。

 

 「えへへぇ……ありがとうございます!次も頑張りますね!!」 

 

 「ああ、頑張れよ。次の試合も見に行くからな」

 

 「はい、期待してますね!ところで楽郎さんの方は最近どうですか?」

 

 俺の近況、か。幕末とかは紅音はやってないからな。それ以外となると……

 「ああ、そだそだ。この前映画のチケット貰ったんでな、今度一緒に行かないか?」

 

 『映画ですか!いいですね、是非!最近会えてなかったから楽しみです!』

 

 「お互い何だかんだで忙しかったからなぁ。じゃあそれはまた今度で。……そういや今日は七夕だけど紅音は短冊とか書いたのか?」

 

 『書きましたよ!友達と一緒に学校の短冊に書いてきました!』

 

 「へぇ、ところで何を書いたか聞いても?……ああいや、こういうのは聞いたらダメなんだっけか」

 

 『大丈夫ですよ?もう叶いましたから!』

 

 「へぁ?」

 

 もう叶った?織姫と彦星仕事し過ぎでは?

 

 『楽郎さんともっといっぱい会えますようにって!だからもう叶ったんです!』

 

 ……ああ、なるほどね。というかそれを学校の短冊で書いたのか……だいぶそれ恥ずかしいことにならないか?

 

 『楽郎さんは短冊書いたんですか?』

 

 「いや、特に書いてないなぁ。家にも特に笹とかは飾ってないし」

 

 『じゃあ今言いましょう!今夜は晴れてますし、星を見ながらいえば叶うかもしれませんよ?』

 

 「はは、何だそれ。流れ星と混ざってないか?まぁ良いけどな」

 

 おお、特に気にしてなかったが今日の夜空はすごいな。正しく満天の夜空、今にも降り注いできそうだ。紅音も同じことを思ってるのか電話口からほわぁーっていう感嘆の声が聞こえてくる。

 

 『……はっ!ついつい見とれてました!それでは楽郎さん、願い事をどうぞ!』

 

 「んー、そうだな……」

 

 願い事ねぇ。ここでゴルドゥニーネ勝利祈願をするのも何か違うし……そうだな、紅音にならって俺も……

 

 「紅音とずっと一緒に居られますように、かな」

 

 『ふぇっ……ら、ららら楽郎さんそれって……!』

 

 ん?なんか紅音の様子が……あれ?ひょっとして今のってプロポーズ?

 

 「ち、違っ!いや、違わないけど!もっとこう、純粋な意味で!!」

 

 『で、ででですよね!はい!私も楽郎さんとずっと一緒に居たいです!!』

 

 「お、おう!」

 

 「『…………』」

 

 「ふはっ」

 

 『ふふっ』

 

 「はははははは!」

 

 『あはははははっ!』

 

 2人して慌てまくってたのが何となく面白くて2人して笑って、きっとこういうのを積み重ねてずっと一緒に居るんだろう、俺たちは。

 

 「あー、笑った。……ん、紅音!空!」

 

 「え?あーっ!流れ星です!お願いしなきゃ……ああっ!消えちゃった!」

 

 「いや、これ……!」

 

 1つ、2つ、3つ、4つ……幾つもの星が降り注ぐ。七夕の日に流星群とは……運がいいのか悪いのか、彦星達は会えないんじゃないのか?

 

 「紅音……願い事、言おうか」

 

 『……はい、そうですね楽郎さん』

 

 「『楽郎さん(紅音)とずっと一緒に居られますように』」


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