語られなかった者たちの饗宴   作:ゆくゆく

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タイトルを考えたのは1週間前。本文を書き始めたのは11月20日の20:30過ぎです。何が言いたいかって?


……誤字脱字あったらごめんね。


千々に別れし世界線

 〈楽紅の場合(楽郎大学生時空)〉

 

 「と、言うわけで楽郎さん! お誕生日おめでとうございます!! 」

 

 「お、おう。何がという訳なのかは知らんけどありがとな」

 

 本日11月21日は俺の誕生日。とはいえ正直なところ大学生にもなれば誕生日なんて大したイベントではないと思っていたのだが……

 

 「えへへー、今日は楽郎さんのために色々と考えて用意してきましたので! 存分に楽しんでください! 」 

 

 うん、こうも熱心かつ純粋に祝ってくれる人がいるってなると誕生日も捨てたもんじゃないな。

 

 「んで今日はどこ行くんだ? 結局デートするってことしか聞いてないんだが」

 

 「ふふふ、今日の私は抜かりありません。ちゃーんと予定を立ててきてますので! 行きましょう、楽郎さん! 」

 

 紅音と付き合ってからそれなりに経つが……こういう無邪気なところは変わらんなぁ……まぁ、そこがいい所なんだが。

 

 うん、でもそうだな、1年に1度しかない誕生日なんだ。今日くらいはなんも考えずに紅音に付き合うとしようか。

 

 

 

 

 

 

 

 ……と、思ったことを正直少し後悔した。そのくらいには今日という一日は怒涛の一日だった。

 

 何て言えば良いのだろうか。デートコース10選!! とかに選ばれそうな定番どころへ行ったかと思えば俺たちの共通の趣味であるゲーム関係の店を巡ったり、はたまた単なる散歩をしたりとそれはもうやりたい放題だった。

 

 「……楽郎さん、楽郎さん」

 

 「んー……? どうした? 」

 

 「その、今日は楽しかったですか……? 」

 

 と、そう言う紅音の目は少し不安げに揺れていて……あー、そっか、そうだよな。今までのデートやら誕生日の時やらは俺が基本的に計画を立ててた。というか鉛筆とか瑠美とかに半分くらい頼ってた。それを今回1人で初めて立てたんだ。そりゃ不安のひとつにもなるか。

 

 「んー、正直言うとちょっと、いやそれなりには疲れたけど」

 

 「うっ……」

 

 「でもなぁ、紅音が俺の誕生日を祝うために一生懸命考えてくれたんだなって考えるとやっぱ嬉しいわ、うん」

 

 「……その、なんて言うかありがとな。おかげで忘れられない誕生日になったよ」

 

 ……いつまで経っても素直に自分に気持ちを伝える瞬間ってのは照れるな。NPC相手じゃあ一生感じることはないであろう気持ちだが、少し心地よい気もする。

 

 「そっか……そっかぁ……えへへ、私も楽郎さんが喜んでくれて嬉しいです! 」

 

 相も変わらず太陽みたいな笑顔だ。こうも純粋に好意を向けてくれる相手。大事にしないとなぁ。照れ隠しにわしゃわしゃと紅音の頭を撫でつつそんなことを思う。

 

 

 

 「えと、それでですね楽郎さん」

 

 「ん? まだ何かあるのか? 」

 

 夕焼けにも紫が混じり始めそろそろ夜が訪れを感じられる時間になり、帰路についていたのだが……?

 

 「た、誕生日プレゼントのこと、なんですけど……」

 

 「……ああ、別に気にしなくていいぞ? 今日のデート自体誕生日プレゼントみたいなもんだろ」

 

 というかそう思ってた。

 

 「ダメですよ、今日のデートは私も楽しんでたんですから。誕生日プレゼントにはなりません」

 

 「そうかぁ? まあそう言うならいいんだけど」

 

 「えと、それでですね。あげるものなんですけど、そのー」

 

 ? 紅音にしちゃ珍しく歯切れが悪いな。いいものが見つからんかったとかか?

 

 「で、デートコースを考えるのに夢中でいいものを探せなかったんです! すみません! 」

 

 「え、あ、あー、別に気にしなくていいって。気になるんなら後日くれるとかでも別に構わないし」

 

 「いや、えと違くて、その見つからなかったのでペンシルゴンさんに相談したんですよ」

 

 ……なんか話の流れが不穏になってきたな。いやでもアイツ紅音には甘いからな……

 

 「そしたらその……えっと……」

 

 

 「ら、楽郎さんのして欲しいこと、何でもひとつ叶えてあげますって言えばいいって……」

 

 ……理解したくないけど理解した。紅音の様子が変だったのはプレゼントが決まってないことへの罪悪感でもなんでもなく、これを言うことへの羞恥だったということだろう。つーか鉛筆の野郎! やりやがったなアイツ! こんなん実際に言われて好き放題言える奴いるか!!

 

 「あ、あーうん。そうだな、じゃあ今度なんかクソゲーでも一緒にやってもらおうかな、うん」

 

 俺の中では満点とは行かなくてもそこそこの正答例だと思ったのだが、どうやら彼女様は納得しなかったらしい。

 

 「わ、私ももう子供じゃないんですよ。そ、その……ら、楽郎さんが言うなら……え、えっちなことも……

 

 と、そこまで言って顔を覆う紅音。羞恥の限界だったのだろう。だが俺もまた限界である。自制心とか理性とかが。

 

 「あ、紅音っ! 」

 

 「ひゃっ」

 

 ついつい抱きしめてしまったこの状況をどうしよう。さすがにこの場で致すのはマズイ。多分何かしらの法に引っかかる。

 

 「あー……紅音、顔上げて」

 

 「は、はいんむっ!? 」

 

 ……今はこれで我慢しよう。ああ、本当に忘れられない一日になったもんだ……

 

 

 

 

 

 

 

 〈楽永の場合(鉛筆片思い時空)〉

 

 「「「楽郎(お兄ちゃん)、誕生日おめでとう!! 」」」

 

 「やー、おめでとう楽郎くん! よっ、主人公! 」

 

 「ほら、見てみろ楽郎。父さんが今日のために釣ってきた金目鯛だぞー」

 

 「母さんの厳選に厳選を重ねた虫料理もちゃんと食べてね? 」

 

 「お兄ちゃん、誕生日プレゼントとして私が直々にコーディネートした洋服を用意したからね。後で着てみてよ」

 

 「あ、楽郎くん。これ私がツテで買ってきたケーキね。ここのケーキ差し入れの時にも評判いいし美味しいから納得して貰えると思うよ」

 

 「ちょっと待てぇぇぇぇ!!! 」

 

 「ん? どしたの楽郎くん。いきなり大声出して。更年期? 」

 

 「いや、お前のせいだわ! なぜサラッといる! なんで誰も突っ込まねぇんだよ!! 」

 

 意味分かんねぇ、意味分かんねぇ! なんでどこぞの外道鉛筆が紛れ込んでるんだ。SEC〇Mはどうした。仕事しろ。

 

 「お兄ちゃん……トワ様がサプライズで祝ってくれてるんだよ? 大人しく感謝に震えながら崇拝すべきじゃないかな」

 

 「狂信者には聞いてないんだよなぁ!! 」

 

 「はい、父さん! 何故コイツを上げることを許したんだ!? 」

 

 「いや、実は父さん天音永遠のファンなんだよな、ははは。服とか参考にしたら釣り仲間に最近カッコよくなったとか言われてなぁ」

 

 おい、父ィィィィィ!!! ダメだ、いつの間にか信者が増えてる!

 

 「母さん! 母さんなんで許したんだ!? 」

 

 「え、だって楽郎のお友達だって言うじゃない。楽郎ってばゲームにハマってから全然お友達を家に連れてこないし心配してたのよ? 」

 

 それに関しては本当にすみませんでした!!

 

 「くそっ……味方がいねぇ……」

 

 「まぁまぁ、私に祝ってもらえて嬉しいのは分かるけどエキサイティンしすぎだぜ? 」

 

 ぶっ飛ばしてやろうか、こいつ。

 

 「なにそのぶっ飛ばしてやろうかみたいな目。楽郎くんは天音永遠に誕生日を祝われるっていうことの価値を分かってないよ、全く」

 

 「代われるならお前のファンたちに代わっとるわ」

 

 「まあまあ楽郎。良いじゃないか、カリスマモデルに誕生日を祝われるなんて一生物の体験だぞ? むしろ父さんお前の人脈が分からなすぎてちょっと引く」

 

 父よ、貴方は狂信者だとわかったのでちょっと黙ってて欲しい。後何引いてんだよ。風雲斎賀城のラスボスと知り合いな父さんに言われたくねぇわ。

 

 「あの楽郎にこんな親しげに話せる友人がいたなんてねぇ……母さん泣いちゃいそう。天音永遠さんでしたっけ? 楽郎をよろしくね」

 

 「ええ、任されましたお義母さん」

 

 親しげ……? そしてお前は何を任されたんだ、便秘でのサンドバッグか?

 

 「お兄ちゃん、いい加減に諦めて大人しく祝われなよ。折檻は後でするから今は気にしなくていいよ」

 

 待てや、狂信者。何故折檻が前提なのか。呼び込んだ張本人が折檻するとかもはや詐欺でしかねぇよ。

 

 

 「……ねぇねぇ、楽郎くん」

 

 「んだよ……いまお前のせいで俺の明日以降の人生が保証されなくなってるんだが」

 

 「あはは、ごめんごめん。いやね、楽郎くんとこの家族は暖かくていいなって」

 

 「あー? 」

 

 そういやこいつの弟はオルスロット君だっけか。うーん、確かにあんなのがいたらギスりそうではあるが半分くらいはこいつのせいな気もするしなぁ。

 

 「それと、今日はホントに素直に君の誕生日を祝いに来ただけだよ。誕生日くらい盛り上がろうぜ? 」

 

 ……ったく。何だかんだこいつがいることで楽しんでる自分がいる。そう思った時点で俺の負けか。

 

 「わーった、わーった! 今日はとことん騒ぐぞ!! 」

 

 「にひひ、おっけーおっけー! 盛り上がろうずぇーっ! 」

 

 

 

 

 

 

 

 

 「……お兄ちゃん……なんでそんなトワ様と親しげなの……? 」

 

 ひょえっ

 

 

 

 〈楽慧の場合(この前のカッツォ誕時空)〉

 

 「よっす、サンラク。元気してる? なんか顔色悪いけどまた徹夜でもしたのか? 」

 

 「……朝から魚類を見ると人間はこうなるんだ。知らなかったのか」

 

 「ははは、ぶっ飛ばす。とまぁそれはそれとして今日お前誕生日なんだって? ペンシルゴンから聞いたよ」

 

 「なんか最近お前らの間でプライバシーの概念どこ行っちゃったの? 日本国ではまだプライバシーの自由は保護されてるんだぞ」

 

 というかこの両性魚類め、いくら誕生日だからといって朝からアポなしで訪ねてくるやつがあるか。クソ寝みぃ。

 

 「ふっ、いつまでそんな口聞けるかな? 」

 

 「ああ"? …… ちょ、おま、それ、まじ? 」

 

 いつの間にやらカッツォが取り出していたのは、簡単に言ってしまえばプレミアが付くレベルのクソ格ゲー。コントローラーでやるとはいえネフホロの操作を数倍難しくしたとかいうレベルの操作感であり、マトモにプレイさせる気がないんじゃないかとかまで言われてる伝説のクソゲーである。

 

 「マジもマジ、大マジよ。流石に借りてくることしか出来なかったんだけど……プレイ、してみたいだろ? 」

 

 「いやー、流石っすわカッツォさん! よっ、プロゲーマー!! あっ、なんなら肩でも揉みましょうか! 」

 

 「プライド捨ててんねぇ……まぁ、この前の俺の誕生日の時は何だかんだ言って色々用意してくれたからね。年上として、何より友人として返さないとか無いでしょ」

 

 別にんなこた気にしなくていいしあれは偶然、運が良かったみたいなもんなんだが……勘違いしてるならいいや、勘違いさせとこう。

 

 「そういうことなら存分に楽しませてもらうわ。ちょっと待っとけ、準備してくる」

 

 「あいあい、行ってらー」

 

 

 

 

 

 

 「おおおお、なんだこれゲロムズい。そもそも説明書の字が細すぎる」

 

 「いやー……ボタンを押す強さで操作する部位が変わんのはマジで頭がオカシイ。出る技が変わるとかならまだわかるけどさぁ……」

 

 「おっ、隙あり……あれ、必殺技ってボタンなんだっけ。丸ボタン押しても出ねぇんだけど」

 

 「ちょっと待って、1回ストップ……あー、そのキャラは丸ボタンを中くらい押しと同時にR3を押して必殺技を出したい方向に十字キー入力だってさ」

 

 「……これ、今日中にまともな試合できるのか? 」

 

 

 

 

 

 

 

 

 「しゃオラァ! やってやったわ! 」

 

 「だぁー、くそっ! もう1回……ってもうこんな時間か。サンラクそろそろ帰る時間だっけか」

 

 「ん……あー、そうだな。これ以上はちょっと厳しい」

 

 「はー、勝ち逃げされるのか……ま、誕生日の時くらい勝ちを譲ってやるよ」

 

 「なんかそう言われると勝った気がしねーな……」

 

 「ははっ。……サンラク、改めて誕生日おめでとう」

 

 「んー? ま、どういたしましてだな」

 

 「……」

 

 

 「……」

 

 なんだこの沈黙。ちょっと気まずいだろうが。

 

 「……サンラク」

 

 「んだよ」

 

 「今日は一時的に勝ちを譲ってやっただけだからな。また今度勝負しようぜ」

 

 そう言ってこちらに拳を向けてくるカッツォ。……はっ、それ言うための沈黙か?

 

 ……いいね、そういうの嫌いじゃねぇぜ。

 

 「ああ、もちろんだ。存分に決着つけてやるよ」

 

 コツリ、と拳と拳がぶつかる。見えたカッツォの目はギラついた闘う者(プレイヤー)の目で。きっと恐らく俺も同じ目をしているのだろう……

 

 

 

 

 〈楽瑠の場合(よく分からん時空)〉

 

 

 

 「へい、おにーちゃん。今日は何日ですか? 」

 

 「11月の21だな」

 

 「そうだね、お兄ちゃんの誕生日です」

 

 「そうだな、誕生日だな」

 

 「もう分かってるよね? 」

 

 「ああ……」

 

 

 「「陽務家ゲーム大会ぃー!!! 」」

 

 なお毎年こんな感じである。我が家の誕生日の祝い方はその相手の趣味に合わせた祝い方をするが俺の誕生日の時、毎年瑠美は一日ゲームの相手をしてくれる。最初はちょっと躊躇したけど本人も楽しそうなので考えることをやめた。

 

 「今年は結構練習したからねー、誕生日に悪いけど敗北をプレゼントするよ」

 

 「はっ、言うじゃねーか。勝利の美酒を樽で飲んでやるわ」

 

 

 (以下抜粋)

 

 「あっ、わっ、ちょおっ!! 甲羅を、甲羅を投げるなぁーっ!! 」

 

 「ふはははは!! 勝てばよかろうなのだよ、瑠美くん!

……あっ、待って青い甲羅はあかんて。落ち着け、おちつっ……ちょ、まぁああああ!!? 」

 

 「因果応報って知ってますかー!? あ、他の人がゴールしてる……」

 

 「「次でぶっ飛ばす!! 」」

 

 

 

 

 

 

 「……PK禁止ルールつけていいかな」

 

 「こいつからPKとったら帽子とバットとヨーヨーしか残らんだろ」

 

 「いや、だって……あっ、やめて! せめて地上で戦わせて! 」

 

 

 「……重量級使うのやめれば……? 」

 

 

 

 

 

 

 「勝った、圧勝ー!! お兄ちゃん、マジでトランプ系めちゃ弱いねぇ!! 」

 

 「くそっ、テーブルゲームになった瞬間イキリやがって……こうなったらルドーを」

 

 「やめよう、それは誰も幸せにならないから」

 

 「……そうだな」

 

 

 

 

 

 

 「いやー、遊んだ遊んだ! しっかしお兄ちゃんは相変わらず強いねー」

 

 「ははは、伊達にゲームやり続けてるわけじゃねーからな」

 

 

 「ただいまー……おっ、2人ともやってるな? 父さんも混ぜてくれ」

 

 「楽郎、ケーキ買ってきたわよー。あ、お母さんも混ぜて混ぜて」

 

 

 「あ、おとーさん、おかーさんおかえりー」

 

 「おかえりー。ほれ、コントローラー」

 

 「ふっ、釣りで鍛えた父さんの手首さばきを見せてやろう我が息子よ」

 

 「あら、母さんだって負けないわよ。昔はよく楽郎の相手してボコボコにしてたんだから」

 

 

 「よーっし! 今日は皆でゲームだーっ! 」

 

 

 「「「いぇー!! 」」」

 

 と、まぁこれが毎年の我が家の風景である。だいたいこの後酒が入った父さんがやたらと強くなって無双する。

 

 

 

 「お兄ちゃん、お兄ちゃん」

 

 「ん、どうした瑠美」

 

 疲れたのかなんなのかぐでーっと俺の膝の上に転がってくる瑠美。少々コントローラーが握りにくい。

 

 「これからもずっとこうやってみんなで遊ぼーね」

 

 「そうだなぁ、そう出来たらいいな」

 

 ぽすぽすと瑠美の頭を撫でながらそう呟く。陽務家の夜は長い……

 

 

 

 

 




主人公だからね。こういう欲張りセットもアリでしょう。
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