語られなかった者たちの饗宴   作:ゆくゆく

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クリスマス楽永。


貴方色に染まって

 陽務楽郎はプロゲーマーである。当然その仕事の性質上サラリーマンなどとは違い休みは不規則となる。それは分かっている。

 天音永遠とてファッションモデル、それもメディア露出なども多いトップ層にいるのだから、いかにこの手の職業で狙った日に休みを取るのが難しいかも分かっている。

 

 でも、それでも……

 

 「こーんな日(クリスマス)くらいは彼女()と一緒に居てくれてもいいのになぁ……」

 

 天音永遠は腐っていた。それはもう不貞腐れていた。炬燵に半身をつっこみ、何時ぞやのクリスマスに楽郎がプレゼントしてくれたハシビロコウのぬいぐるみを手で弄びながら。

 

 

 そも、事の発端は昨日の夜まで遡る。と言ってもそう複雑な理由がある訳でもない。ただクリパだひゃっほいと2人で準備を進めていたところに楽郎の仕事が入った。ただそれだけの事である。

 

 これが特に何も無い日であればいい彼女たれと自分に言い聞かせている永遠は煽りのひとつでも入れながら素直に楽郎を送り出しただろう。だが現実はそうはいかなかった。

 

 クリスマスパーティー。クリスマスに限らずパーティーと名のつくものは刹那主義たる永遠にとっては欠かせない行事であり、愛する人とのそれを行えなくなったと分かった永遠の荒れようもまたかなりのものであった。そしてその膨れっ面は今日になっても続き、今に至る。

 

 

 「だいたいお仕事がそんなに大事かぁー!? クリスマスくらい彼女を優先してくれたって良いじゃん! 私なら……私なら……いや、私でも仕事優先するかも。なんてこった、楽郎くんのことを悪く言えないぞ……」

 

 ぷくぷくと膨れ、ハシビロコウへと向かって愚痴を吐きまくる永遠。これで素面である。

 

 「はぁー……こーんなセンスないプレゼントしかくれないけどさぁ、それでも毎年楽しみにしてるのになぁ……」

 

 2人が現在住んでいる部屋。それは元々は永遠の家であり、当然家具やら小物やらを選んでいるのも永遠自身である。未だに頭にクソゲーカセットが突き刺さってる男のセンスなど信用出来たものでは無い。

 

 「それでも結構君色に染まってきてるんだけどねぇ……この部屋も、私も」

 

 部屋を見渡せば落ち着いた色合いと雰囲気で纏まった家具の合間合間に点在する蠍やらハシビロコウやらバドゥガモスやら……

 

 「待ってなんか変なのいる!? 」

 

 よく分からない人形を手に取りしげしげと見つめ……

 

 「……あははっ」

 

 昨日の夜からなかった自然な笑みが零れる。

 

 

 「全く、楽郎くんには叶わないなぁ……私が君のことをこんなに大好きなのも伝わってないんじゃないのかなぁ、なんて」

 

 と、冗談めかして言ってみたもののそれを言う永遠の顔は寂寥感に満ちていて、それは彼にとっては見過ごせるものではなかった。

 

 「急いで仕事終わらせて帰ってきてみたら……なーに、馬鹿なこと言ってんだお前は」

 

 「ひゃわっ!? ら、楽郎くん!? 」

 

 「おー、そうだよ。お前の愛しい愛しい彼氏の陽務楽郎さんだよ」

 

 バドゥガモス人形を見つめ、柔らかな寂しさに浸っていた永遠には楽郎の帰宅も接近も気づけなかった。

 

 「んな、い、いつからお帰りで……? 」

 

 「そうだな、確か『こーんなセンスないプレゼント』辺りのところだったな」

 

 「めっちゃ前じゃん!! 帰っきてたなら声かけてよ!! うわ、恥っず! 恥っずぅ!! 」

 

 青くなったり赤くなったりで大忙しの永遠の顔を見ながらイタズラに成功した悪ガキそのものの顔で笑う楽郎。

 

 「はっ、人がいないと思ってセンスないとか言った罰だと思え……ほらよ」

 

 「わっ……とと。ん? これは? 」

 

 「お前がセンスないとかのたまうプレゼントだよ。開けてみろ」

 

 言われるがままさほど大きくはない包みを開け、そしてそのまま絶句する永遠。

 

 「……」

 

 「限定版天音永遠ぬいぐるみだ」

 

 「……知ってるよ!! 何かわからなくて絶句してるんじゃないんだよ!! あああ……楽郎くんには知られたくなかったのに……」

 

 「何でだよ、手触りにこだわった限定版だぞ」

 

 「いや、自分のぬいぐるみとか恥ずいし……それに私の方が可愛いし」

 

 想い人に自分を模したぬいぐるみを贈られるという状況。照れ隠しにそんな軽口を叩く。

 

 「知ってる。それはハシビロコウと一緒にしとけばいいだろ。ほら、チキン食うぞケーキ食うぞ。俺は腹が減ってるんだ」

 

 「〜~~〜~~~ッ! あー、もう!! しょうがないなぁ! 」

 

 

 その程度の肯定で、まるで恋を知らない生娘のように胸が高鳴る自分のちょろさに閉口しつつも楽郎を追いかける永遠。

 

 「夜遅くの飲食は美容の敵なんだけど〜? 」

 

 「じゃあ俺が食ってるのを黙って見てるか? 」

 

 「まっさか、そんなわけないでしょ? 」

 

 

 「……ねぇ、楽郎くん」

 

 「んー? 」

 

 「私、楽郎くんのこと大好きだよ」

 

 「知ってるよ。俺は永遠のことを愛してるけどな」

 

 きっとこれが私たちの関係だ。軽口を叩き合い、笑い合い、煽りあい、そして愛を伝え合う。

 

 ああ、何とも昔の私から変わったものだ。でもこれはとても心地よい変化。貴方色に染まって生きていけるのだから。




クリスマスまで残り4時間……果たして楽玲は書き終わるのか。
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