「……やっぱり人気なだけあって結構人来てるな。もう夜も遅いってのに」
「そりゃあこの辺で初詣ならここって感じの神社だし? お兄ちゃんみたいに合格祈願って感じの人も多いんじゃないかな」
本日12月31日。俺たち陽務家一行は少々遠出して有名な神社に初詣をしに来ていた。再来年に大学受験を控えている俺を始め、何となく縁起物が好きな我が家ならではと言える。
「いやー、しかしこれだけ混んでると知り合いのひとりでも居てもおかしくないかもなぁ」
「っても父さん、ここ普通に県またいでるんだぞ? 知り合いなんてそうそういるわけ……っとと」
「あっ! すみませんでした!! ちゃんと見てなかったです! 」
「ああ、いやいや。こちらこそ話してて気づかなかったので……んん? 」
横を見ながら喋っていた俺にぶつかってきた中学生くらいだろうか? の少女。普通なら互いに謝ってそこで終わりとなるのだろうが……んんんん?
「あ、あの……? 」
「ああ、いや……なんて言うかどこかで君、俺と会ったことあるっけ? 」
……言ってから思ったがなんかこれナンパしてるみたいじゃないか? でもなぁ、なんか既視感があるというかなんというか……
「え? ……そう言われればどこかで見たことがあるような……? んー? 」
と、見知らぬ晴れ着の少女と顔を突き合わせていたところに、
「え、お兄ちゃん何してんの? ナンパ? 」
「紅音! ダメだよ、紅音は可愛いんだからナンパとかには気をつけないと」
余計な横槍'sが入ってきた。確かにナンパと言われて否定しきれない部分はあるが。というか今なんてった?
「紅音? ……秋津茜か? 」
「え、なんでそれを……ひょっとしてサンラクさん? それともオイカッツォさんですか? 」
確定かよ……にしてもなんか外道衆にリアルで呼ばれるのともまた違う変な感覚だな。ほとんど知らない相手にリアバレしているからか知らんがなんかぞわぞわする。
「あー……サンラクです、はい」
「ホントですかっ!? こんなところで会うなんて奇遇ですね! サンラクさんはこの辺に住んでるんですか? 」
あ、間違いなくこれは秋津茜だ。VRでもないのに振り回される尻尾が見える見える。
「あー、秋津茜ステイなステイ。俺が言うのもなんだがとりあえずゲーム外でPN呼ぶのはマナー違反だ」
「あ、そうなんですね……えっと」
「ああ、俺は陽務楽郎だ。改めてよろしくな」
「陽務……楽郎……さん ……楽郎さん……よし。えと、私は隠岐紅音です! よろしくお願いします、楽郎さん!! 」
そう言ってこちらに手を出してくる秋津茜……もとい隠岐紅音。その差し出された手の感触はゲーム内のそれとほとんど変わりがないものだった。
「ところで楽郎さん。これ、どうでしょうか? 」
突然手を離したかと思えば両手を広げくるくるとその場で回りながらこちらに問いを投げかけてくる隠岐紅音……
「ん? これってその晴れ着のことか? 」
「はいっ! 」
いや、どうって言われてもな。晴れ着ですね、とか正月っぽいな、とかしか思いつかないんだが。まさか初対面の男に似合ってるかなんて聞いてる訳じゃあないだろうし……
「……よく分からんがいいんじゃないか?」
と、正解が分からないので適当にお茶を濁すような返事をしたのだが、
「えへへっ、ありがとうございます! 」
どうやら正解だったらしく隠岐紅音の顔が満面の笑みで彩られる。何だろう、見てるとすごく癒される感がある。小動物とかに抱く癒しを感じる。もう少し見ていたい気も……
瞬間、何者かに両肩を掴まれる。
「ねぇ、お兄ちゃん? なんか急に親しげに話し出したから声掛けられなかったけど……家族で来てるってこと忘れてない? 」
「あなた……紅音に手ぇ出そうとか考えてないですよね? もしそうなら……」
ひえっ