語られなかった者たちの饗宴   作:ゆくゆく

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Twitterに投げてきた短編集みたいなの。


泡沫の世界達

 

 『二律背反のアダルティ』

 

 「ん? 玲さんの実家からかこれ。玲さん、なんか心当たりある? 」

 

 「いえ……なにか届くというのは聞いてませんね。何でしょうか? 」

 

 ある日の午後、特にすることも無く穏やかな時間を過ごしていた我が家に爆弾が叩き込まれた。

 

 「こ、これは……」

 

 そこに入っていたのは……まあ、いわゆるオトナの玩具と言われる品々の数々だった。ていうかこれ斎賀家というより仙義姉さんからだろ……。というか玲さんの反応がないんだが久しぶりにフリーズしてるのか?

 

 「あー……玲さん、これどうしようか」

 

 「あの……楽郎さん、これなんでしょうか? 」

 

 ……そっちかぁー。知らないが故の沈黙だったかぁー……

 

 そうなると俺には今ふたつの選択肢がある。1つは何も説明せずに封印すること。もう1つは包み隠さずに説明すること。

前者は彼女にアダルトグッズの説明をするという羞恥プレイを避けられるが仙義姉さんにバレた時に俺が殺される。後者は純粋に恥ずかしい。

 

 ……俺はっ……どうすれば……!

 

 「……あの、楽郎さん」

 

 ん?

 

 「私に……その、使い方教えてくださいっ……! 」

 

 ん"っ!

 

 ヤバい。理性に対する破壊力がヤバい。俺が知ってて自分が知らないという状況が少し恥ずかしいのかなんなのか。若干頬を赤くして上目遣いでこちらを見てくる玲さんは俺の理性を完全に打ち砕くには十分過ぎるほど魅力的で。しかもその上、手にはアダルトグッズを持っている。

 

 

 

 ……その先はまぁ、言わずもがなと言うやつである。

 

 

 

 

 

 『愛しきアナタの贈り物』

 

 「ただいまー」

 

 「お帰りなさい、楽郎さん! お仕事お疲れ様でした! 」

 

 「ん、ありがとな。流石に嫁の誕生日に仕事サボって定時で上がれない、なんてヘマはしねーよ」

 

 そう、本日は隠岐紅音、もとい我が妻陽務紅音の誕生日である。

 

 「えと、それで楽郎さん……」

 

 「心配しなくても……ほら、ちゃんと買ってきてあるぞ」

 

 「わぁぁぁぁ……! 」

 

 ホント、うちの嫁はいつも可愛いな……! 昔から紅音はイチゴのショートケーキが大好きでこうして記念日に買ってきてやるとそれはもう目を輝かせる。本人は子供っぽいですかねぇ……とか言ってたが別に気にしすぎではなかろうか。

 

 「さ、早速食べましょう! さぁさぁ!」

 

 「だーめーだ。先にご飯食べないとお前ケーキだけで腹いっぱいにするだろ」

 

 「うっ……そ、そんなことは……ない、とも言いきれませんが」

 

 「ほらほら、紅音の飯楽しみに仕事終わらせたんだ。冷めないうちに食おうぜ」

 

 本人の誕生日の料理を本人が作るというのもおかしい気もするが本人が作りたいと言っているのだからしょうがない。なんでも1年の成長を見てほしいんだとさ。

 

 

 

 

 「美味かった! ご馳走様でした! 」

 

 「はい、ありがとうございます! さぁ、食べましょう! 」

 

 「早いな!? ……ホント紅音はイチゴのケーキ好きだなぁ……」

 

 「んー、確かにイチゴのケーキは好きですけど……」

 

 「好きですけど? 」

 

 「……楽郎さんが私のために買ってきてくれたものですから。その気持ちが1番嬉しいんですよ」

 

 ……おかしいな。まだケーキ食べてないのにコーヒーが欲しくなってきた。

 

 「……」

 

 「……な、なんか言ってくださいよ、恥ずかしいじゃないですか……」

 

 「……ははっ、なんだそれ。自分から言ったのに? 」

 

 「うう……楽郎さんのいじわる……もうケーキ食べちゃいますから」

 

 やれやれ……これだからウチの嫁は……

 

 「紅音」

 「……? 」

 

 

 「誕生日おめでとう……大好きだよ」

 

 「んぐっ……あ、ありがとございます……」

 

 

 

 これだからウチの嫁は、どうしようもなく愛おしいのだ。

 

 

 

 

 

 

 『恋に効かせよ、百薬の長』

 

 つい数時間前には普通に俺は大学生活を満喫していた。それなのに、本当になんでこんなことになったのか……

 

 「らくろうくん! きいてるんですかぁ!? 」

 

 「聞いてる聞いてる、聞いてるから少し落ち着こうか玲さん」

 

 大学のサークルの飲み会の後、玲さんに2人きりの二次会に誘われたのはいいのだが……

 

 「わたしはらくろうくんのことがらいしゅきなのにぃ! らくろうくんはじぇんじぇんなんもいってくれにゃいじゃにゃいでしゅかぁ!! 」

 

 なんでこんな熱烈な告白を受けてるんだろうか……というかマジで言っているんだろうか。確かに何となく好意を感じるシーンはいくつかあったがこれほどまでに思われていたとは。うーん、あまりの衝撃展開に逆に落ち着いている自分がいる。

 

 「……らくろうくんはぁ……わたひのこと、きらいなんれすか……? 」

 

 さっきまでキレッキレだったのに急にしおらしくなってしがみついてきた。何だこの生き物可愛いな。───い、俺も割と酔ってるなぁ。

 

 「いや、嫌いってことは無いけどね? ほら、こんな酔った状態での告白は双方に強いダメージを与えるというか」

 

 「……すき、なんれすか? 」

 

 「いや、その……」

 

 「わたしはすきです。らくろうくんはどうおもってるんれすか」

 

 もう俺玲さんの情緒が理解できないよ……何この人、なんでこんなにコロコロ性格変わるんだ。酒に弱いと言っても限度がないだろうか。いや、でも1次会ではカパカパと酒を飲んでたような……? うーん、ウワバミなのかそうでないのか……

 

 「どうおもってるんれすかぁ!! 」

 

 「ひょえっ……あー、いやほらこういうのはちゃんとした精神状態で言うのがいいと言いますかねほら」

 

 「……わたしはよわいから」

 

 「へ? 」

 

 玲さんが弱いとかなんの冗談だろうか。

 

 「わたしはこころがよわいから、らくろうくんのしゅきをしれにゃいとふあんなんれす。……わたしのきもちにはこたえてくれないんれすか? 」

 

 ……酒に酔っていても、前後不覚でも、玲さんは玲さんということなのだろう。いや、何よりもこんなにも不安そうに揺れる瞳を見て、それを蔑ろにするなんてことが出来るほど俺は玲さんのことを嫌っちゃいない。

 

 「……玲さん、俺も君のことが好きだよ。俺の横で笑ってくれてる君が大好きだ」

 

 「………………」

 

 ……どうだ? 少し言いすぎた気もするが紛れもない俺の本心。玲さんは俯いてて表情はよく分からないが……?

 

 「…………zzz」

 

 んんんんん?

 

 「…………すやぁ」

 

 この人寝てらっしゃるねぇ! なんだそれ、俺の振り絞った勇気を返して欲しい、ちくしょう!

 

 と、そんなぶつけようのない感情を酒と一緒に飲み込もうとしたその時、ぽつりと囁くように零れた言葉が俺の耳朶を打つ。

 

 「……えへへぇ……らくろうくぅん……だいすきぃ……」

 

 

 ……それは反則じゃないだろうか。 

 

 

 

 

 

 

 『朱色』

 

 ある日のデートの帰り道の事だった。それなりに混み始める時間帯、電車に乗り込んだ2人はあることに気づく。

 

 「……あ、席1つしか空いてないですね」

 

 「んー? ああ、紅音座っていいぞ。疲れたろ」

 

 「いえ! 楽郎さんの方こそ座ってください! 私はこれくらい歩くのは慣れてるので! 」

 

 「いやいや、女の子立たせて自分一人だけ座るとか無いだろ……」

 

 「むぅ……しょうがないですね」

 

 と、そんな2人を見兼ねてか空席の隣に座っていた老婆が立ち、席を譲ろうとしてくる。

 

 「宜しければここの席、使ってくださいな」

 

 「へ!? ……いやいや、ありがたいですけどできませんよそんなの」

 

 「あらそう? でも彼女さんと一緒に座りたいんじゃないかしら? 」

 

 「う……それはまぁ。いやでも、彼女の前くらいは格好つけさせてくださいということでここは1つ」

 

 「……あらあら、お邪魔だったかしらねぇ」 

 

 2人の会話の最中は黙っていた紅音が会話が終わったと見るや楽郎の服の裾をちょいちょいと引っ張り自己主張を始める。

 

 「んん? どうした、紅音。 何かあったか?

 

 「えっと、ちょっと言いたいことがありまして……」

 

 「言いたいこと……? 」

 

 と、そんな前置きの後にやや頬を染めつつもいたずらっ子のような笑顔を浮かべた紅音は囁く。

 

 「…………無理に格好つけなくても楽郎さんがかっこいいってことは、私ちゃんと知ってますよ……」

 

 「んぐっ……お、おお……そう、か」

 

 夕日が差し込む電車の中で、2人の顔は赤く染まっていた。

 

 

 

 

 

 

 『インテリジェンスな贈答品(ラブコール)

 

 3月17日。すなわちサイナの日。

 

 「というわけでサイナ。お前、何か欲しいものあったりするか? 」

 

 「疑問:いったいどの辺に『というわけで』要素があったのでしょうか」

 

 「今日は3月17日。すなわち語呂合わせによってサイナの日、ということだ。分かっただろう? 」

 

 「忠言:契約者、インテリジェンスの深刻な欠乏が見られます。早急にインテリジェンスを補給すべきかと」

 

 うるせー、日本人はなんでも記念日にしたがるんだよ。

 

 「それじゃあ特に欲しいものは無いということで……」

 

 「契約者、契約者。こちらのメモをどうぞ」

 

 「あ? ……何だこれ、素材リストか? 」

 

 「肯定:化粧箱の強化を初めとした当機の能力を向上させるのに必要な素材です」

 

 「…………欲しいってか」

 

 「別に無理にとは言いません。その場合当機のデータベースに契約者はケチという情報が加わるだけなので」

 

 正直その情報が加わったところでだからなんだという話なのだが……1度言ったことを覆すというのも面白くはない。俺はあの外道共とは違い約束は守るタイプの人間なのだ。

 

 「おいおい、俺を舐めるなよサイナ。こんな素材程度余裕で集めきってやるよ」

 

 「声援(ひゅーひゅー):さすがは契約者。では期待しています」

 

 ……とは言ったものの知らん素材も結構あるな。何だこのルピナスって。花か……?

 

 

 

 〜数時間後〜

 

 「はっ……ははははっ!! 集めきってやったぞ、見たかサイナァ!! 」

 

 「お疲れ様です、契約者」 

 

 くそっ、なに優雅にコーヒー(のような何か)を飲んでるんだ。どちらが主か分かったもんじゃないな。

 

 「……確認:全部揃っているようですね。流石は契約者。感謝します」

 

 「あ? あー、気にすんな気にすんな。記念日ってのはそういうもんだろ」

 

 「それでも感謝を。ありがとうございます、契約者。……では私は装備の強化に移るので。失礼します」 

 

 早口でそう言い切った後、どこかへ飛んでいってしまった。……そんなに強くなりたかったのだろうか。戦力が増える分には歓迎だがな……

 

 

 

 ◆     ???

 ルピナス:チョウに似た小花が咲き上がる様子がフジを逆さまにしたようで、「ノボリフジ(昇り藤)」とも呼ばれる。花言葉は想像力、いつも幸せ、貴方は私の安らぎなど。また、3月17日の誕生花でもある。

 

 

 

 「……ふふ、大切にしますね。契約者」

 

 

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