語られなかった者たちの饗宴   作:ゆくゆく

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ちょっとえっちかもしれない。某氏が読みたいって言ってたから書いたんや! 違ったらごめんね!!


蒼き月の下で

 カタリ、と微かな物音が聞こえ心地の良い微睡みから意識が現実へと引き戻される。隣に寝ているはずの愛しい人を求め伸ばした手はベッドの上を空しく掻く。

 

 「……らくろうくん? 」

 

 時計を見れば午前3時。早く目覚めたというにはやや早すぎる時間だ。トイレにでも行ったのだろうか。そう思い、数分ほど彼の匂いの残る布団にくるまりながら帰還を待つ。

 

 「……帰って、きませんね」

 

 少し不安になってくる。結婚してからは楽郎は深夜に1人でゲームをするようなことはなくなった。平日は仕事に備え早く寝ているし、休日は一緒に夜更かししている。だからこそ、この状況は玲にとっては容易に不安を感じうるものであった。

 

 「楽郎くん……? どこですかー……? 」

 

 寝室……いない。トイレ……いない。風呂場……いない。外に出ていったのかと思い、玄関に向かうも靴が無くなっている様子もない。

 

 「あと探していない場所……あ、もしかして」

 

 玲が向かう先は2階。寝室の対面の部屋。特に使い道が思いつかなかったため、ゲーム関連の倉庫と化しているが……ここには広い窓とベランダがある。眠れなくて夜風でも浴びようとしているのかもしれない。そう思い、微かに笑みを浮かべながら扉を開いた玲は言葉を失う。

 

 確かに楽郎はそこにいた。広い窓を埋め尽くすほどの満月が楽郎を照らしている。残酷なまでに美しく、鋭利で青白い月の光を見る楽郎の顔は、決して玲が見ることはない鋭さに彩られている。まるで月の狂気をその瞳に宿すがごとく。

 

 「楽郎、くん……? 」

 

 声をかけてはいけないと思った。声をかけるべきだと思った。相反する感情が玲の中で沸き起こり、しかし彼女は声をかけることを選んだ。

 

 そして、殺戮者の目が玲を貫く。人を見る目ではない。獲物を見る目。どのように仕留め、どのようにバラし、どのように終わらせるか。それだけを考えているかのような暗く底冷えた鋭い眼差し。そんな視線を浴びた玲は少しばかりの硬直を得、そして喜びに身体を震わせた。

 

 なぜならそれは今までに見た事のない楽郎の姿だったから。愛しい人のままでは見ることの出来ない姿だったから。故にこそ玲は歓喜した。知り尽くしていると思っていた相手の新たな一面。自分以外の誰かに向けられていたであろうそれを今は自分だけが独占している。そんな独占欲ともなんとも言えぬ感情が玲の心を震わせる。

 

 1歩、また1歩。楽郎が徐々に徐々に、距離を詰める。その歩みはまるで餌を確信した肉食獣のようであり、怯える獣のようでもある。そして、玲もまた距離を詰め始める。ひたり、ひたり。音すらも消え果てさせるような月光の中、2人の足音だけが響きあい、絡み合い、溶け合っていく。

 

 「……ああ、玲さん。今夜の君はとても魅力的だね」

 

 ゼロ距離でそう囁く楽郎。それはそこだけを見れば愛しき妻へと捧げる甘い睦言のようである。しかし、ケモノは違う。孤島の女神は、殺戮の幼女は、殺す相手にこそ魅力を感じるのだ。

 

 

 きらり、きらりと光が瞬く。それはあるいは鋭く尖った犬歯の光。それはあるいは首筋より流れ落ちる闇よりもなお紅い鮮血の光。

 

 

 痛みは麻薬となって心を溶かす。血は記憶を呼び起こし、こころを揺るがす。

 

 

 甘く、激しく、愛しく、強く、溶かして、啜って、交わり、溢れて……!!!

 

 

 

 やがて月は沈み陽は昇る。青白い光は暖かな光へ。獣は人へ。

 

 「ふふ……楽郎くん、愛していますよ」

 「ああ……玲さん、俺も愛しているよ」

 

 血液と体液が混じり合い、複雑な模様を描く床の上でふたりは笑い合い愛を誓い合う。

 

 「……玲さん、やっといてなんだけど首大丈夫? 」

 「大丈夫ですよ、そんな大した傷じゃないですし」

 

 柔らかく笑い、首筋を抑える玲。そこから流れ落ち、垂れた1滴に微かに残った蒼き月の光が反射して、きらきら、きらきら煌めいていた。

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