語られなかった者たちの饗宴   作:ゆくゆく

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楽羽さん、今日誕生日じゃないですか。これ実質瑠美ちゃんのお話なんですよ。びっくりだね


太陽に最も近い少女

 私は私の姉があまり好きではない。別に仲が悪いとか言う訳ではなく、気が合わない、趣味が合わないという訳でもない。服のセンスは完全に死にきっているが、それを除けば別に悪い姉では無いと思う。

 

 ではなぜ好きでは無いのか。答えは簡単、私の姉が()()だからだ。

 

 ……

 

 

 …………

 

 

 ………………

 

 

 「ほらほら、美香ちゃん。急がないと次の授業遅れちゃうよー」

 「あ、待ってよ瑠美ちゃん! 」

 

 高校生活にも慣れてきたある日の休み時間、私と友人は3年生の教室がある階の廊下を小走りで駆けていた。ひとえに担任が多少面倒な作業を押し付けてきたからなんだけど……それを言ってもしょうがないと急いでいるわけだ。

 

 「うーん、これホントに間に合うのかなぁ……」

 「間に合わなくても急いだっていう事実があれば何とかなるんだよ美香ちゃん」

 「瑠美ちゃん、時々黒いこと言うよね……あ」

 「あ……? …………ああ」

 

 廊下の奥から歩いてきたのは3年生の集団。その中央付近にいる制服のスカートにジャージとかいう激ヤバまじありえないファッションの女。私の姉、陽務楽羽である。

 

 向こうも私に気づいたようだが何も言わずにそのまま歩いていく。私も当然何も言わない。私が、姉と同じ高校に入ることが決まった時、学校では緊急時の時以外は話しかけないでと突っぱねたからだ。

 

 「ね、ねぇねぇ瑠美ちゃん。あの真ん中の方にいた女の先輩って瑠美ちゃんのお姉さん、だよね? 」

 

 またか。最初に湧き出てきたのはそれだった。

 

 

 ついでどんどん湧き上がってくる暗い気持ちの数々。

 

 げんなりする。嫌になる。不快になる。

 

 そんな感情が顔に出てたのか、はたまた無意識的に感じとったのか。美香ちゃんはそれ以上何か言うことはなく、私を急かしながら教室へと走っていった。

 

 

 小走りで彼女の後を追いかけながら、頭の中では姉のことを考える。

 

 私が姉を好きでいられなくなったのはお姉ちゃんが中3の時、私が中1の時だ。入学してから半年ほどが過ぎた時、私は自分で言うのもなんだがクラスの人気者であった。友達は多く、常に誰かと一緒にいて、遊び相手には困らない。そんな充実した学生生活だった。

 

 それが壊れたのはもう少し先のこと、恵の季節が終わり、冷たく閉ざされた季節が始まる。そんな頃の事だった。

 

 

 お姉ちゃんがなにか特別なことをしたという訳では無い。お姉ちゃんは変わらずお姉ちゃんのままだった。ものぐさで、ゲーム廃人で、髪の手入れもろくにしない。でも、何故か人を惹きつける。本人が望めば多くの人間がついて来るだろう。でもお姉ちゃんはそれをしない。そして、だからこそ人がついてくる。

 

 そんなお姉ちゃんが学校行事か何かで私のクラスの人達の前に現れた。

 

 

 その後に待っていたのは、

 

 

 

 

 ───地獄だった。

 

 

 私の周りにいた人たちは、私と仲良くしていたはずの人たちは、私と遊んでくれていた人たちは。

 

 

 

 みんな、みーんな、お姉ちゃんの虜になった。

 

 「瑠美ちゃんのお姉さんってステキな人だね! 」

 「私もっと会ってみたい……ねぇ、瑠美ちゃん。今度お家に遊びに行っていい? 」

 「なあ、陽務。お前の姉さん紹介してくれよ! 」

 「いいなぁ、あんな素敵なお姉さんがいるなんて。瑠美ちゃんは幸せだね」

 

 

 

 

 瑠美ちゃんのお姉さん、

 瑠美ちゃんの姉さん、

  瑠美ちゃんの姉、

   陽務さん、

    楽羽さん楽羽楽羽楽羽楽羽楽羽楽羽楽羽楽羽楽羽楽羽楽羽楽羽楽羽楽羽楽羽楽羽楽羽楽羽楽羽楽羽楽羽───!!!!

 

 私を見ていてくれたはずの人は! 私を好きでいてくれたはずの人は!! 私の友達だったはずの人は!!!

 

 全部もっていかれた。あの日、あの時に。

 

 

 姉は悪くない。クラスメイトも悪くない。誰も、誰も悪くない。

 

 でも私は姉のことをもう好きにはなれない。嫌いだとは思いたくない。私だって姉に惹かれている。だけど、無理なのだ。彼女は太陽。否応なしに全てを惹き付ける絶対のカリスマ。

 

 そんな彼女に1番近い私は───

 

 

 

 

 

 

 

 ─────全てを灼かれる(妬く)しかないのだから。

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