むかしむかし、という程には昔ではありませんが。あるところに1人の女の子がいました。
女の子は
おとぎ話みたいな夢のチカラ? 寝物語みたいな運命?
それでしたらどれほど良かったことでしょうか。
ただ言えるのは、彼女にとっては夢とは見たくもないものであり、運命とは常に自分を縛り付けるものであった、ということだけなのです。
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夢を見るのは嫌いだ。目が覚めた時に世界が眠る前と同じとは限らないから。だから、薬でも魔法でも何でも使って深い眠りに落ちる。決して、夢なんて見ないように。
人と過度に関わるのは嫌いだ。深く知ってしまって、その人のことを嫌ってしまったら、私は何をしてしまうか分からない。何でもできる力なんてモノは実際にあったら何も出来ない。出来すぎてしまうから。
でも、孤独になるのはもっと嫌いだ。孤独になってしまえば、全てが終わってしまうから。けれど、永遠に在り続けよと決められた兎に出会い、縁を持たず世界を拓く人達に出会い、私の孤独は無くなっていった。
今日も昨日と変わらない日が始まる。聖女なんて言っても実質的な待遇は軟禁と変わらない。私の仕事は人寄せ。教会の象徴としてそこにいる事が求められる。そこに居ることだけが。私に付き従ってくれているジョゼット達には悪いとは思う。代わり映えない日々を送るなんて、開拓者にとっては拷問にも等しいのではないか。けれど、それを聞く勇気は無い。二度と愛を失いたくないから、孤独になりたくないから。
そんな日々の中で夢想するのは、有り得ざる世界のお話。私を縛る檻はなくて、私にもみんなと同じように封臓があって、聖女としての力も運命も持たないで、普通の女の子として過ごし、育ち、そして恋をする。そんな普通のお話を夢に見ないように夢に見る。
何ともままならないものである。自分から入ることを望んだ檻を離れることを考え、自分には決して手に入ることの無いものを思い描き、形となる前に思考から消し去る。具体的な形をもってしまえばどうしようもなくなってしまうから。だからジョゼット。貴女とのお話は楽しいのだけれど、その、色々な恋愛の形を詳しく語ろうとするのはやめて欲しいわ。ええ、本当に。自分でもしたくなってしまうから。
そんなふざけたことをした罰か、あるいは良いことは重なるとでも言うべきか。私は見てしまった、知ってしまった。そして、気づいてしまった。煌めく命の輝きを、星を拓く輝きを。己の内に確かに有る熱き慕いの感情を。
……そこからはもう止まれなかった。
たった一つのわがままを通すために色々と小細工を重ね、世界に形として出力される瞬間をギリギリまで根性で押さえつけ、知れば知るほど魅力が増える太陽みたいな彼の足跡を追いかけた。
そう、太陽なのだ。檻に籠ることを選び、けれども檻の外へと憧れを捨てきれなかった私に射し込んだ光。こちらの決意も、思いも、何もかもを焼き払って否応なしに惹き付ける太陽なのだ。
けれど、不思議と悪い気はしない。生まれて初めて思いっきりやりたいことをやるために動くからだろうか。1度きりのデートになっても、叶わない想いであるとわかっていても。彼との逢瀬を考えると胸が弾む。彼が夢に出てくるのではと考えると、夢を見ることが嫌ではなくなった。
「……ジョゼット、私のわがまま聞いてくれますか?」
これから始めるのは1度きりの世界への反逆。憧れの先輩に玉砕覚悟で告白するような気分でそれを行う。
何せ、恋する女の子はいつだって無敵なのだから。
「でしょう、ジョゼット? 」