東方時旅車〜The travel to The future of Delorean 作:和菓子甘味
秋一色に染まる幻想郷。冬の乾季故に晴れ渡る青空の元、霊夢は1人で空を飛んである場所を目指していた。理由はただ1つ、狂った時間軸を元に戻すためだ。
空を飛びながら、霊夢は先程のにとりとの会話を思い出していた。
『いいかい霊夢。君はお祖母さんとお母さんの出会いを間接的に邪魔した。お祖母さんが博麗の巫女を続けなければ君のお母さんは生き残らないし、君も幻想郷に存在できない。だから君のお母さんが写真から消えかけている。最後には君も消えてしまうんだ』
『そんなこと言われなくてもわかってるわよ』
『あくまで現状の確認さ、作戦を再確認しよう。まず霊夢の案だけど、霊子に自信を持たせるために強力な妖怪を叩き起す。そこで私がデロリアンの調整のためにその地域に行きたいと霊子を誘う。連れてこられた霊子が妖怪とかち合い、戦闘。無事に勝利して自信を持って博麗の巫女を続けてハッピーエンドって事だね?』
『但し、妖怪は私の術式で作った幻影だけどね。少なくとも死ぬようなことは無いでしょう。1日あれば十分よ』
霊夢の回答ににとりは指を鳴らしながら答える。
『なら私はここでデロリアンの調整や道具の作成をするとしよう。そうすれば、私はこの時代の私に出会う可能性も少ないしね』
『もう1人のアンタ?』
『そうだとも。あっちとこっちに私がいるし、ほかの人物だって過去の本人がいるんだ。仮に出会いでもしたら大事になるってデロリアンが言ってたからね。特に八雲紫や寺子屋の先生とかには見つからないようにね。見つかったら余計なことになりかねない』
安易に想像できた霊夢は頭を抑えながら「そうね」と返した。
今朝の下りを思い出し、霊夢は重いため息を吐いた。それもそのはず。ただでさえ頼りない祖母を励まさなければならないのに、更に面倒な面々を相手となると面倒なことこの上ない。面倒なことが嫌いな霊夢には特に最悪の条件だった。
「っと。着いたわね」
霊夢は目的の場所にたどり着いて下降した。その場所は辺り一体が砂利で固められた円形の広場だった。その真ん中にはしめ縄が締められ、御札がびっしりと貼られた岩が置かれていた。あからさまに物々しい岩であるが、霊夢は気にせずに歩み寄った。
「こいつが例の岩って訳ね。たしかここに書いてあったはず...」
霊夢は袖の中から1冊の本を取り出してページをペラペラとめくりだした。本の題名は「博麗歴伝」と記されていた。これは代々博麗の巫女が執筆、編纂する歴史書であり、そこには退治もしくは封印した妖怪の事も書かれていた。霊夢はそこに目をつけた。この1955年までに残っている博麗歴伝を遡り、霊子が自信を持てるぐらい強い妖怪を選定する。そして戦わせて勝てばそれで万々歳だ。そういう理由から、霊夢は初代博麗の巫女である【博麗霊】が残した博麗歴伝を頼りにこの場所を探し当てたのだった。
「えーっと?【この物は常闇を操る物。数多のわたり殺し喰らひ尽くしき。幻想郷にもその凶行に及ばむとせる料、この岩に封印せり。】ねぇ...後は破れて読めないし、なーんかどっかで聞いた気がするけど、まあ何とかいけるでしょ。とりあえず姿は載ってないから、私の想像でいいとして...」
博麗歴伝を読み終えた霊夢はテキパキと準備を進めて辺りに幻影の式を組み立てていく。ものの30分ほどで霊夢の作業は終わりを迎えた。
「さってと...後はあのヘタレのケツに火をつけてやるだけね...痛っ!」
式を展開する道具と札をしまった際に、霊夢は袖にしまっていた博麗歴伝で指を切ってしまった。かなり深く切ってしまった為、その血がこぼれ落ち、砂利に染み込んだ。
「これだから冬の乾燥は嫌なのよ...早く帰って止血しましょ」
霊夢は傷口を咥えてその場を早々に飛び上がって帰路に着いた。
■■■■■■
霊夢さんが出掛けてから1時間半ほど経過した。
そろそろ帰ってくる頃かと思ったら、博麗神社に霊夢さんが降り立った。それを、私の調整でオイルまみれのにとりさんが出迎えた。
「お疲れ様霊夢。計画は順調?」
「式を組み立てるまではね。後は式が順応してからあのヘタレを蹴りあげて戦わせるだけよ」
霊夢さんの報告に満足気だったにとりさんだが、こちらの現状を話そうとすると目線を避けて頬を掻きながら申し訳なさそうに話した。
これはシンプルに嫌な予感がする...。
「そりゃ良かった。...だけど、こっちはまだまだかかりそうだ。デロリアンの調整は目処が着いたけど、避雷針やそれを伝えるワイヤーの長さ測量に、柱の準備をしなきゃいけないし、デロリアンの次元転移装置に直結させるフックを作らなきゃ行けないから後5日はかかりそうだ」
「5日!?ギリギリじゃないの!」
霊夢さんの怒鳴り越えが境内に響き渡った。流石に滅茶苦茶を言われて頭にきたのか、にとりさんも声を荒らげて言い返し始めた。
「仕方がないじゃないか!ないものでどうにかやりくりしなきゃ行けないし、1から作らなきゃいけないものもある。デロリアンが140キロを出せる場所の選定もあるんだ!5日でも結構突貫工事なんだぞ!」
「それをどうにかするのが技術者でしょうが!」
「なんだとこの暴君独裁巫女!」
「あんた良くも言ってくれたわね!」
売り言葉に買い言葉とはまさにこの事。結局、2人はスペルカードを使わない拳と拳の語り合いに発展し、用事から帰ってきた霊子さんがドン引きするぐらいボコボコに殴りあっていた。こういうのは止めたら私が鉄くずにされるので関わらないが吉であると学んだ。
結局私の調整は明日に引き伸ばされることになったのだった。
その夜。霊夢が式を書いた封印の地では、岩に不自然な亀裂がほんの少し走っていた。そして昼間に霊夢が零した血が浮かび上がり、その亀裂に吸い込まれていった。
「用語解説」
【博麗歴伝】
博麗の巫女が代々執筆、編纂して残している書物。
退治もしくは封印した妖怪の事や当時の情勢などが記されており、博麗の巫女の業務の参照にされる事が殆どである。
尚、霊夢は執筆、編纂を怠っており、度々八雲紫から説教を受けている。
【博麗霊】
霊夢の五代前の博麗の巫女で、初代博麗の巫女。
1860年〜1893年まで務めた。
書物等に名前はあるものの、容姿や性格等については一切伝わっておらず、霊夢も知らない謎多き人物。