この残酷で天災降り頻る世界を好きなように生きていく 作:苛性ソーダ(温)
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──────黒い天使が現れた時、敵対する全ての命を刈り取っていく。その大地を死体と血に染めて……
地面を割れば炎が吹き出し、背中の結晶の羽根からは光が降り注ぎ、得物の大鎌を振るえば黒い竜巻があらゆる物を吹き飛ばした。
奴に抵抗した者は皆等しく殺された。戦場に現れた死神のような天使を誰一人止める事は出来なかった。
そして全てを奪った後、元々その場にいなかったかのように去る。誰一人その黒い鎧に隠れた素顔を知る者はいない。
分かっているのはサンクタ族という事とその傭兵のコードネームのみ。その名は────────
バンデット。
「バンデットの噂か…久々に聞いたな。」
「傭兵時代に宿舎で聞いた話だ、私は遭遇した事はない…というより教官は知っていたのか?」
「私がボリバルにいた時にも軍内部でよく噂になっていたからな。知ってはいるさ」
ロドス艦内のオペレーター休憩室にてドーベルマン、メテオリーテ、フロストリーフは近々行われるある作戦の事について話していた。そこで出てきた傭兵関連の話から現在のバンデットという傭兵の話がフロストリーフから持ち出されたのである。
「…メテオリーテ?」
「あ…ごめんね。まさかのその話題が出るとは思ってなかったからつい奴と遭遇した時の事を思い出してしまっていたわ。」
「待て、今なんて言った?奴に…バンデットと戦ったことがあるのか!?」
メテオリーテがサラッと言った発言に思わず二人は驚愕し、詰め寄った。
「ちょ、ちょっと!近いわよ!……まぁ私も同じようにロドスに入る前の傭兵時代の時の話だけど…聞く?」
「当たり前だ。」
「バンデットは1番情報が少ない傭兵と言われている。直接戦ったという生き証人がいるだけ貴重な物だ、宜しく頼む。」
フロストリーフとドーベルマンはそう言った後、姿勢を正し、話を聞く態勢に入った。
「分かったわ…あれは───────」
その日、私達傭兵が受けた依頼の内容は大規模な密輸密猟団の襲撃だった。とはいっても依頼側の戦力が万一削れた場合に投入される予備兵力のような扱いだったが…今思えば依頼側の戦力と統合され、最初から襲撃に参加していたら私は今ここにはいなかっただろう…
私達が現場に到着した時、辺りは惨状と言うにふさわしい状態だった…
上半身と下半身がバラバラになっている死体。首が無い死体。身体が原型を留めていない死体に、心臓を的確に射抜かれている死体等…50人もいた筈の部隊は無惨にも壊滅していた。
「馬鹿な…こんなことが…」
「全て死体だというのか…」
「一体あの通信の後何が…?」
一緒に来た同業者が唖然としながらそう言い溢した。
「分からない…ただこの惨状を作った奴はまだ近くにいる筈よ、警戒して」
そう他の傭兵達に言いながらも彼らが唖然とする理由も私には分かる。ここに斃れている連中は軍の新兵などでは無く、大半が戦闘経歴が長いベテラン揃いだったからだ。そのベテラン揃いの傭兵部隊が大規模とはいえたかが密輸密猟者の団体に返り討ちにされるなんて私含めだれも想像することはできなかっただろう。
「我々は向こうの地点を捜索する。メテオリーテ、お前は我々をすぐに援護できる狙撃地点を確保しろ。」
「ええ、わかったわ。」
そう言葉を交わし、彼らと別れた私は天井が剥き出しになっている廃ビルに陣を取った。
そして彼らの動向をハンドバリスタに付いているスコープで覗いた瞬間、轟音と土煙と共に彼らの前に黒い鎧が姿を現した。
そいつは真っ黒に血のような赤が混じった
「死神…」
『うわぁああぁ!!』
「っ!!」
呆けてしまったのも束の間、一瞬にして一人、奴の大鎌によって斬り飛ばされてしまった。
私はすぐ様、奴に標準を定めハンドバリスタの引き金を引いた。
放たれた榴弾矢は真っ直ぐに奴へ向かっていき命中────────する事はなかった。
「嘘…でしょ…!?」
思わずそう言わずにはいられなかった。
奴はあり得ない事に放った矢を自分に命中する寸の所で矢のシャフト部分を掴みその手でへし折った。
完璧なタイミング、そしてこちらの位置もバレていない状態での狙撃。
それを奴は矢が飛んできた方角を瞬時に察知したどころかハンドバリスタで放った矢を掴むという人間離れした業をこの一瞬で見せたのだ。そして……
『────』
『た、すけて…』
『逃げ、ろ…コイツは化けも…』
私が唖然としてしまっている間に共に行動してきた前衛の傭兵達が全滅してしまった。
っ!何を呆けているのよ私は!
相手はもう既にこちらの位置を把握してしまったている可能性が高い。
そう考えた私はハンドバリスタを担ぎ、今いる廃ビルから移動しようとした、が
ドゴォン!
「ッ!!」
奴は空から先程と同じように地面に轟音を響かせ私の目の前へと降りてきた。
「…随分と派手な登場ね。」
私はそうを言いながらも威嚇する。だけど奴はそんな言葉に対して淡々と言い放った。
「………お前で28人目…恐れるな、死ぬ時間が来ただけだ。」
奴は大鎌を肩にかけたまま、私はハンドバリスタを構えたまま動かなかった。
ハンドバリスタは高威力だが連続して撃つことができない。奴は間違いなくそれを分かっていて、先に私の攻撃を避け、反撃手段を失った状態の私を仕留める気だったのだろう。
お互いに睨み合いが続いた………そして遂に動き始めたのは奴だった。
「…………!!」
「くっ…!」
奴が大鎌を構えた瞬間、私はバックステップで後ろに跳んだ。そして奴が飛び込んできた瞬間ハンドバリスタ引き金を引いた!
至近距離で放たれた散弾矢が奴の眼前に迫る。前傾姿勢の奴は如何に速く腕を動かそうと確実に間に合わない距離。確実に矢は奴の顔を捉えた!
そう確信した瞬間、奴の姿がブレた。
「(えっ…?)…か、はっ!!?」
ブレた奴の姿をみて困惑したその一瞬、突然背部から強い衝撃を受け吹き飛ばされた。
私は突然の衝撃を受け止めきれず地面をバウンドしながら転がり壁に激突した。
「っぐ…(一体、何が…)!?」
痛みに耐えながら顔を上げた先には無傷の奴が大鎌を構えて立っていた。しかし先程とは違い、鎧の兜部分にある。二つの眼が薄っすらと赤く光っていた。
「…………終わりだな。」
奴は大鎌を振りかぶる。ハンドバリスタは手放してしまい。身体も動かない…
私はとうとう諦めて目を瞑ってしまった。
そして私に大鎌が振り降ろされ────────────────
ピピッピピッ。
「えっ?」
ピピッピピッピピッピピッ、ピー
そんな時、戦場で鳴るような音ではない音が聞こえた。それはまるで朝起きる為のアラーム音のような…
私は幻聴かと思い恐る恐る目を開けた。
そこには既に私に背を向けて歩いていく奴の姿があった。
呆気に取られている私に向かって奴は顔だけ振り向かせこう言った。
「依頼達成…タダ働きはしない。運が良かったな、サルカズの人。」
そう言って奴は瞬く間に私の前から姿を消した。
「これが奴…バンデットとの最初で最後の戦闘よ」
「…よく生き残れたな」
「奴が言った通り本当に運が良かっただけよ。アラームが鳴っていなかったら今頃ここにはいないわよ。」
語り終えたメテオリーテはフロストリーフに苦笑いを含みながらそう言った。
そこでドーベルマンが思い出したかのように言った。
「そういえば…このバンデットにまつわる話はロドスの要警戒人物リストにも載っているのか?」
「ああ、前に私がアーミヤの書類仕事を手伝った時に伝えておいた。奴は活動時期や所属勢力が不明だからこそ何処にでも現れると言えるからな…ドクターの救出作戦にも敵対勢力側に雇われている可能性は十分あると思う。」
「そうか…改めてアーミヤとバンデットの危険性と作戦への懸念を話さなければならないな。二人とも情報提供感謝する。」
「気にするな」
「力になれて何よりよ」
そう言ってドーベルマンはさっそくアーミヤと作戦の再調整をする為か、休憩室から足早に出て行った。
チェルノボーグ、ドクター救出作戦の開始はもうすぐそこまで迫ってきている。
〜ウルサス・チェルノボーグ郊外〜
「べぁっくしょい!?」
『グォ…?』
「あ"ぁ"…ズズッ、久々にめちゃくちゃデカいくしゃみをしたな。誰か俺の噂でもしてるのか…?いやそれはないか、目立つような事した覚えはないしな…」
黒く燻んだ羽と頭に輪と片折れの角を持つサンクタの男は一人そう呟くと、再び武器の手入れ作業に戻ったのであった。
─バンデットという傭兵─END─
【補足】
Q.28人目ってなんのこと?
A.イレギy……ではなく今戦闘で殺した狙撃手の数、メテオリーテで28人目の筈が契約時間が来たため虚言と化した。残念。
・バンデットが依頼を受け付けている時期は不定期な為、この噂は一部では戦場で幻覚を見た物が流したデマとも言われている。
【プロファイルの更新無し】
今回も見てくれてありがとうございました!
いやぁ大鎌持ってて黒い鎧着たサンクタ族のくせに傭兵やってるなんて何処のどいつなんですかねぇ。
あ、次回からチェルノボーグ編にようやく突入します!もちろん前に募集したアンケートの結果もちゃんと組み込みますよ〜!
不定期で亀より遅い投稿速度の作者ですがこれからも見ていただけると幸いです!
それでは次回もお楽しみに!