ポケモン世界で配信者、始めました!   作:ルルル・ルル・ルールルールー

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#8 バトル配信 スミレ 中

 

 

「──お願い! ルカリオ!」

 

【カレンちゃんの2匹目はルカリオか】

【ルカリオかっこいいから好き】

【カイリューまだやれるか?】

【俺のリオル全然ルカリオに進化しないんだけどなんで?】

【お前がロリコンだからやで】

 

 ボールから出たルカリオはカイリューを睨みながら静かに闘志を漲らせている。ルカリオというポケモンは心が読めると言われている。きっと、私やハガネールの悔しい気持ちや負けたくない気持ちを背負ってそこに立ってくれているのだろう。

 

「ルカリオ、頑張ろうね」

 

 一声掛けると、ルカリオはカイリューから目線を離さずに小さく頷いた。

 

「カイリュー、もう一仕事頼むわ」

 

 カイリューはお母さんの声に応えて気合いを入れるように鳴き声をあげた。身体はボロボロでも心はまだ決して折れていない。まだ暴れてやるという気迫を感じる。ルカリオもそれをわかっていて、一切油断はしていない。

 戦いの始まりは静かで、そして一瞬だった。

 

「ルカリオ、"しんそく"!」

 

「カイリュー、"しんそく"!」

 

 私が使うのはカイリューの残り少ない体力を削るために最速で攻撃ができる"しんそく"。当然お母さんも私の行動を読んで、同じく"しんそく"で迎え撃った。

 ルカリオとカイリューがお互いに超速で駆け、交錯する。目にも止まらない速度の攻防。一瞬の後、その場に立っていたのはルカリオだけだった。

 

【ファっ!?】

【今何が起こった?】

【少し目を離したらカイリューが倒れてんだけど】

【しんそくが早過ぎて目に見えねぇ】

【恐ろしく速いしんそく。俺でも見逃しちゃうね】

【しんそく同士でぶつかればより速く力強い方が勝つ】

【カイリューはボロボロだったしなぁ】

 

「お疲れ様、カイリュー」

 

 やはりハガネールに受けたダメージが大きかったのか、カイリューはルカリオに競り負けた。きっと立っているのがやっとの状態だったのだろう。万全のカイリューならルカリオに競り負けることは無かったかもしれないが、ダメージで動きが鈍っていればそうはいかない。それでも気力だけであれだけ動くのだから、すごいポケモンだ。敵ながら見事と言う他ない。

 

 お母さんは戦闘不能になったカイリューを労い、次のボールに手をかけた。

 

「行きなさい、バクフーン!」

 

【お、バクフーンか】

【ほのおタイプかー】

【相性的にカレンちゃんはきついな】

【カイリューお疲れ様】

【カイリューかっこよかったぞ!】

 

 お母さんが2番手に選んだポケモンはバクフーン。ほのおタイプのポケモンで、相性ではルカリオは不利だ。というか、私の手持ちのポケモンでジュラルドン以外は全員ほのおタイプが苦手だ。

 

「やっぱり、"ステルスロック"が厄介ね」

 

 お母さんが小さくぼやく。私のポケモンたちはほのおタイプのポケモンが苦手だけど、それを考慮してのハガネールの"ステルスロック"だ。"ステルスロック"はほのおタイプやひこうタイプなどのいわタイプが弱点のポケモンには特によく効く。バクフーンは"ステルスロック"で最初から無視できないダメージを負わされることになった。

 

【ハガネールいい仕事したよなぁ】

【なるほど、はがね統一の弱点を補うためのステロか】

【カレンちゃんはかしこいなぁ】

【勉強になる】

 

「バクフーン、"かえんほうしゃ"!」

 

 バクフーンの口から炎が放たれ、ルカリオに迫る。耐久力があまり高くないルカリオに当たれば大きなダメージを受けることになる。

 

「ルカリオ、避けながら接近して!」

 

 だけど、私のルカリオにはそんな単純な攻撃は当たらない。素早い動きと軽い身のこなしでスルスルと"かえんほうしゃ"を掻い潜り、ルカリオはバクフーンに一気に接近する。

 

「"ボーンラッシュ"!」

 

 ルカリオの両手にエネルギーが集まって骨の形を作る。"ボーンラッシュ"は、じめんタイプの技なのでほのおタイプのバクフーンには効果抜群だ。

 バクフーンはたまらず"かえんほうしゃ"を中断して回避に専念する。しかし、何度も振るわれるルカリオの連撃の全てを回避しきることは叶わず数発の攻撃がバクフーンに命中した。

 

【ルカリオの動きすごいな】

【身のこなしからわかる練度の高さ】

【ラッシュラッシュラッシュ!!】

【バクフーンきついか?】

 

「バクフーン、"カウンター"で迎え撃ちなさい!」

 

 お母さんの指示を受けたバクフーンは"カウンター"の構えを取る。"カウンター"は相手の接近攻撃にタイミングを合わせて反撃する技だ。技の終わりに上手く合わせることで大きなダメージを狙うことができる。だけど、失敗すれば無防備に攻撃を受けてしまうだけの技。バクフーンはそんな技を恐れる事もなく使ってルカリオに反撃を加えようとしている。

 

「ルカリオ! 上手く立ち回って!」

 

 ルカリオもみすみすと"カウンター"をもらうわけはなく、フェイント(技じゃない方)などを駆使して"カウンター"をくらわないように上手く立ち回り、お互いがお互いを牽制しあう読み合いに移行する。

 

「バクフーン、"えんまく"」

 

 お母さんはルカリオに"カウンター"を当てるのが難しいと判断したのか、バクフーンに新しい指示を出した。バクフーンの周りにもうもうと黒い煙が立ち込めてルカリオとバクフーンを何も見えない煙の中に隠す。

 

「ルカリオ、"しんそく"で離れて!」

 

 視界の見えない"えんまく"の中で攻撃を受けるわけにはいかない。私はすぐさまルカリオに撤退するように指示を出す。私の近くまで戻ってきたルカリオは注意深くバクフーンが隠れている"えんまく"を睨む。

 

【バクフーンどうなってるの?】

【えんまくで全く見えねぇ】

【えんまくってこんな広がるのか?】

【バクフーンの練度が高いからやろなあ】

 

 しかし、どういうわけかいつまで経ってもバクフーンはおろか"かえんほうしゃ"の一撃も飛んでこない。あまりにも静かな状況が不気味だ。バクフーンの姿もお母さんの姿も煙に隠れて見えないせいで、何をしてくるかわからない。奇襲には注意しないと……

 

 そんなときだった、ルカリオの状態を確認しようと視線を向けたとき、ルカリオの足元の地面が不自然に動いたのは────

 

「っ! ルカリオ、足元!」

 

 しかし私の指示は間に合わず、地面から現れたバクフーンの攻撃を許してしまった。"あなをほる"だ。じめんタイプの技はルカリオにも効果抜群で、その直撃を受けてしまい一気に窮地に立たされた。"えんまく"を利用して身を隠して"あなをほる"による奇襲。鮮やかな作戦だったけど、受ける側からしたら堪ったものではない。

 

 だけど、それで崩れる私のルカリオじゃない。仰け反る身体を踏ん張り"あなをほる"を受けながらもルカリオはバクフーンの腕を掴んだ。ルカリオの意地と起死回生の一手だっ! 

 

「ルカリオ! "インファイト"ッ!!」

 

 バクフーンを左手で掴んで離さずゼロ距離から"インファイト"を繰り出すルカリオ。バクフーンも振り解こうと炎を出しながら暴れるが、ルカリオはバクフーンに何をされても左手だけは決して離さず、ノーガードで攻撃を続ける。やがて、ルカリオとバクフーンのノーガードの乱撃が終わると、2匹のポケモンは同時に地面に倒れ伏した。

 

【すげええええええええ!!】

【えんまくが晴れたと思ったらやべぇ殴り合いが始まった】

【ルカリオのガッツがすごすぎる】

【えんまくとあなをほるの奇襲もすごいな】

【ルカリオかっこよすぎて草】

【あんなの簡単にできることじゃないぞ】

【ルカリオもバクフーンもお疲れ様、ナイスファイトだった】

 

「ルカリオ! ありがとう、お疲れ様」

 

 バクフーンと相討ちになって倒れたルカリオの表情はどこか満足そうだ。ルカリオはリオルの頃からバトルが大好きなポケモンだった。今回のバトルはルカリオにとって幸せな時間だったのかな。なんだか、その表情を見てると気が抜けてしまうが、まだバトルは終わっていないのだから気を引き締め直さないと。

 

「バクフーン、お疲れ様」

 

 バクフーンを労ってボールに戻したお母さんは少し悔しそうな顔をする。

 

「ルカリオ、すごかったわね。あんなことしてくるなんて」

 

「私もびっくりした」

 

【俺もびっくりした】

【ワイも】

【私も】

【それがしも】

 

 今回のルカリオの活躍は、まさしく意地だ。意地と根性による勝利。めっちゃかっこよかった。

 

「お互いに次が最後、あと1匹よ。私に勝てるかしら?」

 

 お母さんはそう言って不敵に笑う。

 

「今日は勝てる気がする……!」

 

 お母さんにはいつも負けてばかりだけど、今日はいつもと違う気がする。ハガネールの頑張りとルカリオの意地のおかげで、私よりも練度の高いお母さんのポケモン相手に互角に渡り合っている。だから今日は絶対勝てる。根拠はないけど、きっとそう。

 

「じゃあ、この子に勝ってみなさい。──バンギラス!」

 

「最後っ! 勝とう! ──トトちゃん!」

 

 

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