【完結】テイルズ オブ ファンタジア ~交差する歴史~ 作:鉄鎖亡者
一部加筆はありますが、あくまで一部で大幅な変更はありません。
少しでも読み易いと、思って下されば幸いです。
貴女に贈る手紙
親愛なる友へ。
これを読んでいるという事は、きっと墓前に置いた手紙を見つけてくれた事でしょう。
四隅に金色の刺繍を入れておいたので、さぞ見つけ易かったろうと思います。
昨日相談した通りに事が運んでいれば、その時、私は既に遥か遠い世界へ旅立っているでしょう。
こう書くと、あるいは私が死への旅路を行くかのようですが、ご安心ください。
きっとその時、私は幸福の只中にいるはずです。
そうであることを祈ります。
それにしても、改めてこうしてペンを取ると、何を書いてよいものか迷ってしまいます。
字も汚くて恥ずかしいですし、大変読み辛く、お目汚ししている事でしょう。
こんな事なら、もっと字の練習をしておくんでした。
それに、ペンを握ってから早くも、蝋燭が一本消費されようとしていています。
たったこれだけの量で、どれだけ時間が掛かっているか、それで察して貰えると思います。
その姿を想像して苦笑される様が、ありありと見えてくるようかのです。
普段からペンを握る習慣を持てば良かったと、今さらながらに後悔しています。
もっとも、そんな柄じゃないことは自分が一番よく分かっているのですが……。
さて、まずは二人の親友へ最大級の感謝を。
私がここで未来に期待を寄せて胸踊らせていられるのも、全ては二人の存在あってこそです。
二人に出会うことがなければ、二人の助けがなければ、きっと私は全てを諦めていたことでしょう。
本当に、ありがとう。
感謝の気持ちと言葉については、まだまだ書いていられるような気がしますが、それだとどれだけ紙とインクがあっても書き足りません。
程々にして、止めておきます。
しかし、それとは別に一つだけ、恨み言のような愚痴を書かせてください。
ねぇ、一体いつの間に墓石なんて用意してたの?
あれ本当に驚いたから。
碑文についても既に彫ってあったし、さぞ二人で盛り上がって決めたんだろうね。
ここより旅立つとか、愛する男の、とかっていう文言を提案したのはどっちから?
あの文言には覚えがあるから今さら破棄はできないだろうけど、それでも言わせて。
あれ本当に恥ずかしい。
まだ取り止めも無く恨み言は溢れて来ますが、インクの無駄になりそうなので、この辺で……。
ええ、それにしても思うことは、もう一人の親友についてです。
彼女は自分の意見を大きく主張するようになりました。
昔はもっと控えめで、奥ゆかしい感じだったのですが、やはり逆境に置かれると人間変わるというものなのかもしれません。
それに今となっては商魂逞しく活発になり、思い返せば再会したあの時から、その片鱗は見えていたように思います。
彼女にも変わらぬ元気と健康を、心から祈っています。
ああ、ご安心を。
彼女にもこれとよく似た内容の手紙を送ってあります。
大きな違いは、たぶん一つだけ。
恨み言の長さでしょうね。
この手紙は墓地が完成して、墓石に通うようになる直前に書きました。
最初は何も話さずこの手紙だけで済ませるつもりだったのです。
しかし、それではあまりに不誠実かと思い、ああして自分の夢と決意と我儘を聞いてもらいました。
私が平身低頭お願いしたことを快く頷いて下さり、ここでまた改めてお礼を言わせてください。
ありがとうございます。
話は変わりますが、あなたならクレスやチェスター、そしてミントにも再会する機会がありますね。
トーティス村の人たちに会うことがあれば、私は元気だったと幸せに暮らしていたと伝えてください。
特に両親には本当の事が言えず、また突然の旅立ちに失踪と取られても仕方がないような状態でした。
クレスに自分の至らなさを補って貰えるよう頼みましたが、良ければ力添えなどしてやってください。
それでは最後に一つ。
既に何度も確認し、話し合った内容のことですが、あくまで念の為、して欲しいことを書いておきます。
あの日、世界樹が復活した後、ダオスは五十年後の未来に時間転移しました。
その時はもう再び会わない方がいい、という話をしていましたが、その約束を破ってください。
そして五十年たったその日に、この日あの墓前へ戻るようにお願いして欲しいのです。
日付は手紙の末尾を伝えて貰えれば大丈夫だと思います。
私の決意と、その夢に付き合わせてしまってごめんなさい。
どうぞ、よろしくお願いします。
書けないと言いつつ、気が付けば、余りに長くなってしまいました。
まだまだ語り尽くせる気がしますが、そろそろこの辺りでペンを置こうと思います。
朝はまだ冷えます。夏風邪など引きませんよう、お気をつけください。
永遠の別れ、されど心は引き離されず。
あなたの友より。
アセリア歴4210年 七月十七日