【完結】テイルズ オブ ファンタジア ~交差する歴史~ 作:鉄鎖亡者
宿に帰り、取っていた部屋に入る前から、ウィノナはホクホク顔だった。
宿代節約の為、ダオスとは同室を取っているが、ウィノナはそんな事も気にせずベッドに腰掛ける。
そうして、壊れ物を扱うように硬貨の入った袋を、その上に置いた。
大道芸による収入は大きかった。
何をするにもお金は掛かるもので、クレス達を探しに行きたくても、その現実が邪魔をしていた。
しかし、こうして路銀が出来た今、障害はない。
(とは言っても、クレス達って、どこにいるのさ……?)
ウィノナがこうして遠くに飛ばされたのだから、クレス達だって何処か遠くに飛ばされた違いない。
そう思ってハタ、と止まる。
(──飛ばされた)
そう、飛ばされた──より正確に言うのなら、転移させられたのだ。
モリスンの法術によって。
モリスンはあの時、なんと言った。
状況は
モリスンも焦りを隠せず、滑舌が悪かった。
早口で
その時の台詞が、ウィノナの脳裏に甦る。
(……ある場所へ、飛ばす? まさか本当に世界の裏側まで飛ンだって?)
モリスンの発言の直後にあった、発光と視界の暗転。それは一体何を意味している。
気が付くと地下墓地から一転、古城にいた理由は──。
どこか遠くの古城へ飛ばされ、魔王と旅を共にするのと、魔王によって昏倒させられ夢見ているのと、果たしてどちらが現実的だろうか。
「結論、これはやはり夢である」
「は……?」
突然ウィノナの口から出た奇妙な発言に、ダオスも思わず瞠目した。
しかし、そんなダオスの様子は、ウィノナの視界には入っていない。
(そうだよ、夢だとすると全ての辻褄が合う。……さぁ早く目覚めよう。いつもより
目覚めろぉ、目覚めろぉ、と低く呟きながら頭を抱えるウィノナに、ダオスはおずおずと手を差し伸ばす。
しかし、その肩に触れる前に止まり、差し伸ばしたが直ぐに引っ込め、再び差し伸ばしては引っ込める、という事を繰り返していた。
完全に珍獣扱いである。
何はともあれ、目が覚めない。覚めるはずもない。
チクショウ、と呟いて、ウィノナは顔を上げた。
上げて、見たこともない表情をしたダオスと目が合った。
その手はふらふらと二人の間を行き来しており、何やら危ない雰囲気を感じさせた。
「どうしたの、ダオス?」
「ああ、いや……。そなたの……いや、何でもない」
ふぅん、と嫌に歯切れの悪い言い分に疑問を持ちながらも、ウィノナは取りあえず頷いた。
重いものが胸に圧し掛かったままだが仕方ない、とウィノナは腹を決める。
今はとにかく、次の方針を決めなければならなかった。
ウィノナ自身どこへ行けばいいのか検討もつかないが、それは果たしてダオスにも言える事だろうか。
今まで積極的に口にしなかったから気に留めなかったが、あるいは、ダオスにも行きたい場所──明確な目的地があるのではないだろうか。
「ねぇ、ダオスに行きたい場所ってないの?」
これまでの付き合いは、決して長いとは言えない。
それでもダオスとウィノナの関係は、他人と言うほど希薄でもなかった。
お互いがお互いを好ましくも思っていたし……、だからだろう。
ある程度のことは語っても良い、と判断してもらえたようだ。
「私が求めているのはマナの恵みだ。大樹カーラーンより
「大っきい樹を探してるの?」
「単に樹齢を重ねた大木に興味はない。必要なのは聖樹だ」
へぇ、とウィノナは曖昧に頷いた。
「聖樹様ってことなら、ウチの村の近くにあるよ。余所者は誰も近づけさせないくらい、大事にしてるンだ」
「ふむ……」
「ダオスが望む聖樹様かどうか分からないけど、でも……もしかしたらって事もあるかも」
「……そうだな、是非行ってみたいものだが」
どうせ手掛かりも皆無、足掛かりとして選ぶなら十分だろう。
だが、ここから故郷トーティス村への道のりは、あまりに遠い。
船を使えれば旅路も楽になるのだが……。
そう思い、本日の成果の中身を確認すれば、何とか大丈夫だろうと思える金額が入っている。
「それじゃ、明日は朝から港だね。出航日や航路なんかも確認しなくっちゃ」
言うや否や、ウィノナは靴をポイポイと投げ捨てて、頭からベッドの布団を被って丸くなる。
「お休みぃ、ダオスー」
手だけ布団の頭から出すと、ふりふりと振ってすぐに引っ込んだ。
ダオスは小さく笑んで、その背にお休み、と声をかけると、自らもまた自分のベッドの中に入った。