【完結】テイルズ オブ ファンタジア ~交差する歴史~ 作:鉄鎖亡者
「──モリスンさん!」
ウィノナは思わず声を上げた。
通り過ぎようとするその横顔を見て、思わず名前を呼んでしまったのだが、しかし向けられた顔は、怪訝な表情で返された。
「……うん? ……誰だ?」
「モリスンさんも、この時代に来てたなンて! あぁもう、ホント良かった! クレス達も一緒ですか?」
ウィノナは顔を綻ばせながら近づく。
だが、その言葉は相手に届いておらず、モリスンらしき男は、途端に訝しむような顔つきになった。
「待ってくれ、誰と一緒だって? 君とは初対面だと思ったが……」
「何言ってるンですか。アタシですよ、ウィノナです」
男は首を傾げ。考え込むような仕草を見せた。
しかし、しばらくして、やはり顔を横に振った。
「君の表情と口ぶりから、単に私が忘れてるだけかと思ったが……、やはりどうにも記憶にない。誰かと勘違いしていないか?」
ウィノナの近づけていた歩みが鈍る。
さわり、と風がそよいだ。
そのごく軽く吹いた風が、ウィノナを押し返すように、足取りを重くさせた。
「……え? トリニクスさん、……ですよね?」
「いや、私の名前はエドワードだ」
ウィノナは眉根を寄せて困惑する。
目の前の男は、ウィノナの知るモリスンに見える。
彼とは知り合ったのもつい最近で、一緒にいた時間もごく僅かなものだった。
それでも、目の前の人物がモリスン──トリニクスと別人とは思えない。
それほど、目の前の人物はよく似ていた。
「しかし、そうすると分からないことがある。君は私の事をモリスンと呼んだ。名は違うのに、姓は合ってる。……これはどうしたことだ?」
「え……、っと」
ウィノナの困惑は止まらない。
そうは言われても、自分にだって分からないのだ。
どう答えたものか迷っていると、エドワードが続けて言った。
「それに先ほど、君はこの時代、と言ったね。それはどういう意味かな?」
ウィノナは即答できず、しばらく何を言えばよいのか考え込む。
それから、意を決して話し始めた。
ウィノナには、もはや嘘を考えて発言する余裕などなかったし、モリスンという姓を持つ男が、自分と無関係とも思えなかったからだ。
「信じてもらえるか分かりませンが……」
そう前置きして、ウィノナは未来から来たことを話した。
そうして、大部分を端折って一通り話し終えると、エドワードとダオスは驚愕した息を漏らす。
ただし、二人の驚きは種類は違う。
「言ってることは本当なのか!?」
エドワードは興奮した様子を見せたのに対し――。
「一体どうやって?」
ダオスの声は冷静だった。
ウィノナは隠すことなく全てを語る。
「アタシは百年後の未来から、──多分あなたの子孫の術か何かによって、この時代に飛ばされました」
ダオスを倒す手段を探せと言われた事は、この際言わないでおく。
「百年後……。証拠はあるのか?」
「そういう物は、ありませン……」
「それに私の子孫が時間転移を? 本当なら素晴らしいことだが、じゃあ理論は説明できるのか?」
「それも……、出来ませン……」
「話にならんな」
モリスンはあからさまに興醒めした様子で、
だからウィノナは、自分の持つ能力──予知夢のことを伝えた。
とにかく足止めし、話を聞いて貰うには、それしかないと思った。
これを逃すと、ウィノナにはもう手掛かりがない。
「ほぅ? 予知夢とはまた眉唾モノが出て来たな。じゃあ、何か客観的に分かりやすい、未来に起こる事を教えてくれ」
「そう言われても……」
最近ウィノナが視た夢と言えば、リアとダオスに関する事だけだ。
リアのことは客観的に説明できることでもないし、ダオスのことは、そもそも説明すらしたくない。
ウィノナは結局、苦々しく首を振ることしかできなかった。
「意味のない時間だった……」
モリスンが吐き捨て、立ち去ろうとした時、それまでジッとウィノナを見つめていたダオスが口を開いた。
「ウィノナ、そなたにはこの男の助力が必要なのだな?」
「え……?」
「この男を繋ぎ止め、興味を持たせる事が目的なら、私にはその力がある」
「ダオス、だめ!」
ウィノナは咄嗟に叫んだが、ダオスは意に返すことなく力を使う。
そしてその直後、光に包まれて消えてしまった。
「何だ今のは? 彼は一体……?」
呟くモリスンに、ウィノナは何も言えない。
それどころか、どうして良いかすら分からなかった。
ダオスは時間転移したに違いない。
それがウィノナの助けになると信じて。
しかしそれは、ウィノナにはとても危うい事のように思われた。
今の内に何でもない目眩ましだ、と嘘をついて引き離すべきか。
先程までのウィノナ同様、証明できない事なのだと。
どうしたものか逡巡し、ようやく言おうと決めた時、眩い光と共にダオスが現れた。
「君は一体……? 今のは何が、どうなったんだ……?」
目の前で起こった奇妙な現象に、モリスは目を白黒させる。
その様子を無視するように、ダオスはまるで、路傍の石を蹴り上げるような気楽さで言い放った。
「一分前の過去からここに来た。──私には時間を移動する力がある」