【完結】テイルズ オブ ファンタジア ~交差する歴史~ 作:鉄鎖亡者
そこからモリスンの態度は一変し、はるかに友好的になった。
研究肌の強いモリスンは、好奇心の赴くまま、ダオスへ根掘り葉掘りと質問をぶつける。
対してダオスは冷ややかで、質問に答えることに熱心ではなかった。
曖昧な返事を繰り返すような有様だったが、それでもモリスンの熱意は止まらない。
ウィノナの事といえば、彼の眼中から完全に消えていた。
そうしている内に時間が経ち、太陽が中天を過ぎる頃、モリスンはようやく自分の用事を思い出した。
実は同盟国に請われ、技術提供する為に出立する準備の最中だったという。
「今、ミッドガルズでは、大規模な研究が行われていてね。私はそこへの参加を求められている。だからすぐにでも、この国を発たねばならない」
意味するところは分からないが、ダオスはとりあえず頷いた。
「そこで、どうだろうか。私はまだ君の話を聞かせて欲しいし、私の研究内容についても聞いて貰いたい。急ぎの旅でないなら、途中まででも同行しないか?」
「……確かに、急ぎの旅という訳ではない。旅の目的も、今となっては見失いつつある。……かと言って、彼女の意見を無視してまで付き合う義理もない」
ダオスはウィノナに優しい視線を向けた。
話に全く付いていけなくなっていたウィノナは、何となく気まずい思いで肩を竦める。
「うぅむ……、そうか。確かに、あまりに一方的な申し出だった。それで……あぁ、ウィノナ。旅の目的を、聞かせてもらっても構わないか?」
「そんな大したモノではないンですけど。……ダオスの助けになりたい。故郷に帰してあげたい……」
ウィノナの吐露した思いに、ダオスは慈しむようにウィノナを見つめ、それから悲しむように目を細めた。
無論、ウィノナとしても、それだけが旅の目的ではない。
当初持っていた、ダオスを魔王にしない理由も捨ててはいなかった。
自分の目的よりダオスの目的を優先したいのは、大樹の前で項垂れたダオスが、眼に焼きついて離れないからだ。
「マナがあったら、……ううん、何て言えばいいんだろう。マナや精霊に詳しい人がいたら、話を聞いてみたい。今の旅の目的は、そんな曖昧な感じで……」
ウィノナが言うと、モリスンは顔を綻ばせた。
「だったら、丁度いい。一緒に行かないか」
ミッドガルズでは、大量のマナを活用する技術が開発中で、正にその為にモリスンは出立するらしい。
「まぁ、多少のキナ臭さは感じているがね」
「マナを活用するとは、どういうことか」
ダオスが訊くと、詳しいことは分かってないが、とモリスンは断りを入れてから続ける。
「人間にも、魔術を使えるようにする技術。その為にマナを一箇所に集中させる、という技術の開発が第一段階。集中させたマナを、生活向上の為に使用するのが第二段階。これを確立させるのが目的、とのことだが……、相手は軍事国家だ。どうだかね……」
説明を終えて渋面を作ったモリスンとは反対に、ウィノナの顔は明るかった。
もしもさ、とウィノナは語気を強める。
「もしも、その大量に集めたマナを、あの聖樹様に与えたらどうなるかな?」
ダオスはハッとして、ウィノナの顔を見つめ返した。
それが可能なら、死に行く大樹を蘇らせることが可能かもしれない。
一つの所に集めて保管、保存できる技術は、大樹の復活に一役買うに違いない。
行ってみる価値はある、とダオスは判断した。
「だが、そこまで私達に話して良かったのか」
「良くはない。だが、君を引っ張りこめるなら安いものだ。君の持つ時間転移能力とその理論には、それだけの価値がある。……しかし、一般の人間が関わることは難しい」
そう言ってウィノナを見やるモリスンに、ウィノナは表情を暗くした。
ダオスも珍しく眉根を寄せ、不快感を露わにしている。
「何も単に、一般人だからと邪険にしているのではない。危険なのだ」
モリスンは心配している素振りをしてはいたが、学者肌の好奇心を優先していることは明らかだった。
それを抜きに考えても、連れて行くなら分かりやすく益が出る方がいいに決まっている。
あからさまな態度を見せて、拒絶している訳ではないものの、しかしウィノナにも同行させる利を、提供できる訳でもなかった。
とはいえ、ダオスとしてもウィノナを置き去りにするつもりはない。
ダオスはウィノナの顔を窺い、そしてモリスンへ顔を向けた。
「ウィノナが共に行けないというのであれば、この話は無かった事にしたい」
「……ダオス!? せっかくの機会だよ?」
自分のせいで、話が流れしまうのは心苦しい。
それでも離れ離れにならず、気にかけてさえくれるのは素直に嬉しかった。
モリスンは腕を組み、ウィノナとダオスを交互に見やる。
頭の鼻を掻き、眉根を寄せて考え込んだ後、重苦し気に頷いた。
「……分かった、ミッドガルズ行きについては、どうにかしよう。だが無論、ウィノナが研究所に入る事のは無理だ。同行については、家族扱いにでもすれば、何とかなると思う」
ウィノナは喜びも露に手を叩く。
しかし、とモリスンは表情を改めて、言葉を続けた。
「条件もある」
「……な、何でしょう」
ウィノナは身構えたが、用があるのはそっちだ、とモリスンはダオスを見る。
「時空間移動の理論について、色々教えて欲しい。先ほどはろくに返事を貰えなかったが、少しくらいなら良いだろう? 最近、どうにも煮詰まっていたんだ」
「その程度なら構わない。ただし、術そのものを教えることは出来ないし、たとえ教えようと、実践は無理だろう」
それで十分だ、とモリスンは笑った。
「今はとにかく理論構築を最優先さ、よろしく頼む」
それからは、つつがなくミッドガルズに向かうことが決定した。
モリスンにも準備があるので、出発は三日後という事になり、その場はとりあえず解散となった。
※本作の独自設定
ここで登場するモリスンさんは、どちらかというと、書籍版に近い性格をしています。
ゲーム本編だと、バジリスクの鱗を大量に要求してくるだけの(?)、穏やかなおじさんなのですが、書籍版だと研究肌で周りの見えない学者という感じです。
学術的好奇心があまりに強く、ウィノナと事前に知り合いだった彼は、予知夢についても根掘り葉掘り聞く代わりに、事態の解明を請け負っていたようです。
本作ではここで初めて出会ったので、当然そういう関係はなし。
同様に好奇心が強いのは変わないものの、原作の性格を反映して、幾らかマイルドになっています。