【完結】テイルズ オブ ファンタジア ~交差する歴史~   作:鉄鎖亡者

28 / 96
アルヴァニスタで出会う奇運 その3

 

 そこからモリスンの態度は一変し、はるかに友好的になった。

 研究肌の強いモリスンは、好奇心の赴くまま、ダオスへ根掘り葉掘りと質問をぶつける。

 

 対してダオスは冷ややかで、質問に答えることに熱心ではなかった。

 曖昧な返事を繰り返すような有様だったが、それでもモリスンの熱意は止まらない。

 

 ウィノナの事といえば、彼の眼中から完全に消えていた。

 そうしている内に時間が経ち、太陽が中天を過ぎる頃、モリスンはようやく自分の用事を思い出した。

 

 実は同盟国に請われ、技術提供する為に出立する準備の最中だったという。

 

「今、ミッドガルズでは、大規模な研究が行われていてね。私はそこへの参加を求められている。だからすぐにでも、この国を発たねばならない」

 

 意味するところは分からないが、ダオスはとりあえず頷いた。

 

「そこで、どうだろうか。私はまだ君の話を聞かせて欲しいし、私の研究内容についても聞いて貰いたい。急ぎの旅でないなら、途中まででも同行しないか?」

 

「……確かに、急ぎの旅という訳ではない。旅の目的も、今となっては見失いつつある。……かと言って、彼女の意見を無視してまで付き合う義理もない」

 

 ダオスはウィノナに優しい視線を向けた。

 話に全く付いていけなくなっていたウィノナは、何となく気まずい思いで肩を竦める。

 

「うぅむ……、そうか。確かに、あまりに一方的な申し出だった。それで……あぁ、ウィノナ。旅の目的を、聞かせてもらっても構わないか?」

 

「そんな大したモノではないンですけど。……ダオスの助けになりたい。故郷に帰してあげたい……」

 

 ウィノナの吐露した思いに、ダオスは慈しむようにウィノナを見つめ、それから悲しむように目を細めた。

 

 無論、ウィノナとしても、それだけが旅の目的ではない。

 当初持っていた、ダオスを魔王にしない理由も捨ててはいなかった。

 

 自分の目的よりダオスの目的を優先したいのは、大樹の前で項垂れたダオスが、眼に焼きついて離れないからだ。

 

「マナがあったら、……ううん、何て言えばいいんだろう。マナや精霊に詳しい人がいたら、話を聞いてみたい。今の旅の目的は、そんな曖昧な感じで……」

 

 ウィノナが言うと、モリスンは顔を綻ばせた。

 

「だったら、丁度いい。一緒に行かないか」

 

 ミッドガルズでは、大量のマナを活用する技術が開発中で、正にその為にモリスンは出立するらしい。

 

「まぁ、多少のキナ臭さは感じているがね」

 

「マナを活用するとは、どういうことか」

 

 ダオスが訊くと、詳しいことは分かってないが、とモリスンは断りを入れてから続ける。

 

「人間にも、魔術を使えるようにする技術。その為にマナを一箇所に集中させる、という技術の開発が第一段階。集中させたマナを、生活向上の為に使用するのが第二段階。これを確立させるのが目的、とのことだが……、相手は軍事国家だ。どうだかね……」

 

 説明を終えて渋面を作ったモリスンとは反対に、ウィノナの顔は明るかった。

 もしもさ、とウィノナは語気を強める。

 

「もしも、その大量に集めたマナを、あの聖樹様に与えたらどうなるかな?」

 

 ダオスはハッとして、ウィノナの顔を見つめ返した。

 それが可能なら、死に行く大樹を蘇らせることが可能かもしれない。

 

 一つの所に集めて保管、保存できる技術は、大樹の復活に一役買うに違いない。

 行ってみる価値はある、とダオスは判断した。

 

「だが、そこまで私達に話して良かったのか」

 

「良くはない。だが、君を引っ張りこめるなら安いものだ。君の持つ時間転移能力とその理論には、それだけの価値がある。……しかし、一般の人間が関わることは難しい」

 

 そう言ってウィノナを見やるモリスンに、ウィノナは表情を暗くした。

 ダオスも珍しく眉根を寄せ、不快感を露わにしている。

 

「何も単に、一般人だからと邪険にしているのではない。危険なのだ」

 

 モリスンは心配している素振りをしてはいたが、学者肌の好奇心を優先していることは明らかだった。

 

 それを抜きに考えても、連れて行くなら分かりやすく益が出る方がいいに決まっている。

 

 あからさまな態度を見せて、拒絶している訳ではないものの、しかしウィノナにも同行させる利を、提供できる訳でもなかった。

 

 とはいえ、ダオスとしてもウィノナを置き去りにするつもりはない。

 ダオスはウィノナの顔を窺い、そしてモリスンへ顔を向けた。

 

「ウィノナが共に行けないというのであれば、この話は無かった事にしたい」

 

「……ダオス!? せっかくの機会だよ?」

 

 自分のせいで、話が流れしまうのは心苦しい。

 それでも離れ離れにならず、気にかけてさえくれるのは素直に嬉しかった。

 

 モリスンは腕を組み、ウィノナとダオスを交互に見やる。

 頭の鼻を掻き、眉根を寄せて考え込んだ後、重苦し気に頷いた。

 

「……分かった、ミッドガルズ行きについては、どうにかしよう。だが無論、ウィノナが研究所に入る事のは無理だ。同行については、家族扱いにでもすれば、何とかなると思う」

 

 ウィノナは喜びも露に手を叩く。

 しかし、とモリスンは表情を改めて、言葉を続けた。

 

「条件もある」

 

「……な、何でしょう」

 

 ウィノナは身構えたが、用があるのはそっちだ、とモリスンはダオスを見る。

 

「時空間移動の理論について、色々教えて欲しい。先ほどはろくに返事を貰えなかったが、少しくらいなら良いだろう? 最近、どうにも煮詰まっていたんだ」

 

「その程度なら構わない。ただし、術そのものを教えることは出来ないし、たとえ教えようと、実践は無理だろう」

 

 それで十分だ、とモリスンは笑った。

 

「今はとにかく理論構築を最優先さ、よろしく頼む」

 

 それからは、つつがなくミッドガルズに向かうことが決定した。

 モリスンにも準備があるので、出発は三日後という事になり、その場はとりあえず解散となった。

 





※本作の独自設定
ここで登場するモリスンさんは、どちらかというと、書籍版に近い性格をしています。
ゲーム本編だと、バジリスクの鱗を大量に要求してくるだけの(?)、穏やかなおじさんなのですが、書籍版だと研究肌で周りの見えない学者という感じです。

学術的好奇心があまりに強く、ウィノナと事前に知り合いだった彼は、予知夢についても根掘り葉掘り聞く代わりに、事態の解明を請け負っていたようです。
本作ではここで初めて出会ったので、当然そういう関係はなし。
同様に好奇心が強いのは変わないものの、原作の性格を反映して、幾らかマイルドになっています。
 
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。