【完結】テイルズ オブ ファンタジア ~交差する歴史~ 作:鉄鎖亡者
クレスを一刀両断にする勢いで、振り下ろされた斬り下ろしは、寸前の所で受け止められた。
一秒に満たない鍔迫り合いから突き飛ばし、剣を手首で転がして剣先で突き、払い、牽制しつつ距離を測る。
クレスは敵と己の間合いを、正確に把握してから剣を斬り上げた。
「虎牙破斬!」
下から持ち上げるような斬り上げに、メイアーは後ろに避ける。
だが、それだけで終わらない追って迫る斬り下ろしが、メイアーの肩を叩いた。
マントの下に隠していた装甲が、クレスの一撃を逸らす。
「クレス、殺すなよ! 無力化しろ!」
チェスターはそう言いながら、矢を放つ。
クレスの着地時、無防備な隙が生まれる瞬間に合わせた矢の一撃が、メイアーに反撃を許さない。
丁度踏み込み掛けた動きで、矢の牽制で止まる。
チェスターは立て続けに矢を放ち、更にメイアーを追い込む。
最初から当てるつもりのない、自由に行動させない為の牽制攻撃だが、クレスもよく心得ているもので、矢の隙間を縫ってメイアーに接近する。
だがそこで、上段から一撃を、と見せかけて軌道をずらし、膝先を斬りつけた。
「ぐぁ!」
声を上げて姿勢を落とした所に、チェスターの追撃が飛ぶ。
「凍牙!」
矢は足の爪先に命中し、一瞬で凍らせて船の床に縫い付ける。
「今だクレス! 締め落とせ!」
声を合図にクレスは剣を手放し、手馴れた動きで背後に回る。
首と頭に腕を回し、それで完全に極めた。
ろくに動けないメイアーは抵抗らしい抵抗も出来ず、幾らかもがいた後、力なく腕を落とした。
クレスは拘束した腕を解いて、ゆっくりと床に身体を横たわせる。
足の一部が凍りついている為、多少不恰好な形だったが、今は仕方ない。
だが、安心するのも束の間、メイアーの頭付近から、甲冑を身に纏った魔物が飛び出してきた。
チェスターは即座に反応して狙い撃つ。
敵に一切の動きを許さないまま、その一矢が突き刺さった。
「轟天!」
矢の直撃と同時に、雷が敵の頭上に落ちた。
甲冑を着込んでいる為その効果は高く、その上、一瞬動きが硬直した。
その隙にクレスが剣を拾い上げ、持ち上げる勢いのまま横薙ぎする。
首に刺さった剣は半分ほどまで食い込んで止まったが、続くチェスターの一撃がとどめとなった。
兜の隙間を縫い、チェスターの矢は眼球を射抜いている。
魔物はがくりと項垂れ、全身を弛緩させると、霧とも灰ともつかない物質に姿を変え、崩れ落ちるように消えていった。
チェスターは油断なく弓を構えたまま、後ろの船員に顔を向けずに怒鳴りつける。
「俺達の船室に行って、人を呼んできてくれ! 傷を癒せる奴がいる! ──早く行って来い!」
弾かれたように船員の一人が飛び出し、クレスも剣を構えたまま、ミントが来るまで油断なく警戒を維持していた。
しばらくして、クラースを先頭に仲間達が駆けつけてきた。
「クレス、大丈夫か!?」
「僕達は大丈夫です。言ってた通り、メイアーさんに魔物が憑り付いていました」
「ダオスの手先に違いないだろう。アルヴァニスタの内情を知る者を害そうと憑り付き、そこから更に知った私達を、同士討ちにして殺そうとしたのだと思う」
「……ミント、メイアーさんの傷の具合は?」
凍った足は解凍され、治療を始めていたミントは、クレスへ僅かに顔を向ける。
「はい、大丈夫だと思います。致命的な傷もありませんし、足の傷もすぐ良くなりますよ」
クレスはホッと息を吐いた。
「良かった……。どうなることかと思ったけど」
「……だな。俺の弓で負った傷で、一生歩けなくなっちまったら申し訳が立たねぇ」
「状況を考えれば、死んでしまってもおかしくなかった。大金星だな」
「かもしれねぇけど……」
結果よければ良しか、とチェスターは頭の後ろを掻いた。
「いや、それにしても驚いた。まだ若いっていうのに、あれだけの弓の腕だ! それに剣士の少年も! 後ろから矢が飛んでくるというのに、まるで物怖じしない。お互いの信頼、剣の腕、可能な限り最小の被害で無力化まで! 君達のような人たちが乗船してくれて助かった!」
船長はべた褒めで、クレス達の方が萎縮してしまう程だった。
褒められるのがむず痒いというのもあるが、それに見合った働きをしていない、と思う為だ。
「ともあれ、送り込んだ刺客が帰ってこない事は、いずれダオスにも知られるだろう。調べれば、返り討ちにした者たちも簡単に判明する。私達も、うかうかしてられないな……」
今までのクレス達は、ダオスにとって見えてない存在だった。
しかし、それが遂に視界の中へ入ったのだ。
明確に命を狙って、刺客を送って来る事も考えられる。
重苦しい沈黙が続く中、船はアルヴァニスタに到着した。