【完結】テイルズ オブ ファンタジア ~交差する歴史~   作:鉄鎖亡者

45 / 96
不意遭遇の悪意 その2

 

 クレスを一刀両断にする勢いで、振り下ろされた斬り下ろしは、寸前の所で受け止められた。

 一秒に満たない鍔迫り合いから突き飛ばし、剣を手首で転がして剣先で突き、払い、牽制しつつ距離を測る。

 

 クレスは敵と己の間合いを、正確に把握してから剣を斬り上げた。

 

「虎牙破斬!」

 

 下から持ち上げるような斬り上げに、メイアーは後ろに避ける。

 だが、それだけで終わらない追って迫る斬り下ろしが、メイアーの肩を叩いた。

 

 マントの下に隠していた装甲が、クレスの一撃を逸らす。

 

「クレス、殺すなよ! 無力化しろ!」

 

 チェスターはそう言いながら、矢を放つ。

 クレスの着地時、無防備な隙が生まれる瞬間に合わせた矢の一撃が、メイアーに反撃を許さない。

 

 丁度踏み込み掛けた動きで、矢の牽制で止まる。

 チェスターは立て続けに矢を放ち、更にメイアーを追い込む。

 

 最初から当てるつもりのない、自由に行動させない為の牽制攻撃だが、クレスもよく心得ているもので、矢の隙間を縫ってメイアーに接近する。

 

 だがそこで、上段から一撃を、と見せかけて軌道をずらし、膝先を斬りつけた。

 

「ぐぁ!」

 

 声を上げて姿勢を落とした所に、チェスターの追撃が飛ぶ。

 

「凍牙!」

 

 矢は足の爪先に命中し、一瞬で凍らせて船の床に縫い付ける。

 

「今だクレス! 締め落とせ!」

 

 声を合図にクレスは剣を手放し、手馴れた動きで背後に回る。

 首と頭に腕を回し、それで完全に極めた。

 

 ろくに動けないメイアーは抵抗らしい抵抗も出来ず、幾らかもがいた後、力なく腕を落とした。

 クレスは拘束した腕を解いて、ゆっくりと床に身体を横たわせる。

 

 足の一部が凍りついている為、多少不恰好な形だったが、今は仕方ない。

 

 だが、安心するのも束の間、メイアーの頭付近から、甲冑を身に纏った魔物が飛び出してきた。

 チェスターは即座に反応して狙い撃つ。

 

 敵に一切の動きを許さないまま、その一矢が突き刺さった。

 

「轟天!」

 

 矢の直撃と同時に、雷が敵の頭上に落ちた。

 甲冑を着込んでいる為その効果は高く、その上、一瞬動きが硬直した。

 

 その隙にクレスが剣を拾い上げ、持ち上げる勢いのまま横薙ぎする。

 

 首に刺さった剣は半分ほどまで食い込んで止まったが、続くチェスターの一撃がとどめとなった。

 

 兜の隙間を縫い、チェスターの矢は眼球を射抜いている。

 

 魔物はがくりと項垂れ、全身を弛緩させると、霧とも灰ともつかない物質に姿を変え、崩れ落ちるように消えていった。

 

 チェスターは油断なく弓を構えたまま、後ろの船員に顔を向けずに怒鳴りつける。

 

「俺達の船室に行って、人を呼んできてくれ! 傷を癒せる奴がいる! ──早く行って来い!」

 

 弾かれたように船員の一人が飛び出し、クレスも剣を構えたまま、ミントが来るまで油断なく警戒を維持していた。

 

 

 

 しばらくして、クラースを先頭に仲間達が駆けつけてきた。

 

「クレス、大丈夫か!?」

 

「僕達は大丈夫です。言ってた通り、メイアーさんに魔物が憑り付いていました」

 

「ダオスの手先に違いないだろう。アルヴァニスタの内情を知る者を害そうと憑り付き、そこから更に知った私達を、同士討ちにして殺そうとしたのだと思う」

 

「……ミント、メイアーさんの傷の具合は?」

 

 凍った足は解凍され、治療を始めていたミントは、クレスへ僅かに顔を向ける。

 

「はい、大丈夫だと思います。致命的な傷もありませんし、足の傷もすぐ良くなりますよ」

 

 クレスはホッと息を吐いた。

 

「良かった……。どうなることかと思ったけど」

 

「……だな。俺の弓で負った傷で、一生歩けなくなっちまったら申し訳が立たねぇ」

 

「状況を考えれば、死んでしまってもおかしくなかった。大金星だな」

 

「かもしれねぇけど……」

 

 結果よければ良しか、とチェスターは頭の後ろを掻いた。

 

「いや、それにしても驚いた。まだ若いっていうのに、あれだけの弓の腕だ! それに剣士の少年も! 後ろから矢が飛んでくるというのに、まるで物怖じしない。お互いの信頼、剣の腕、可能な限り最小の被害で無力化まで! 君達のような人たちが乗船してくれて助かった!」

 

 船長はべた褒めで、クレス達の方が萎縮してしまう程だった。

 褒められるのがむず痒いというのもあるが、それに見合った働きをしていない、と思う為だ。

 

「ともあれ、送り込んだ刺客が帰ってこない事は、いずれダオスにも知られるだろう。調べれば、返り討ちにした者たちも簡単に判明する。私達も、うかうかしてられないな……」

 

 今までのクレス達は、ダオスにとって見えてない存在だった。

 しかし、それが遂に視界の中へ入ったのだ。

 

 明確に命を狙って、刺客を送って来る事も考えられる。

 重苦しい沈黙が続く中、船はアルヴァニスタに到着した。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。