【完結】テイルズ オブ ファンタジア ~交差する歴史~   作:鉄鎖亡者

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真実と疑惑と憶測と その1

 

 港から船でフレイランドへ渡り、降り立って余りの猛暑に、初めから音を上げた。

 

 これまで経験した事のない灼熱の風土は、ただ歩くだけで、容赦なく体力を奪って行く。

 

 砂漠が暑いということは知っていたし、だから、その為の準備も用意していたのだが……。

 

 それでも、気力を削ぐような暑さまでは考慮の外だった。

 額から浮き出る汗を拭うことすら億劫で、顎の下から滴り落ちていくままにしている。

 

 とにかく早く終わってくれ、と誰もが思いながら、足元を見つめて前進していく。

 

「暑いぃ……、チェスターちょっと、凍牙使ってよぉ……」

 

「あぁ? お前の頭に突き刺せばいいのか……? 色んな意味で冷たくなれるぞ」

 

「馬鹿なこと言ってないで、ほらぁ……。早く使いなさいよ……」

 

「お前だって自分で尖った氷柱、魔術で出せんだろ……」

 

「やーよ、疲れるから……」

 

「お前は自分が何言ってんのか、分かってんのか……。俺を怒らせても、これ以上何も出ねぇぞ……」

 

 チェスターとアーチェの掛け合いはいつもの事だが、流石のこの暑さでは、いつもの様な激しさはない。

 

「……ほら、もうすぐ着くから頑張れ……」

 

 クラースも呻くように言って、額の汗を手の甲で拭った。

 帽子のツバを上げながら前方を見ると、地平線の向こうに人工物が見える。

 

 岩と砂ばかりの中にあって、唯一緑が見える場所で、木製の建物が幾つかある。

 

 目的地の、オリーブヴィレッジで間違いないだろう。

 クレスが皆を鼓舞するような声を掛けて、更に一時間後。

 

 疲れた身体を引きずって、それでようやく到着した。

 

 

 

「早く木陰に入りたいぃ……」

 

 村の中に入るや否や、アーチェは夢遊病患者のように、フラフラとヤシの木に近づいていく。

 それをチェスターが肩を掴んで引き止め、クラースが入り口付近に立てられた小屋を指差す。

 

 高床式になっている建物は、見慣れないクレス達からすれば奇妙に映る。

 

 しかしあれは、厳しい暑さを乗り越える知恵なのだと、クラースから解説された。

 地上から建物を離すことで風通しが良くなり、また地熱で家が温まることもなく、暮らす上で随分違ってくるらしい。

 

 その高床式宿屋に入り、熱く刺すような日差しからようやく開放されたクレス達は、崩れるように床に座った。

 

 まだ入り口付近だから邪魔になると思うのだが、どうにも身体が動かない。

 宿屋の主人から水を受け取り、喉を潤すと、それでようやく少しマシになった。

 

 宿の窓はどれも大きく取られており、開け放たれたそこから風がそよぎ入って来て心地よい。

 宿屋の主人も心得たもので、商売の邪魔になりそうだとしても何も言わない。

 

 ただクラースだけは何とか立ち上がり、一泊する代金を払い、多少の色も付けた。

 それで気分を良くした主人は、果物までサービスしてくれた。

 

 

 

 その日はそのまま一泊し、翌日の朝、クレスは何者かが宿を利用しようとする音で目が覚めた。

 ベッドから起き上がれば、既にアーチェ以外は全員起床している。

 

「おはよう、皆」

 

「おはよう、クレス」

 

「おはようございます、クレスさん」

 

 それぞれから挨拶が返って来て、クレスは鎧など装備品を身に付けていく。

 昨日は疲れ果てて、宿に着くなり寝入ってしまった。

 

 その上、一晩寝たくらいでは、猛暑の疲れは取れてくれない。

 それでも、重い身体を無理やりにでも起こした。

 

 本来なら、ウィノナの足跡を探さすべき貴重な時間を、大きく無駄にしてしまった。

 それを取り戻さなければならない。

 

 何しろ、ウィノナは今も独りで、自分達を探して世界を回っているかもしれないのだ。

 それを思えば、少しでも早く合流してやりたい、という気持ちが募った。

 

 ダオス打倒の事もあって、常に最優先とはいかなかったものの、いつだってウィノナのことは忘れていない。

 

 ミントにアーチェを起こしてもらっている間に、クレスは準備を整え終わった。

 

 クレスは一足先に外の空気を吸いに出ようと、既に準備を終えていたチェスターを誘い部屋を出る。

 短い通路を歩きカウンターを通り過ぎようとして、今しがた来店した男を横目で見た。

 

 宿を借りようと話している男は、クレスが起きるきかっけとなった来客だろう。

 通り過ぎ様、盗み見るように顔を窺い――そして、クレスは思わず足を止めた。

 

「──モリスンさん!?」

 

 呼ばれた男は訝し気に振り返り、クレスの顔を見て首を傾げた。

 

「……どこかで会ったかな? 私は確かにモリスンだが……そんなに驚いて、どうした」

 

「え? いや、僕は……何というか……」

 

 ああ、とモリスンと呼ばれた男は、懐かしむような、悔やむような複雑な顔をする。

 

「そういえば前にも、君と同じく初対面のはずなのに、名前を呼ばれた事があった……」

 

「──おい、ちょっと待て」

 

 それを聞いたチェスターは、クレスを押し退けて前に出る。

 険しい表情を隠しもせず凄み、モリスンは身構える素振りを見せた。

 

「まさかと思うけど、一応訊いとくぞ。……その初対面で、あんたの名前を呼んだ奴の名は、ウィノナって言わないか?」

 

「……知り合いなのか? ではまさか、君達も未来から?」

 

 チェスターの目が驚愕に見開かれる。

 そうかと思うと、咄嗟にその腕を掴んで引き寄せた。

 

「ちょっと来い。部屋で話を聞かせてもらう」

 

「お、おい。ちょっと……」

 

 チェスターは有無を言わさず、モリスンを引っ張る。

 クレスは申し訳ないと思いつつ、止めることはしない。

 

 ようやく見つけた、ウィノナの手掛かりだ。

 多少手荒になってしまっても、是非とも話を聞かねばならなかった。

 

 クレスは、チェスターとモリスンを挟むような形で付き添い、急ぎ足で部屋へと戻った。

 

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