【完結】テイルズ オブ ファンタジア ~交差する歴史~ 作:鉄鎖亡者
それから話題は次々と移り変わり、途切れる事なくいつまでもい続いていく。
旅の間にあった事は、それだけ魅力に満ちたものであり、話す方も聞く方も、十分に楽しむ事が出来た。
そうしてついに、話し疲れが見えてきた頃、クラースは最初に聞こうと思っていた事を、改めてウィノナに問うた。
「それで……、ウィノナ。これから、どうするつもりなんだ。まずはどこかに、腰を落ち着ける必要があるだろう? 何処ぞで勝手に、小屋を建てる訳にもいかないだろうし、家を借りるなりするにしても、探すには時間も掛かる。だから、ウチに居候も良いんじゃないか、と思ったんだが……。まぁ、今更そう言う訳にもいかなくなったな」
それはウィノナとしても、ここに来るまでの間、ずっと考えていたことだった。
確かに暫くの間ならば、暮らしていけるだけのお金はあるが、小さな小屋を買おうにも、結構な額がするものだ。
では、借りるという事にするとしても、場所はどこにするか、という問題が浮上する。
未だ展望は見えず、無計画な考えになるが、最初に一つだけこれは、というものは決まっていた。
「まず、現代で地下墓地のあった場所、あそこの近くに住むのが第一条件かな、って思ってる。それを考えると、ユークリッドも悪くはないんだけど……」
考える仕草をするウィノナに、クラースは助け舟を出すつもりで言った。
「村に越してくるつもりなら、口添えは出来ると思うぞ?」
「うん、もしもの時には頼るつもりだけど。でも、より墓所のあった場所から近い村なら、一つ思い当たる場所があって……。漁村のヴィオーラに行ってみようと思う。それからのことは、そこに腰を落ち着けたら考えるよ」
そうか、とクラースは頷く。
「あの村からユークリッド、は決して近いとは言えないが、いつでも頼りにしていいからな」
「あたしン家にも、いつでも遊びに来ていいからね。……ううん、こっちから毎日だって行ってやるんだから!」
まるで悪戯でもするような顔で笑って、アーチェが言った。
ありがとう、とウィノナも笑みを返す。
──全てはこれからだ。
ウィノナは気持ちを新たにする。
地下墓地の完成こそが、ウィノナの命題。
これが完成できなければ、過去に戻った意味もない。
地下墓地は、ダオスが封印される為の大事な場所であり、失敗は決して出来ないし、許されない。
今はまだ、その取っ掛かりさえ見えていないが、必ずや完成させると心に誓った。
その日はクラース共々、アーチェの実家でベッドを借り、翌日朝食まで頂いてから出発となった。
アーチェも着いて来たがったが、今は帰ってきたばかりなのだから、と説得して、何とか折れて貰った。
「住居が決まれば必ず報せるから、それまで親孝行していて」
「うん……、そこまで言うなら。……そうする」
小屋の前でウィノナとクラース、アーチェとバートに別れて手を握る。
「きっとだよ。すぐに連絡してね」
「うん、なるべく早くするよ。ここで躓くわけにもいかないし」
ウィノナはアーチェの手を握り、その握った手を一度上下に振る。
そのあと、空いた方の手を互いの握った手の上に置いた。
約束を違えぬよう。今の自分の気持ちが、寸分の違いなく届くように。
対してクラースとバートの挨拶は淡白なもので、一宿一飯のお礼と、簡単な挨拶だけで終わった。
ウィノナは名残惜しげに手を離し、一度短く抱擁してその背を叩く。
同じようにアーチェも背を叩き、それから離れた。
「それじゃ……!」
「うん……! またね」
クラースが歩き出し、ウィノナもそれに続く。
時折、振り返りながら手を振り、アーチェもウィノナが見えなくなるまで、大きくその手を振り続けた。
ローンヴァレイからユークリッドは近く、クラースと別れる時も早かった。
挨拶も軽いもので、ただ、気遣いと心配してくれる気持ちだけはしっかりと伝わった。
「それじゃ、今度ミラルドさん紹介してよね」
「……その言い方は、非常に意図的なものを感じて気に入らんが……。まぁ、分かった。そっちも、困ったらちゃんと頼るんだぞ? 金がなくなれば、少しなら貸してやれるし──」
クラースの言いかけた言葉に、手を振って遮る。
「大丈夫だって。子供の頃から、森に入って狩りとかしてたんだから。食うに困るって事はないよ。実際、クレス達と合流するまでの一年間はね、そんな感じだったし」
「聞いてないぞ、そんな話……」
クラースは溜め息をついて、額に手を当てた。
「まぁ、ちょっと逃げ隠れしてたから。ミッドガルズじゃ指名手配されてたし、それがどこまで広がってるかも分からなかったし……。念の為にね」
「逞しい性格しているのを、再確認した思いだよ。……だが、それと我慢はまた別だぞ。頼るべき時は、遠慮は無用だ」
はいはい、とウィノナは困ったように笑い、背を向ける。
顔だけ横を向いて、視界の端にクラースを収めて言う。
「クラースも早く、待たせてる人に顔を見せてあげて。アタシも忠告を、無視するような事はしないから」
「……だといいが」
そう言いながら、クラースも背を向ける。
ただ一度だけ振り返り、小さく手を振って村の中へと入って行った。
見えなくなるまで見送り、ウィノナも改めて歩を進める。
ここから南下し山道を越えれば、すぐにでも漁村ヴィオーラが見えて来るだろう。
急げば、夕方までには到着できる。
ウィノナはいま一人だが、その胸の内は温かく、一年前の一人旅とはまるで違って、その足取りは軽い。
応援してくれる人がいて、心配してくれる人がいる。
頼れる人が……、そして、応援してくれる友人がいる。
それを思えば、どこまでも力が湧いて来る気がした。
ウィノナの足取りは軽かった。