よろしくなっっ( ´∀`)bグッ!
第一話 予言
「トレローニー先生、新しい職場はどうかね?」
胸まで届く髭を蓄え、その二度は折れ曲がったような高い鼻に引っ掛けるようにして半月メガネを付けている老人は、穏やかな声で言った。
老人 ―― アルバス・パーシバル・ウルフリック・ブライアン・ダンブルドア ―― は、ニ十世紀で最も偉大な魔法使いと称されるほどの実力者であると同時に、イギリス魔法界の誇りであり、歴史そのものであるとまで呼ばれることもある名門、ホグワーツ魔法魔術学校の校長でもあった。
「え……ええ、あたくし、この学校で魔法の学問の中で最も難しくて高貴な『占い学』を教えことが前々からの夢でしたの。 俗世ではあまり信じる者は居ませんでしたが、ダンブルドア校長は信じてくれました上に、こうしてあたくしの職場まで用意していただいて、あたくし、感謝の念に尽きませんわ」
「それはなにより」と、優しい目で頷きながら、ダンブルドアは考える。
もともと、ダンブルドアは『占い学』など信じてはいなかったし、目の前の女 、シビル・トレローニー が就職の面接に来た時など、彼女の高祖母が著名な人物であったから礼儀として対応しただけなのである。
実際に、面接の際もダンブルドアは彼女に失望し、彼の『占い学』全体への評価をさらに低下させるのには十分な働きを見せたと言える。
だがしかし、そんなトレローニーをここホグワーツ魔法魔術学校で雇う結果となったのには、しっかりとした理由があった。
件の面接の中で、トレローニーは『本物の予言』をしたのである。
突然豹変した彼女は、野太く吸い込まれるような声で言ったのだ。
―― 闇の帝王を打ち破る力を持った者が近づいている。 七つ目の月が死ぬとき、帝王に三度抗った者たちに生まれる。 そして闇の帝王は、その者を自分に比肩する者として印すであろう。 しかし彼は、闇の帝王の知らぬ力を持つであろう。 一方が他方の手にかかって死なねばならぬ。 なんとなれば、一方が生きるかぎり、他方は生きられぬ。 闇の帝王を打ち破る力を持った者が、七つ目の月が死ぬときに生まれるであろう ――
と。
偶然、その場で盗み聞きをしていた死喰い人のセブルス・スネイプによって闇の帝王にもたらされたその予言は、良くも悪くも実現し、ダンブルドアは、彼の可愛い教え子を三人失った代わりに、その内二人の間に生まれた一人の赤ん坊が闇の帝王を『一時的に』滅ぼすこととなったのである。
予言が発せられた時、ダンブルドアは瞬時に事の重大性を理解し、闇の帝王の手からトレローニーを護るためにホグワーツの教員となることを認めたのだ。
「生徒たちにも評判だと聞いておる。 トレローニー先生にはその調子で頑張ってもらいたいと思っておるぞ」
「……」
ダンブルドアの掛けた言葉に、いつもなら必要以上に反応するはずのトレローニーが、何の反応も示さないので、思わず彼女を見たダンブルドアは、驚愕の表情を浮かべた。
『あの時』と同じだったのだ。
トレローニー先生の表情は強張り、目の焦点は全く合っていなかった。
そして、あの恐怖のような声で言ったのだった。
「遥か東、日が昇りし黄金の国に危機が迫っている。 古くより受け継がれてきた魔法は崩壊の危機を迎え、蓬莱の才を持つ赤子を育てし者たちは、やがてその赤子によって滅ぼされるであろう。 破滅を逃れる手はただ一つ、彼を愛し、愛される者が、彼の手を掴み、永久に離さない事。 その繋がりが絶えた時、世界は暗黒に包まれ、闇が再びその力を増すことになるだろう」
「……」
偉大な魔法使いである筈のダンブルドアも、驚きを隠せない。
「あーら、あたくし、ティーカップを取りに行かなくてはいけないわ。 では、ごめんあそばせ」
そう言って、トレローニーは数秒前の出来事がまるで初めから無かったかのように、呆然としているダンブルドアを残して、備品室へと去っていってしまったのだ。