あるモノのお話   作:赫い月

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お待たせしました…
友人に小説書いてるのバレて病んでました…
ガッツリ読まれた^O^
さて、今回から紅月くん視点に戻ります
では本編スタートです!


壊憶と激情

もう…限界だ。思ったよりも進行が早かった…

「…ぐ…」

自分の意思で体が動かない、もう乗っ取られてしまっているのだろう。くっそ…やるしかないか。迷惑をかけるわけにはいかない。

「…」

彼女は怒るだろうか。言伝だけ残して去る形になってしまった。会いに帰りたいがもう手遅れだう。

「ごめんね」

彼女は気づいてくれるだろう。

たった一人の仲間だから。

 

ーーー

ーー

 

何か夢を見ていた気がする。なんの夢なのかは良く思い出せない…しかし、何か大切な…少しずつ意識が覚醒してきた。身体中がが酷く痛い、体にうまく力が入らない。なんでだろう…怪我した記憶なんてないけど…

「…う…」

ゆっくりと瞼を開ける。…家の中?私は家を持っていないはず…

「!紅月、起きたか」

…?誰だろうか、知らない人。コウゲツ?誰のことだろう。

「ひとまずよかった。どこか痛むところ…どこも痛むだろうが、どこか不調はないか?」

私のことを知っているのだろうか?生まれて一年人間は愚か同族ですら見たこともないのに。

「…誰?」

ひとまず相手の名前を聞いてみる。

「私は上白沢慧音だ。寺子屋の教師をしている」

慧音。うん、もちろん知らないね。どういう状況だ?朝起きてみたら知らない人の家で、しかも凄い美人に話しかけられた。

「なんでここに…?」

「妖獣に襲われたのを覚えていないのか?」

「妖獣…?」

…襲われたっけ、うーん?昨日は普通に寝た気がするんだけどなぁ?寝てる間に襲われちゃったのかな?

「そうだ、霊夢に連絡しなければいけないな。何かあったら呼んでくれ妹紅が対応してくれる」

…行ってしまった。落ち着こうか、こういうときは落ち着いて現状を把握するべきだ。

「痛っ…うわ…」

血とか膿まみれで気持ち悪い。体を洗いたいな…あ、井戸ある。借りてもいいかな。借りよう。

「よいしょ…うわっ!」

左足に力が入らない。うわ…見るとふくらはぎの肉がごっそり欠けてしまっている。これ歩く無理だ、なんか杖代わりになる物ないかな?

「うーん。…刀」

あの人のものだと思うけど…借りてもいいかな?

「か、借りまーす。よいしょっと…」

ふらつきながら庭に向かう。やばっ、床に刺しちゃった。これ切れ味すごいね。…うん?

「ぬ、抜けない…」

思いっきり力を入れて抜く、怪我してしまっているせいか知らないけど全然抜けないんだけど。どうしよう、

「紅月、起きたの…なにやってんだ!?」

「うわっ!?」

「おいおい…まだ治ってないんだから安静にしててくれよ」

「ご、ごめんなさい…血が気持ち悪くて…」

「血か?わかった、拭いてやるから布団に戻れ」

「はい…」

びっくりした。そして怒られた、でも優しい人だなぁ。口調がちょっと怖いけど。

「誰だよ刀ブッ刺したやつ…」

あ、私です…怒られたくないから黙っていよう。

「全く…で、傷はどうだ?まだ痛むか?」

「うん…少し」

「そうか…まぁ仕方ないさ、生きてるだけありがたく思うことだな」

最初死ぬくらいに酷かったのか…。でもそんなにひどい傷を負ったのに起きないことなんてあるかな?普通痛みで起きると思うんだけどな。

「うわっ…これは着替えたほうがいいな。自分で脱げるか?」

「うん」

よく見たらいつもきてる服と違う。この人のものだろうか?そうだとしたらだいぶ申し訳ない、借りた上に血塗れにしてしまった。

浴衣地の下着を脱ぐと赤く染まった包帯が現れた。気持ち悪い…そういえば名前も知らない人の前で裸になっている。今更だし同性だけど意識したら少し恥ずかしくなってきた…

「そんな恥ずかしいがることないだろ、同性なんだし…包帯かえるぞ、傷に張り付いて痛いかもしれないが耐えてくれ」

私の恥じらいは一蹴されましたとさ。

ペリペリと音を立てて包帯が剥がれる。痛みよりも自分の皮膚がめくれる不快感が押し寄せてくる。剥がしたところを布で拭いて、新しい包帯で巻いて、剥がして、拭いて…顔腕、胸ときてお腹にきた。一番膿やら血がたくさん出ているところだ。

他の部位と同じように剥がしていく…途中からあるはずの肉がないことに気付いて、ちょっと青ざめた。思ったより重症だったんだ。

…うーん、やっぱり不思議だ。この人は襲われたときのこと知ってるかな?聞いてみよう。

「あの…」

「うん?何だ?」

「私、どんな風に襲われたんでしたっけ」

「どんなふうに?人里に向かう途中で襲われたのかみたいだったが…覚えてないのか?」

「…人里に?」

おかしいぞ?人里に向かおうなんて今まで考えたことなかったと思うけど。

「霊夢と魔理沙もお前のこと心配してたぞ、霊夢なんて『紅月に歩いて行けと言ったばかりに』って落ち込んでたしな」

れいむ?まりさ?誰のことだろうか。

…薄々感じていたけど気のせいではないみたいだ。私と彼女の認識にずれがあるように思える。レイムもマリサもコウゲツも誰だかわからない。思い切って聞いてみようか。

「…コウゲツって、誰ですか?」

「…はぁ?」

すっごい間抜けな声を上げた。そんなに呆れることですか…?

「…え、っと?紅月はお前だろ。頭でも打ったのか?」

「…はぁ?」

今度がわたしが間抜けな声をあげてしまった。私がコウゲツ?何かの間違えじゃないだろうか。わたしはわたしだ、名前はない。

「え、私がですか?」

「そうだよ。私もあんたのことをよく知らないが…霊夢が慧音のとこに寄越すはずだったらしいが…本当に覚えていないんだな?」

「覚えてない…?」

覚えていない…記憶喪失というやつだろうか。意外と落ち着いているものなんだ、もっと不安になると思ってたけど。

「記憶喪失か?失血とかでもなるr「紅月!!」お、霊夢」

急に誰か入ってきた、びっくりした…っ!?何だろう…この人をみると…なんか…なんか、すごく…

「紅月ゔっっ!!?」

殺してやりたくなる…あれ、なんで?巫女服の女を勝手に殴っていた。…急に沸いた怒りが増幅する。あぁ駄目だ、抑えられない…手が震える、意思通りに体が動かない。私のものだという刀を取り動かなかったはずの足で勝手に立ち上がる。

「なにをしている!」

「…ッ…」

「霊夢離れろ!」

落ち着け…落ち着くんだ私。この赤熱した怒りを鎮めなければ…いけないのに、なんで…なんで?

「なんで…?」

動かない…動けない。私の体が私のものではないかのように…

「…ぅ…はぁ!!」

刀を振るってしまう。間にあった襖を両断した。慧音さん達に当たらなかったことに安堵するが…追撃しようと体がまた勝手に動き始める。なんとか抵抗するがきっとすぐに負けてしまうだろう。

「霊夢、怒りの矛先はお前のようだ。一回出てくれないか」

「…わかったわ」

レイム、と呼ばれた人間(?)が部屋から出て行った。その瞬間、私の中にあった感情は収まった。

「…はぁ…はぁ…」

気を張っていたからかとても疲れた。興奮してなくなっていた痛みが蘇り、倒れこんでしまう。記憶がなくなったことといい、このことといい一体何なんだ…

「大丈夫か?紅月」

妹紅さんが問いかけてくれる。大丈夫だった、結果的に誰にも怪我を負わさなかったけど、もしあの一振りが霊夢さんに当たっていたら…そう考えると手が震える。

「どうやら訳ありのようだな…私たちも引いたほうがいいだろう、落ち着いたら呼んでくれ。行くぞ、妹紅」

「うん」

二人とも出て行った、まだ手が震える。

突然襲ってきた謎の激情、記憶の喪失。この二つは私に恐怖を感じさせるのに十分すぎる材料になる。

しかし私が今感じている恐怖の対象はそれら二つの出来事が原因ではない。

私が恐怖したのは人を殺すことに恐怖と共に喜びを感じた自分に対してだ。

 

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