ご注文はスーパーロボットですか? 作:お日様ぽかぽか(zig)
「ふん。一体何をやっているんだかねぇ」
逆光に身を包んだ戦士が、冥府の王へ飛び掛かるその頃。
遥か数百キロも離れた場所から、成り行きを見守る細目の老婆がいた。
「窮鼠猫を嚙むって言葉、知らないのかい」
老婆は、親指と薬指で作った環の中を左目で覗き、遥か彼方で行われる闘いをつぶさに観察していた。
山の急斜面にそそり立つ、数十メートルはあろうかというほどの木の頂点で、器用に座り続ける。その様子はさながら、ある境地へ辿りついた仙人のようだった。
「まったく。千夜の遊び癖には困ったもんだよ」
「でも、楽しそうですね~」
「そうだね~」
悪態をつきながら、離そうとしない視線。
そんな老婆のすぐ近くから、女性の声がふたつ、上がった。
「圧倒的な怪物に立ち向かう、天空よりの使者……。なんとも心が騒ぎ出します~!」
「誰なんだろ~あの人。すごく健闘してるね~」
肩までかかる髪が緩やかに波打つ女性は、微笑みながら左手を頬に当てた。
一方で後ろ手を組みながら見守る少女は、同じく微笑んではいるものの、油断を見せない雰囲気を漂わせている。
背中には、黒く、長い筒状の物が伸びていた。
「ふん。こんなに時間をかけてちゃ、いつイデが宇宙怪獣を差し向けるか、わかったもんじゃないよ!」
老婆はそういうと、区切りをつけて立ち上がった。
「凛! 凜はいるかい!」
「は、はい! おばあちゃん!」
そして大声で呼びかける。響く声量に慌てた様子の彼女は、さきほど頬に手を当てた女性の近くから姿を現した。
「凛! あそこで遊んでる千夜達に、こいつをぶつけてきな!」
パチン、と、指が鳴らされる。
その瞬間、山が揺れた。驚く鳥達が一斉に空へ逃げ惑うと、去ったその地には異形の怪物が存在した。
「こ、これは!」
「DG細胞で作り上げた第三使途だよ! これをあいつらにけしかけてきな!」
黒い身体に、能面のような顔。
異常に細い手足を支える巨大な肩にも、覆うように能面らしきものが纏い付いている。腹部には赤い球体が光っていた。まるで肋骨のように生えた白いなにかに支えられながら。
「い、いいんですか!? デビルガンダムで作ったサキエルとはいえ、破壊力は十分ですよ!?」
「いいんだよ。いつまでもチュートリアルのままでいられても困るからね!」
凜の戸惑いは、老婆がばっさりと切り捨てた。
「いいですね~! 死力を尽くして戦う戦場に、第三の敵。心が燃え上がります~!」
「死ぬな~。リゼ~」
突然現れた怪物にも、全く動じない二人。
それどころかワクワクと胸を弾ませる両者を見て、凜はがっくりと首を落とした。
「さ、グズグズするんじゃないよ! さっさと使途をぶつけて、小娘たちの度肝を抜いてきな!」
「は、はぁい!」
微笑みを崩さない天然悪役ムーブ作家と吹屋娘に代わり、ド真面目一直線の凜は、涙目になりながらも老婆の命令に従うのだった。