九内とアクが2組の教室を出た頃、外ではとある人物が校舎を見上げていた。
「…どうなってるんだ?」
それはは先程2組を訪れた青年だった。
彼の名前は『岩谷尚文』
前の世界で盾の勇者と呼ばれた人物である。
彼もまたアインズたちと同じようにこの世界へ飛ばされて来たのだった。
「ラフタリアとフィーロはどこに…?」
この世界に飛ばされた時、一緒にいた仲間たちの姿がなく先程からずっと探していたが一向に見つからずにいた。
一体何処にいるのだろうと考えていると、
「どういうことだ?俺は元の世界に戻ったのか?」
「クソッ!ユエたちが何処にもいない!そもそもここは何処なんだ?」
「一体何がどうなってんだ…!?元の世界とは少し違うような…」
「ッ!!」
3方向から同時に声が聞こえ尚文は咄嗟に目線を周囲へ動かす。
右からは黒いコートを身に纏った青年、左からは白髪で右目に眼帯をした青年、後ろからは青い服を着こなした青年が歩いてきていた。
黒いコートの青年サトゥー、白髪の青年ハジメ、そして青い服の青年真人もまた尚文と同じ状況に置かれていたのであった。
『ん?』
「………」
サトゥーとハジメと真人は尚文とその向こう側にいる相手にそれぞれ気付き立ち止まってしまう。
尚文、サトゥー、ハジメ、真人の4人はそれぞれを注意深く観察した。
(何だコイツら?もしかして俺と同じようにここに?あっちの2人はともかく、あの白髪のヤツの左腕…まさか義手か?)
(この3人も俺と同じ立場なのか?あの左腕にある小振の盾以外に武器を持ってる訳でも無さそうだし、武器はあれだけか)
(まさかコイツらも?3人とも俺と同い年に見えるが、どういう訳か向こうのヤツだけ結構年が離れてるように思うのは気のせいか?)
(何だこの状況…?もしかしてこの3人も俺と同じ…?けど、空気が重い…)
それぞれ警戒するも内心で1つの考えが一致していることは知るよしもない。
4人の間に微妙な空気が漂い誰も口を出せずにいると、
「少しよろしいですかな?」
『!!』
突然声を掛けられバッと振り向くと、口髭を生やし執事のような男性が立っていた。
男性の身のこなしはまるで百戦錬磨の修羅場をくぐり抜けてきたような明らかにただ者ではないオーラが出ていた。
「どうやら4人とも同じ状況に置かれているご様子ですね。よろしければ私がお話をお聞きしましょう」
どうやらこの男性は何かを知っているようなため、尚文とサトゥーとハジメと真人は互いにアイコンタクトを取り考えが一致するのだった。
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校舎から離れた場所にある一件のプレハブ。
そこはこの学園の清掃等を行っている用務員たちのための建物である。
その中の畳部屋にて卓袱台を挟み、尚文、サトゥー、ハジメ、真人の4人と男性が向かい合って座っていた。
「そうですか、やはりあなた方もこの世界へ呼び出されたのですね」
4人を案内した男性の名は『ヴィルヘルム』
彼もまた突然この世界へ飛ばされて来た1人でこの学園で用務員として働いている。
互いに自己紹介を終え、ヴィルヘルムはお茶が入った湯飲みを尚文たちの前に出し話を聞いていた。
「あぁ、そんなところだ」
尚文の話によると、彼が仲間たちと共にモンスターと対峙していた時、突然自分の盾が赤いボタンのリモコンへと変形したのだった。
しかも運悪くモンスターの攻撃を防ぐ瞬間だったため、モンスターがボタンを押してしまい今に至るのであった。
「なるほど、サトゥーさんとハジメさんと真人さんも同じように?」
「はい、お恥ずかしい話、誤ってボタンを踏んでしまいまして」
「お前らなんてまだいい方だ。俺の方は仲間の馬鹿ウサギが勝手に押してこうなったんだ」
「俺も似たようなもんだ………」
自身のミスに苦笑いするサトゥーとは対照的にハジメと真人は怒りと呆れを混ぜ合わせながら落胆の顔をしていた。
「ところでヴィルヘルムさん。私たち以外にも同じ状況でこの世界に来た人たちが大勢いるって本当ですか?」
「はい、私もその1人です」
ヴィルヘルムの話によると、ボタンを押した時に周囲にいた人たちの殆どがこの世界へ来たらしく、サトゥーは自分の仲間たちもこの世界へ来ていると推理した。
「他の人たちと状況が同じなら、間違いなくみんなもこの世界に来ている筈」
「あぁ。必ず全員見つけ出してやる」
「と言っても、何処から探せばいいんだか?」
「ラフタリア、フィーロ、何処にいるんだ?」
4人とも自分たちの仲間の顔が頭に浮かんでおりく見つけなくてはという気持ちでいっぱいだった。
全員に焦りが見えたヴィルヘルムは落ち着かせようと口を開いた。
「尚文さん、サトゥーさん、ハジメさん、真人さん。あなた方がここに呼ばれたということは、何か意味があるのでしょう」
「意味?」
「えぇ。それを知るまでは前に進んでみてはいかがでしょうか?何か得られるかもしれません」
「何故私たちにそんなことを?」
「見ず知らずの俺たちに、いくら何でも優しすぎませんか?」
「…尚文さんの目が、昔の私にそっくりだからですよ」
「………」
ヴィルヘルムから言われ尚文は彼も自分と似た人間なのだろうかと理解した。
そして四人は焦りを抑え冷静さを取り戻した。
「お茶、飲まれないのですね」
「あぁ」
「すみません、折角淹れて頂いたのに」
「構いませんよ」
「失礼します。そろそろお昼にいたしましょう」
すると台所への襖が開き、ヴィルヘルムと共に用務員をしている老人『セバス』が昼食の準備に取り掛かろうとした。
「おや?お客様がいらっしゃいましたか」
「今、出ていくところだ」
昼食の邪魔をする訳にはいかないと、3人は立ち上がり出入口へと向かった。
「またお会いすることになるでしょう」
後ろからヴィルヘルムに声を掛けられるも尚文とハジメはそのまま出ていってしまい、サトゥーと真人は軽く会釈をして2人に続くのだった。
「ヴィルヘルムさん、楽しそうですね」
「若者の成長はいつ見ても楽しいものです」
「そうですね、その通りです」
ヴィルヘルムの言葉にセバスは賛同し4人が出ていった方をチラリと見やりそのまま座布団へ座った。
「さて、今日は何の話をしましょうか?」
「やはり、今日もアレでしょうか?」
「今日もするとしますか・・・」
『恋ばな!!』