異世界かるてっと×2   作:アニアス

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第四話 集結!4組!

「お?昼休みか」

 

4組の教室にアクを戻した九内は廊下を歩きながら自身のクラスの生徒たちを探していた。

しかし探している内に昼休みを知らせるチャイムが鳴ってしまい一時中断することにした。

教師と言えど休みは必要なため腹も多少空いている。

 

「さて、食堂にでも行くとするか」

 

「ちょっと魔王!これは一体どういうことよ!?」

 

さぁ食堂へと行こうとした時、不意に後ろから聞き慣れた怒鳴り声が聞こえ九内は呆れてため息をついてしまう。

振り替えると、そこにはアクと同い年くらいの桃色髪の少女がこちらを睨んでいた。

 

彼女は『ルナ・エレガント』

九内のいた世界にて聖女と呼ばれた少女である。

魔王である九内を倒そうとするも返り討ちにあってしまい尻を叩かれた黒歴史がある。

しかし彼女の領地であるラビの村の開拓を九内が協力してくれたせいか彼を憎むことができずにいる。

 

「なんだお前か、一体どうしたというのだ?」

「どうしたもこうしたもないわよ!何なのよここ!?気がついたら変なところにいるし!ここにいる連中明らかに普通の奴らじゃないし!中にはモンスターみたいなヤツもいるし!おまけにここで学園生活!?どう考えても普通じゃないわよこの状況!」

 

ルナも突然この世界へ飛ばされ訳も分からず学園生活を余儀なくされているため、教師としての立場の九内に事情を問い詰めているのである。

 

「よく聞け、私たちはこの世界へ飛ばされその役割がある。私は教師、お前は生徒。ここではそれを守らなければならないのだよ」

 

しかし九内は本筋を話さずこの世界でのルールを説明しただけだった。

 

「誤魔化さないでよ!ちゃんと説明を!」

「魔王様!ルナ姉様!」

 

更に問い詰めようとした時、騒ぎを聞きつけたアクが教室を出て九内とルナの側へと近づいた。

 

「これから昼食を取ろうと思うのですが、お二人ともご一緒にどうですか?」

「ちょうどいい。私も食堂へ向かおうとしていたところだ。一緒に行こうか」

「話を反らさないでよ!まだ他にも聞きたいことがあるんだから!」

 

ルナの言葉を聞き流し九内は2人とともに食堂へと向かうのだった。

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

その頃、図書室では2組のベアトリスが本を読んでいた。

彼女は元々本を読むのが好きで休み時間にはよく図書室に足を運んでいる。

静かに読書をしていると図書室の扉が開いた。

 

「?」

 

もしや同じ図書委員のマーレでも入ってきたのかと思っていると、

 

「ここにもサトゥーいない」

「どうやらここは書庫のようです」

 

サトゥーと共にこの世界へ飛ばされたエルフのミーアとホムンクルスのナナが入ってきたのであった。

はぐれてしまったサトゥーたちを探すために学校内を歩いており図書室へ到着したのだった。

 

「…お前たち、一体何の用かしら?」

『!!』

 

このまま無視をしても良かったがこの世界で見かけない顔だったため声を掛けた。

ミーアとナナはベアトリスに気が付き何か知っているかもしれないと思い彼女へと近付いた。

 

「私たち、サトゥーを探してる。サトゥー知らない?」

「そもそもサトゥーが誰なのかすら知らないのよ。そういうお前たちは何者かしら?」

「こちらはエルフのミーア。私はナナと申します」

 

サラリと質問をしたミーアに多少ベアトリスが戸惑うもナナが代わりに丁寧に自己紹介を済ませた。

 

「ベアトリスなのよ。お前たちもこっちに飛ばされて来たのかしら?」

「はい、気が付いたらここに」

「ここどこ?」

 

この世界について知っていることをベアトリスから聞こうとしたその時だった。

 

「ハジメさーん!何処にいるんですかー!?」

 

扉が壊れるのではないのかというくらい勢いよく開き、ハジメと共に飛ばされたシアが入って来た。

シアは入って来たや否や大声でハジメを呼んで探した。

突然のことにミーアとナナはポカンとなってしまい、ベアトリスに至っては眉間にシワが出来ていた。

 

「あっ!すみません少しよろしいでしょうか!?」

 

シアは3人に気が付くとドタドタと足音を立てて一気に側へ駆け寄った。

 

「私、シアというのですが、お聞きしたいことがありまして!」

「その前に図書室では静かにしてほしいのかしら…!」

 

マナーとモラルというものを一切感じない常識しらずのシアに図書委員であるベアトリスは怒りを抑えながらも静かにするように注意をした。

しかしそんなことなどお構い無しに話を進めていった。

 

「実は私気が付いたらここに飛ばされてたんですよ!それで仲間ともはぐれてしまいまして!何か知っているなら是非とも教えて欲しいのですが!そもそもここは何処なんですか?」

「…いい加減に!」

 

勝手に話を進めるシアにお灸を据えようと魔力を使って攻撃しようとした時、

 

「グハァ!?」

『!?』

 

突然シアが後ろから誰かに頭を殴られ気を失いその場に倒れてしまう。

一体誰が殴ったのだろうとシアが立っていた場所へ視線を向けると、

 

「ダメですよ。図書室では静かにしないと」

 

真人と共に飛ばされてきたメディが立っており杖を両手に持っていた。

メディが図書室に入った時シアが騒いでおり、不機嫌なベアトリスを見て状況を察してシアを後ろから杖で殴ったのであった。

 

それにより図書室も静寂へと戻りベアトリスの怒りも治まった。

 

「・・・礼を言わせてもらうのよ。折角だからこの世界について教えてあげるかしら」

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

ミーアとナナとメディがベアトリスと話している頃、校庭では2組の大半のメンバーが野球をしていた。

 

「来い!」

「ダクネスさーん!頑張ってくださーい!」

 

打席に立っているのはダクネス。

ベンチにいるヴィーシャから声援を受けバットを構えた。

 

「ヴァイス大尉!後ろは任せて下さい!」

「はい!後ろには抜かせません!」

 

対してピッチャーはヴァイス。

内野の守備にはレム、グランツ、マーレがついておりグローブを構え打たれたボールを拾おうとする勢いが現れていた。

 

「ダクネスさん、容赦しませんよ!」

 

ヴァイスは大きく振りかぶり第一球を投げた。

ボールは一直線へ飛んでいきダクネスのスイングを抜けキャッチャーのデミウルゴスのグローブへと吸い込まれていった。

 

「ストライーク!」

 

そして2球目も同じようにバットに当たらず審判であるコキュートスが2回目のストライクを宣言した。

 

「く、くそ!まるで当たらない!」

「ボールトバットノ距離ガ離レスギテイル」

 

バットにボールが当たらないことに悔しさのあまりバットをホームベースに叩きつけてしまう。

そんな彼女にコキュートスはアドバイスを授けた。

 

しかし、

 

「私は、攻撃が当たらないのだ!」

「ソレハ…」

 

ダクネスは攻撃力は著しく高いものの命中率がほぼ0に等しいため、それが野球にも影響が出てしまっている。

 

その光景を遠くから眺めている3つの影があった。

 

「みんな何をしてるんだろう?」

「なんか、野球の審判が明らかに人間じゃないんだけど」

「明らかにモンスターよね、アレ…」

 

それはサトゥーと共に飛ばされて来たアリサとルル、真人と共に飛ばされて来たワイズだった。

あの後、気が付いたら3人揃って校庭に立っていた為互いに自己紹介を済ませ状況を把握しサトゥーと真人たちを探していた途中、2組が野球をしていたので立ち見することにした。

初めて見るスポーツにルルは興味津々になっていたが、審判をしているコキュートスを見てアリサとワイズは若干引いていた。

 

「よし、これで終わりです!」

 

ダクネスの命中率の低さに勝利を確信したヴァイスは最後の一球を投げようとした。

 

「…かくなる上は!」

 

このままでは三振になってしまうダクネスは最後の手段に賭けようと目を見開いた。

そして最後の一球が投げられた。

ボールが迫ってくる中、ダクネスが導き出した方法は、

 

「とぅ!」

 

なんとバットを放り投げてストライクゾーンへと飛び込んだ。

 

「ダクネスさんがボールに当たりに行ったぁーーー!!」

 

そしてボールは当然のように壁となったダクネスの脇腹へと直撃した。

 

「これはいい…!ではなく、デッドボールだな…!」

 

四つん這いになりながらも一石二鳥をしたダクネスは一塁へと歩こうとしたのだが、

 

「ストライク!バッターアウト!」

「何故だ!?ボールに当たったではないか!」

「ストライクノボールニ当タリニ行クノハルール違反ダ!」

「そうなのか!?」

 

コキュートスから三振の宣言を受け即座に抗議するもルール違反が見逃される訳もなくショックを受けてしまった。

 

「あの~コキュートスさん、タイムを戴いてもよろしいでしょうか?」

 

すると、守備に周っていたレムがコキュートスにタイム要求をした。

 

「ドウシタ?怪我デモシタノカ?」

「いえ、先ほどダクネスさんの放り投げたバットが通りすがりの通行人に当たってしまいまして」

「ナニ?」

 

レムの指を差した先を全員が見ると、そこには黒い服を着た女性らしき人が倒れており側にはバットが転がっていた。

どうやら先ほどダクネスが投げたバットが放物線を描き女性に当たってしまったらしい。

 

「大変だ!大丈夫ですかー!?」

 

女性を介抱しようとグランツが慌てて駆け寄ると、その女性はハジメと共に飛ばされて来たティオだった。

 

ティオはムクリと起き上がりグランツと目が合うと、

 

「はぁん!何ということじゃ!普通に歩いていた妾にこのような仕打ちをするとは!じゃがそれも悪くない!」

「…えっ!?」

 

顔を赤く染めて身体をクネクネと動かしマゾヒズムの発言をした。

そう、まるでダクネスのように。

グランツはティオの言動に固まってしまう。

 

「さぁもう一度やるがよい!痛め付けるのが趣味というのならばとことん付き合ってやろうではないか!」

「趣味じゃないですよ!?」

 

両腕を広げさぁ来るがいいと言わんばかりの勢いのティオにグランツは即座に否定した。

するとハッとなり辺りを見渡すと集まって来たみんながこちらに冷たい視線を向けていた。

 

「最低ねアイツ…」

「武人ノ風上ニモ置ケンナ」

「本当に最低です」

「イ、イヤイヤイヤ!えぇ!?」

 

自分はティオを介抱しようとしただけなのに何故か自分がティオを傷つけたことになっている状況にグランツはたじろいでしまう。

 

そして極めつけは、

 

「グランツ中尉…」

「えっ?」

 

「最低ですね」

 

「何でだぁーーー!!??」

 

ヴィーシャからゴミを見るような目で見られたことにより、グランツのショックの叫び声が校庭中に響き渡った。

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

飼育小屋

読んで字の如く、学校で飼育されている生き物たちの世話をする小屋。

その中に飼育委員であるスバル、アクア、アウラの3人が入っていた。

 

「ウチってさ、飼育されてるのは2匹だよな?」

「そうだね」

 

この学校で飼育されているのはデスナイトとハム助の2匹だけ。

その筈だったのだが、

 

「で、今3匹いるよな?」

 

左からデスナイト、ハム助、そして大きな白い毛並みの鳥がいた。

いつの間にか2匹から3匹に増えていたのだった。

 

「じゃあ減らせばいいだけよ」

 

そう言ってアクアは浄化の技『ターン・アンデッド』をデスナイトに繰り出すと、デスナイトは魂だけになってしまった。

 

「アーッ!デスナイトくんが消えてしまったでござる!」

「うんうん!これで2匹になって一件落着!ってなるワケねぇだろ!!」

 

飼育委員でありながら数合わせのためにデスナイトを消したアクアにスバルはノリツッコミをした。

 

「そもそもこの鳥はどうしたの?」

 

そんな中、いつの間にか飼育小屋に入り込んだ鳥にアウラは視線を移し首を傾げた。

すると鳥が口を開き喋り出したのだった。

 

「フィーロ?フィーロの名前はフィーロだよ」

 

大きな鳥『フィーロ』は少女の声で自己紹介をした。

しかし鳥が喋ったというのにスバルたちは気にする様子はなかった。

 

「ねぇねぇ、ご主人様知らない?」

「ご主人様?誰かしら?」

「ご主人様はね、ナオフミって名前だよ」

「ナオフミ?誰だろう?」

 

初めて聞く名前にアウラが首を傾げているとアクアが魂だけのデスナイトを呼び戻すと元に戻ったのだった。

 

「おぉ!デスナイトくんが戻って来たでござる!」

 

友達が無事に戻って来たことにハム助が目を輝かせ安心していると後ろの扉が開く音がした。

 

『ん?』

 

その音に反応して全員がその方を見ると、

 

『おぉ~!』

 

そこ立っていたのはサトゥーと共に飛ばされて来たポチとタマだった。

2人は飼育小屋に入るや否や目を輝かせていた。

 

「誰だろう?」

「さぁ?見ねぇチビッ子たちだな」

「あの子たち何で目を輝かせてるのかしら?」

「きっと拙者たちが珍しいからでござろう」

 

確かにハム助のような生物は大変珍しいためポチとタマが興味津々になるのは当然だろうと思った。

しかし次の二言でその場が凍りついた。

 

「獲物~?」

「ご馳走なのです!」

 

『…えっ!?』

 

よく見るとタマとポチの視線はフィーロに向けられており、口から少し涎が垂れていた。

そう、2人はハム助たちが珍しいから目を輝かせていたのではなく、フィーロが美味しそうに見えたから目を輝かせていたのだった。

 

「フィーロは美味しくないよ!?」

「待て待てお前ら!コイツは食い物じゃねぇよ!」

 

流石にこれはマズイと思ったスバルはフィーロの前に立ちポチとタマを止めようとした。

しかし2人は空腹状態の為我慢が出来ないのかジリジリと詰めよって来た時だった。

 

「あ、あの!」

 

再び扉から声が聞こえ全員が視線を向けると今度は真人と共に飛ばされて来たポータが立っていた。

ポータは声を上げたと同時にタマとポチの側へ駆け寄った。

 

「お腹が空いているなら、これをどうぞ」

 

しゃがみこみ鞄から紙袋を取り出してタマとポチに見せるように中身を見せると、中には真々子特製のたまごボーロが入っていた。

真人を探していたポータがたまたま飼育小屋を通りかかった時タマとポチがフィーロを食べようとしていたため不味いと思い持っていたたまごボーロを2人に食べさせようとしたのであった。

タマとポチはたまごボーロを手に取りそれを口へ運ぶと、

 

「サクサク~?」

「美味しいのです!」

 

今まで食べたことがない味が口中に広がっていき、笑顔になり一気に頬張った。

 

「いや~危なかったねぇ~」

「ホントに間一髪だったわ」

「まさかたまごボーロで人助けとはな。いや、鳥助けか」

「助けてくれてありがと!」

 

危うくフィーロが食べられてしまいそうになった為スバルたちはホッとするのだった。

 

「ところでお主たち4人よ。ここへ何の用でござるか?」

「3人~?」

「ポチはタマと2人だけなのです」

「私もたまたま1人で通りかかっただけですけど…」

「いや、そこにもう1人いるでござるよ」

 

ハム助の指を差した先を見ると、そこにはハジメと共に飛ばされて来たミュウが入り口から顔を出してこちらの様子を伺っていた。

 

「うぅ~…!」

 

全員がこちらを見たことによりミュウは怖がってしまいバッと顔を引っ込めてしまう。

 

「またチビッ子が来たわね」

「まさかアイツも食ったりしねぇよな?」

「どっちかって言うと人見知りなだけじゃない?」

 

スバルたちが話していると再びミュウがヒョコッと顔を出して様子を伺い出す。

そんなミュウにタマとポチは近づいて持っていたたまごボーロを差し出した。

 

「食べる~?」

「サクサクで美味しいのです!」

「好きなだけ食べていいですからね」

「んぅ…」

 

2人とポータに促されたミュウは恐る恐るたまごボーロを手に取り口へ放り込むと、

 

「ッ!美味しい!」

 

タマとポチのように笑顔になり一気に明るい表情になった。

今まで不安になっていた様子だったが安心した様子になりスバルたちもホッとするのだった。

 

「よく分かんねぇけど、一件落着になったのか?」

「そうだね」

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

一方その頃、校舎の廊下を1人の女性が歩いていた。

 

「ナオフミ様ー!ナオフミ様ー!」

 

獣耳を生やした茶髪の女性の名は『ラフタリア』

尚文と共に飛ばされた1人で、彼の剣として共に闘って来た亜人族である。

この世界に来てから尚文を探しているのだが一向に見つからずにいる。

 

「ナオフミ様は何処に・・・?」

 

一体何処にいるのだろうと考えていると、

 

「ここにもハジメがいない」

「ここって私たちの学校とは違うみたいだけど、何処なんだろう?」

 

「ご主人様ー!何処ですかー?」

 

「マーく~ん?ポータちゃ~ん?ワイズちゃ~ん?メディちゃ~ん?」

 

空き教室の扉が開き中からハジメと共に飛ばされて来たユエと香織、階段からサトゥーと共に飛ばされて来たリザ、ラフタリアの後ろから真人と共に飛ばされて来た真々子が歩いてきていた。

各々で仲間を探しているがこちらも見つからずにいた。

 

『ん?』

 

そして5人はバッタリと出会い足を止めて互いに顔を見合わせた。

 

『………』

 

全員が黙ってしまい微妙な空気が流れ誰も口を開けずにいると足音が聞こえて来た。

 

『?』

 

向こうから聞こえてくる足音に5人が振り向くと、曲がり角からアインズとカズマが出てきた。

 

『ん?』

 

「魔物!」

 

ラフタリアたち4人はアインズを見て咄嗟に身構えた。

ラフタリアは腰の剣を抜き、リザは背負っていた槍を構え、ユエは手に電撃を発動させ、香織は杖を構える。

 

「ちょぉ待った待った!ここはお姉さんたちが元いた世界とは違うから無闇矢鱈に争うのは無しにしてくれ!」

 

こちらを警戒している4人を落ち着かせようとカズマは前に出て説得を始めた。

 

「私たちは君たちに危害を加えたりはしない」

「安心してくれ。そっちも唐突にこの世界に転移させられたんだろ?俺たちも違う世界からこの世界に連れて来られたんだ」

 

アインズとカズマの様子からこちらを襲う様子がないように感じるもラフタリアたちは警戒を解けずにいると、ラフタリアとリザの肩に真々子が手を置いた。

 

「まぁまぁ、取り敢えず向こうの人たちは争う気はないみたいだし落ち着きましょ」

 

優しく子供に呼び掛けるような母性溢れた言動にようやくラフタリアたちは警戒を解いて武器をしまう。

 

「貴方たちもナオフミ様と同じく…」

「あの、サトゥー様という方を知りませんか?」

「もしかしてハジメも…?」

「多分そうだと思うよ」

「ところで、誰かマーくんを見かけなかったかしら?」

 

全員が同じ立場だと理解した5人はそれぞれ、尚文とサトゥー、ハジメと真人もこの世界にいると理解した。

 

「尚文?サトゥー?ハジメ?マーくん?」

「そいつらが俺たちと同じ立場か…あ、ちなみに俺佐藤って名字なんだけど」

「サトウではなくサトゥーです!」

「うぉっ!?わ、悪かったって!」

 

自分の名字が佐藤だとカズマが明かすもリザが凄い剣幕で詰めよって来た為慌てて謝った。

 

「なぁ、その尚文とサトゥーとハジメとマーくんってヤツらは何者なんだ?」

 

ラフタリアたちが必死になって探している3人について詳しく聞こうとカズマは質問をした。

 

するとラフタリアが一呼吸置いてこう答えた。

 

「ナオフミ様は盾の…」

「え?何?」

 

「…勇者様です!」

 

「勇者ということは、英雄とかそういう類いの者か?」

「俺TUEEE!みたいなヤツなのか?」

「そんなんじゃありません!ナオフミ様は世界を救うために召喚されたのに裏切られて、濡れ衣を着せられ迫害されて…!」

「ハードモードだなぁ…!」

 

尚文の事情を知ったカズマは会ったことのない彼に哀れみの感情が込み上げてしまう。

それを聞いたユエと香織は目を見開いた。

 

「そのナオフミって人、ハジメに似てる」

「と言うと?」

「私たち…ユエさんは違いますけど、私の学校のクラスメイトたちはトータスという異世界に召喚されたんです。でもある事件でハジメくんは裏切りにあって、たった1人で魔物の巣窟の奈落というところへ落ちてしまって」

「そちらさんもハードモードだったか~」

 

ハジメも尚文と同じように裏切りにあった事情を知ったカズマは哀れみの感情が更に込み上げてしまいリザも感化されてしまう。

 

「成る程、そのような事情があるのですか…」

「君は確かサトゥーという者を探しているようだが、どのような人物なのだ?」

「…私は見ての通り獣人なのですが、そのせいで周囲から嫌われて奴隷になっていたのです。そんな私をご主人であるサトゥー様は誰よりも優しく接してくれて私を買ってくれたのです」

「そうだったのですか…」

 

嘗て自分も同じように奴隷だったためラフタリアは同情してしまう。

 

「えっと…そちらさんの探してるマーくんってどんな人?」

「マーくんは私の自慢の息子なの」

「………えっ?まさか、君は母親なのか…?」

「えぇ。何でもマーくんがゲームの中に転送されるっていうから心配で一緒に転送したの」

「なんという過保護!?」

 

息子と一緒にゲームの世界へ転移した真々子に流石のアインズも動揺を隠せない。

色々事情がありそうな面子ではあるがなんとしてでも仲間と会いたいという気持ちは同じだった。

 

「とにかく!私はナオフミ様を探さなくてはならないのです!」

「私もご主人様と仲間たちを見つけないといけないんです!」

「私だってマーくんとポータちゃんたちを見つけないといけないの!」

「私はハジメさえ見つかればそれでいい」

「ユエさん!?シアさんたちも見つけないと!」

 

5人は各々に喋り出し尚文たちを見つけてなければと勢いが凄かった。

このまま放っておくのは後味が悪いためアインズとカズマは尚文たちを探すことに協力しようとした。

 

「じゃ、一緒に探すの手伝ってあげるよ」

「本当ですか!?」

「ありがとうございます!」

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

場所は再び校庭へ戻り、野球対決もかなり盛り上がってきていた。

ピッチャーを努めるヴィーシャに対し代打に立っているのはマーレ。

 

「フッ!」

 

ヴィーシャは大きく振りかぶり第一球を投げた。

 

「わぁっ!?」

「ストライーク!」

 

マーレは自分の杖をバット代わりにして思い切り振るも空振りボールはキャッチャーのダクネスのグローブへと吸い込まれていった。

 

「何でだ…!?俺はただ、倒れている女性を助けようとしただけなのに…!」

「げ、元気出して下さいグランツさん」

 

一方ベンチではみんなから冷たい視線を受け心に傷を負ったグランツをルルが励ましていた。

ちなみにアリサとティオとワイズはその隣で野球を観戦している。

 

そんな状況の中、校舎からアインズとカズマ、ラフタリアとリザ、そしてユエと香織と真々子の7人が出て来た。

何処から探そうかと辺りを見渡すと、階段にアクアが座り込んでいた。

 

「お、アクアじゃないか。あっちにいるのは…」

 

アクアの視線の先を見るとそこには、

 

「わぁーーーい!」

「うぉぉぉぉぉ!」

「いけいけーーー!」

「わぁぁぁぁぁ!?」

「速い~~~!?」

「楽しいのです!」

「もっともっとー!」

 

「デカイ鳥ーーー!?」

 

スバルとアウラ、タマとポチ、ミュウとポータを背中に乗せたフィーロが駆け回っていた。

タマはスバルに、ポチはアウラに、ミュウはポータに肩車をしてもらっている。

 

「フィーロ!?」

「タマ!ポチ!」

「ミュウちゃん!?」

「無事だったんだ!」

「ポータちゃん!」

「あぁ仲間か、よかったよかった」

 

ラフタリア、リザ、ユエと香織、真々子は探していた仲間を見つけると急いで階段を下りて行った。

 

すると駆け回っていたフィーロが急停止して名前を呼ばれた方を振り向くとラフタリアがこっちへ走って来ていた。

スバルとアウラは急にどうしたんだとフィーロの様子を伺うと、体から煙を吹き出して乗っていた6人をも巻き込んだ。

 

『うわぁ!?』

 

煙が晴れていくとそこには、

 

「ラフタリアお姉ちゃん!」

 

なんと白い服を着こなし背中から白い羽を生やした金髪の少女が現れた。

そう、フィーロは人間へと姿を変えることが出来るのであった。

フィーロはラフタリアの元へと走っていった。

 

「おぉ!変身型!凄い欲しい!」

 

人間に変身できるフィーロにアウラは目を輝かせ益々欲しくなった。

 

「タマ!あれはリザなのです!」

「リザ~?」

「あ!ユエお姉ちゃんと香織お姉ちゃんなの!」

「ママさん!」

 

更にポチとタマとミュウとポータの4人もフィーロの後を追うようにリザとユエと香織と真々子の元へ走っていった。

そして全員が合流すると互いの安否の確認や他の仲間を見かけなかったなど様々な話をし出した。

 

「彼女たちはそれぞれ尚文、サトゥー、ハジメ、マーくんという者たちを探しているようだ」

「じゃあやっぱりそいつらが九内先生が担当する4組と1組の転校生か」

「そういうことだな」

 

ラフタリアたちの事情を階段を下りたアインズから聞いたスバルは4組の生徒と1組の生徒なのだと理解した。

 

「あと一球!」

 

一方野球の方はというと、既にヴィーシャがツーストライクを決め残すは一球の状況になっていた。

 

「これで、終わりです!」

 

決着をつけようと言わんばかりにヴィーシャは渾身の力でボールを投げた。

しかし、このまま終わるマーレではない。

握る力を強め杖を思い切り振った。

 

「えぇい!!」

 

すると杖は見事にボールを捉え、守備のケーニッヒが全く反応できない打球が、顔面スレスレで一直線に飛んでいった。

ボールは直撃すれば怪我では済まない程速度を増していき、更にその先にはラフタリアたちがいた。

 

「危ねぇ!!」

 

『!!??』

 

スバルの呼び掛けに反応したラフタリアたちだったがボールはすぐそこまで近づいておりとても避けられる距離ではなかった。

ならばせめてとラフタリアたちはフィーロの壁になるように抱きしめた。

 

もう直撃してしまうと誰もが思ったその時だった。

 

 

 

 

 

「エアストシールド!!」

 

 

 

 

 

突如ラフタリアたちの前に立体ホログラムのような緑の大きな盾が出現しボールを防いだ。

しかしボールの勢いは止まらずすぐに盾を破りそうであった。

 

「これは…!?」

 

突然出現した盾にアインズが驚いていると、階段の上にカズマとアクアの間に盾の勇者の尚文が立っていた。

あの緑の盾は尚文のスキルの1つ『エアストシールド』というもので、周囲の空間の任意の場所に盾を1枚出現させることができる。

尚文は階段から軽々とアインズとスバルの前へ飛び降りラフタリアたちの元へ走り出した。

 

「ほう…!」

 

一方、エアストシールドはボールの勢いに負けて徐々にヒビが入りこのままでは破られてしまう程になっていた。

だが、これも想定済みなのか尚文は次のスキルを発動した。

 

「セカンドシールド!!」

 

尚文の呼び掛けにより、エアストシールドの後ろにもう1枚の盾『セカンドシールド』が出現した。

そしてエアストシールドは破られボールはセカンドシールドへ衝突した。

しかしボールは同じようにセカンドシールドへもヒビを入れていき再び破られてしまった。

 

ボールがラフタリアたちへ飛んでいくもたどり着いた尚文が立ち塞がり右手の盾を構えた。

 

「くぅっ!?」

 

そしてボールは尚文の盾へ直撃するもその勢いが止まることはなかった。

尚文はなんとか堪えるもボールの勢いが凄まじいせいか中々押しきれずにいた。

 

「大丈夫か!?」

「そのまま抑えてろ!!」

「!?」

 

すると聞き覚えのある声が耳に入り辺りを見渡すと、サトゥーと真人の2人がこちらへ向かって来ていた。

 

「それっ!!」

「こんのぉ!!」

 

サトゥーは右足、真人は剣を抜いて同時にボールを空高く打ち上げる。

 

一般人ではあり得ない身体能力だが、元の世界でのサトゥーのレベルは310。

元の世界でも信じられない程の高レベルのためある意味チートに近いのである。

 

そして真人は普通の勇者とはいえ、とある強敵と対峙したことがあるため打ち上げることができたのである。

 

更に追い討ちを掛けるかのように銃声が聞こえたと同時にボールが粉々に散っていった。

 

「また会ったな」

『!!』

 

声のした方を向くと、アインズとスバルの前にリボルバーを向けたハジメが立っていた。

 

ハジメの能力は『錬成師』

様々な武器を造り出すことができる能力であり、ハジメが持っているリボルバーも錬成で造ったものである。

ハジメはリボルバーをしまい尚文たちの元へと歩いていった。

 

「多少の魔力が籠ったボールを真っ正面から防ぐ者、そのボールを軽々と宙へ蹴りあげる者が2人、そしてあの距離を容易く狙い撃ちをできる者。おそらくアイツらが尚文とサトゥーとハジメとマーくんという者たちなのだろう」

「ありゃ絶対ただ者じゃねぇだろ」

 

尚文の盾のスキル、サトゥーと真人の身体能力、ハジメの正確な狙い撃ちを見たアインズは感心するもスバルは4人の能力を見て唖然となってしまう。

 

ラフタリアたちは一向に衝撃が来ないことに首を傾げてしまい恐る恐る目を開けると、目の前に尚文とサトゥーとハジメと真人の4人が立っていた。

 

「ナオフミ様!」

「ご主人様!」

「ご無事でしたかご主人様!」

『ご主人様ー!』

「ハジメ!」

「パパ!」

「ハジメくん!」

「マーくん!」

「真人さん!」

 

「ラフタリア!フィーロ!無事だったんだな!」

「リザ、タマとポチも無事でよかった!」

「ユエ、ミュウ、白崎も大丈夫か?」

「母さん、ポータ、どこも怪我してないか?」

 

尚文たちはラフタリアたちに無事かどうか確認していると、

 

「サトゥー!」

「マスター!」

「ハジメさーん!」

「真人くーん!真々子さーん!ポータさーん!」

 

「アリサ!みんないるよ!」

「分かってるわよ!ご主人様もちゃんといるわ!」

「皆無事であったか!」

「やっと見つけたわよ!」

 

階段からミーア、ナナ、シア、メディが駆け下り、野球のベンチからルル、アリサ、ティオ、ワイズがこちらへ走って来ていた。

 

「ミーア!ナナ!アリサ!ルル!」

「メディ!ワイズ!」

「なんだ、お前ら無事だったのか」

「ハジメさん!?私たちに対する態度冷たくないですか!?」

「こんな雑な扱いをするとは流石はご主人様なのじゃ!」

 

これでようやく全員が無事に仲間と再会し自然と笑顔になっていた。

 

「ようやく全員揃ったか」

 

『!!??』

 

すると、不意に声を駆けられ全員がとっさに振り向くと、いつの間にかアクとルナを引き連れた九内が立っていた。

尚文とサトゥーとハジメと真人の4人は突然現れた九内を警戒し、ラフタリアたちの前に立った。

しかしそんなことなどお構い無しに九内は淡々と話し出した。

 

「初めまして。私は君たち4組の担任の九内伯斗という者だ。これから長い付き合いになるからよろしく頼むよ。因みに尚文くんたちは1組の転校生ということになっているからすぐに向かうように」

 

相手を見下さず、そして挑発せず九内は簡単な自己紹介をした。

九内に戦闘の意思がないと判断した尚文たち4人は再びラフタリアたちと向かい会った。

 

「聞いてくれみんな、この世界には学園生活をしなければならないというルールがあるらしいんだ」

「はい、ベアトリスという方からお聞きしました」

「はっきり言ってまったくワケが分からない」

「うん。モンスターみたいな人たちも大勢いるし、本当にどうなってるんだろう?」

「…だが、幸い俺たちはそれぞれの仲間たちと一緒にいる」

「一先ずは協力して様子を見ていこう」

「はい!」

「分かった!」

「もちろんよマーくん!」

 

尚文たちの提案にラフタリアたちはそれぞれ顔を見合せ全員で協力しようと意見が一致した。

 

「話はまとまったか?」

 

九内からを掛けられるも尚文たちは決して動揺せず向かい会いそして、

 

「あぁ。分からないことが多すぎるが、学園生活は守っていくことにする」

「それが元の世界に戻る方法なら何だってやるさ」

「アンタが何者か聞くつもりはないが、これからよろしく頼むぞ、九内先生」

「よろしくお願いします」

 

「よろしい。では生徒諸君、改めてよろしく」

 

元の世界に戻るまで全員は学園生活を共に過ごすことになったのだった。

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