~翌日~
「ということで、この4組のクラス委員長に選ばれたミュウくんに改めて拍手を」
「よろしくなの!」
朝のホームルームにて、昨日のクラス委員選挙で見事に委員長に選ばれたミュウが教卓の前に立ち挨拶をしており、教卓の後ろにはクラス委員となったルナと真人とルルとハジメが立っている。
そんなミュウたちに対して4組全員は拍手を送った。
「よかったなミュウ、これから頑張ろうな」
「えへへ」
ミュウが委員長に選ばれたことで自動的にクラス委員となったハジメから褒められて、ミュウは無邪気に笑ってしまう。
「まさか本当にミュウさんが選ばれるとは…」
「とんだどんでん返しじゃのう…」
シアとティオもミュウが選ばれるとは思っていなかったため少し驚いている。
「どういう訳かダントツだったもんな…」
「悔しいけど仕方ないわね…っていうか自分でキャッチコピー考えたの私とルルだけだったじゃない!アンタたちは保護者が考えたヤツだったし!」
「あれは母さんが勝手に書いたんだよ!」
「まぁまぁ2人とも、落ち着いて下さい…」
クラス委員選挙のキャッチコピーに関して口論している真人とルナの間にルルが仲裁に入った。
因みにクラス委員選挙の後、その他の委員会も決めてしまっている。
「では昨日決まった委員会を黒板に書き出しているからみんな確認するように」
クラス委員長…ミュウ
副委員長…真人・ルナ
書記…ルル
補佐…ハジメ
風紀委員…リザ・ユエ・ポータ
体育委員…ティオ・ナナ
飼育委員…タマ・ポチ・ワイズ
図書委員…アク・ミーア
保健委員…香織・メディ
給食委員…真々子・アリサ
放送委員…サトゥー・シア
「見事にバラけたわね」
「なんか仕組まれてる感じがするが、流石に考えすぎか…」
タマとポチ以外の全員が交流が少ない面々での編成になったことに偶然すぎるのではないのかとサトゥーとアリサは思ってしまう。
「それでは今から1時限目を始める。教科書58ページを開きたまえ」
そして九内は黒板に書き出された委員会の編成を消し1時限目の授業を始めたのであった。
◆◆◆◆◆
午前の授業を乗り越えて昼休み。
学園内の食堂を多くの生徒たちが利用している中、1組の尚文は1人テーブルに座りながら日替わり定食を食べていた。
「…久しぶりだな、この味」
異世界に飛ばされてから日本食を口にしていなかった尚文にとっては懐かしい味である。
別に異世界の料理がマズイという訳ではないが懐かしいから味に尚文が浸っていると声を掛けられた。
「相席いいか?」
「!」
尚文が顔を上げると4組のサトゥーとハジメと真人がテーブル越しに立っており、3人とも日替わり定食が載っているトレーを持っていた。
今から昼食を取ろうとしていた時に尚文のテーブルが空いていたため声を掛けたのだろう。
「…好きにしろ」
「そうさせてもらう」
尚文からの了承を貰った3人は日替わり定食をテーブルに置いて椅子に座った。
4人が揃うのはこれで3回目であり第三者から見たら何か繋がりがあるのではないのかと思ってしまう程である。
4人が黙々と日替わり定食を食べる中、真人が口を開いた。
「えっと…尚文って確か1組だったよな?どんなクラスだったんだ?」
誰も喋らないことに堪えきれず何か話題を振ろうと1人だけ違うクラスの尚文に1組の様子を聞くことにした。
質問をされた尚文は嫌そうな表情をせずに淡々と答えた。
「どんなクラスも何も、メイドやら騎士やらで明らかに普通じゃない連中が揃っていたぞ」
ナザリックの戦闘メイド『プレアデス』やチート級の加護を兼ね備えた『ラインハルト・ヴァン・アストレア』など個性が強すぎる面々が1組に揃っているため普通ではないとしか言い様がない状態である。
しかし1組の生徒たちは尚文たちをすんなり受け入れているためトラブルなどは発生しておらず学園生活を送っている。
「まぁラフタリアとフィーロはすぐに馴染んだから今のところ問題はないがな」
「で、その2人は?」
「あっちにいるぞ」
今は尚文1人だけで仲間の2人は何処にいるのかとハジメが聞くとサトゥーが向こうのテーブルを指差した。
それにつられて真人も向こうのテーブルを見ると、
「フィーロ!行儀が悪いわよ!」
「タマとポチもです。溢さずに食べてください」
『はぁ~い』
ラフタリアとフィーロとリザとタマとポチが一緒のテーブルに座りサンドイッチを食べていた。
遠くいるためか尚文たちに気づいている様子ではなかった。
サンドイッチを夢中に食べパン屑をポロポロと床に落としてまっているフィーロとタマとポチを正面に座っているラフタリアとリザが注意をしている。
注意を受けてしまったフィーロたちは素直に返事をして皿の上でパン屑を落とさないようにサンドイッチを食べるのであった。
「尚文様がいないからってマナーを破っていい訳じゃないのよ」
「その通りです。ご主人様の目の届かない場所でもマナーは守らなければなりません」
「やはり、私たちがしっかりしないといけませんね」
「えぇ。この学園生活のルールを守り共用するのも風紀委員である私の努めでもありますから」
真面目で面倒見が良く亜人という点でラフタリアとリザは一致しており気が合うためか既に仲良くなっていた。
「タマちゃんポチちゃん!ハムレタス美味しいね!」
「シャキシャキ~?」
「タマゴも美味しいのです!」
そんな2人を余所にフィーロたちはどんどんサンドイッチを食べており残りも僅かとなっている。
「やっぱり亜人同士だと気が合うな」
「確かに。リザと似てるし、タマとポチと同い年くらいだしな」
その光景を見ていた尚文とサトゥーは思わず笑ってしまう。
それはまるで自分の子供に新しい友達ができたことにホッとしている親のようであった。
「これならアリサたちも大丈夫そうだな…って、どうしたんだ2人とも?」
リザたちの様子を見て安心しているサトゥーであるが、対照的にハジメと真人は深刻そうな表情を浮かべていた。
「いや、俺の仲間なんだが…少し問題があってだな。トラブルを起こしてなきゃいいんだが…」
「俺の方も、母さんが何か仕出かしてなきゃいいんだけど…」
残念ウサギのシアとドMのティオ、天然の真々子が何か問題を起こしてしまいそうなことを想像してしまっているためハジメも真人も心配になっているのである。
「多分大丈夫じゃないか?彼女たちだって常識くらい持ってそうだし」
「あの馬鹿ウサギと変態を甘く見るな」
「それに母さんに至っては能力を使っていないか不安なんだよ」
「能力?」
サトゥーが宥めるも仲間の異常性を誰よりも理解しているハジメには不安しかなかった。
更に真人も母親である真々子があの力を振りかざしていないか心配していると尚文がそれに反応する。
母親が同伴してゲームの世界へ転移してきたことまでは聞いていたが能力までは聞いていなかったため気になったのである。
そんな尚文に真人はため息をつきながら答えた。
「俺の母さんは、通常攻撃が全体攻撃で2回攻撃できるんだ…」
『………は?』
◆◆◆◆◆
「バットはリストの本数通りにあったと報告します」
「サッカーボールと野球のボールも問題ありません」
その頃、校庭にある体育倉庫ではコキュートスとダクネス、ヴァイスとノイマンとケーニッヒ、そしてティオとナナが体育倉庫内の備品の確認をしていた。
何故このようなことをしているのかというと、体育教師から体育倉庫の備品の確認をするように言われたため2組と4組の体育委員である7人がすることになったのである。
「全部数え終わりました」
「備品の数は問題ありません」
「ゴ苦労。念ノタメニモウ一度確認シテオコウ」
「手伝います」
倉庫内のすべての備品を数え終えたことをケーニッヒとノイマンが報告するとコキュートスはもう一度備品を確認しようとダブルチェックを始めヴァイスはそれを手伝おうとする。
容姿が恐ろしいとはいえ真面目な性格であるため教師陣からの評価はそれなりに良い方である。
その姿に同じく真面目なナナが感心していると、ダクネスとティオの様子がおかしいことに気がついた。
「どうされましたか?」
もしかしたら体調を悪くしたかもしれないと声を掛けた時、2人揃って口を開いた。
「このような密室された空間に私を連れ込むとは中々やるではないか!そしてこのまま嫌がる私を無理やり押さえつけて辱しめを!くっ…!だが悪くないぞ!」
「よってたかって数の暴力で妾を辱しめるその暴挙!ハァン!想像するだけで身体が疼いてしまうのじゃ!」
ダクネスもティオもドMな性格のため体育倉庫の状況からいかがわしい妄想をしてしまっており身体をクネクネと動かしている。
2人の言動に常にポーカーフェイスのナナも戸惑ってしまう。
「おぉ!ティオ殿は話が分かるな!」
「ダクネス殿こそ!中々の妄想っぷりじゃぞ!」
「…この2人の対処法をお教え願います」
「放っておいて構いませんよ」
「だな」
意気投合している2人にナナが困っているとダクネスと付き合いが長いケーニッヒとノイマンが無視を貫くようにと言う。
「ム?」
ナナたちが話している中、備品の再確認をしていたコキュートスが足元に何かいることに気がつき、よく見てみるとネズミがこちらを見ていた。
「ナンダ、ネズミカ…」
「うわっ、こんなところにネズミが…!」
すると同じく備品の再確認をしていたヴァイスが棚にネズミがいることに気がつき少し驚いてしまう。
それを皮切りにサッカーボール籠の隙間、棚、屋根裏からと様々な箇所から大量のネズミが現れた。
「コレハ一体…?」
「何故こんなにネズミが…!?」
「しかもいろんなところから…」
「まさか俺らが備品の整理をしていたからか出てきたのか…!?」
「その可能性は高いです」
「あぁ!今からこのネズミたちが私たちの身体を貪るというのだな!」
「服の隙間から入り込んで身体中を這いつくばるとは!」
約2名変態混じりなことを言っているが倉庫内の大量のネズミにコキュートスたちが動揺しているとネズミたちはコキュートスたちを避けながら倉庫から一斉に出ていった。
「………た、大変だ!あのネズミたちが校舎に入ったら大騒ぎになるぞ!」
呆然となっていたがケーニッヒが我に返り緊急事態であることを理解して声を上げる。
大量のネズミが校舎に入ってしまえば間違いなくパニック状態に陥ってしまう。
すべてのネズミを捕まえるべくコキュートスたちが倉庫から出るとネズミたちは既に校庭を駆け回っておりすべて捕まえるのは至難である
「流石二コノ数ハ骨ガ折レソウダ…」
「ですが私たちがすべて捕まえなくては」
見ただけで100を越えるネズミを見てコキュートスは弱音を吐いてしまうもナナが後押しをして捕まえようとした時だった。
「あら?一体何の騒ぎ?」
偶然倉庫近くを通りかかっていた真々子が校庭を駆け回っているネズミたちを見て首を傾げてしまう。
「奥方!少し離れていてください!ここは我々にお任せを!」
美人な真々子を見たヴァイスはカッコつけようと自信満々にネズミを捕まえようとする。
しかし状況を察したのか真々子は笑顔でこう答えた。
「大丈夫よ。私に任せて」
そう言って真々子はコキュートスたちの前に立ち校庭を駆け回るネズミたちを見る。
一体何をするつもりなのだろうとコキュートスたちが様子を伺うと、真々子はどこからともなく自身の武器である『母なる大地聖剣テラディマドレ』と『母なる大海の聖剣アルトゥーラ』を取り出した。
「えいっ」
2本の聖剣を手に取った真々子がテラディマドレを振るうと校庭の地面が剣山のようにあちこちが尖りすべてのネズミに直撃した。
「やぁっ」
次にアルトゥーラを振るうとショットガンのように水飛沫が校庭へ飛んでいくとまたしてもすべてのネズミたちに直撃した。
その光景を見てコキュートスたちは言葉を失ってしまう。
真々子が持っている聖剣は1本だけで全体攻撃が可能であるがそれを2本も持っているため2回攻撃ができるのである。
攻撃を受けたネズミたちは絶命していないもののボロボロの状態である。
そんなネズミたちに真々子は優しく声をかける。
「ここは貴方たちが住んでいい場所じゃないわ。森に帰りなさい」
幼い子供を優しく叱りつけるように真々子がネズミたちにそう言うと、ネズミたちは一斉に駆け出し校門から出ていった。
そんなネズミたちに軽く手を振る真々子を見てコキュートスたちは各々呟いてしまう。
「見事ダ。アレダケノ標的ヲ寸分モ狂イナク外サズ二スベテ攻撃ヲ当テルトハ」
「聖母《マリア》だ…」
「聖母が光臨なされた…」
「だな…」
◆◆◆◆◆
一方その頃4組の教室では、アクとミーアとユエミュウとポータがおり、いわゆる女子トークをしていた。
「成る程!そのような出会いがあってユエさんとミュウさんはハジメさんと、ミーアさんはサトゥーさんと共に旅をしているのですね!」
「とても素敵なお話ですね!」
「ハジメはわたしをあの場所から助けれくれた。だから好き」
「うん!パパはすっごく優しいの!」
「サトゥーも、みんなに優しい」
4人はそれぞれの世界の話をしており、アクとポータはユエとミュウとミーアからそれぞれの出会いの話を興味深く聞いていた。
ユエは奈落の底で封印同然に閉じ込められていたところをハジメに助けられ、ミュウも人身売買の組織に拐われた時にハジメに助けられ、ミーアは掛かっていた呪いをサトゥーが解いてくれた為、3人はハジメとサトゥーにとても感謝している。
「それにアクさんのお話も素敵です!危ないところを魔王先生に救われて!」
「そ、そうですかね…?えへへ…」
次にポータは先程のアクの話に食い付き、アクは少しだけ照れてしまう。
アクはかつて村の人々に悪魔の生け贄として捧げられようとしていたところを九内に助けられて、それ以来彼と共にいることに幸福を感じている。
ポータもまた、攻撃向きではない旅商人である自分を受け入れてくれた真人と真々子にとても感謝している。
それぞれの話で盛り上がっているとミュウが首を傾げて考え出した。
「う~ん…?」
「ミュウ?どうしたの?」
「えっとね。何か忘れてる気がするの………」
◆◆◆◆◆
その頃、図書室では…
「あぁもう!あの3人は委員会の仕事サボってどこ行ってんのよ!?」
「ル、ルナさん…図書室では静かにしないと…」
「そうよ。それにミュウはまだ子供でしょ?大目に見てあげなさいよ」
「多分忘れてるのよ。真人にはアタシから言っておくから」
ルナとアリサとルルとワイズの4人が机の上に積まれている書類の整理をしていた。
4人が行っているのは委員会の仕事。
本来なら委員長を先頭にクラス委員が行わなければならないのだが、当の委員長であるミュウに加えて副委員長の真人、補佐のハジメが来ていなかった。
一向に来ない3人にルナが声を上げてしまい、それをルルとアリサとワイズが宥める。
「ハァ…悪いわね、クラス委員でもないアンタたちに手伝わせて」
「別にいいわよ。何もすることなかったし」
「そういうこと。あれ?ねぇルル、ここってどうすればいいんだっけ?」
「えっと、そこはこう書いて…」
アリサとワイズに手伝って貰い徐々に減ってきているため今のところは大丈夫である。
そんな中、ワイズがルナに話し掛けた。
「ねぇルナ、少し聞きたいことがあるんだけど…」
「何よ?」
「その…魔王先生って本当に魔王なの?」
アクとルナが九内のことを魔王と呼んでいるため、どうしても気になっていたワイズは聞くことにした。
それはアリサとルルも同じであったが、とても九内が魔王と呼ばれる人物には見えないため判断しづらかったのである。
そのせいで九内は『九内先生』から『魔王先生』と呼ばれるようになったのは別の話になる。
そんな3人に対してルナは淡々と答えた。
「別にアイツは悪政を働いている訳じゃないわよ。簡単に言えば、勇者とか魔法使いとかの職業みたいなものと思えばいいわ」
『どんな職業よ!?』
ルナの回答に対してアリサとワイズは声を揃えて突っ込んでしまう。
実際に九内は悪行などを働いておらず、むしろ貢献しており多くの人々から感謝されたりしている。
「まぁとにかく、特別悪いヤツって訳でもないし」
「お優しい方なのですね」
アリサたちの九内に対しての見方が変わった時だった。
「どうしてですかぁ~!?」
「ダメなものはダメなのよ!」
『?』
入り口から騒ぎ声が聞こえ何事かと4人が首を向けると、ベアトリスが図書室に入ろうとしているシアを入れないように通せんぼをしていた。
「ベティは前にも言ったのよ!お前はしばらくここへは立ち入り禁止なのよ!」
「そこをなんとかお願いしますぅ~!」
シアは前回図書室で騒いでいた為、ベアトリスから図書室への出入り禁止を言い渡されているため入ることができないのである。
それでも入ろうとしているシアをベアトリスが入らないようにしている。
「謝りますからお許しを!」
「うるさいのよ!とっとと帰るのかしら!フンッ!」
しつこいシアにベアトリスはとうとう扉を閉めてしまい強制的に閉め出した。
「………仕事、早く終わらせましょ」
「そうね……」
その光景を見ていた4人は、何も見なかったことにして委員会の仕事に取りかかるのであった。
◆◆◆◆◆
「では香織さんも異世界へ飛ばされたのですね」
「うん、だけどメディさんはゲームの世界に飛ばされたんだね」
更に変わって校舎内の廊下。
香織とメディの2人が歩きながら互いの現状を語り合っていた。
2人ともお互いが日本の出身だと分かると会話が弾み、更に治癒系の能力が使えるということで意気投合しかけている。
「そうですか、そこまでハジメさんのことが好きなのですね」
「うん、初恋の人だから」
更に恋ばなにまで発展していくと前からスバルが歩いてきて声を掛けられる。
「ん?アンタらは確か、4組の…」
「えっ?あ、もしかして違うクラスの…?初めまして、白崎香織です」
「私はメディと言います」
スバルに気がついた香織とメディはお辞儀をしながら自己紹介をする。
それに対してスバルも自己紹介をする。
「俺の名はナツキ・スバル!天下不滅の無一文だ!」
このスバルの自己紹介は2組でも行ったが見事にスベり、ラムに鼻で笑われてしまう始末である。
それでもめげずにやるのはある意味で尊敬するべき点であるかもしれない。
3人の間に微妙な空気が流れ、スバルの自己紹介に香織が戸惑っていると、
「………ふふっ、面白いですね」
「えっ…?」
突然ワイズが吹き出し笑い出した。
こんな掴みが分かりづらい自己紹介に笑ってしまうワイズに香織は驚いてしまう。
「おぉ!まさかウケるとは!やっぱ分かる人には分かるもんだな!」
「えぇ、とてもユニークな自己紹介ですね」
そして当のスバルも自己紹介がウケたことに喜んでしまう。
「あ、すみません香織さん。私用事思い出したので失礼しますね」
「う、うん……」
そしてメディは香織とスバルに軽く会釈をしてその場から立ち去っていった。
すると香織がスバルに質問をした。
「あの…もしかして、貴方も日本人…?」
「まぁな。ってことはアンタも日本から来たってことか…」
互いの名前を聞いた時に薄々そうではないかと推測していた為予想が当たり日本人がまだいることにホッとしてしまう。
「まぁ何はともあれ、これから仲良くしていこうぜ!」
「うん!こっちこそよろしくね!」
同じ日本人同士、これからの学園生活を乗りきろうとした時だった。
不意に何処からか音が聞こえてきた。
「ん?何の音だ…?」
耳を澄ませると何かを叩くような音で、階段の方から聞こえていた。
一体何の音だろうとスバルと香織が恐る恐る1階へ続いている階段の踊場を覗くと、
「ったく、せっかく香織さんと仲良く話してたのに馴れ馴れしく話し掛けて…そこはスルーでしょ?ホント空気読んでほしいわ…!それに自己紹介でつい吹き出したから絶対香織さんから少し引かれてるし…マジふざけんなよあの人…!」
メディがブツブツと何かを言いながら壁を何度も蹴っていたのであった。
よく見れば顔から清楚らしさがまったくなくドス黒いオーラが出ており、よく聞けば先程のスバルに対しての愚痴を溢していた。
清楚でおしとやかに見えるメディは実は腹黒い性格を持っておりストレスを発散するためにこうして何かに八つ当たりをしているのである。
メディの裏の一面を目撃してしまった2人は覗くのをやめて向かい合い、
「………俺たちは、何も見なかった。いいな?」
「知ってはいけないことって、本当にあるんだね…」
◆◆◆◆◆
更に変わって職員室。
学園の教師たちがいる場所には当然4組の担任である九内の姿もあり書類の整理をしていた。
ルナたちがしている委員会の仕事よりも多くも、九内は難なくこなしている。
「ふぅ………」
一通り仕事を終わらせて天井を仰ぐと、机にコーヒーが入ったカップが置かれた。
「お疲れ様です、長官」
九内はカップを置いた人物を見ると、そこには九内の側近の1人にして保健教師の『桐野悠』が立っていた。
「わざわざ淹れてくれたのか、すまないな悠」
「これも側近としての務めですから。何でしたら残りの仕事はすべて私が」
「悠、何度も言わせるな。ここでは私は4組の担任なのだ。だからこれは私がやらなければならないのだよ」
悠が淹れてくれたコーヒーを一口飲んだ九内は仕事を率先して行うと言い切る。
この学園生活に置かれた立場を全うするべく教師としての役割を果たそうとしている九内に悠は謝罪をする。
「出過ぎたマネをして申し訳ございません」
「おめぇは別の世界に飛ばされても長官一筋だな」
そこへ九内のもう一人の側近にして体育教師の『田原勇』が話に加わった。
田原が話しかけると悠は呆れた視線を向ける。
「長官の疲れを和らげるのも側近としての役割でしょ」
「ここじゃ俺たちは長官の側近じゃなくて同僚だ。役割をまっとうしとけ」
「それなら大丈夫よ。同じ保健教師のウィズ先生ともうまく連携が取れてるから」
この世界での役割について悠と田原が言い争っていると、いつの間にか田原の背後に別の女性が立っていた。
「田原先生」
「うぉ!?」
背後から急に声を掛けられ驚いた田原が振り向くと、真人たちをゲームの世界へ引き込んだ張本人にして数学教師の『シラセ』が立っていた。
「お、脅かすなよシラセ先生…!なんか俺に用か?」
「先程2組と4組の体育委員の生徒たちが体育倉庫の備品を数え終わったとお知らせしまーす」
少し驚いている田原にシラセはナナたちが持ってきた体育倉庫の備品のリストを差し出した。
「あぁもう終わったのか、どれどれ………」
リストを受け取った田原は目を通して何か不備がないかチェックを始める。
するとここで九内が口を開いた。
「何はともあれ、我々にはそれぞれの役割がある。しばらくはまっとうしようではないか」
悠も田原もそれぞれ保健教師と体育教師の役割を果たしているが、九内は再認識させるために改めて宣言したのであった。
「もちろんです」
「ま、気楽にやるわ」
「共に頑張りましょう」
「何故シラセ先生まで加わっているのですか?」
悠と田原に便乗してシラセまで返事をしていることに九内がツッコミを入れている中、そこから少し離れた場所では生徒指導の『エーリッヒ・フォン・レルゲン』が自分の机に座り真剣な表情をしていた。
(………先程のあのエミリアくんのあの笑顔、なんという輝きだ!あの幼女の皮を被った悪魔とは大違いだ!)
先程2組のクラス委員長のエミリアが提出書類を持ってきたのだが、その時に見せた笑顔が脳裏に焼きついている。
同じ世界にいるターニャに対してトラウマがあるレルゲンにとって、エミリアの笑顔はまさに心を癒す天使の微笑みであった。
(エミリアくん…!マジ天使か…!)
「レルゲン先生…」
「!」
エミリアの笑顔を思い出し感極まって泣きそうになりながらも目頭を抑え涙を堪えていると、ハジメがいた世界の担任にして4組の副担任の『畑山愛子』が声を掛けた。
先程のエミリアの笑顔を愛子も目撃していたため、なんていい子なのだろうと感動していたのである。
「畑山先生…」
何かを察したレルゲンは思わず立ち上がり愛子と目を合わせる。
何も語らずに黙って見つめ合っていると、互いに握手を交わした。
(分かるのですね…!私の気持ちが…!)
(分かります…!私も苦労してきましたから…!)
愛子も性格が劇的に変わったハジメに苦労した為、似た経験をしているレルゲンに同情してしまっている。
何も語らずに目で語り合っており、エミリアの天使らしさに感動していると視線を感じた。
レルゲンと愛子はハッとなり周りを見ると、机越しに1組の担任の『バニル』とサトゥーたちがいた世界の何でも屋の店長にして購買部の店長である『ユサラトーヤ・ボルエナン』がジーッと2人を見ていた。
「な、何ですか…!?」
「………別に」
「気にするでない」
それぞれの場所で様々なことがありながらも生徒たちだけに限らず、教師たちも交流を深めていくのであった。