Fate/SEVENS   作:竹内緋色

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副題 FGO参戦も視野に入れてサーヴァントもマスターも攻撃エモーションは最低5種類は考えろ


SEVENS04

 

 戦いにおいてもっとも重要なことは何か。

 それは戦闘前にどれだけ準備を重ねられるかである。道具しかり。戦略しかり。団体戦しかり。個人戦しかり。

 殊に個人戦で重要なのは戦略である。戦略は時に個人の能力差さえ埋めて余る。個人対個人では常に異常事態が発生しやすい。どれほど運に見放されようともそれを埋めるだけの圧倒的力量をもてばよい。

 ただ、それだけである。

 黄色の王子は冷静に考えていた。

 今の彼には他の王子に勝つという思考はない。緋色の王子と戦闘していたのも彼であるが、緋色の王子との戦闘は己の力量を極める腕試しのようなものであり、そもそもに緋色の王子との戦闘で黄色の王子はこの聖杯戦争に勝機を見出すことを諦めた。

(あんなバケモンがあと6騎……いや、ワイ除いたら5騎なんて絶対ムリ! ワイは戦わへん。あんなん相手しとったら発狂するわ)

 新たに現れた王子は黄色の王子と戦う心づもりでいるようだった。なにより、新たな王子の少女となった人間がそれを望んでいた。黄色の王子はその新たな少女を追って城戸邸まで足を踏み入れたのである。黄色の王子は特にその少女の身を案じていたわけではない。いつの時代も神秘を秘匿するために殺されていく者が存在する。害虫がいれば何か害を与えられたわけでもないのに叩き殺す。益虫である蜘蛛でさえ、気持ちが悪い、部屋を汚すという理由で殺してしまう。そこに特別な感情を持てるほど黄色の王子は特殊な感性を持ち得ていなかった。

「あの子、殺されるの?」

 緋色の王子が去ったあと、しばらくまあるい月を見ていた黄色の王子に少女凛が近づいてきていた。子どものように黄色の王子のジャンパーの裾を引っ張る。

「まァ、そうやろうなァ。基本的に目撃者は殺さんとアカン。聖杯戦争ってのはそういうもんや」

「助けて」

「ムダや」

 凛は黄色の王子に上目遣いで問う。どうして自分は助けてくれたのに、と。

「ゆーけどなあ、自分、死ぬよりもキツイ状態になっとんねんで。あのガキんちょみたいに殺されてもろた方が幸せなくらいや。ま、一度助かっても四六時中命は狙われるやろうけど。あ、自分ら少女の方が危ういねんで。ガキんちょの数十倍は危ない。相手が悪かったら生きとんのか死んどんのかわからん状態で王子をつなぎ留めておく道具にされることだってある。いや、魔術師の狙いはどっちかっちゅーとそっちやろなあ。手加減が下手やさかいつい殺してまうだけで」

「キズナ。使う」

 黄色の王子は凛の差し出した右手を静かに見つめる。そこには王子に絶対命令を下せる三つの権利、キズナが刻まれていた。そのキズナがルビーのような色に光り輝き、凛は黄色の王子に命令を下す。

「あの子を「あー。ナシナシ。助けたるから無駄遣いすんなや、三日たてば元通りみたいな、森山直太朗のなんかやないんやで。あの、あれや。ジャスラック的な奴で思い出せんけど。銀魂なんてなぁ。プリキュアの歌詞でジャスラック書いとんねんで」

 黄色の王子は大きく溜息をつくと凛に背中を差し出す。

「馬ほど早くはないけど我慢してや」

 そして、現在、城戸邸の外で凛を下した黄色の王子は助けようとしたはずの赤の王子の少女に襲われそうになっているのである。

 

 黄色の王子は口で説得するという法をまず捨てた。それは彼が得意とすることであり、咄嗟でもなんとかなると踏んだためである。故に、説得を試み失敗し、戦闘となった時の戦略を構築する。

 敵の獲物は二振りの短剣。間合いは近接。

(剣士と近くでやりあっても勝てへん。ひたすらに間合いを取る。あわよくば逃げる。というか、逃げへんとデッドエンドや)

 FGOにおいて攻撃は三種類に絞られる。Buster、Quick、Artsの三種類。それに加え、スキルと呼ばれる任意で発動できる特殊効果が存在する。

(クラスがないと相手の弱点がわからへん。いや、バーサーカーやと考えるんや。そうすれば生き残るすべが見えてくる)

 しかし、黄色の王子。彼には防御スキルがないのであった。

「ちゅーかなあ! サーヴァントですら3つもスキル持っとるやつなんて稀じゃあ! というか、スキルなんて隠しステータスみたいなもんや! あれ? なんか補正入ったな。矢避けの加護でちょっとかすった程度か、くらいのもんじゃぼけぇ!」

 黄色の王子が最も警戒する攻撃はBuster。Quickの俊足攻撃において懐にもぐられるのも厄介である。

(ヤツは単騎。ということは初手はQuickで星を稼ぐはず。基本はQuick、Arts、Quick。もしくはQuick、Arts、Artsか。剣士やとBuster二枚は確実か。仮に相手がバーサーカーやったら――そんでも初手は星出しかつ宝具溜めやろ。初手を確実に防ぐ。そのためにあわよくば逃げられるまで間合いを稼ぐ!)

 黄色の王子は地面の土を()()し、俊足で間合いを詰めてくる赤の王子の視界に巨大な盾を。腰から足にかけて複数の刀剣を出現させる。そのどれもがローマの剣闘士が使っていそうな年代物である。そんな遺物がまっさらな状態で出現していることが非常に奇妙な雰囲気を醸し出している。

 黄色の王子はバックステップで大きく間合いを取る。

 そのはずであったが――

 耳を塞ぎたくなるほどの破壊音とともに風圧が黄色の王子の鼻をかすめる。宙に浮いていた黄色の王子は地面から噴出される奔流に呑まれ、体の自由を失った。

 肌をこする痛みで黄色の王子は自分が土の上を滑り転がっていたことを認識する。

 月明かりで白く沸き立つ砂煙の中から、目を開き、己の攻撃を一瞬で無力化したものの正体を見極めようとする。地面に伏せた体を起こし、体勢を正す合間も決してそれから目を離さない。

 砂煙の一部が晴れて、得物の先が露呈する。それは巨大な剣先だった。大剣である。

「モンハンの世界でしか見ないような大剣であった」

 その剣の持ち主は剣を振るい、自身に引き寄せる。黄色の王子はそのひと振りの引力に抗うため、足に渾身の力を込める。大剣の一振りとともに砂煙は晴れる。剣の持ち主の肩には、持ち主の身長の3倍はあろう大剣が収まっている。平均的な体つきの、青年に達しない年頃といった風貌の少年に扱えるような代物とは思えず、黄色の王子はただただ目を見張る他にない。

「って、コマンドカード全部Busterやないかい!」

「もちろん宝具もBusterだ!」

 宝具とは奥の手。その威力は使い手である英霊の伝説すら凌駕する必殺の一撃。しかし、その代償もまた大きい。奥の手が露呈するということはそれ以上がないということであり、その英霊の底を知らしめるということでもある。そして何より恐れるべきは、その英霊の正体が明白となってしまうことであった。英霊の正体が露呈すれば、弱点を見破ることなど容易い。不死のまま現在まで生きながらえている英雄などおらず、どのような英雄にも最期があり、それにちなんだ弱点もまたある。

 かのギリシャの大英雄、オリオンがよい例である。オリオンの弱点は有名。アルテミスであり女である。

「いやぁ。FGOキッズやでそれは」

 黄色の王子は自分がすでに逃げるほかにないということを痛感した。あらかじめ勝とうなどとは考えていない。何気に黄色の王子は傲慢であるので、ちょっと戦って、先ほどの緋色の王子みたいに「勝負はお預けや。腕磨いて出直してき」みたいなことを言ってみたかったのである。だが、そんな悠長なことはしていられなくなった。泣きべそをかいてでも、尻尾を振ってでも逃げなければならない。

 彼は死ぬわけにはいかない。その理由があった。

 彼の頭の中には常に少女である凛の姿が映っている。

 凛のために死ぬわけにはいかない。

 凛のために生き残ること。それが黄色の王子の聖杯戦争だった。

「ワイは死なれへん。死ぬわけにはいかん。自分で自分を許せへんようになる生き方なんか嫌や!」

 赤の王子は風の一撃を放つ。身体を高速で移動させ、その勢いに乗せて大剣を突く。その速さ、目で追うのは困難。だが、旋風の突きは黄色の王子を捉えてはいない。黄色の王子の身体は大剣の刃のすぐそばにあった。黄色の王子は1メートルほどの距離を詰めることなく、赤の王子に向かって腕を突き出す。瞬間、獲物を捕らえる蛇のごとく、黄色の王子の腕から無数の槍が飛び出した。槍が狙うは赤の王子が大剣を持つ右腕の、下。右の腹。急所を狙った必殺の攻撃は、瞬時に戻ってきた大剣に阻まれ、跡形もなく砕け散った。

 黄色の王子は赤の王子を囲い、そのまま貫き通すように地面から槍を生やし続ける。赤の王子へと延びる槍たちは大剣に触れることなく、薙いだ一撃により風に散る。あらゆる手を防がれてもなお、黄色の王子はあきらめない。赤の王子が薙いだ後にできる隙を狙い、槍を、剣を、ナイフを、矢を投げつける。赤の王子は大剣を正面に据え、扇風機のように振るうことによって飛びかかる刃物を弾き飛ばす。

「3メーターはありよる剣をどうやってぐるぐる回せんねん。あれか。一護みたいに大切な人を守るための力か?」

「この剣で充分だと思ったけど、小さい的には向かないな」

「ほざけ! QuickもArtsも自由自在やないけ! お前は神話の超絶ハンターか! こんな腐れクエストなんてせずにさっさとG級に行っちまえ!」

「そっちは手が尽きたようだな」

 赤の王子の見据える黄色の王子の姿はボロボロであった。大きな傷は未だ負っていない。しかし、体力の限界が来ているようだった。獣のような荒々しい呼吸がこだまする。

「まさか、あのひと突きが躱されるとは思わなかった。あれはきみの能力では避けられない速さのはずだ。何かあるのか?」

 赤の王子は黄色の王子が宝具もしくはスキルの効果で躱したものだと思っているようだった。そんな赤の王子の様子を見て黄色の王子はほくそ笑む。

「男はな。いつだって強いもんにあこがれる。自分がワイのあこがれとった英雄に似とったからな。なんとなく避けれただけや。万年中二病をなめんなや!」

 黄色の王子は無謀にも赤の王子へ向かって走り出す。赤の王子は一瞬顔をしかめながらも足を踏ん張り、巨大な大剣で黄色の王子の胴を横薙ぎにし、体を真っ二つにする。

 真っ二つにした、と赤の王子は思った。それは赤の王子の、いや、赤の王子の写し取った英雄の癖であった。怪物と戦ったその英雄はぶっちゃけ野生の勘で動いていた。故に、決着を見送ることなく黄色の王子が死んだと判断し、荒ぶる野生の血を冷ました。

 故に、予想外の事態は彼の中の英雄の心を熱くした。

 赤の王子の踏ん張った地面は大きく沈む。

 錬金術の原則は等価交換。結果に見合った材料を要求される。黄色の王子の払った代償は地面の土。そこから凡庸な武器が作られる。作られ続けた武器は赤の王子の周囲の土を消費し、地盤を脆弱なものに変えていた。

 赤の王子の放った横薙ぎがキャンセルされたわけではない。威力が半減した一閃は黄色の王子に襲い掛かり、衝突する。胴に一撃を受けた黄色の王子は火花を散らしながら、赤の王子に向かって走ってきている。

「自分の身体を鋼鉄に変えるか」

 実際には黄色の王子には肉体改造をする勇気はないので服を鉄に変えただけである。手から伸びた槍もあったが、それもまた服を槍に変えたものである。故に、今の黄色の王子の恰好はびんぼっちゃまもかくやという状況なのであった。

 黄色の王子は火花を散らし赤の王子へ走り出す。身動きが取れなくなった赤の王子に向かい、手を伸ばして――

 刹那——

白刃が夜を切り裂いた。

 




さて。人物紹介みたいなあれこれとかどこまでやってしまったか忘れてしまったンゴ。ンゴなんて初めて使ったわ。
結構ギャグな感じで進むのかなーと思ったこの回ですが、シビア~。とんでもなくノリで書いてますので、何を書いてるのか分からない、みたいなことがあると思われます。なに。気にするな。なんかよー知らんけど戦っとるだけです。

「多々買っても生き残れない」

なんか赤の王子と真子ちん―んが悪者みたいになっちゃってますが、こりゃいかんですな。未成年の喫煙シーンはR18になるのだろうか。なるのなら、もう1000年以上前に大暴れした狐が正体とかでいいや、もう。無茶苦茶か。
最近ついったもお休みして、すっごく色々話したくなっている緋色さんでした。「推しの子」早く新刊でないっかなー
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