暑い日が続き、私も参ってしまいますが、彼女のように元気な娘が居れば楽しく過ごせるんじゃないかな、と思います。
「あつはなついねー、団長。あ、間違えた。夏は暑いねー」
いつも通りのギャグを言いながら、ポーチュラカはソファに座ってジュースを飲んでいる。
暑いという割に随分余裕そうだが。
「まあ、バナナオーシャン生まれだからね。このくらいの暑さはへっちゃらなんだよ。団長は暑いの苦手?」
苦手だ。特に日差しが強い日は元気もなくなる。
「そっか。それじゃあ、ポーチュラカと一緒にお出かけする?」
・・・話を聞いていたんだろうか?
「き、聞いてたんだよ! 元気がない団長に元気をあげるために、一緒に出かけるんだよ」
結局ポーチュラカに手を引かれ、外出することになった。
ここは彼女がよく休憩する公園らしい。
「団長、この辺りが涼しいんだよ」
ポーチュラカが木陰の方から手招きする。しかし涼むのなら、部屋の中に居た方がいいのではないか。
「分かってないなぁ、団長。こうやって木々に囲まれていると、心も静かになって、グッと涼しくなるんだよ。ウッド涼しくなるんだよ」
木陰よりも、ポーチュラカのダジャレに涼しくなっているような気もする。
「もう少し涼しくなったらピクニックにも来たいね。期待してほしいんだよ。今私は料理の練習中なんだよ」
それは楽しみだな。ポーチュラカの料理なら是非食べてみたい。
「えへへ・・・料理で団長の胃袋を掴めば、団長狙いの他の花騎士にも勝利できるしね」
照れ隠しのようにお得意のダジャレを言うポーチュラカだった。
公園を出て街中を歩くと、やはり日光が照り付けて、凄まじく暑い。
「団長、暑そうだね。私が良く行く喫茶店があるから、そこに入ろうか?」
喫茶店なら涼しそうだな。どこにあるんだ?
「そこの角を曲がった先っさ」
喫茶店の中はまるでオアシスのように涼しかった。席に座ってコーヒーを二つ頼む。
しかし、ポーチュラカが喫茶店とは・・・中々結びつかないな。
「むぅ、私だっていつもはしゃいでるわけじゃないんだよ。むしろこういう静かな場所でネタを考えることも多いんだよ」
そう言ってポケットから手帳を取り出した。
「私のネタ帳なんだよ。他の人にはあまり見せないけど、団長は特別に見てもいいんだよ?」
見せてもらうと、ダジャレとそれに関するメモがびっしりと書き込んである。
「・・・や、やっぱり恥ずかしいからあんまり見ちゃダメなんだよ!」
そう言って私の手からネタ帳を取り上げる。
しかし、なんともマメだな。
「ふふ、手に豆が出来るほど書き込んだからね」
口ではダジャレを言っているが、顔は真っ赤だ。ダジャレはいつも言っているのに、そんなに恥ずかしいのだろうか。
「芸人としては、ネタの解説とか見られるのは恥ずかしいんだよ」
そういうものなのか。
「あ、団長コーヒー来たんだよ。でもわたしは苦いのは苦手だから・・・砂糖をさ、投入するんだよ」
黒いコーヒーから湯気が出て、香ばしい香りが鼻をかすめる。
喫茶店でポーチュラカと他愛の無い話が続く。
「団長は私のダジャレ面白いと思う?」
なんとも答え辛い質問をしてくる。そういえばポーチュラカは何故ダジャレにこだわるのだろうか。
「ダジャレは私そのものだからね。ダジャレで皆に笑ってもらえれば、私も凄く嬉しいんだよ」
ポーチュラカの花言葉『笑顔』のためか。だからこそあんなに努力を重ねていたのか。
「うん! 団長にも元気で笑顔になって欲しいんだよ」
そう言って彼女は、子供っぽい無垢な笑顔を見せる。その顔を見ただけで、私は大分元気が戻った気がする。
「団長、最後はあそこに行こう。最近出来たアイスクリーム屋なんだよ。あっ、ちょっと待って」
そう言ってポーチュラカは息を大きく吸い込む。
「アイスクリーム屋に行こう団長!」
・・・何故大声で言い直したのか。
「ふふ、アイスクリームを叫ぶ。I Scream なんだよ!」
そうか。では一緒に入ろう。ここは是非私に奢らせてほしい。
「え、いいの? やったー! 団長、ありがとうなんだよ」
元気を貰ったお礼だ。遠慮せずに食べてほしい。
「えへへ・・・それじゃあ、遠慮なく」
「んぅ、冷たくて甘くて美味しいんだよ」
ポーチュラカの食べているのはチョコとバナナ味か。
「ん・・・この味は評価できるんだよ。氷菓だけに、ね。団長のは何味?」
抹茶だ。一口食べるか、と言ってスプーンをポーチュラカに向ける。
「あ、だ、団長・・・」
ほら、早くしないと溶けてしまう。
「あむ。お、美味しいんだよ・・・」
顔を真っ赤にしてそう言う。別に照れる必要は無いだろう。
「で、でも皆見てるし、恥ずかしいんだよ・・・」
愛し合ってる二人なら、何もおかしいことはないだろう。
「あ、愛し!?」
アイスだけにな。
「お、おお・・・団長も中々やるんだよ・・・」
・・・なんともキザな台詞を言ってしまい、自分でも恥ずかしくなってきた。きっとこの暑さのせいなのだろう。冷たいアイスでも食べて少し落ち着こうと思った。
その後は二人で口数も少なく帰った。時折目を合わせてはにかみながら。
夏のむせ返るような熱気が、二人の間に漂っていた。
ポーちゃんですが、やはり書くのが難しいです。時折ダジャレを混ぜないといけないのが、もう・・・
特にこの暑い中では頭も回りませんからね。
でも暑さの中、好きな人と一緒に街を歩くのは何だかロマンティックで好きです。
私の好きなサニーデイ・サービスの「サマーソルジャー」みたいな。
まあ、私にはそんな経験無いんですが・・・
ここまで読んで頂き、ありがとうございました。