やっぱりクコを書くのが一番楽しいし、何というか安心感があります。
ベルガモットバレーでの討伐任務が無事終わった。今日はもう遅いので、ベルガモットバレーで宿を取り、明日には帰路に就く予定だ。
「団長、クコ、散策、希望」
一緒に任務に来ていたクコがそう提案した。もう辺りは夕日の色に染まっているが、少しの時間だけなら、ということでクコと一緒に街へ出ることにした。
もう夕方だというのに、歓楽街はたくさんの人で賑わっていた。
「知らないもの、たくさん。調査隊の皆、花騎士の皆、お土産、歓喜?」
お土産屋で売っているものは、私もクコも知らない珍しいものが多く、クコは目を輝かせていた。
「ん・・・」
クコがふと立ち止まる。何やら耳を澄ませているようだ。
「・・・音、聞こえる。綺麗な音・・・」
クコは音の鳴る方へ歩いていく。彼女の後を追うと、木造の古い建物があった。中には木で彫った人形や置物が並べてあった。どうやら雑貨屋らしい。
すっかり薄暗くなった街の中にポツリと佇むその店を見ると、若年寄的な発想かも知れないが、懐かしい気分になってくる。
クコはその中でも、店の外に飾ってあった風鈴に心を奪われていた。
「ガラス、キラキラ。チリンチリン、綺麗な音・・・」
風鈴はベルガモットバレー特有の渓谷風に揺れ、透き通った音色を奏でている。
クコはと言えば、心ここにあらずといった様子で、目を閉じてその音に聞き入っている。
どれが欲しいんだ、そう聞くとクコは私を見て、少し困ったような様子を見せた。
「でも、団長・・・」
遠慮することは無い。今回の任務でもクコは頑張っていたのだし、そのご褒美だと思って欲しい。私がそう言うとクコはニコっと微笑んだ。
「クコ、これ、好き・・・」
クコが指差したのは、深い青で塗られた風鈴だった。この色は、きっと海だろう。直感でそう思った。
「団長も、そう思う? クコも、海だと思った。クコ、海、好き・・・」
ロータスレイク出身のクコには、海というのは特別なものなのかも知れない。
すっかり辺りは暗くなってしまった。その暗闇の中を歩く二人を、歓楽街の明かりが照らしている。
「団長、感謝。クコ、嬉しい。えへへ・・・」
クコは先ほどの風鈴が入った袋を大切そうに持ち、幸せそうに笑っている。その優しく閉じた瞼がなんとも愛おしく感じた。
「団長、クコも団長に、渡す物、有る」
クコが鞄から小さな袋を取り出し、こちらに差し出す。中を見ると風鈴が入っていた。いつの間に買っていたのだろうか。
「えへへ・・・その風鈴、団長、似合う。クコ、プレゼント」
風鈴の丸いガラスは淡いオレンジ色に染めてある。これは・・・
「クコ。その風鈴、クコ」
確かにクコの瞳の色に似ている。
それではこの風鈴をクコだと思い、大切にしよう。そうクコに伝えた。
「ん・・・クコ、団長のそば、いつも居る。いつも一緒・・・」
青白く染まった街の風景の中、クコの頬が赤くなっていることだけははっきりと分かった。
目眩のするような青空の下、私は延々と書類の処理に追われていた。
クコは今ロータスレイクへ調査に向かっている。薄っすらと寂しさを感じながらも、黙々と仕事に取り掛かる。額からは汗が流れ、私の前髪を濡らしている。
窓の方に目をやると、クコの瞳があった。そっと窓を開ける。クコの瞳は風に揺れ、美しい音が鳴り響いた。その透き通った音は、夏の暑さと溶け合い、儚く消えていった。
この夏は、いつもよりも過ごしやすい日が続きそうだ。
今回は自分でもロマンティックにしちゃったな、とちょっと思いました。
でも仕方ないんです。夏ってそういう季節ですから(笑)
夕方の少し涼しくなった時間帯に、エアコンを消して窓を開けて、風鈴の音でも楽しむのもいいんじゃないかな、と少し思いました。
ここまで読んで頂き、ありがとうございました。