これを書くきっかけになったのが、エキザカムちゃんの夏ボイスなのですが、彼女にスクール水着を着るよう要求する団長の紳士っぷりには脱帽しました。
というわけで今回の団長は変態成分多め。いつもは真面目な団長を書いてるので、たまにはこういうのもありですね。
相も変わらずうだるような暑さが続く。
汗でシャツが濡れ、べたべたとして気持ちが悪い。
こんな日は仕事を休んで、花騎士と海にでも行きたい気分だ。もちろん私の選んだ水着を着せて。
そんな想像をしながら書類を片付けていると、コンコンと執務室のドアを叩く音が聞こえた。
「団長様、少しお時間よろしいですか?」
入ってきたのはエキザカムだった。彼女の白い肌が日に当たり、眩しく輝いている。
「ベッセラお嬢様からの伝言なのですが、今度の休み一緒に海に行きたい、とのことです」
それは嬉しい申し出だ。ちょうど海に行きたいと思っていた。
「それは良かったです。ベッセラお嬢様も喜びます。何といっても、お嬢様はその日のために水着を新調・・・と、これは言っちゃいけないんでした・・・」
ふむ、ベッセラが。ところで、エキザカムも一緒に行くのか。
「はい、私もご一緒致しますよ」
そうか。それでは今から新しい水着を買いに行かないか。
「いえ、私は前のでも・・・団長様もお忙しいでしょうし」
いや、今片付いたところだ。行こう。是非行こう。
「はい! では参りましょうか」
ベッセラ、エキザカムと三人で、リゾート地プラタノにやってきた。
コテージから見える一面の海を眺めると、自分もセレブになったような気になってくる。
「団長、どうかしら? このコテージの景色は」
素晴らしい、そう答える。
「ふふ・・・よかったわ、気に入ってもらえて。それでは私も着替えてくるかしら」
ベッセラの水着は、宝石をあしらったビキニだ。宝石商らしい豪華な装いだが、ベッセラが着ると様になっているのが不思議だ。
「団長、何か感想は無いの?」
見とれて何も言わずにいた私にベッセラが質問する。
ベッセラの美しさと水着の美しさ。両方の調和がとれていて、とても素敵だ。
「うふふ・・・嬉しいわ、団長」
「お嬢様、団長様お待たせしました」
エキザカムが私の選んだ水着を着て現れる。
その水着は紺一色のレオタード型で、極めつきに胸に『エキザカム』と書いたゼッケンが貼ってある。
「エキザカム、これは一体・・・」
「お嬢様、こちらの水着は団長様が私にプレゼントしてくれたんですよ。何でも、騎士学校などでも着用されている、由緒正しい水着とのことです」
「・・・団長?」
ベッセラはまるで害虫でも見るような蔑んだ目でこちらを見てくる。
・・・そんな目で見るな。私もこの暑さで色々おかしくなっているんだ。
「まあ、趣味は人それぞれだし、私はそんなことを気にする人間ではないのだけれど。でもエキザカムには変なことは教えないこと。分かったわね?」
肝に免じておこう。
しかし、この水着は本当にエキザカムに似合っている。彼女の少女のような幼い顔立ちと華奢な身体と、地味な色の水着が混ざり合い、まるで本物の女学生のような雰囲気を醸し出している。
「何だか良く分かりませんが、団長様が喜んでくれているようですし、良かったです」
「いや、良くないわエキザカム。今の団長にあまり構っては駄目よ」
何だか酷いことを言われているような気がする。
「その恰好では目立つし、せめて名前は外しなさい」
ベッセラはそう言うと、エキザカムの胸の名前を外した。
ああ、そこが一番のポイントだというのに。
「・・・団長?」
すまない。
「団長様、お嬢様、早く来て下さーい! 水気持ちいいですよ」
エキザカムが波打ち際ではしゃいでいる。
「あらあら、随分と楽しそうね。可愛いんだから」
まるで子供のようだな、と言う。
「あの娘も普段はメイドの仕事で忙しいのだし、たまにはこんな風に羽を伸ばすのも必要だと思うわ」
うむ、その通りだな。では私も存分に楽しむとしよう。
おーい、エキザカムー!!
「団長は本当にどうしたのかしら・・・?」
・・・さすがにはしゃぎすぎた。体がやけに重いし、肌がヒリヒリと焼けて痛い。もう若くはないのだと痛感する。
「まったく、二人ともはしゃぎ過ぎよ」
ベッセラがまるで母親のように優しく諭してくる。
「それにお楽しみはこれからなのだから」
ベッセラが海岸を指さすと、ちょうど太陽が沈み、オレンジ色に変わっていくところだった。この夕日を見ながら静かに過ごすのが、プラタノでの最大の楽しみらしい。
・・・そういえば最近、夕日をしっかりと見ていなかったな。そう思い、ノスタルジーな感傷に浸る。
「団長様、お嬢様、お飲み物やフルーツはいかがですか?」
水着の上にパーカーを着たエキザカムがジュースやフルーツを持ってやってくる。
「エキザカム、今日はメイドの仕事はいいから、ゆっくりしていなさい」
「いえ、ベッセラお嬢様や団長様にご奉仕することも、私にとっては大切ですから」
なんて良い娘なんだ。よし、ご褒美にナデナデしてあげよう。
「待ちなさい団長。ご褒美を与える権利は主人である私にあるわ」
そう言うとベッセラは、エキザカムの頭を撫で始めた。
「お嬢様、その・・・嬉しいんですけど、団長様が見ています・・・」
「うふふ、いいじゃない。見せつけてあげましょう」
プラタノでの楽しい時間はあっという間に過ぎていった。明日には城に戻り、仕事に追われる日々が続く。はぁー、とため息を付いているとエキザカムが不思議そうな顔で見つめてくる。
「団長様、どういたしました? え、仕事に戻りたくない? そうですか、では・・・」
エキザカムはそう言うと、自分の太ももをポンと叩いた。その太ももを枕にして寝てみる。
「少しは心安らぎましたか? それでは応援致しますね。団長様、フレーフレーです」
エキザカムの優しい応援を聞きながら、彼女の程よく肉の付いた太ももに頭を預ける。太ももからは仄かに磯の匂いがして、その匂いを嗅ぐと、明日も頑張ろうという気になった。
「・・・少し目を離している間に一体何が。でもいいわ、団長も疲れていそうだし、今日はエキザカムを貸しておいてあげましょう」
美しい夕日が沈んでいく。やがて青白く染まった海辺をしばらく眺めていた。
「団長様、いらっしゃいますか?」
執務室のドアを開けて入ってきたのはエキザカムだった。
・・・この前はすまなかったな、と頭を下げて謝る。
「? 何のことです? それより何かお手伝いすることはありませんか?」
エキザカムが? 確かに手伝ってくれれば助かるが、ベッセラの世話はいいのだろうか。
「ベッセラお嬢様が、自分はいいから団長様を手伝ってあげなさい、とおっしゃっていました。この前はずいぶんと疲れているようだから、と」
そうか、ベッセラにも謝っておかねばならないな。そう思いながら、エキザカムと一緒に職務に取り掛かった。
というわけで海回でした。
変態団長は書くのは結構楽しいです。
でも私は基本、真面目な団長を書いていきたいなと思います。今回は例外ということで。
ここまで読んで頂き、ありがとうございました。