彼女と一緒にお菓子を食べる、本当にただそれだけの話です。
一点の雲もない、美しい青空。窓を開けると涼しい風が通り抜ける。
今日は緊急の任務もなく、比較的平和な一日を過ごせそうだ。
机の上の書類に目を通す。結局はこの処理に追われ一日が終わりそうだ。
ふと一枚の書類が目に入る。火気使用の許可申請書とあり、申請者はランタナになっている。
・・・嫌な予感しかしなかったので、本人に直接確認することにした。
「どしたのだんちょ? あ、わかった! 私とデートしたいんだなぁ。もーだんちょったら、真面目に仕事しなきゃダメだじょー」
とんちんかんなことを言われるが、今日は火気使用の件を聞きに来たのだ。
「あ~、新しいお菓子を開発しようと思ってね。ほら、前私の必殺技でケーキ作ったでしょ? あの応用ができないかなぁと思ってさ」
あの時は酷い目に遭った。お菓子作りならもっと平和に、女の子らしくできないものか。
「それじゃあ楽しくないじゃん! やっぱりお菓子は爆発だー!」
飽くまで花騎士には自由に活動して欲しいと思っているので、今回は消火の準備をきちんとすることを条件に許可した。
しかし心配ではあるので、私も当日一緒に立ち会うことにした。
「えへへ~、お菓子作り~♪ だんちょと一緒にお菓子作り~♪」
満面の笑みを浮かべ上機嫌のランタナ。その様子はとても可愛らしいのだが、これから起こることを想像すると胃がキリキリ痛む。
「どうだんちょ、ランタナのエプロン姿は?」
ランタナはピンク色のエプロンをフリフリして私に見せてくる。
とても可愛いし、似合っている。そう伝えるとランタナの頬もピンクに染まったように見える。
「えへへ、本当? だんちょったら褒めるのが上手いんだから。この色男め~」
そう言って照れ隠しのように私の脇腹を小突いてきた。
水の入ったバケツ、消火器、そして防護服とガスマスク。準備は整ったが、そもそもこの部屋が無事で済むのだろうか。
「大丈夫大丈夫、加減するから。さてこうやって材料を入れて・・・爆破!」
ドカンと大きな爆発音がして、黒煙が巻き上がる。やがて煙が晴れて、中からケーキが姿を現した。
「やったー、完成! ほら、だんちょもどうぞ」
あーんと言いながら私の口にケーキを押し込む。
確かに味は良い。美味い。
「でしょ。よーしどんどん作るぞー」
右手を高く掲げてそう叫ぶランタナ。加減は出来ているようだし、意外と大丈夫かも知れない。
ドカン! ドカン! ドカーン!!
何度も鳴り響く爆発音。それを聞く度に胃がキリキリしてくる。
「こいつぁうめぇぜ!」
完成したお菓子をモグモグと平らげるランタナだったが、あまり調子に乗っていると・・・
「あっ」
一際大きな爆発が巻き起こり、その爆風に二人の身体も吹っ飛ばされる。
「あ~れ~」
「げほっ・・・酷い目に遭った・・・」
身体が真っ黒になり、なぜかアフロになったランタナが煙の中から現れた。
「うわぁっ! 部屋が真っ黒焦げ!」
なまじ許可をしてしまっただけに、この後はランタナと一緒にこっぴどく怒られるのだった。
「うぅ・・・ごめんねだんちょ・・・」
数時間に及ぶ説教の後、ランタナはしょんぼりと肩を落としながら私に謝ってきた。珍しいこともあったものだ。
「だって・・・今回は私のせいだし・・・別にだんちょまで怒られる必要はないのに・・・」
そこに引け目を感じていたわけか。
確かに毎回のいたずらには反省すべきだが、少なくとも私はそんなランタナが好きだし、引け目を感じる必要はない。彼女の頭をポンと撫でながらそう言った。
「す、好き・・・? だんちょったら、こんな時に愛の告白なんて・・・」
はぐらかされたくなかったので、もう一度好きだと言うと、彼女の頬はどんどん赤くなっていった。
「あぅ・・・だんちょのロリコン・・・私も好き」
翌日、ランタナに呼ばれたので彼女の部屋を訪ねた。
「だんちょ! 私におしおきして! さぁ、殴ったり蹴ったり、煮たり焼いたり、お尻ぺんぺんしたり、健全版では書けないようなこともしていいんだじょ!」
どういう風の吹き回しか知らないが、ランタナにそんなことはしない。そうハッキリと告げた。
「でもでも、それじゃ私の気が収まらない! おしおきして~、えっちなやつ~」
最早それが目的になってないか?
「ってのは冗談だけど・・・本当にだんちょの好きにしていいんだよ?」
そうか、ならば一つして欲しいことがある。
ランタナと一緒に公園を訪れる。人はまばらで、涼しい風が二人の間をすり抜けていった。
「こんな所に連れ出して・・・だんちょはそういう趣味があったの?」
そうではない。ここで一緒にお菓子を食べないかと思ったんだ。
「ここで? そんなことでいいの?」
勿論だ。ランタナと一緒なら、こんなに幸せなことはない。
「あうぅ・・・そんなに褒めて・・・だんちょ、もしかして意地悪してる?」
別に、素直な気持ちで言っただけなのだが・・・
「それじゃ・・・えいっ!」
この前の技を使ってお菓子を作ってもらった(相変わらずどういう原理かは分からないが)。
ここなら室内よりは安全だろう。もちろん人も少しはいるので、威力はかなり抑えてもらっている。
「うっほほーい! できたじょだんちょ」
ランタナの手の中にクッキーが出現する。どうやら成功のようだ。
「はむはむ・・・やっぱり出来立ては美味しいね」
小さな口でクッキーを頬張る、その姿が何とも可愛らしい。釣られて私も一枚。仄かな甘さが口の中で溶けていく。
「だんちょ・・・ありがと」
顔を赤らめながら唇を寄せてくるランタナ。
そっと触れた唇には、甘いクッキーの香りが残っていた。
ランタナのセリフ回しは相変わらず難しいですね。
メタ発言も多いですし。
でも可愛い。さすがロリっ娘美少女(自称)。
ここまで読んで頂き、ありがとうございました。