まあ、妄想集の中ではいつものメンバーって感じですが。
クコのキャラクエに少し触れるので、ネタバレ苦手な人はご注意下さい。
というか、クコのキャラクエやってない人は是非やってみてください。滅茶苦茶可愛いですから。
「団長、あ~ん」
クコの小さな手からミカンが運ばれてくる。薄皮を噛むと、甘酸っぱい果汁が口の中いっぱいに広がった。
窓の外には薄曇りの空が広がっている。こんな日は部屋でまったり過ごすのが一番だ。クコと二人でこたつに入っている時間など、これ以上ない幸せを感じる。
むしろ、こんな日にわざわざ外出する輩が信じられない。
そんなことを考えていると、股の間からクコが現れた。こたつに潜り込んでこちらに来たらしい。
「えへへ、団長のお腹、ナデナデ……ん?」
クコの手が私の下腹の辺りで止まる。どうかしたのか尋ねると、
「団長、お腹、ぷにぷに……。脂肪、増加?」
……確かに最近は任務以外で身体を動かすことが無いし、太ったのかも知れない。
クコは私がだらしない身体になっても好きなままいてくれるだろうか……。
「あい♪ クコ、変化、受け入れる。あ、でも……」
クコは何だか言い淀んでいるようだ。
「団長、健康、大事。運動不足、めっ」
それも一理あるが、こう寒いとどうしようもないだろう。
「クコ、名案あり。鬼ごっこ、希望」
……それはクコがしたいだけなのでは?
「……ちょっと肯定。でも、鬼ごっこ、楽しい。積極的、身体、動く」
まあ、確かに以前クコとした鬼ごっこは楽しかった。ぶよぶよの身体になるのも嫌なので、彼女の意見を前向きに検討しようと思った。
「あい♪」
鬼ごっこ。言わずと知れた、子供に大人気の遊びだ。クコと一日中鬼ごっこをしたことがあったが、あれは楽しかった。(その後滅茶苦茶怒られたが)
しかし、どうせなら騎士団全体で楽しみたいものだ。楽しみながら体力増強も出来れば、それは願ってもいないことだ。
「団長、どうしたの?」
背後から声を掛けられた。振り向くと、そこにいたのはポーチュラカだった。
「ふむ、鬼ごっこね。それなら、騎士団皆で鬼ごっこ大会をするんだよ。私が宣伝しておくから」
確かにポーチュラカに任せればそれなりの数が集まりそうだ。
お言葉に甘えて、彼女に任せることにした。
「任せて。たくさん集まってくれるよ『おに』頑張るんだよ」
……。
大会は大きな運動公園で行われることとなった。
会場には大勢の花騎士が集まっていた。ポーチュラカの人望の高さが伺えるようだ。
「花騎士、集結。クコ、楽しみ」
「ヘナも楽しみ。にぃに、クコ、捕まえる……なの」
クコはヘナを誘ってきたらしい。二人の楽しそうな顔を見ていると、寒さも吹き飛ぶようだ。
「団長団長~!」
ポーチュラカが駆け寄ってきた。
良くこれだけ集まったなと言うと、彼女は申し訳なさそうに訳を話し始めた。
「実は……優勝者は団長を一日好きにしていいって宣伝しちゃったんだよ。そうしたらこんなに集まっちゃって」
何だと……。何故そんなことを……。
「私の入れ知恵です。反省はしてない」
横から入ってきたランタナの頬をつねる。
「いだだだぁ! ごめんって!」
「本当にごめんだよ、団長」
……まぁ、一日くらいなら大丈夫だろう。多分。
それに、花騎士たちの体力アップに繋がるのなら、私も一肌脱ごう。
「なんて心が広いんだ! さすがだんちょ。ランタナは感動しました!」
ランタナの頬をもう一度つねっておく。
「いだぁっ!」
「それじゃあルールを説明するです? 今回は所謂『なかまおに』? 抽選で一人鬼を決めて、鬼に捕まった人も鬼になっていく? 鬼は赤いハチマキを頭に巻いて識別する? 最後に残った人が優勝です?」
軍師のワレモコウが説明をしてくれている。彼女は人見知りで話すのが苦手だが、こういう説明は進んでやってくれるので、作戦の時にも助かっている。
「逃げられる範囲は、この公園の端から端まで? そこから出たら反則です? そして優勝者にはご主人を好きにできる権利が与えられる? ご主人が優勝したら、花騎士を好きにできるです?」
初耳だ。成程、それなら頑張ろう。
「制限時間は、お昼休憩を挟んで夕方5時まで? それじゃあ、ポーチュラカがくじを引いて、鬼になった人が百まで数えたらスタートです?」
「只今、午前9時なんだよ。それじゃあ、くじを引いていくんだよ!」
シンとなる会場をよそに、ポーチュラカの手がくじ箱の中に入り、そして一枚の紙を取り出した。
「え~と、鬼は……『ポーチュラカ』なんだよ! って私!?」
鬼が決まると、花騎士たちは一斉に逃げ出した。
「仕方ないなぁ……」
残念そうにつぶやきながら、鬼の印であるハチマキを巻いていく。
「団長、逃亡推奨。花騎士、皆、本気」
クコに急かされ、私も逃げることにした。出来れば優勝したいものだ。
「九十九……百! よ~し、行くんだよ」
広い公園なので、ポーチュラカの視界からは花騎士は誰一人いなくなっている。
「取り敢えず仲間を増やさないとね……」
ポーチュラカが走り出した。
「ふぅ……ここに隠れていれば一先ず安心? モコウは走るの苦手だから、隠れながらやり過ごすしかない?」
茂みに隠れるワレモコウ。しかし、
「あっ」
「あ……」
ポーチュラカとワレモコウの視線が重なる。
「ワレモコウさん見つけたんだよ。捕まえるんだよ!」
「あぅぅ……逃げるです?」
走り出すワレモコウ。だが、ポーチュラカとは体力の差があり過ぎる。あっという間に捕まってしまった。
「はぁ……はぁ……残念」
「ワレモコウさんが鬼になった。これで戦略を任せられるんだよ」
「勝ちたかったけど、仕方ない? 取り敢えず、捕まえられそうな人を捕まえて、駒数を増やしていくです?」
序盤は鬼の数も少なく、動きも少ないはずだ。今はまだ体力を温存しておこう。
そう思ってうろついていると、山になっている場所を見つけた。ここからなら鬼の動向が見やすいと思い、昇っておくことにした。しかし……
「あっ、やっぱり来たんだよ」
「捕まえるです?」
そこにはポーチュラカとワレモコウが待ち構えていた。何故待ち伏せられていたのかは分からないが、全力で逃げなければ。
「待つんだよ! 松茸あげるから待つんだよ!」
ダジャレに構っている暇はない。このままでは花騎士を好きにできる権利が……。
「ふぅ……疲れたんだよ……」
ポーチュラカの体力に負け、簡単に捕まってしまった。やはり花騎士には勝てないか……。
しかし、何故こんな所で待ち伏せていたのだろう。
「モコウ、地形はバッチリ予習済み? 戦いに慣れた人なら、無意識に高台に行くはず?」
成程、予習の差が出たわけだ。
しかしこれで、花騎士を好きにできる権利はなくなったわけで……くそぅくそぅ!
「おぉ、団長そんなに悔しいんだ……よしよし、ポーチュラカが慰めてあげるんだよ」
「よしよし……です?」
ポーチュラカとワレモコウに頭を撫でられる。傍から見ると大分かっこ悪い光景だった。
ワレモコウの策がハマり、鬼がどんどん増えていく。半数程は鬼になっただろうか。
「ここからが正念場? 残っているのは速い花騎士ばかり? 位置取りが大事になってくる?」
と、その時背後に気配を感じた。
「あっ、やべっ」
ピンク色のサイドテールが揺れた。間違いない、ランタナだ。奴だけは私の手で捕まえなければ。
「うわっ、だんちょ速っ! どこにそんな力が」
いつもより足が軽い。これが限界を超えた力か……。
「はぁ……はぁ……だんちょ速過ぎるよぉ……。そんなにランタナを捕まえたかったの? このロリコいだだだぁ!」
ランタナの頬を思いっきりつねる。元凶なのだから、ランタナにも鬼として頑張ってもらおう。
ワレモコウの次なる策はこうだ。
まず偵察部隊で、花騎士たちのあらかたの位置を調べ、実働部隊が早い花騎士を数人で取り囲んでいく。
「原始的だけど、断じてこれが最も有効?」
「ヘナ……残念。にぃに、好きにできるチャンス、消失……なの」
「うぅ……捕まってしまいました……」
ヘナもエキザカムも捕まったか。
「リシアンサスさんだ! 捕まえるんだよ!」
「残念ですけど、速さには自信があるんですよ!」
リシアンサスは流石の速さでポーチュラカ達を巻くが、その先にも数人の花騎士が立っていた。
「げっ! それじゃあこっちに……ってこっちもですか!?」
数十人の花騎士がリシアンサスを取り囲む。こうなったら多勢に無勢だった。
「はぁ……はぁ……流石に無理ですよぉ!」
こうしてほとんどの花騎士が鬼になった。後残っているのは……。
「後はコンボルブルスと……クコ?」
二人とも、何度か取り囲んだが、ひらりひらりとかわされてしまった。だが、これだけの数で追いかければ流石に捕まえられるはず。
「情報が入った? コンボルブルスは北西部、クコは南東部にいる?」
真逆にいるわけか。では私はクコの方に向かおう。
「いいんです? クコとご主人は……」
まぁ、クコにはそもそも優勝しなくても好きにされているのだから関係ない。
彼女と真剣勝負することにこそ、意味があるのだと思う。
「分かった? モコウはコンボルブルスの方に向かう? ご武運を?」
お互いグッとサムズアップをして、戦いの地へ向かって行った。
「団長……来た」
冷たい風が吹き抜け、砂埃を巻き上げている。
クコの長い金髪も揺れ、くせ毛を目立たせる。
「はぁ……はぁ……。クコ、頑張った。団長、クコと勝負、希望」
いいだろう、一対一で勝負だ。互いに荒い息を吐きながら、けん制し合う。
周りの花騎士たちも私達から一歩引き、勝負を見守ってくれるようだ。
枯葉が舞い上がったと同時に、クコが後ろを向き駆け出した。私も全力で後を追う。先程まで疲労で重く感じていた足も、今では羽が生えたように軽い。
しかし速いのはクコも同じだった。二人の距離は全く縮まる気配がない。
「団長様、クコさん、フレーフレーです」
「にぃにも、クコも、頑張って……なの」
花騎士たちの声援の中、二人で走る。これが中々心地良い。
「えへへ……楽しい……楽しい♪」
うむ、疲れているが、何だか楽しくなってきた。
その時、終了を告げるアラームが鳴り響いた。
≪ワレモコウ側≫
コンボルブルスを追っていた一行が、何か言い合いをしている。
「おかしいんだよ。いきなりコンボルブルスさんが消えたんだよ」
「消える……断じてそんなことはありえない?」
「本当なんですよ。取り囲んだと思ったら、急に別の場所に現れるんです」
「断じて……ん?」
会話を中断し、ワレモコウの視線が足元に向けられる。
「どうしましたワレモコウさん?」
「この穴、不自然? モコウが調査した時に、こんな穴は無かった?」
「ドリルで開けたような穴ですね……ドリル? まさか……」
「ふぅ……今度はこっちに……」
「コンボルブルス、見つけたです?」
「えっ!?」
コンボルブルスが穴の中から出てきたが、その出口にはワレモコウたちが待ち構えていた。
「何で……何で……?」
「コンボルブルスが穴を掘って移動していることに気付いた? 気付いてしまえば、それは行き先を教えているようなもの?」
「うぅ……確かに。私の負け……」
がっくりとうなだれるコンボルブルス。これにて鬼ごっこは終結した。(※掘った穴はちゃんと元に戻しました)
「ところで、最後に残ったのは誰?」
「クコさんだよ」
「クコさん……それなら安心。変な人が優勝して、団長さんが危ない目に合わないように頑張ってたから」
「コンボルブルスは偉い?」
「なでなでしてあげるんだよ!」
「なでなでです?」
「やめてぇ……」
「団長、今日、楽しかった。鬼ごっこ、もう一度、希望♪」
何だか童心に帰ったようだったな。もう一度と言わず、何度でもしよう。
「あい。それじゃあ、今、再開。帰り道、追いかけっこ。団長、クコ、捕獲、希望」
今からか。今度こそ捕まえて見せよう。
薄暗くなった街の中で、クコの後ろ姿を追いかけ続けた。
「団長様、この近辺に不審者が現れたそうです」
秘書のナズナが執務室に報告に来た。
「何でも、夕方に子供を追いかけ回している男がいたらしいです」
それは危ないな。念のため花騎士たちにも伝えておいてくれ。
「了解しました」
しかし、大の大人が子供を追いかけ回すとは、物騒な世の中になったものだ。クコ達にも注意するよう言っておこう。
≪数日後≫
……確か、今日はクコに好きにされる日だったな。
クコのことだから、あまり無茶はしないだろうが……。
「団長、今日、クコのもの」
クコが部屋に入って来る。しかし、その手に持っている首輪とロープは何だろう。
「クコ、ヘナに享受、愛の形。クコ、団長に、愛、伝授」
……それは本当に愛なのだろうか。
「あい♪」
いや、ポーチュラカじゃないんだから……。
結局その日はクコのおもちゃにされてしまったのだった。
というわけで、鬼ごっこ回でした。
何か全体的にわちゃわちゃしていて、書いていて楽しかったです。
次は何を書くか。書きたい花騎士は色々いるんですけどねぇ。
特に最近はクガイソウとかヤドリギとか、気になってます。
ここまで読んで頂き、ありがとうございました。