しかしいざ書いてみると、あまり上手いダジャレが思いつきません。
やっぱりポーちゃんは頭が良い娘なんじゃないかと思います。
「団長、失礼するんだよ。お仕事お疲れ様だよ」
執務室のドアを元気よく開けて入ってきたのはポーチュラカだった。相変わらずの元気さと笑顔に仕事の疲れも癒される。
「いつも元気なのがポーチュラカの取り柄だからね! 鳥の絵じゃないんだよ? ところで団長、この書類に印鑑が欲しいんだよ」
ポーチュラカが書類とは珍しいな、と中身を確認するとどうやら舎内で一番大きい講堂の使用許可書のようだ。
「この講堂で花騎士のお笑い大会を開くように、私が行動を起こしたんだよ。皆、大会をしたいかいってね」
ダジャレはさておき、この大会をポーチュラカが主催するということか。
「うん、騎士団の皆は凄く頑張ってるし、たまには息抜きも必要だと思うんだよ」
確かに気を張りすぎてはいけないな。しかし、大会の要約には優勝者に賞品を出すようだが、金品や高価なもののやり取りはあまり感心しないぞ。
「それなら大丈夫なんだよ。優勝賞品はなんと『団長を一日独占できる券』なんだよ!」
・・・初耳だが?
「うぅ・・・ごめんだよ。もちろん団長が嫌なら他の賞品を用意するけど、その方が花騎士は喜ぶと思うんだよ」
まあ、花騎士の士気の高揚に繋がるなら一肌脱ごうじゃないか。
「ほんと!? やったー、団長、大好きなんだよ」
わざわざ机を回り込んで抱き着いてくる。彼女が犬ならきっと尻尾をブンブン振っていることだろう。その小動物のようなかわいさに、思わずポーチュラカの頭を撫でた。
ところで、ポーチュラカは主催だけで参加はしないのだろうか。
「ううん、私も出場するよ。団長を独占するのは私なんだよ」
自信満々だが、ポーチュラカのスタイルといえば。
「もちろん、ダジャレなんだよ。ダジャレを言うのは誰じゃ、ポーチュラカなんだよ」
しかし、それで優勝できるだろうか。
「ふふふ・・・私だって簡単に優勝できるなんて思ってないんだよ。これを見るんだよ!」
ポーチュラカが見せてきたのは分厚いノートだった。
「この大会のためだけに得意のダジャレを練りに練ってきたんだよ。このノートが『ノー』というほど書き込んであるでしょ」
ノートはしゃべらないと思うが、確かにびっしりとネタや補足が書き込まれている。
「もちろんまだまだ努力は続けるよ。この勝負の瀬戸際でダジャレの道を究めるんだよ!」
その野心的な目に、本当に優勝するんじゃないかという気すらしてくる。
「団長にも見に来て欲しいんだよ、私が優勝する瞬間を。YOUが証人になるんだよ」
そして大会当日。
「いやぁ最近暑いね~。この夏の暑さはバナナオーシャンを思い出して懐かしいんだよ。こんな日にはイカすスイカなんてどう? あ、いーっすか」
やめろ・・・やめてくれポーチュラカ・・・
「この前海にいったんだけど、浜辺に寝ころんだら砂がビーチりと付いたんだよ。その後泳いだら他の人にぶつかっちゃって、スイマーせんって謝ったんだよ」
夏だというのに周りの空気が寒い。
結局ポーチュラカが優勝することはなかった。あれだけ努力していたんだから、きっと落ち込んでいるだろう、とポーチュラカの部屋を訪ねる。ドアをノックすると、
「だぁれ?」
出てきたのは、いつもの笑顔ではなく、目を赤くはらしたポーチュラカだった。
「わ、だ、団長!! ちょっと待つんだよ」
目をゴシゴシしてからぎこちない笑みを見せる。
「どうかしたの? いきなり来られて息をするのも忘れるくらいびっくりしたよ」
お得意のダジャレを言って泣いていたのをごまかそうとする彼女が、とても愛おしく感じた。気が付いたらポーチュラカを抱きしめていた。
「団長!! ダメだよ・・・そんなに優しくされたら・・・」
彼女の目に水滴が溜まり、やがてあふれ出した。私の胸でよければ、気が済むまで貸そうと思った。
「ごめんね、団長。みっともないところ見せちゃって」
とんでもない。ポーチュラカが笑いに真剣なのが改めて分かったよ。
「・・・団長、ポーチュラカは決めたんだよ。いつかダジャレで皆を笑顔にできるようにがんばるんだよ!」
いつもの笑みを浮かべ、ポーチュラカはそう言った。
うむ、その意気だ。
「そうと決まれば早速特訓だよ! 団長には付き合ってもらうんだよ」
・・・仕方ない、ポーチュラカのためだ、協力しよう。
結局その日はずっとポーチュラカのダジャレ特訓に付き合った。笑顔が大好きな彼女が、いつか誰かを笑わせられるように。
というわけで、ポーちゃん回でした。
お笑い大会での他の花騎士のネタ内容とか書きたかったけど、私にはギャグのセンスが無いので削るしかありませんでした。
読んで頂きありがとうございました。