私は……こうしてPCの前に座ってSSを更新している時点でお察し下さい。
今回はコンボルちゃんのクリスマスボイスから妄想を広げて書いてみました。
途中からコンボルちゃん視点なので、団長が括弧書きで喋ります。地味に本作では初めてですね。
騎士団にある大きな台所ではその日、トントンと包丁がまな板を叩く音、グツグツと鍋が煮える音が絶え間なく鳴り続いていた。
豪華な料理が次々と並べられていく。チキンにシチューにローストビーフ、そして、
「よ~し、出来たッスよ! ヤドリギ特製のクリスマスケーキ」
ヤドリギの身長を超えるケーキがテーブルに置かれ、一際異彩を放っている。
「ふっふっふ、こりゃあ嫌でも目立っちゃうッスよ!」
今日は12月24日、クリスマスだ。騎士団のスタッフも花騎士たちもパーティの準備に取り掛かっている。
「はい、ターキーはできたよ。次は何作ればいい?」
中でもコンボルブルスは手際よく料理を完成させている。
「料理はあらかた終わったみたいですし、次はパーティー会場の飾り付けをお願いします」
「うん、分かった」
キッチンを抜け、城内で一番大きなホールへ向かうコンボルブルス。その後ろ姿を見て、何人もの花騎士たちが彼女を褒め称えていた。
「コンボルブルスさん、本当に手際いいッスね~。自分も負けてられないッスよ!」
「本当によくやってくれてるよね。でもコンボルブルスちゃんは……」
「わぁっ……凄い、綺麗……」
会場の飾りを見て、コンボルブルスは感嘆の声をあげた。
「コンボルブルスさん、来てくれたんだ。早速ツリーの飾りを作って欲しいんだよ」
「分かった。任せて」
「おぉ、大分豪華になったな」
団長が準備の様子を見に来ると、それに気付いたコンボルブルスが彼を呼び止めた。
「団長さん、丁度いい所に。ツリーの一番上に星付けるの手伝って」
ツリーの先端は、コンボルブルスの身長では脚立を使っても届かない高さにあった。
「お安い御用だ」
団長が脚立に上り、ひょいっと手を伸ばすと、ツリーの天辺まで手が届いた。そこに星の飾りをつけると、コンボルブルスはニコニコしながら彼に近づいて礼を言った。
「ありがとう、団長さん」
「これだけちゃんと準備をしているんだから、花騎士たちも皆パーティーを楽しんでくれるだろうな」
「うん、そうだね……」
笑顔を見せる団長と対照的に、コンボルブルスは浮かない表情をしていた。そこで団長もハッと気付く。
「そうか、コンボルブルスはパーティーに出られないのか。それは残念だな……」
申し訳なさそうな団長に対し、コンボルブルスは慌てて笑顔を繕った。
「あっ、大丈夫だよ団長さん。お料理とか飾りつけでクリスマス気分は充分味わったから、私のことは気にしないで楽しんできて」
「そうか……」
言葉ではそう言っているが、彼女の笑顔はとても寂しそうだった。
≪その夜≫
「ふぅ~、今日は大変だった」
クリスマスムードが漂う中、私は一人ベッドに就く。パーティーには参加したことがない。夜になると眠っちゃうから、仕方ないんだ。
私にとっては、クリスマスは寂しいものでしかない。本当は私だって皆と楽しく過ごしたいんだ。特に、この騎士団には良い人がたくさんいる。そんな人たちと一緒に楽しめないのは、悲しくて切ない。
だからといって、わがままを言ったら失望されちゃう。仕方ないんだ。
意識が遠くなっていく。眠りに落ちる時、私は怖くなる。皆に置いて行かれること、皆から失望されること……。
「団長さん……」
好きな人、一緒にクリスマスを過ごしたい人の名前を呟いた。
「んぅ……」
白い光が私の部屋に差し込む。冷たい朝の空気を感じて、私は目を覚ました。
楽しい夢を見たことをぼんやり覚えている。
団長さんや花騎士たちと一緒にクリスマスパーティーをする夢。叶うことのない夢を。
「……クリスマス終わっちゃった」
今年のクリスマスも寂しく過ぎていった。いつもと同じ。
「コンボルブルス、起きてるか?」
扉の向こうで団長さんが呼んでる。
「おはよう、団長さん。どうしたの?」
扉を開けると冷たい空気が部屋に入ってきた。
「支度が出来たらホールに来てくれないか?」
「え……ああ、片付けの手伝いかな? 分かった」
「何を言ってる? クリスマスはこれからだぞ」
団長さんが優しくにっこりと笑う。どういうことなのか、私には分からなかった。
「メリークリスマス!」
パーティー会場に入ると、数人の花騎士たちがクラッカー片手に出迎えてくれた。
「あ、あの……どうして……?」
困惑する私に、団長さんが語り掛けてきた。
「コンボルブルスが夜のパーティーに参加できないと気付いて、何人かの花騎士たちに声を掛けてみたんだ」
「そう……だったんだ……」
「まあ、一晩で酔い潰れてしまった者もいるけどな……」
団長さんの視線が、部屋の隅で寝ているランタナさんに向けられる。
「zzz……ランタナは合法だ~……もっと酒持って来~い」
「コンボルブルスさんは、準備とか色々頑張ってたからね。それなのに参加できないのは勿体ないと思ったんだよ」
「ありがとう、ポーチュラカさん」
「コンボルブルスさんに楽しいクリスマスをお送りすます、ってね」
「……」
「まあ、全員は揃わなかったが、今日は楽しんでくれ」
優しい彼の笑顔に、涙が零れそうになる。それをごまかすために、団長さんの胸に飛び込んだ。
「!? ど、どうしたんだコンボルブルス?」
「えへへ……何でもないよ……ただ、嬉しくて」
涙声になってしまって恥ずかしい。
私が泣いていることに気付いた団長さんは、大きな手でそっと頭を撫でてくれた。
「コンボルブルスさんのために、新しいクリマスケーキを用意したッスよ!」
ヤドリギさんが私の身長よりも大きなホールケーキを運んできた。
「わぁ~、おっきいね」
「どうッスか? 目立ってるッスよね!?」
「うん、凄い目立ってる」
「本当ッスか~。やったッス!」
そう言えば、彼女は目立つのが好きなんだった。でも一晩でこんな大きなケーキを作ったんだし、ヤドリギさんは誰よりも目立ってると思った。
「どうだ、楽しんでくれたか?」
「うん、凄く楽しかったよ。ありがとう、団長さん」
昼まで続いたパーティーが終わり、自室に帰ってきた。団長さんが今日は一緒に居てくれるから、今年のクリスマスは楽しく過ごせそう。
「団長さん♪ えへへ……」
団長さんの膝に頭を預ける。彼の体温が伝わってきて、何だか安心してしまう。
クリスマスだからって、特別何かをすることはない。いつも通りこうして過ごすだけで、私は幸せになる。
静かな部屋に二人きり。ストーブが燃える音だけが響いている。
「本当に今日は静かだな。……ん? コンボルブルス、窓の外を見てくれ」
団長さんに言われて、寝そべりながら外を見る。
「わぁっ、雪だ!」
窓の外では白い雪がさらさらと降り注いでいた。私は思わず立ち上がって、外に広がる銀世界を食い入るように見つめた。
はしゃぐ私を見て、団長さんは優しく微笑んだ。
「ロータスレイクでは中々見られないからな。寒いけど、外に行って見てみるか?」
「うん!」
団長さんが、私の編んだマフラーを巻く。赤くて、凄く長いマフラー。
「えへへ……」
団長さんの隣に行って、一緒のマフラーに包まった。そのために長く編んだんだから。
空から降ってくる雪を見上げると、何だか自分が空に昇っているような気分になる。
「足元、滑るから気を付けるんだぞ」
「は~い」
「雪、すっごく綺麗。ホワイトクリスマスだね」
「ああ」
団長さんの大きな手が私の頭を撫でる。手袋越しでもその温かさを感じる。
冷たい雪が当たっているのに、私の頬はどんどん温かくなっていく。頬だけじゃなくて、身体も心もポカポカする。団長さんと居ると不思議。
楽しかった12月25日ももう終わろうとしている。外はもう真っ暗で、美しい白い雪がしんしんと降っているだけだ。
「コンボルブルス、もう眠る時間じゃないのか?」
「うん……私はもう寝るから、団長さんは遊びに行っていいよ。特別な夜だし、他の花騎士さんたちも待ってると思うの」
本当はずっと一緒にいて欲しい。でも、わがままは言えない。彼に失望されたくないから。
「いや、今日は一緒にいよう」
だから団長さんのその言葉を聞いた時、嬉しくて嬉しくてたまらなかった。
「私、寝てるだけだよ……そんなのつまらないでしょ?」
「そんなことないさ。好きな人と一緒に過ごせるなら、これ以上幸せなことはないよ。それに君の寝顔も見られるしな」
「うぅ……もう、からかわないで」
顔が真っ赤になってること、団長さんに気付かれてないかな。
薄れゆく意識の中、一つだけ伝えておきたいことがあった。ベッドの中で団長さんを見つめながら、何とか言葉を紡いだ。
「団長さん、今日はありがとう。凄く楽しくて幸せだった。私、今日のことずっと忘れないから……」
その夜は素敵な夢を見た。団長さんと一緒にクリスマスの街を歩く夢。イルミネーションが綺麗に輝いていた。
目を覚ますと、そこにも団長さんの姿があった。嬉しくなって、彼の頬にキスをした。
というわけで、コンボルちゃんのクリスマス回でした。
コンボルちゃんは凄く庇護欲が湧いてきます。特に季節ボイスがどれも素晴らしいので、お迎えしていない方は次のスペチケで交換しましょう(宣伝)
それと、R18版も本日更新しますので、苦手じゃなければ読んで頂ければ幸いです。
ここまで読んで頂き、ありがとうございました。