ドレス姿が見たい花騎士ということで、もちろんクコのドレス姿も見たいですが、元気っ子がドレスで恥じらう姿も良いなと思いまして。
「だ、団長……どうかな……?」
頬を赤らめながら試着室のカーテンから顔を出すポーチュラカ。
どうと言われても顔だけしか見えないのだが……。
「わわっ! そうだよね、ごめん!」
カーテンがゆっくりと開いていく。真っ赤なドレスを身に纏ったポーチュラカがそこにいた。
「こんなヒラヒラしたの、落ち着かないんだよ……」
仕方ないだろう。いつもの服でパーティーに出るわけにはいかないのだし。
《数日前》
「パーティー?」
ああ、騎士団にも出資してくれている貴族が主催するパーティーが開かれる。そこに私達も呼ばれているんだ。
「そっか、大変だね団長」
他人事のように言っているが、ポーチュラカも行くんだぞ。
「ええっ!? ど、どうして?」
貴族の方から活躍している花騎士と話をしてみたいという要望があったんだ。
そこでうちの騎士団のメンバーを考えてみろ。クコやリシアンサス、エキザカムは別の任務だし、ワレモコウやコンボルブルスは人見知りだし、ランタナはランタナだし。というわけで、君が一番適任なんじゃないかと思ったんだ。
とはいえ、本当に嫌なら行く必要はない。適当な理由を付けて断っても問題はないだろう。
「……ううん、行くよ。だって団長のためだもん」
そう言ってもらえると助かる。
「団長のために断腸の思いで決断したんだよ!」
華麗なドヤ顔を決めるポーチュラカだった。
……と、とにかくパーティーに行くのならドレスを買わなければいけないな。
「ドレス!? え~……」
怪訝そうな顔をするポーチュラカ。嫌なのだろうか。
「嫌というか……あんなにヒラヒラしたの着てたら恥ずかしいんだよ……」
いつもは真っ赤で派手な服やへそが丸見えの服を着てるくせに、何を今更……バナナオーシャンの価値観がいまいち分からない……。
というわけで、乗り気でないポーチュラカを連れてドレスショップにやってきた。店内には煌びやかなドレスが所狭しと並べられている。
「ねぇ、本当にドレスじゃないと駄目?」
もう覚悟を決めたらどうだ。
「うぅ……団長がいつになく冷たい……」
虚ろな目をした彼女の頭にポンと手を置き、耳元で囁いた。私もポーチュラカのドレス姿が見たいのだと。
「え……えぇっ!?」
耳まで真っ赤になるポーチュラカ。体温まで高くなったのがよく分かった。
「も、もうっ! 団長ったら、そんなこと言っても乗り気になんてならないんだよ。私はそんなちょろくないんだよ」
そう言いながらも、ドレスを探し始めるポーチュラカだった。
「あっ、店員さ~ん、私に似合うドレスはどれっす?」
やたらテンションが上がってしまったようだ。このままだと店内でダジャレ連発しそうだったので、慌てて止めに入った。
並んでいるドレスの中で、一際目を引くものがあった。ポーチュラカの好きな色。赤いドレスがそこにあった。
「おぉ……確かに綺麗だよ。でも私に似合うかな……?」
きっと似合うはずだ。試着してみたらどうだ。
「う、うん……」
「……こんなヒラヒラしたの、落ち着かないんだよ……」
仕方ないだろう。いつもの服でパーティーに出るわけにはいかないのだし。
それにとても似合っている。可愛いぞ。そう言うと彼女の頬はドレスに負けないくらい赤く染まった。
「か、可愛い……? 本当?」
答えの代わりに彼女を抱き寄せ、鏡の方を向かせる。白い綺麗なうなじや鎖骨が真っ赤なドレスに包まれ、可愛さと美しさが絶妙に調和している。ポーチュラカのはっきりとした顔立ちも、ドレスとよく似合っている。
「そ、そうかな……?」
うむ。ポーチュラカはいつだって可愛いが、ドレスを着るとそれがより際立つ。
本当に、黙っていれば絶世の美少女だ。
「も、もうっ、そんなに褒められると照れるんだよ……。ん?」
さて、似合うドレスも見つかったことだし、早く会計を済ませよう。テーブルマナーなども軽く教えておかなければならないからな。
「ねえ団長、さっきの言葉、何か含みがあるんだよ?」
当日が楽しみだな。
「団長~!」
そして迎えたパーティー当日。ポーチュラカはやはり緊張している様子だった。客として招かれているのだから、別に緊張しなくてもいいんだぞ。そう言っても彼女の面持ちは変わらなかった。
「だって、貴族がいっぱい集まるんでしょ? 粗相のないようにしないと、って思うと……」
ポーチュラカはいつも通りで大丈夫だ。誰からも愛されているのが、ポーチュラカの良い所なのだから。
「『そ、そう』だよね……」
……実は緊張なんてしていないのではないか。それともダジャレで平常心を保とうとしているのか。
「初めまして、花騎士のポーチュラカと申します」
丁寧にお辞儀をするポーチュラカ。こういうちゃんとした挨拶もできるのだなと感心する。
「本日はご招待頂き、ありがとうございますだよ。私の正体は花騎士兼芸人なんだよ。招待のお礼に、今日は私のショータイムをお見せするんだよ!」
感心したのも束の間、お得意のダジャレを言い始めた。止めに入ろうと思った矢先、貴族たちの笑い声が聞こえてきた。
「おぉ……いつになくウケてるんだよ」
ポーチュラカが目を丸くして驚いている。
「これは私の時代が来たんだよ? よし、もう一発。今日の会食、どこでやってるか知ってるかい? 食堂だよ」
受けたことに気を良くしたのか、ポーチュラカはさらに畳みかけていく。
蟹の脚を持ち、キョロキョロ周りを見回しながら口に入れた。
「蟹を密かに食べる……」
「私ダンスが苦手なんだよ、誰に相談すればいいだろう」
ポーチュラカがダジャレを言う度に、貴族たちから笑いが起こった。ポーチュラカは彼らの笑顔を見回し、満足そうな笑みを浮かべた。やはりポーチュラカを連れてきて良かった。
その後、貴族たちの間でダジャレを言うのが流行ったとか流行らないとか。
パーティーが終わると、もう外は真っ暗になっていた。ポーチュラカと二人で部屋に戻り、ぐだっとソファーに横になる。
「いやぁ、今日は楽しかったね。皆の笑顔も見れたし」
そう言う彼女自身も満面の笑みを浮かべている。ポーチュラカも楽しめたようで何よりだ。
「うん。貴族の人も話しやすくて良かったよ。もっと堅苦しい人たちなのかなと思ってた」
ところで、もうドレスは脱いだらどうだ。窮屈じゃないか。そう聞くと、彼女は顔を赤くして私を見つめてきた。
「せっかくのドレスだし、団長に堪能して欲しいんだよ……いいでしょ、団長」
そんな可愛らしいことを言われたら我慢できなくなる。
ポーチュラカの小さく暖かい身体を抱いて、ドレスを着せたままベッドに連れ込んだ。
今夜は彼女のドレスのような、真っ赤で情熱的な夜になりそうだ。
ポーちゃん回はダジャレ考えるのが難しいです。でも可愛い。ランタナやリシアンサスちゃんもですが、まさか自分に元気っ子が刺さるとは思いませんでしたからねぇ。
お花、恐るべし。
というわけで、ドレス姿が見たい花騎士には私はポーちゃんを推薦します。
ここまで読んで頂き、ありがとうございました。