雪かきとか大変ですもんね。
でも子供の頃は単純に好きだったなと思いまして、今回はそんなお話です。
あまりの寒さに目を覚ました。まだ薄暗い部屋、時計を見ると午前4時を指していた。
ブルッと身震いをする。流石に今日の寒さは異常だ。
ふと、カーテンを開けてみた。まだ日の無い暗闇の中、白いものが降り注いでいた。
指がかじかんでしまって、書類仕事が中々片付かない。暖房も今日はあまり効きそうにない。
ブロッサムヒルに雪が降るのは珍しい。窓越しに眺めるそれは綺麗に見えるが、大人になると正直あまり好きなものではない。
今日の訓練はどうしようとか、雪かきをやらなければいけないなとか、色々と考えてしまう。それは花騎士たちも同じようで、今日は外に出ている者はほとんどいない。
コンコンと執務室のドアが鳴る。やって来たのはクコだった。
「団長、外、雪。クコ、雪遊び、所望!」
可愛らしい笑顔を浮かべながらそう誘ってくるクコ。帽子にマフラーに手袋と、防寒対策もばっちりで、既に外で遊ぶのは決定事項のようだ。
そこまでやる気になっているクコの誘いを断るのも気が引けたので、乗り気ではないが外へ行くことにした。
「おぉ~……外、真っ白、綺麗……」
クコは一面の銀世界を見渡し、感嘆の声を上げた。ロータスレイクでもブロッサムヒルでも、雪が降ることはそうないし、珍しいのだろう。
「団長、何する? 雪合戦? かまくら? 雪遊び、クコに享受、所望!」
今日のクコはやけにはしゃいでいる。しかし積もっていると言ってもかなり薄いし、雪合戦もかまくらも難しそうだ。
例えばこういうのはどうだ、と小さな雪うさぎを作って見せる。
「!? う、うさぎ、可愛い……団長、作り方、クコに享受、希望」
そう言いながらうさぎのようにぴょんぴょん跳ね回るクコ。雪うさぎよりクコの方が可愛いじゃないか、そんな言葉がのどまで出かかった。
「……こう?」
手際よく形を整えていく。後は目と耳を付ければ完成だ。
「目……耳……完成! 団長、クコのうさぎ、評価、所望」
うむ、100点だ。可愛く出来たじゃないか。そう言って彼女の頭を撫でた。
「えへへ……クコ、もっと作る。あい♪」
早速次のうさぎを作り始めたクコを見つめる。この寒さの中でも元気なクコの姿を見ていると、心の中だけは暖まるようだった。
「あい、3匹目」
順調に雪うさぎを作っていくクコだが、そろそろ手が冷たくなってこないだろうか。
「手……あい、冷たい。少し、痛い」
濡れてしまった手袋を外してみると、クコの小さな指は赤く霜焼けになっていた。
「うぅ……クコ、はしゃぎ過ぎ……?」
赤くなってしまった指をそっと撫でる。確かにはしゃぎ過ぎたのかも知れないが、クコの元気な様子を見ていると私も元気になれた。
「団長、元気に、クコのおかげ?」
その通りだと、彼女の赤いほっぺたを撫でた。
「……えへへ」
「手、冷たい。でも、まだ、帰還、嫌」
クコが私の胸に顔をうずめてそう呟く。
思えばここは二人だけの世界のような気がする。他人は誰もおらず、ただ白い綺麗な雪が静かに降り注いでいるだけだ。私としてもしばらくこうしていたいが、クコの霜焼けも気になる。
「……えいっ」
何かがコートのポケットにずぼっと入ってきた。どうやらクコが手を入れてきたらしい。
「えへへ……温かい……」
そんな彼女が愛おしくて、ついつい抱き寄せてしまった。私のコートにくるまるクコ。しんしんと冷たい空気の中で、お互いの体温を共有していた。
「ん……ココア、美味」
まだまだ降りしきる雪を眺めながら、部屋でクコはココアを、私はコーヒーを飲む。白い湯気が目の前でくるくる回って、心の中まで温めてくれる。ふとクコと目が合って微笑み合う。二人の間だけは空気が温かいような気がした。
「団長……体温、温かい……好き……」
膝の上に乗ってきたクコが、自身の背中を私の胸に預ける。体温に眠気が誘われたのか、こっくりこっくりと舟を漕ぎ始めた。
眠いのなら寝てもいいぞ。そう言って彼女を抱き締める。
「んん……まだ寝たくない……団長と会話、希望……」
彼女の小さな手が私の手に触れる。その手を握り返すと、クコはすぅすぅと寝息を立て始めた。そんな彼女の姿に癒されながら、私もまどろみの中へ落ちていった。
さて、来週から人気投票です。
私もクコとコンボルちゃんのため頑張ろうと思います。
期間中はSSの更新停めようと思います。申し訳ありません。
ここまで読んで頂き、ありがとうございました。