ついに来ました永久の誓い。
そしてクコとのキスして、旦那様と呼ばれるこの幸福感。堪りません。
伝えたいことがあった。
伝えたいことは一つだけしかなかった。
しかし何故だろう。それを言葉にすると、まるで砂で作った城のように脆く崩れていく。
言葉で伝わるものは何て少ないのだろうと思った。
「団長、お気に召す宝石はあったかしら?」
あることでベッセラに相談すると、彼女は私のためにいくつか宝石を見繕ってくれた。
「ふふ……人生の節目の大事な選択なのだから、しっかりと選びなさいね」
優しく微笑むベッセラ。
私は少し照れてしまう。
ベッセラが持ってきた宝石はどれも綺麗で素敵だった。
素人目でもそう思う程に。
しかし、一目見ただけで特に惹かれたものが一つあった。
深いオレンジ色。クコの瞳の色だ。
「あら、それが気に入ったの? ふふ、良い選択ね」
迷うことなく、その宝石を買わせてもらった。
「団長、今日の商談は本当に素晴らしいものになったわ。後はあなたの心次第。素敵な結果になるように祈っているわ」
「団長様、私も陰ながら応援させて頂きます。フレーフレーです」
ベッセラとエキザカムに見送られて、彼女の屋敷を後にした。
私の心はもう決まっていた。
後はどう伝えるか、それだけだった。
と、ここまではかっこ良かったかも知れないが、その後の私はどうにもみっともなかった。
頭の中でぐだぐだと考えてしまって、何も前に進まない。
彼女の顔もまともに見れない。
伝えたいことはただ一つ。
好きだ。一緒に居て欲しい。
たったそれだけのことでも、言葉にすると何だか嘘くさく感じてしまう。
この気持ちを上手く表現することが出来ない。
執務室のドアが叩かれる。
考え疲れた私は、相手が誰なのかかも確認せずに、入るよう指示した。
「団長、疲労困憊? 薬、飲む?」
く、クコ!?
驚いて椅子からひっくり返りそうになる。
「あい。クコはクコ。団長、動揺、何故?」
な、何でもないんだ。それよりどうしたんだ?
「団長、顔色、悪い。クコ、漢方、持参」
気を使わせてしまったか。私はやはりダメな男だな。
「? 否定。団長、立派。クコ、団長、尊敬。好き」
彼女の口から紡がれた「好き」という言葉。混じりけのない、何とも自然な言葉だった。私もクコに話す時は、こんな風に話していたことを思い出す。
「団長?」
きょとんと見つめて来るクコの頭を撫でる。クコも照れながら受け入れ、お返しとばかりに私の腹を撫でてくる。
いつも通りの光景。そして、いつも通りの自然な言葉が生まれそうだった。
「団長、悩み、存在?」
いや、たった今悩みは晴れた。やはり自分で考えるだけでは何も解決しなかった。クコがいなければ。
執務室の机の中から箱を取り出す。中から宝石のついた指輪が現れる。
「指輪? プレゼント?」
ああ、クコのために選んだ指輪だ。永久を誓うための……。
まるで最初からあったような言葉が、私の口から紡がれていった。
そして、クコの小さな薬指に指輪を収めていく。
数秒間の沈黙の後、クコの頬には涙が伝った。
私の指がその涙を拭う。温かく優しい涙だった。
「団長。クコ、嬉しい。二人、ずっと一緒、永久に……歓喜」
クコの細い腕が私の背中に回る。
胸に埋もれたクコの頭を、包み込むように撫でる。
彼女の温かさを、柔らかさを肌で感じた。
≪数か月後≫
教会の鐘の音が鳴り響く。
今日は一生に一度の大切な日。
新しいグレーのタキシードは、シャキッとし過ぎていて、何だか落ち着かない。
しかし、花騎士たちには人気らしい。「かっこいい」なんて言われてしまう。彼女に嫉妬されないか心配だ。
海の見える丘に佇む小さな教会には、十数人の花騎士たちが集まっている。
お祝いの言葉があちこちから飛び交う。今日は若い二人の結婚式。
扉が開いて出てきた花嫁。
純白のドレスを身に纏い、両手でブーケを持っている。
その顔は嬉しそうな、恥ずかしそうな、複雑な表情だ。
真っ赤な絨毯を伝い、花嫁が新郎の元へやってくる。
誓いの言葉を囁いた後、背伸びをして唇を重ねた。
「団長……旦那様。好き、ずっとずっと……」
若い二人を祝福するように、空は青く澄み渡っている。
花嫁……クコを抱き上げる。二人の視線が重なり合うと頬が緩み、微笑みが自然と浮かんできた。
静かな、とても静かな教会に、鐘の音と海鳴りがいつまでも響いていた。
メンテ明け後から私のテンションがおかしい。
いやぁ、もう本当に嬉しいです。
おかしなことを書いてしまいそうなので、あとがきはここまでにしておきましょう(笑)
ここまで読んで頂き、ありがとうございました。