ということで、今回はクコ回です。
ですが……今回は何と説明すればいいのか……。
書き終えた私自身も困惑しております。
一応、元ネタとしてはバスター・キートンの「文化生活一週間」です。傑作コメディですが、あれを文字に起こすのは私にはちょっと難しかったですねぇ。
「んちゅっ……旦那様、好き♪」
朝の白い光の中でクコとキスをするのが最近の日課になっていた。新婚ほやほやの二人は幸せいっぱいで、悩み事などには縁もないように思えた。
いや、一つだけ悩みがある。
今まで住んでいた騎士団寮で二人一緒に暮らし始めたのだが、最近は少し狭さを感じていた。どうせならマイホームに住もうかとクコに提案する。
「あい、いい提案。この部屋、二人、狭い。それに、これから、家族、増える……」
クコが幸せそうに自分の腹を撫でる。私も彼女の腹を撫で、再びキスを交わした。
「だんちょ、だんちょ! ランタナ達からプレゼントがあります。さて、何だと思いますか?」
騎士団の廊下で突然ランタナに声を掛けられた。ランタナのことだし、変な物じゃないかと疑ってしまう。
「失礼な! 今回はもの凄~いものだよ。まあ私だけじゃなくて花騎士皆で出資したんだけど」
ランタナから渡されたのは一枚の紙。『新婚ほやほやの二人へ、ブロッサムヒル◯◯番地に家を送ります 花騎士一同』
こ、これは……。
「えへへ……だんちょ、家が欲しいって言ってたでしょ?」
しかしそんな高価なものを貰っていいのだろうか。
「いいのいいの。花騎士皆、だんちょには感謝してるし、そのお礼」
あまりの嬉しさにランタナを抱き締めてしまう。
「う、浮気だぁ~!!」
浮気ではない!
「団長、新居、ここ?」
手紙に書いてあった場所に来てみたが、ただの空き地だ。あるのは一つの箱だけ。
「側面、紙、付いてる」
箱に付いていた紙には『説明書』と書かれていた。
『夢のマイホームをあなたの手で組み立てよう! 簡単DIYホームキット』
……これは。
「家、組み立て、可能?」
まあやってみるか。
「あい。夫婦、共同作業」
微笑むクコの頬にキスをして、さっそく作業に取り掛かることにした。
コンコンと釘を打つ音が響く。
説明書に書かれている順番で組み立てるだけなので、案外簡単そうだ。
「あい、団長。釘」
お礼代わりにキスをして、再び釘を打ち付ける作業に戻る。寒い中の作業だが、クコと一緒だと心の中までポカポカと温かいようだった。
「団長、ご飯、出来た。休憩、推奨」
二階部分を組み立てている時にクコから声を掛けられた。今行くから少し待っていて欲しいと伝え、のこぎりで木材の余分な部分を切っていく。その時、
「団長っ!?」
世界が逆さまになった。気付いたら地面に思い切り激突していた。
「団長、平気? 薬、必要?」
い、いや大丈夫だ。尻が結構痛いが……。
「団長、おっちょこちょい♪」
そう言ってまたキスをすると、痛みも和らぐような気がした。私にとってはクコが薬のようなものなのかも知れない。
≪一週間後≫
「完成……?」
出来た……のか?
そこにあったのは家というにはあまりにもいびつな形をした何かだった。
「お~い、来てやったぞだんちょ、クコ。っ!?」
「にぃに、クコ。ヘナ、新居祝い……なの。……?」
花騎士たちが次々と新居祝いにやって来る。しかしその家を見た者は誰もが言葉を失った。
「何だこの前衛的な家……カリガリ博士か!?」
説明書通りに作ったと思うのだが、どうしてこうなった。
「玄関はどこにあるんですか?」
リシアンサスに尋ねられたクコが家の壁をとんとんと叩くと、壁が回転し中に入れるようになった。
「あい」
「えぇ……」
ちなみに本来の玄関は二階についている。二階からすぐに外に出たい場合などには便利だ。
「な、何はともあれ、団長とクコさんのマイホーム完成をお祝いして、花騎士を代表してこのポーチュラカが祝辞を述べさせてもらうんだよ」
ポーチュラカはこほんと咳をしてマイクを握った。
「家が出来て良かったね。イエーイ!」
「……」
……。
「それにしても、こんな前衛的な家で不便じゃないですか」
「少し、不便。でも問題なし。旦那様と一緒、それだけで、幸せ♪」
腕にすり寄ってくる彼女の頭を撫で、頬にキスをした。
「なんだこのバカップル……」
「風が強くなってきたねぇ」
窓がバタバタと音を立てている。今日の天気は荒れそうだ。
その時、バキッという音が鳴った。
「な、何か変な音がしたんですけど、大丈夫ですか!?」
大丈夫だろう、多分。
「雨も降ってきたんだよ。ってうわぁ!」
私の頭の上にも雨が降り注いでいる。屋根がちゃんと付いていないからな、そりゃあ雨漏りもするだろう。
「雨漏りってレベルじゃないんだよ。これはもう雨そのものだよ」
そういう時は傘を差せば解決だ。
「あい。相合傘♪」
「何だこいつら……」
雨はまだまだ降り注いでいる。こんなにずぶ濡れになると流石に寒くなってきたな。
するとまたバキバキと音が響いた。
「ま、また音が……!」
少し心配になってきたので外に出てみることにした。
何だ、壁が一枚剥がれただけか。釘で打ち付けておこう。そう思ってトンカチを構えると、背中に何かが追突したきた。驚いて後ろを振り向くがそこには何もなかった。
何だ気のせいか。そう思った矢先、さらに強い衝撃が私の背中を襲った。
見ると家が回転していた。
「ねぇ、何か床が動いてない?」
「床というか……これは家が動いてるんじゃ……」
「うぉぉぉ! 回ってる! 家が回ってる!」
「危険、皆、避難……なの!」
「って言っても、こんなに回ってたら外に出るのなんて無理ですよ」
我が家が! 我が家が回っている。と、止めなければ!
しかし、当たり前だが人力で家を抑えられるはずはなく、吹っ飛ばされるだけだった。
と、その時、クコが家の中から飛ばされてきた。
「痛いっ! だ、団長、マイホーム、回転! ど、どうする……?」
どうすると言われても……。
結局我々にできるのは、回転し崩壊していく我が家を眺めることだけだった。
「だんちょ、今日は楽しいメリーゴーランドをありがとう」
やつれた様子で帰っていく花騎士たち。
さて、それではこの家だったものの片付けはどうするか……。
「マイホーム、粉々……」
俯くクコの頭を撫で、大丈夫だと励ます。
「団長……」
これからもこういった困難なことがあると思う。それでもクコと一緒なら乗り越えられると、私は信じている。
「……あい♪」
笑顔を取り戻した彼女と口づけを交わし、家だったものの片付け作業に取り掛かるのだった。
「そうして、夫婦の絆は更に深まったのでした。めでたし、めでたし」
「いや、全然めでたくないですよ! 何ですかその話は!?」
「ランタナが考えただんちょとクコへのプレゼント計画なんだけど」
「大惨事なんだよ! そもそも組み立て式の家なんてあるの?」
「さあ?」
「結婚祝いなんですから、もっとちゃんとしたものを贈りましょう、ね?」
「団長、お届け物。プレゼント、花騎士からの」
リボンで包まれた箱を開けてみると、オレンジと青のペアグラスに、『花騎士一同より』と書かれた手紙が添えられていた。
ということで、自分でもよくわからない回でした。
でもクコ入賞は素直に嬉しいです。別バ早く欲しいなぁ。石と昇華石を貯めなければ。
ここまで読んで頂き、ありがとうございました。