フラワーナイトガール短編妄想集   作:イッチー団長

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今回は趣を変えて、冒険活劇的なものを書きたいと思いました。
そこで考えたのが海賊もの。とはいえスイギョクさんとかは出てきませんが(お迎えしてないんですよねぇ……)

私の中で海賊ものといえば「宝島」ですね。原作は読んだことないのですが、出崎統監督のアニメ版が好きでしたねぇ。
ですから所々出崎流の止め絵を想像しながら読んで頂けたらと思いますw


海賊島の謎を追え(前編)

「その昔、この海にはたくさんの海賊たちがいたそうです。ある者は己の欲望のために、またある者はロマンを追い求めるため、皆大海原へ挑み、そして果てていきました」

 暗いテントの中、ハツユキソウの白い顔が蝋燭の灯でぼんやりと浮かび上がる。クコ、ワレモコウ、イキシアの三人は、息を飲みながら彼女の話に耳を澄ませていた。

 

「志半ばで死んでいった彼らの無念がこの海には眠っているんです。夜になってこの海に来てみて下さい。苦しそうなうめき声が、冷たい海風に乗って運ばれてくるはずですから……」

 そこでフッと蝋燭を消す。テントの中の花騎士たちを真っ暗闇が包んでいった。

 

 

 

「どうでしたか? 地元民に伝わる怪談話でした」

「ハツユキソウの話、面白い。でも、うめき声、幻聴。風や波の音、うめき声、聞こえる」

「モコウもそう思う? そういう伝説が、普通の音もうめき声に聞こえさせているです?」

「うぅ……この騎士団ではあんまりウケが良くないんですよね、怪談話……」

 クコとワレモコウの正論に、ハツユキソウはがっくりうな垂れる。うちには冷静な花騎士が多いから、そう言った話はあまり怖がられないのかも知れないな。一人、テントの隅で震えているイキシアを除いて。

 

「ど、どうしてこっちを見てるの団長さん? こ、怖くないよ……。お姉ちゃんなのに怪談が怖いわけ……」

 別に無理する必要はないだろうに。

 

「団長さん、皆、何やってるの? そろそろ調査始めよう?」

 テントの入り口をひょいと持ち上げ、コンボルブルスが顔を出した。

 彼女の言う通り、今日はこの近辺の調査に来たのだった。

 

 

 

 ブロッサムヒルの港都市ヨーテホルク。航路を利用しての物資の輸出入が盛んな都市であるが、ここで最近飛翔性害虫が急増しているという報告があった。しかも通常の害虫だけではなく、極限指定クラスの害虫も多数目撃されているということだ。

 

「そうでしたね。浜辺にテント張って怪談話してる場合じゃありませんでした」

 ハツユキソウは怪談話をするのが大好きだ。今日もここの地元民に話を聞いて触発されたのだろう。花騎士たちも歩き疲れていたので、丁度いいタイミングではあったのだが。

 

 

 

「もう、おーそーいー! いつまで休憩してるの!?」

 先に調査を行っていたコマチソウが頬を膨らませる。

「もうあたしとコンボルブルスで何体か害虫捕まえてみたよ。ほら、これがハエ型で、これがアブ型で~」

「うっ!」

 コマチソウのバックからじゃらじゃらと害虫のパーツが出てくる。他の花騎士たちは顔をしかめるが、コマチソウは気にもせず嬉しそうにそれらを並べていく。

 

「ま、詳しく調べてみないと分かんないけど、本土の害虫とはちょっと違うと思うよ。独自に進化した種類だと思う」

 それはつまり……どういうことだろう。

「あたしが考えるに、これはどこか未開の島に生息していた害虫で、何らかの理由で本土の人たちを襲うようになった、とか?」

「島……」

 コンボルブルスとクコが顔を見合わせる。きっとフロッタン島のことを思い出しているのだろう。あそこでも独自に進化した害虫が生息していた。

 

 俯きがちなクコの頭を撫で、大丈夫か、そう囁く。

「……あい。クコ、問題なし。過去、受領」

 それならいいが、あまり無理はしないように。

「あい♪」

 

 

 

「よ~し、それじゃあ一旦戻ろう。ちゃんとした施設でこの害虫のこと調べたいし」

 その時、地鳴りのような音と共に人々の叫び声が聞こえてきた。

 

「さ、叫び声……何があったんですか」

 怯えるハツユキソウを手で制し、コマチソウはいつになく真剣な表情で地面に耳を付けた。

「……羽根音が聞こえる! かなり大型の害虫が近くにいるよ!」

「コマチソウさん、場所は分かる!?」

「こっち!」

 

 風を切るようなスピードで先行するコマチソウ。我々も彼女に付いていくと、ヨーテホルクの騎士団が海賊帽を被ったハチ型の害虫三体と交戦していた。

「何で海賊帽……?」

 騎士団側には傷付き倒れている花騎士もいて、防衛線が突破されるのも時間の問題のように見える。格好はともかく、この大きさ、この強さ、極限級の害虫と見て間違いないだろう。

 

「たりゃぁっ!」

 コマチソウが虫取り網で不意の一撃を与える。

「怯んだ! 皆、今のうちに!」

 イキシアの号令でこちらの花騎士と騎士団側の花騎士が一斉に攻撃を加えていく。

 

「ブンブン、攻撃!」

 物理攻撃で弱った害虫にクコの魔法攻撃が炸裂する。外殻が破壊され、害虫たちは崩れ落ちていった。

 

「おっと、終わっちゃいましたか~。ごめんなさい、遅れちゃって」

 交戦が終わってから数秒後、ハツユキソウが手を頭の後ろに当てながら申し訳なさそうに現れた。

「いやぁ、害虫も強そうでしたが皆さんも強かったですね~」

 

「ふぅ……それにしてもこんなに強い害虫どこから……っ!?」

 害虫の内一体の身体がピクリと動くと、急遽起き上がり逃げるように飛んで行った。その動線上には……

「ハツユキソウさん!」

「ぎゃぁぁぁ! は、離して下さい!」

 害虫がハツユキソウを捕まえてどこかへ去って行こうとする。

 

「は、離してっ!」

「ギッ!!」

 ハツユキソウが無意識に放った氷攻撃によって害虫は今度こそ倒れる。しかしその下は海になっていて、

「ぎゃっ!?」

 ドボンと音を立て、一人と一匹が沈んでいく。花騎士たちが駆けつけると、やがて雪女のようなシルエットがぷかっと浮かんできた。海と雪女とは随分とミスマッチだなと思ってしまう。

 

 

 

「うぅ……寒い……ありがとうございます、皆さん。死ぬかと思いました……」

 季節外れに稼働させられた暖炉の前で震えるハツユキソウ。彼女の肩をポンと叩いてから、イキシアがヨーテホルクの騎士団の花騎士たちに話し始めた。

 

「あの害虫が現れた時のこと、詳しく聞かせてくれない?」

「はい……」

 

「とはいえ、私たちも咄嗟に駆け付けたので詳しくは……ただ、害虫たちは海の方からやって来たようでした」

「海……そう言えば海の方から地鳴りのような音が聞こえたです? あれも関係ある?」

「おそらくは。最近、あの地鳴りが聞こえると害虫が出てくるんです」

 地鳴りと害虫……そこに何の関係があるのだろう。詳しく調査する必要がありそうだ。

 

「団長、あたしはハツユキソウを連れて騎士団に戻るよ。害虫のこと、色々調べたいし」

 では我々はまだこの近辺の調査を続けよう。

「ほら、行くよハツユキソウ」

「くしゅんっ! そ、それじゃあ皆さん、また会いましょう~」

 

 

 

「団長さん、ここの騎士団から船を借りてきたよ」

 では海の調査を始めよう。幸いこちらにはプロが二人いるからな、心強い。そう言ってクコとコンボルブルスに微笑みかける。

「あい。クコ、お役立ち」

「海と湖はちょっと違うけど任せて。失望はさせないから」

 

 

 

「たっ!」

 船上に侵入してきた害虫と花騎士たちが交戦していく。

「海上にこんなに害虫が……何かがおかしい?」

 しかも進むにつれ段々増えていってるような気がする。

 

「あ、あれ! 島じゃない!?」

 イキシアが指差した先、数百メートル先だろうか、確かにそこには島があった。しかし何か様子がおかしい。明らかに人工物と思われる壁で囲まれている。

 

「っ!? 団長、危険!」

 クコが突然私を突き飛ばした。見ると先ほど私がいた場所には矢が刺さっていた。

「まだ来るよ!」

「大丈夫、たぁっ!」

 コンボルブルスが飛んでくる矢を次々と槍で落としていく。

「矢は私が全部落とす! 気にせず進んで!」

 

 

 

「や、やけにおどろおどろしい島だね……」

 島の目の前までやって来ると、害虫の攻撃も矢もぴったり止んでしまった。諦めたのか、それとも……。

「……取り敢えず上陸するです?」

 

 島に一歩足を踏み入れると、真っ黒なカラスが数十羽、一斉に飛び去っていった。

「ひっ!」

「イキシアさん、ただのカラスだよ」

 

 しかしこの島は明らかに様子が変だ。人の気配は全く無いが、そこかしこに人工物と思われる物が散乱している。大砲に剣、朽ちた船。そして……。

「……骸骨?」

 ボロボロの黒い服に包まれ、茶色く汚れた人骨が静寂の中で佇んでいた……。

 

 

 

《一方その頃》

 コマチソウたちはヨーテホルクの街にある研究施設を借り、害虫のパーツを隅々まで調べていた。

 

「う~ん……」

「コマチソウさん、何か分かりましたか?」

 顕微鏡で害虫のパーツを調べるコマチソウに、ハツユキソウがきのこのスープを差し入れる。

 

「この外殻や羽根の強靭さ……本土の害虫に比べて異常に発達してる……ふふっ。面白いなぁ……」

「……」

 若干引いてしまうハツユキソウだった。

 

「どうですか、調査の方は?」

 二人に話しかけてきたのは白衣を着た初老の男性。白く立派な髭がトレードマークの彼はこの研究施設の所長だという。

 

「う~ん、本土にいない種類の害虫だってことは分かったけど、他は何とも言えないね」

「この近くには人の住んでない島とかありませんか?」

「島……ですか。いくつかありますが、どこも害虫のほとんどいない平和な島ですね」

 所長は自慢の髭をいじりながらそう答えた。

 

「ただ、いやしかし……」

「?」

「いや失敬。数百年前に沈んでしまった島のことをふと思い出したもので」

「沈んだ島……詳しく聞かせてくれませんか?」

「ハツユキソウ、そういう話好きだよね~」

「えへへ……」

 

 

 

 一呼吸おいて、男性は話し始めた。

「あなた方は、海賊の伝説を聞いたことがありますか?」

「はい! この近くは昔たくさんの海賊がいたんですよね」

 はしゃぐハツユキソウを見て、老人は優しく微笑んだ。

 

「ええ。もう300年も前のことになりますがね。その海賊たちの中でも最も強く、この一帯の海を仕切っていた男がいました。本名は分かっていませんが、『シルバー』と呼ばれ、ある者には恐れられ、ある者には慕われていたということです」

「シルバー……」

 

「そのシルバーが拠点としていた島がこの近海にあったのです。『海賊島』と呼ばれていたようですが、そこにはシルバーが生涯集めた金銀財宝や、中には当時の政府の機密事項が記された書類なども集められていたようです」

「でもその島は沈んでしまった」

「はい。流石のシルバーも老いには勝てず、海賊島にごく一部の仲間だけを連れて晩年を過ごしていました。しかしシルバーは政府すら恐怖に陥れた大海賊。彼の老いを好機と思う者も少なくなかったでしょう」

「ってことは、シルバーは誰かに殺されたの……?」

「はい。彼を疎ましく思った政府によって殺された、という説が有力です」

 二人の喉がゴクリと鳴った。

 

 彼女たちの脳裏にはある映像が浮かんできた。燃え盛る島の中、シルバーが政府の男たちに銃を突きつけられている場面だ。

 そんな窮地でも、シルバーは余裕の笑みを絶やすことはない。

『俺を殺すつもりか? ふははっ、ならば殺せ! だが俺のこの身体がバラバラに引き裂かれようとも、俺の魂は誰にも消せやしねぇ!』

 銃声が鳴り響く。シルバー海賊団の、髑髏の書かれた旗が燃え落ちていく……。

 

 

 

「シルバーが殺された後、彼の遺体は海賊島ごと葬り去られました。他の海賊たちへの影響を恐れたのでしょう。こうして大海賊シルバーの物語はあっけなく終わりを告げたのです」

 男性が悲しそうな眼差しを見せる。その瞳は一体何を見つめているのか。

 

「長い話になってしまいましたね。申し訳ない」

「いえ、面白かったです。所長さんは随分シルバーに詳しいんですね」

「私も彼のファンですからね。こんな年寄りになっても、やはりロマンというのは忘れられないものです。ふふ……」

 

「ねぇ、今ふと思ったんだけど、その海賊島がまだ残ってる可能性もあるの?」

 コマチソウの質問に、所長は目を見開いた。

「……実はシルバーの財宝は、そのほとんどが見つかっていないのです。単純に海底に沈んだのか、それとも……まあ、推測の域を出ませんがね」

「可能性はゼロじゃない……か。ねぇ所長、海賊島のあった大体の場所って分かるの?」

 

 

 

《その頃、団長たちは》

「だぁっ! はぁ……はぁ……」

 島に踏み入れると、たくさんの害虫たちが襲いかかってきた。まるで侵入者を追い出すかのように。

 

「この害虫たち、港都市で戦ったのと同じ種類じゃない? きゃぁっ!」

「イキシア!?」

 イキシアの身体が吹き飛び岩壁へ激突する。彼女を吹き飛ばしたのは、他の害虫よりも明らかに大きく、禍々しい邪気を纏ったハチ型の害虫だった。黒いマントを羽織り、髑髏マークの付いた帽子を被っている。

 

「ギャァァァァ!!」

「ぐっ!」

 うめき声にも似た咆哮が島中に響き渡る。その声一つだけで、私も花騎士たちも気圧されていく。

 

「っ!? 来るよ!」

 海賊害虫が動き出した。そう思った瞬間、既に害虫はワレモコウの目の前でサーベルを振り下ろそうとしていた。

「ぐぅっ!?」

「ワレモコウさん!?」

 間一髪その攻撃を避けたワレモコウだったが、その風圧で身体は大きく吹き飛ばされてしまった。

 

 ワレモコウを倒した害虫は、次の標的をイキシアに定める。

「ぐっ……!」

 何とかサーベル攻撃を槍でいなしたイキシアに、間髪入れず次なる攻撃が襲い掛かってきた。

 

「……今っ!」

 コンボルブルスが隙を見て害虫を背後から攻撃しようとする。しかし、

「がぁっ!」

 海賊害虫は瞬時に上半身を180°回転させ、彼女の槍を押し返す。彼女の小さな身体は軽々と吹き飛ばされてしまった。

 

「この人数では分が悪い? 撤退するです?」

 ワレモコウの声に、イキシアとコンボルブルスが害虫から離れる。そして、

「撤退、了解。魔法、ドンっ!」

 クコの必殺の魔法攻撃が害虫に直撃する。さしてダメージは受けていないようだが、足止めには充分な時間が稼げた。

 

 

 

「はぁ……はぁ……皆、大丈夫?」

「な、何とか……」

 何とか船に乗り込み島から離れることに成功したが、飛翔性害虫の追手は無慈悲に襲い掛かってくる。

 

「皆、疲労。このまま、退避、危険」

 このまま船を壊されでもしたら一溜まりもない。絶体絶命かと思われたその時、聞き覚えのある声が聞こえてきた。

 

「お~い、皆~!」

 水平線の上に一台のクルーザーが見える。一瞬幻覚かと思われたそれは、着実にこちらへ近付いてくる。そしてそれに乗っているのは……

「コマチソウさん!」

 

 

 

「コマチソウ……助かったです?」

 へとへとになりながら研究所が所有している船に座り込む五人。

「それにしても所長、やっぱりあの島は……」

「はい。あれこそ正に海賊島。大海賊シルバーの島!」

 我々は遠ざかる島を見つめる。必ずまた戻ってくると誓いながら。




色々と書きたいことはありますが、これで前半は終了。
プロットとか作ってないので、後半はガバガバになりそう……。そんな大味なところも含めて楽しんで頂けたらと思います。

ここまで読んで頂き、ありがとうございました。
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