フラワーナイトガール短編妄想集   作:イッチー団長

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今回は「伝説の花騎士」と呼ばれるサントリナちゃんのお話。
実装が人気投票時だったのでそちらに話題を取られましたが、可愛いし凄く良い子ですよ。気になる方は是非キャラクエを見てみて下さい。

今回は彼女のキャラクエをガッツリネタバレしてるので注意。


笑顔の力

「だ、団長さん……どうしましょう……」

 狼狽える新人花騎士たちに、大丈夫だと言って肩を叩く。とは言え、この状況は非常にまずい。前にも後ろにも極限指定害虫。簡単な調査任務のはずがどうしてこうなったのか。

 

 

 

《数時間前》

 新人花騎士三名を連れて、リリィウッドとブロッサムヒルの国境にある森の中にやってきた。

 

「だ、団長さん。今日はよろしくお願いします!」

 そう緊張することはない。今日は森林地帯の調査任務。害虫と交戦する予定もない。

「そ、そうですよね」

 初々しさが可愛らしい。しかし彼女達もこれから経験を積み、立派な花騎士になっていくことだろう。そんな彼女達のために私も出来る限りのことを教えようと思った。

 

 

 

「害虫の足跡……食べ残された木の実……こういう所から生息する害虫を推測できるんですね」

 うむ。しかし何かがおかしい……足跡が大きすぎるのだ。この辺りは小型の害虫しか生息していないと言われているのだが。

「そ、それってつまり……」

 一旦戻った方がいいだろう。ベテランの花騎士を連れ、本格的に調査をする必要がある。

 

 その時、背後の草むらが揺れる音が聞こえた。息を殺して草むらの向こうを覗く。

 極限指定の害虫。腕利きの花騎士でも単体で倒すことは困難な害虫がそこには居た。

 

 こちらにまだ気付いていないのが幸運か。この場は早く逃げなければ。そう指示をするが、一人の花騎士が腰を抜かしその場に座り込んでしまった。更に不幸なことに、彼女の足元にあった木の枝がパキッと音を立てた。その音は無情にも静かな森の中に鳴り響いてしまった。

 

「グガァァァ!!」

「こ、こっちに来る……」

 動けなくなってしまった花騎士たちを抱え全速力で逃げる。相手はトライサンボン型の害虫。動きが直線的なので、木や岩といった物陰を利用しながら逃げれば私の脚でも逃げられるはずだ。しかし、

「だ、団長さん! 向こうからも!」

 逃げる方向にもまた同じ害虫の姿があった。私は咄嗟に横の草むらの中へ逃げ込む。獣も入らないような背の高い草が並んでいて、とてもじゃないが普通に走れる場所ではない。しかし今はなりふり構っている暇はない。何とかあの害虫たちを撒かなければ。

 

 

 

 1時間程経っただろうか。流石に三人の新人花騎士を抱えながら走るのは厳しい。その場にへたり込み、荒い息を吐き続ける。

「団長さん、私達を置いて逃げて下さい。一人なら逃げられます」

 そんなことは出来ない。花騎士を置いて逃げるなど、騎士団長失格だ。

 

「団長さん……」

 しかし二匹の害虫はまたしても我々を発見し、全速力で突進してこようとする。

 もうダメか……そう諦めかけた時、斬撃音と害虫の叫び声が聞こえた。

 

「大丈夫ですか、団長さん、皆さん!?」

 オレンジ色のポニーテールが華麗に舞った。駆けつけて来てくれたのは花騎士のサントリナだった。

 

 

 

「こんな所に極限級の害虫が出るなんて……偶然この近くの任務に来ていて良かったです」

 

「グルルル……」

 サントリナの斬撃は害虫の角を簡単にへし折ってしまった。

 やけになり突進してくる害虫を軽々とかわし、サントリナは次々と攻撃を当てていく。

 この強さ、流石『伝説の花騎士』と呼ばれるだけはある。

 

「す、凄い……」

 固唾を飲んで彼女を見守る新人たち。しかしその背後には……

「危ないっ!」

「えっ? きゃぁぁぁ!」

 潜んでいたもう一匹の害虫が新人の一人を襲う。

 

 死を覚悟した新人花騎士だったが、害虫の攻撃が来ないことを不思議に思いゆっくりと目を開けた。

「……え?」

「大丈夫ですか?」

 サントリナの足元に血溜まりができている。彼女の横腹を害虫の角が突き刺していた。

 

「あ……う……」

「怪我は無いみたいですね。良かったです」

 それだけ言うと、サントリナは電光石火の斬撃であっという間に害虫たちを切り刻んでしまった。

 

 

 

「そ、そんな……サントリナさん……」

 涙を浮かべる新人にサントリナは優しく微笑みかける。

「泣かないで下さい。笑顔が一番ですよ。ほら笑って下さい。ニコーって」

 しかし彼女の顔色はみるみる青ざめていく。力が抜けて倒れそうになったサントリナを抱き抱え、急いで騎士団へ戻ることにした。

 

 

 

「うぅ……団長さん……」

 あれから丸二日、サントリナは目を覚まさない。時折苦しそうにうわ言を言い、再び眠りにつく。それの繰り返しだった。

 

「この出血量では、普通の人間ならとっくに死んでますよ。まだ生きていられるのは、花騎士だからなのか、彼女だからなのか……」

 騎士団の専門医が眉をしかめながら私にそう伝える。

 花騎士といえど、あの怪我をしたらただではすまないだろう。サントリナを生かしているのは精神力か、それとも生への執着か……。

「先……輩……。皆……」

 

 

 

 ここはどこだろう。何も見えない真っ暗闇。私はさっきまで害虫と戦っていて……そうか、新人の花騎士さんを庇って……。ということは私は死んだのかな。

 

『サントリナ』

 私を呼ぶ声が聞こえる。聞き覚えのある、優しい声。

「先輩……」

 忘れもしない。復讐のことしか考えられなかった私に笑顔を思い出させてくれた、優しい花騎士の先輩。

 

『サントリナ、新人の花騎士を庇ったのね。私と同じように……』

「先輩がくれたものをお返ししただけです」

『そう……』

 

『疲れたでしょう? 正義のため、皆のためと言っても、あなたは一人の人間。体力的にも精神的にも限界がある』

「私は……」

 思い浮かんだのは皆の笑顔。仲間の、新人の花騎士さんの、そして団長さんの。

 

「確かに、皆の笑顔と平和のために戦うのは、辛く厳しかったです。でも、復讐のために戦うよりずっと良い。それは先輩も分かってますよね?」

『そうね……でもあなたの辛そうな顔を見ていたらつい』

「えへへ、先輩はやっぱり優しいですね」

 

 

 

『サントリナ!』

『サントリナちゃん!』

「皆……」

 目の前には、昔私が暮らしていた村の人々がいた。思わず涙が溢れる。

 

「皆、守れなくてごめんなさい……」

『サントリナちゃんのせいじゃないよ。むしろ私達の方が謝らないと。あなたが花騎士になって戦いに明け暮れるようになったのも、もとはと言えば……』

「違う! 違いますよ。皆のせいじゃない」

 

『サントリナちゃん、辛かったら戦わなくてもいいんだよ? あなたは優しい娘だから、きっと戦うのも辛いでしょ?』

「……はい。それでも私は……私は戦います。皆の笑顔のため、平和のために」

『立派な花騎士になったのね。そこまで言うのなら、私達にはあなたを止める権利は無い』

『でも忘れないで。私達はいつでもあなたのことを見守ってるから』

 見守ってくれている。それだけで心がほんの少し軽くなった気がした。

「はい……はい! 先輩、皆、ありがとうございます!」

 

 遠くへ消えてしまう、私が大好きだった人々。そして今私が大好きなあの人の声が、近づいてきているのを感じた。

 

 

 

「うぅ……こ、ここは……」

 真っ白なベッドの中、サントリナがゆっくりと目を開ける。思わず彼女の華奢な身体を抱きしめてしまった。

「わっ! だ、団長さん!? ここは……病院ですか?」

 状況が把握出来ていない彼女に、害虫の攻撃に倒れた後、丸二日眠り続けていたことを説明する。

 

「ご心配をおかけしました。私ならもう大丈夫です! あいたたた……」

 サントリナが横腹を押さえる。まだ傷が痛むのだろう。無理はしない方がいいと諭し、再びベッドに寝かせた。

 

「団長さん、ずっとサントリナに付いててくれたんですか? ありがとうございます!」

 サントリナの笑顔が眩しく光る。それを見ただけで私の心も暖かくなっていく。彼女が日頃から言っている「笑顔は最大の武器」とはこのことなのだと思い知らされた。

 

「あの、団長さん。私寝ている間、死んだ先輩や村の皆に会ったんです」

 そうか。

「信じてくれるんですか?」

 サントリナの言うことだ。疑う必要はないだろう。

「えへへ……」

 サントリナは恥ずかしそうにはにかんだ。

 

「それで、辛いんなら戦わなくてもいいんだよって言われたんです」

 今まで一緒に過ごしてきて、サントリナの優しさは痛いぐらいに分かっている。そんな彼女が何を犠牲にして戦っているのかも。

 騎士団長としては失格かも知れないが、本当は彼女のような花騎士を戦わせるのは辛い。出来ることなら普通の少女として穏やかに、彼女の大好きな笑顔に囲まれながら生きて欲しい。

 

「団長さん……えへへ、やっぱり団長さんも先輩と同じくらい優しいんですね。でも、だからこそ守りたいんです。あなたみたいな優しい人が死なないように」

 今まで微笑んでいたサントリナが真剣な眼差しでこちらを見つめてくる。

 まだあどけなさの残る顔立ちに、小さく華奢な身体。少女のような白い腕にそっと触れる。

 

 それならサントリナの無垢な笑顔は誰が守ってくれるのだろう。こんな小さな身体で皆を守っているのに、彼女自身はこうして傷付いていくことしか出来ないのだろうか。

 

「団長さん?」

 だから……サントリナの笑顔は私が守ろうと思う。私には君のような強さはないが、それでも出来ることはあるはずだ。そう伝えると彼女の頬には涙が伝った。

 

「ご、ごめんなさい……そんなこと言われるのは初めてだったので……」

 流した温かい涙を拭い、彼女はにっこりと微笑んだ。

 

「えへへ……それじゃあ、守ってくださいね、団長さん♪」

 サントリナが目を閉じる。彼女の華奢な肩を抱き、そっと唇を近付けた。その時、

「失礼します」

「わぁぁっ!? ……って、あなたは」

 

 

 

 病室に入ってきたのは、先日サントリナに助けられた新人花騎士だった。

「サントリナさん、助けて頂きありがとうございました。それと、私のせいで怪我をさせてしまってすみません」

 そう言って深々と頭を下げる。そんな彼女にサントリナは優しい笑顔を向けた。

 

「あなたのせいじゃありませんよ。気にしないで下さい」

「で、でも……」

 新人花騎士は包帯の巻かれたサントリナの身体を見て、申し訳なさそうに俯いた。

「そんな悲しい顔をしないで下さい。笑顔が一番ですよ。ほら、ニコーって」

 

 それでも浮かない顔をした彼女に、サントリナは静かに語り始める。

「私も昔先輩に助けられたんです」

「えっ……」

「その先輩は良く『笑顔が一番の武器』だって言っていて、私も先輩と一緒にいると笑顔になれたんです」

「……」

「だから先輩が私を庇って死んでしまった時も、この人の後を継いで皆の笑顔を守ろうって思ったんです」

 

「だからあなたも、いつか後輩を助けられる花騎士になって下さい。そうなってくれれば私も嬉しいです」

「は、はい!」

 新人花騎士の元気のいい返事に、サントリナも笑顔を返す。新人花騎士はきらりと涙を輝かせながら彼女に笑顔を見せたのだった。

 

 

 

≪数日後≫

「いらっしゃい、団長さん」

 サントリナの部屋に招かれた。怪我もすっかり完治したようで、今日は退院祝いで一緒に鍋を食べようと誘われたのだった。

 

 部屋の中に入ると、きのこや野菜の美味しそう香りが漂い、空腹を刺激された。

 しかしサントリナは友人が多いので他にも誰かを呼んでいるのかと思っていたが、どうやら私一人らしい。

「そ、その……今日は団長さんと二人で過ごしたいなって思ってるんです」

 サントリナの頬が赤く染まる。そんな彼女の身体を抱きしめ、この前出来なかった口づけを交わすのだった。




というわけで、サントリナちゃん回でした。
良いですよ、彼女は。
過去に色々あったし、これからは幸せになって欲しいと思わずにはいられないような、そんな子です。
新年からミズキちゃん、サントリナちゃんと素晴らしいキャラを立て続けに配布してきたお花は流石だなと思わされました。

ここまで読んで頂き、ありがとうございました。
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