いやぁもう可愛くて、新たな嫁となりました。
そして前回からの落差が酷いw
というか、短編妄想集は本来今回みたいな話をたくさん書きたいと思っているのですが、たまにおかしな話を書いてしまいますw
外は静かな闇に包まれている。春とはいえ、夜はまだ少し肌寒い。その冷たい闇の中を小走りで通り過ぎていく。
溜まっていた書類仕事を片付けていたらこんな時間になってしまった。だからと言って明日の仕事を休めるわけではないので、今晩は簡単に晩飯を済ませて寝てしまおう。そう思って自室のドアを開けると、ほんのりと玉ねぎや人参の甘い香りが漂ってきた。
「あっ、お帰り~。今日は遅かったね」
キッチンに立っていたのはエプロン姿のキャロットだった。何で私の部屋にいるのだろう。
「この前合鍵貰ったからね~」
それはそうだが、この時間まで待ってくれていたのだろうか。キャロットだって今日は任務があったはずだ。
「いいのいいの。疲れてる時は一人より、二人一緒に居た方がいいでしょ? 私だって、団長さんと一緒にいたいし」
彼女の明るい声と笑顔に癒される。キャロットと居るといつだって元気を貰える。
「団長さん、お腹空いてる? カレー出来てるよ。勿論甘口で」
このどこか安心できる香りは、キャロットのカレーの香りだったか。
「安心……えへへ、嬉しいな」
顔を綻ばせるキャロット。私もまた、冷たい頬が緩むのを感じた。
「お客様~、こちらの席にどうぞ~」
店員のような掛け声で椅子に座らせられる。彼女は実家が海の家で、その手伝いをしてるうちにそういう話し方が癖になったらしい。
「どう? 美味しい?」
キャロットのくりくりの瞳が私を見つめてくる。
美味しい。そう答えると彼女はその瞳を優しく閉じて微笑んだ。
キャロットのカレーはいつも甘口。彼女の好みでもあるらしい。
私は辛口派だったのだが、キャロットに出会ってからはすっかり甘口派に変えられてしまった。辛みの少ない柔らかな口当たりは、こんな疲れた時には特に美味しく感じられる。
「団長さん、凄く幸せそうな顔してるね」
それはそうだろう。キャロットがいて、こんな美味しいカレーを食べられるのだから。
「うわ~……その言葉、女の子は勘違いしちゃうよ~。このすけこまし~」
いたずらそうに笑うキャロット。別に勘違いさせるつもりはないのだが……。
「団長さんは天然だからね」
そう言って彼女は腰を上げた。
「団長さんが食べてる間に、ちょっと片付けしちゃうね。洗濯物あるなら出しておいて」
分かった。そう言って彼女の背中を眺める。
しかし、キャロットのエプロン姿は中々唆るものがある。いつもの格好から上着を脱いで、その上にエプロンを着けているので、背中が丸見えだ。
白い背中、肩、そしてうなじ。うなじから長く伸びる、金色のツインテール。白いフリフリのエプロンも良く似合っている。
と、しばらく見惚れていると、彼女の顔がこちらに振り返った。
「団長さん、さっきから視線を感じるんだけど……」
言われてギクッとする。悪いことをしたと彼女に謝ろうとしたその時、
「もう、お客様困ります~。当店はそういうお店じゃないんですよ~♪」
再び悪戯めいた笑顔が覗き、私もホッと肩を撫で下した。
「そういうのは後で……ね♪」
指で鼻先をツンと突かれ、彼女は再び洗面室の方へ行ってしまった。
……後で何なのか。キャロットと居ると安心するし癒されるが、たまにこうしてドキドキさせられる。甘口カレーのように、優しい甘さの中にほんのりと刺激がある。おかげで毎日退屈することがない。
「わぁぁぁっ!」
洗面室の方からドンガラがっしゃんと尋常じゃない音がした。おそらく滑って転んだのだろう。
……こういう刺激は求めていないのだが。
「えへへ……団長さんごめんなさい……」
膝に絆創膏を貼って、恥ずかしそうに笑うキャロット。大した怪我ではなくて何よりだ。
「せっかく良妻っぷりをアピールするチャンスだったのに……」
そんなことをしなくてもキャロットの良さは誰よりも分かっているつもりだ。
「団長さん……えへへ、嬉しい。よし、気を取り直して次のサービスに参りま~す」
他に何かあるのだろうか。
「うん。すっごく気持ちいいことしてあげるね♪」
気持ちいいこと……それはつまり……。
「団長さん、結構溜まってるね~。自分でしたりしないの?」
そう言えば最近は忙しくて、している余裕が無かったな。
「言ってよ~。私が毎日だってしてあげるんだから♪」
「それじゃあお客様、キャロットの耳かきをご堪能下さい」
耳の中をごそごそと、細い耳かきが動き回る。なるほど確かにこれは気持ちいい。
いや、それよりもキャロットの太ももが気持ちいい。少女のように柔らかな肉付きが私の頭にしっかりとフィットしている。そしてこのスパッツの感触も素晴らしい。
「団長さん、すけべなこと考えてる?」
そ、そんなことはない!
しかし静かな夜だ。昼間の喧騒が嘘のように。キャロットの吐息がやけにはっきりと聞こえる。そして規則正しい心臓の音。それがまるで子守唄のように聞こえ、私はこっくりと舟を漕ぎだした。柔らかい手の平が、私の頭を撫でたような気がした。
朝の雫が目の中に一滴二滴、私を目覚めさせる。ゆっくりと起き上がり背伸びをする。
いつの間にベッドの上に移動したのだろう。もしかしたらキャロットが運んでくれたのかも知れない。と、そこで彼女の姿が見えないことに気付いた。
台所には昨日のカレーの残りが、甘い香りを漂わせている。
きっとキャロットは先に出掛けたのだろう。
カレーをよそい、お茶を入れる。何だか寂しい。一人暮らしにも慣れたはずなのに、どうしてこんなに寂しさを感じるのだろう。そんな疑問を頭の中で巡らせながら、カレーを口に運んだその時だった。
「たっだいま~!」
元気な声が玄関の方から聞こえてくる。明るい笑みを浮かべて、キャロットがそこに立っていた。
「ちょっと買い物に行っててね。朝ごはんも一緒に食べたいから急いで戻ってきた」
そうか。
何でもないように装うが、心の底は嬉しさで満たされていた。
「野菜が安く買えてね~、それで~」
朝の優しい日差しの中、二人で摂る朝食はとても賑やかだ。
にんじんを一口。甘くて苦いそれが今の生活に重なって見えた。
もうすぐ出掛ける時間だが、もう少しだけ、このまま居たいと思った。
キャロットちゃん、しばらくピックアップが続きますので、皆様も是非お迎えしてあげて下さい。
本当に良い子ですよ。ちょっとあざとさがありますがw
個人的には若妻感がありますね。今後もそういうところをプッシュしていこうかと思います。
ここまで読んで頂き、ありがとうございました。