フラワーナイトガール短編妄想集   作:イッチー団長

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健全版はしばらく間が空いてしまいましたが、無事投稿できました。

今回は学園への潜入任務。
サントリナちゃんって制服が似合いそうだな~って妄想から話を広げていきました。


お嬢様学園へ潜入せよ!(前編)

「わぁ~!」

 試着室の中からサントリナの感嘆の声が聞こえてくる。

「団長さん、団長さん、見て下さい! 制服、すっごい可愛いですよ!」

 カーテンから顔を出して、ぴょんぴょんとポニーテールを揺らすサントリナ。珍しくはしゃぐ彼女がそもそも可愛らしいが、身体が見えていないので制服評は何とも言い難い……。

「あ、そうでした! ごめんなさい……」

 恥ずかしげに試着室から出てくる。

 白いブラウス、赤いリボン、紺色のブレザーと膝丈スカート、そして紺色のハイソックス。古き良きオーソドックスな制服といったところか。いつも通りのポニーテールも制服に良く似合っている。

 

 何故こんなコスプレ?をしているかというと、今回の任務がある学園への潜入任務だからだ。

「えへへ、学生服って憧れてましたから、着られて良かったです。まさか花騎士になってから着ることになるとは思いませんでしたけどね」

 サントリナは騎士学校には通わずに花騎士になったので、学校生活への憧れが強いのだろう。

 

 と、そうこうしているうちに他の花騎士の準備も整ったようだ。

「団長~、あたしこういう格好はちょっと……」

「お待たせしました、団長様。今回の任務、精一杯頑張りましょう!」

 エキザカムは平気そうだが、コマチソウはかなり恥ずかしそうだ。いつもの服の方が露出が多くて恥ずかしいと思うのだが……。

「バナナオーシャン民だから露出は別に。でもこういうきっちりした服は苦手なの~」

 取り敢えず数日間は我慢してくれ。それにこの任務で捕獲した害虫はコマチソウの好きにしていいのだし、そのためなら頑張れるのではないか。

「うぅ……うん! 何とか頑張ってみる!」

 

 

 

 三人の花騎士を連れて潜入するのは、ブロッサムヒルでも有数のお嬢様学園、春華(しゅんか)学園。ここでは最近、怪奇現象に悩まされているらしい。金品や食料がなくなったり、音楽室の肖像画の表情が変わったり、理科室の人工模型がひとりでに動き出したり。

 

「罪の無い学生さん達を怖がらせるなんて許せません。必ず私達が成敗してみせます!」

 いや、後半二つはよくある学校の七不思議だと思うのだが……。

 しかし一つ、特に気になるのは生徒数が三人増えているということだ。

「害虫が生徒さんに成りすまして潜んでいるのかも知れない、ってことですよね?」

 理事長はそう睨んでいるらしい。だからこそ知り合いである私の上司に相談して、騎士団が調査に乗り出すことになったのだ。

 

「特殊な脳波を出す害虫もいるからね。その脳波で、あたかも自分たちが本当の学生だと思い込ませてるって可能性は充分にあると思うよ」

 だとしたら学生達は危険と隣り合わせということになる。理事長の計らいで、学生達にこのことは知らせていないらしいが、知られればたちまちパニックになるだろう。だからこそ我々は秘密裏に事を解決しなければならない。

「うん。だからあたし達三人が呼ばれたんだよね」

 

 今回の任務を遂行するにあたっては、最少人数での編成が求められた。素早く害虫を発見、駆除でき、容姿も学生に溶け込みやすい花騎士を。

 まずは害虫のプロ、コマチソウ。そして戦闘のプロ、サントリナ。最後にお嬢様のプロ?、エキザカムだ。

「いやいや、お嬢様のプロって何!?」

 仕方ないだろう。コマチソウもサントリナもお嬢様の何たるかが分からないのだから。

「そりゃあそうだけどさ~」

「大丈夫ですよ、コマチソウ様、サントリナ様。ベッセラお嬢様のメイドの私が、お嬢様としての振舞い方をバッチリ教えて差し上げます」

「ええ、お願いしますね、エキザカムさん!」

 にこやかに握手を交わす二人を、コマチソウは苦笑いを浮かべながら見つめていた。

 

 

 

「ここが春華学園……」

「ついに来たね……」

 流石お嬢様学園というべきか、校門が私の背丈の三倍程はありそうだ。校舎や校庭も、まるで城のような広大さだ。

 

「よくいらっしゃいました。ではこちらへ」

 整った白髭を生やした、清潔感のある老人が校舎の中へ案内してくれた。

 

「では団長様は職員室へ。花騎士の皆様は教室へお願い致します」

「あれ、そう言えば団長さんはどういう設定なんですか?」

 新任の体育教師だ。

 

 

 


「サントリナです。皆さん、どうぞよろしくお願い致します」

 私は、エキザカムさんに言われた通り、スカートの端をつまんで広げて見せた。これがお嬢様式の挨拶らしい。

(怪しい人は……今の所見当たりませんね……)

 

 それにしても、教室ってこんな感じなんだ。30人くらいの生徒さんが机を並べている。どの人も上品そうな、綺麗な人ばかり。この中で、私は浮いていないかな……。そう不安に思っていると、ほとんどの生徒さんが私の周りに集まってきた。

 

「サントリナさん、どちらからいらしたの?」

「綺麗な髪ですわね。普段どのようなお手入れを」

「何か習い事などやっていらっしゃるのかしら?」

「え、え~と……」

 まさかこんな質問攻めされるとは。気圧されて困っていた時、

「皆、席に戻りなさい」

 黒髪ボブカットの、きりりとした目の少女の一声で、他の皆は静まり返った。

 

「サントリナさん、私はこのクラスの学級委員長、カオル。授業が終わったら学園を案内するから、少しだけ付き合って」

「は、はい! 了解しました!」

(た、助かった……)

 可憐という言葉が似合う少女だった。その切り揃えられた前髪も相まって、どこか古風さも感じられる。

 

 

 

「ここが噴水広場。あっちが中庭ね。それでそこを通り過ぎると温室があるから……」

「随分と広いんですね~」

 私がキョロキョロと辺りを見回していると、カオルさんがこちらを振り向いてきた。

 

「……あなたもしかして、生まれは庶民だったりする?」

「え?」

「間違ってたらごめんなさい。他意はないの……」

 俯いてしまった彼女に、何か言葉をかけようとした時だった、校門の方から歓声が聞こえてきたのは。

「何でしょうか、あの声」

「空蝉の(きみ)でしょ」

「空蝉の君?」

 

 カオルさんが無言で指差す方を見る。そこにいたのは他の生徒よりも頭二つ分は背の高い、色白の金髪美人だった。その周りに大勢の生徒たちが、黄色い歓声をあげながら集まっている。

「あの長身と中性的な顔立ちで、この学校一の人気者なの。色白で儚そうな雰囲気から『空蝉』なんて言われてる」

「確かに綺麗な人ですね」

 空蝉の君……何か引っ掛かるものがあるし、覚えておこう。

 

 

 

 放課後、コマチソウさんとエキザカムさんと、廊下で合流した。

「どうですか、進捗は?」

「こっちは全然……」

「私のクラスにも怪しい人はいませんでした」

 

「う~ん、やっぱりそう簡単にはいきませんね。ごきげんよう♪」

「「ごきげんよう♪」」

 廊下ですれ違う人に三人でお嬢様式のあいさつをする。

「お二人とも、自然とあいさつできましたね。凄いです」

「エキザカムにみっちり教え込まれたからね~」

 

「これからどうしますか?」

「取り敢えず学園の隅々まで調べてみよう」

 そう言ってコマチソウさんが先頭に立って歩き始める。

「ごきげんよう♪」

 ……何だかんだ彼女も楽しめているようで良かった。

 

 

 

「これが勝手に動き出すという、理科室の人工模型ですか」

「いや、それはただの学校の七不思議だと思うけど……」

 夕焼けに骸骨が不気味に照らされている。そもそも何でこんなものが飾ってあるんだろう。

 

「害虫の標本とか置いてないかな?」

「無いと思いますよ……」

 その時、骸骨がカタカタと動き始めた。

「!? な、何!?」

 幽霊……いや、そんなはずは……。

 

「……そこです!」

「ゲェッ!」

 エキザカムさんが懐から槍を取り出し、部屋の角に向けて攻撃を放つ。すると突然、ハエ型害虫の姿が現れた。

 

「一体どこから……」

「よぉし、捕獲だ!」

 コマチソウさんが網を構えると、害虫は教室の外へ出ていこうとする。

「待てぇ!」

 三人でそれを追いかける。するとドアが開き、

「邪魔しないで欲しいな、花騎士くん達」

「空蝉の君……?」

 鼻筋の整った美しい顔が目の前に現れる。その碧い瞳を見つめていると、段々と視界がぼやけていく。立っていることもままならず、私達はその場に座り込んでしまった。

「ふふ……」

 

 

 


「はっ! ……ここは?」

 茶色い天井、白いベッド、窓の外で揺れる木々。見たことのない景色だ。

「おはようサントリナ」

「おはようございます、サントリナ様」

 部屋を見回すとベッドは三つあって、エキザカムさんとコマチソウさんがそれぞれ寝そべっていた。

 

「あの、二人とも。ここは一体……?」

「寮でしょ。昨日からこの学園に転校してきたからね」

 そうだった。昨日、ここに転校してきたんだった。

 転校? どこから? 何故転校してきたんだっけ? 思い出そうとすると頭が痛くなる。

 

「まぁそう暗い顔しないでさ。心機一転、学園生活を楽しもう!」

「えいえいおー!」

「……」

 何かが釈然としない。それでも学園生活が楽しみなのは私も同じだ。

 

「……よし」

 制服に着替えてリボンを結ぶ。そうだ。せっかくの学園生活だし、楽しまないと損だよね。

「早くしないと置いてっちゃうよ、サントリナ」

「えへへ、待って下さい~」

 

 

 

≪その頃、団長は≫

「先生~、先生~♪」

 何人かの生徒と一緒に校庭でソフトボールを楽しむ。汗が日差しに当たってキラキラ光る。うむ、これぞ健全な教師と生徒の交流だ。

 

 しかし学園とは良いものだ。右を見ても左を見ても、制服を着た若き乙女たち。良き……実に良き……。

「先生~、そっちにボールが行きましたわよ」

 よし、任せておけ! そう意気込み、ボールに向かって全力疾走する。そして見事スライディングキャッチして、掴んだボールを生徒たちに見せると、黄色い歓声が校庭に響き渡った。

「きゃ~、先生素敵~!」

 嗚呼、素晴らしき哉。ようやく我が世の春が来たようだ。

 

 ……何か忘れているような気がするが、まぁ些細なことだろう。それよりも、今この一瞬を楽しまねば!

 

 

 

 任務を忘れ、学園生活を楽しむ花騎士たちと団長。果たして彼らは害虫から人々を守るという使命を果たすことが出来るのか。

 続く。




お嬢様口調難しいな……ベッセラちゃんとも少し違うし……。

このペース配分だと後編はかなり駆け足になりそうです。

ここまで読んで頂き、ありがとうございました。
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