フラワーナイトガール短編妄想集   作:イッチー団長

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今回はヘチマ回。
メインで書くのは初めてですね。

ヘチマと言えば、女の子のお風呂を覗く変態キャラですが、今回は敢えてそれを封印。彼女の可愛さを書こうと思いました。


ヘチマの夏

「う~……夏飽きたぁ……」

 いきなり執務室にやってきて、とぼとぼとこちらに歩いてくるのは、花騎士のヘチマ。長い二つ結びの黒髪、緑色の着物、そしてツヤツヤの肌が美しい花騎士だ。

 

「もう、この暑いの飽きちゃったよ~。団長ちゃん、どうにかして~」

 そう言って私の膝の上にポスンと乗っかってきた。

 

 どうにかと言っても、私にはどうすることも出来ない。それに暑いのなら、まず身体を密着させるのを止めたらどうだ。

「って、ホントだ!? どうして団長ちゃんの膝の上に……暑くてボーっとしてたんだろうね……」

 割りと重傷だな。首筋に汗もかいているようだし、もっと涼しい格好をした方が良いのではないか。

「あっ、団長ちゃん、あたしのうなじ見てたでしょ? もうっ、好きだね、団長ちゃんも♪」

 ヘチマの小さな可愛らしい指が、私の首筋を撫でる。いつの間にか私の体温も高くなり、汗が出始める。それは恐らく暑さのせいだけではないだろう。

 

 

 

「ま、百歩譲って暑いのは仕方ないにしても、もうちょっと楽しいことがしたいね」

 未だに膝の上から降りず、脚をパタパタさせながらヘチマが言った。

 

 夏の行事と言えば、海なんか良いんじゃないか。女性の肌も見られるのだし。

 そう言うとヘチマはむっと唇を結んだ。

「むっ、団長ちゃん、それは聞き捨てならないなぁ。心外だよ」

 花騎士の風呂を覗いている癖に、何を今更……。

「そっちじゃなくて! あたしが見たいのは、見られてるとは知らずにおおっぴらになった女の子の肌! 裸なら何でも良いってわけじゃないんだよ!」

 う、うむ……。あまりの気迫にそう返事をすることしか出来なくなる。

 

「それに、海って日焼けしやすいしね。ちゃんと日焼け止め塗っておかないと……今思ったけど、女の子に日焼け止め塗るのはやってみたいかも。後でブリオニアちゃんにお願いしてみよ♪」

 ブリオニア……苦労を掛けるな……。

 

 

 

 他に夏の行事と言えば、花火なんてどうだろうか。

「いいね、いいね。それじゃあ、うちの温泉宿でやろう! 夏休み取れるでしょ?」

 夏休み……懐かしい響きだ……そんなものもあったな……。

「って、休みはちゃんと取らないとダメ~! 肌にも身体にも悪いよ!」

 そうは言っても、忙しいんだ……休みなんて中々取れないのだ……。

 

「よしっ、決めた! 団長ちゃんはうちの温泉宿で夏休みを過ごすこと! 一年の疲れを、あたしがたっぷり癒してあげる!」

 ぐっと拳を握るヘチマ。いつの間にか話がすり替わっているような気もするが、ヘチマがやる気になり、私も癒されるのなら両得ではないだろうか。

 

◇◆◇◆

 

「いらっしゃい団長ちゃん! さぁさぁ、お荷物はこちらに」

 扉を開けるなり、三つ指をついて出迎えるヘチマ。しかし先程まで一緒に歩いていたではないか。

「こういうのは雰囲気が大事なの。さぁお客様、お部屋はこちらになります♪」

 

 

 

 案内された部屋はどこか懐かしい香りがした。畳や木の匂いだろうか。まるで少年の頃に戻ったような、そんな伸び伸びとした気分になった。

 

「じゃあ団長ちゃん、ゆっくり体を休めてね。えいっ!」

 そう言いながら、ヘチマはまた膝の上へ……働かなくていいのか、女将。

「お休みの日だからいいの~。それに、今日はお客さんもそんなにいないからね」

 ぷにぷにと柔らかそうなふくらはぎをパタパタさせる彼女が愛らしく、その華奢な肩を抱き寄せた。

 

 ふと背中に視線を感じたので振り返ると、そこにはニコニコとこちらを見つめる従業員達の姿があった。いつから見られていたのだろうか。流石にこんなイチャイチャしているのを見られるのは恥ずかし過ぎる。

「いいじゃん。見せつけてあげようよ、団長ちゃん。大丈夫、従業員の皆は分かってるから。あたし達のカ・ン・ケ・イ♡」

 

 言われてみれば、今日は従業員とすれ違う度に「あらあら」と笑われていたような気がする。

「皆、キミのことを歓迎してるんだよ」

 歓迎……? 女将と恋仲だからだろうか。

「うん。それに、団長ちゃんはその……将来的にはこの宿の……」

 顔を真っ赤にして、口をもごもご動かしている。何となく言おうとしていることは分かったので、そのまま頬に軽くキスをした。

「あぅ……」

 

 

 

「女将、団長様、良く冷えたスイカがありますよ」

 

「お夕飯の支度が整いました」

 

「お布団は一つでよろしいですか?」

 

 何だか、至れり尽くせりだな……。

「たまにはいいんじゃない?」

 ヘチマもずっと膝の上に座って、すっかりお客様気分のようだ。

「たまにはいいの。ほら夕飯食べて、花火やりに行こう」

 

 今日の夕飯は天ぷらか。

「ベルガモットバレーは自然豊かだからね、今日は山の幸をふんだんに使ってみたよ」

 流石新鮮な山菜は違うな。噛む度に、この山菜たちが育ってきた風景が思い浮かぶようだ。

「団長ちゃんも中々ロマンチックなこと言うね……」

 

 

 

 口の中に贅沢な旨味を残したまま、我々は花火のために庭へ出た。薄暗い夜の庭で、青く茂った草木が月光に照らされている。その中を一つ、風が通り抜ける。

「涼しい風だね」

 長い黒髪を揺らしながら、ヘチマが呟く。彼女がたなびかせたのは、いつもの着物ではなく、涼しそうな薄緑色の浴衣だった。私もお揃いの浴衣を着ている。夕飯の後に着替えさせられた。

 

「さて団長ちゃん、これが花火だよ。しかも知り合いの花火師に作ってもらった特注品なの」

 その中の一本を手に取ってみる。形はよくあるススキ花火のようだが、紙の部分が質素な萌葱色。火を付けてみると、白いぼんやりとした輪郭の光が、夜の闇の中に広がった。

「うわぁ~、月みたいだね」

 柔らかく温かみのある光は、確かに月に良く似ている。

 

 花火を持つヘチマもまた、花火の光で照らされる。小さいが確かに女性的な凹凸を描く身体のライン、そして誰よりも綺麗な玉の肌が浮かび上がる。その絵画のような美しい光景に、私は思わず息を呑んだ。

「もう団長ちゃん、そんなに見つめないでよ~……えっ、綺麗? も、もう~……」

 顔を真っ赤にしながら、私の背中をポカポカ叩くヘチマ。そんな仕草もまた愛おしく感じる。

 

 

 

 静かな夜の中、線香花火がパチパチ燃える音だけが鮮明に響く。先程から口数が少ないヘチマの頬も、ぼんやりと光る。

 線香花火がポトリと落ちると、彼女は無言で私に抱き付いてきた。

 

「もうちょっとだけこうしていたいかなって……キミと一緒にいるの、ビックリする程飽きないんだよね……」

 ドキドキと心臓の音が聞こえる。これはヘチマの音なのか、私の音なのか、それとも両方だろうか。

 小さな身体を抱き締めると、体温が驚く程高くなっているのが分かった。しかし、その温度はどこか心地好さを感じた。ずっとこうしていたいと思わせる程に。

 

 しかし、浴衣のヘチマをずっと夜風に晒していたら、いくら夏とは言え身体に悪いだろう。

 部屋に入ろう。私がそう言うと、彼女はこくりと頷いた。

「えへへ、それじゃあ一緒に寝よう。一つしか敷いてないお布団で、ね?」

 そう言えばそうだったな……果たして今日は眠れるのかどうか……。

「どっちにしても、キミのことはあたしが癒してあげるから。今までも、これからも、ずーっとね」

 その愛らしい笑顔を見ていると、それだけでも疲れが癒されていくようだった。

 

 

 

《翌朝》

「団長ちゃん、団長ちゃん。今日は何しよっか? ただダラダラするだけでもいいよ。キミと一緒なら、何しても飽きないからね」

 ヘチマが私の腕に身体を擦り付けながら歩く。恥ずかしいが、悪い気分ではない。

 

「あっ、女将。昨日はお楽しみでしたね。ふふ……」

 すれ違った従業員に声を掛けられる。

「こ、こら~! 女将をからかうんじゃな~い!」

 怒った仕草をするヘチマも、従業員も、幸せそうな笑顔を浮かべている。

 いずれこの宿で仕事をする日が来ても、彼女達となら仲良くやれそうだなと思った。




ヘチマは可愛いですなぁ……あんな見た目で姉さん女房感があるのと、一番はやっぱり声でしょうか。
いいですよねぇ。

ここまで読んで頂き、ありがとうございました。
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