皆さんも是非お迎えしてあげて下さい。可愛いですよ。
季節ボイスでハツユキソウとの絡みが多いのも良いですね。
(ん、あれは……?)
ソヨゴが廊下を歩いていると、不思議な格好の人物を見つけた。全身分厚い白い着物に覆われたその姿。今が冬ならばまだ気にならないが、季節は夏真っ盛りである。そんな暑い日に厚着をしているのは、ソヨゴが知っている花騎士の中には一人しかいなかった。
(ハツユキソウさんだ……)
ついつい物陰から観察してしまう。ソヨゴは人見知りで、初めて会う人間はこうしてじっくり観察する癖がある。ハツユキソウは初対面ではないが、その雪女のような姿に緊張を覚えているのだ。
(何か……疲れてる? あっ、雪女さんだから夏が苦手なんだ)
(はぁ……夏は忙しい……皆さんに抱き付かれたり、怪談を聞かせてあげたり。夏自体は好きなんだけど……)
勘違いをしながら、ソヨゴはハツユキソウの背中を見送った。
◇◆◇◆
「団長さ~ん……」
書類の整理をしていると、蚊の鳴くような声が聞こえてきた。見るとソヨゴが、だらんと腕を伸ばして立っていた。
「暑いです~……」
そう言って抱き付いてくる。前髪が汗でぺったりと貼り付いているのが可愛らしい。
しかし抱き付くと余計暑いのではないか。
「そうですけど、今は立ってるのもキツくて」
どうせ抱き付くのならハツユキソウの方がいいのではないか。ひんやりして気持ちがいいぞ。
「やったことあるんですか……でもハツユキソウさん、何だか疲れてましたよ。やっぱり雪女さんだから夏が苦手なんですかね?」
彼女はバナナオーシャン出身だし、むしろ暑いのは好きだと言っていたが。
「え? バナナオーシャン? 誰がですか?」
ハツユキソウが。
「え……?」
あの外見から勘違いされ易いが、ハツユキソウはバナナオーシャン生まれ、バナナオーシャン育ちなのだ。その場のノリでウィンターローズ所属にされてしまったらしいが……。
「そうなんですか……全然知らなかったです。っていうか、バナナオーシャンにも雪女さんがいるんですね」
そもそも雪女ではないのだが……。
「わたし、ハツユキソウさんのこと、全然知らないんですね。雪女さんだから話すのも緊張しちゃって。これからはちゃんと話してみたいと思います」
その時、執務室のドアがガチャりと開いた。
「団長さ~ん、ちょっとかくまって下さい~。花騎士さん達がやたらめったら抱き付いてきて……って、ソヨゴさんもいたんですね。こんにちは」
「こ、こんにちは……」
ソヨゴは挨拶だけして私の後ろに隠れてしまう。ちゃんと話すとは何だったのか。
「だってあの雪女さんですし、やっぱり緊張しちゃいますよ~……」
(……勘違いの予感!)
「……」
ハツユキソウをじっと見つめたまま、押し黙ってしまったソヨゴ。
そこで、ソヨゴがハツユキソウに抱き付きたいらしい、そう言って助け舟を出してあげた。
「!? だ、団長さん!?」
「そ、そんな……ここでも抱き付かれるなんて……。まあソヨゴさんなら良いですけど。それに、団長さんも良いですよ……」
ではお言葉に甘えて。ソヨゴを手招きしながらハツユキソウに近付いていった。
「し、失礼します」
二人でぎゅっと抱き付く。このひんやり感が癖になりそうだ。それに身体の肉付きも素晴らしい。普段は厚着で隠れているが、こうして触ると女性らしい膨らみを随所に感じる。特に尻だ。腰から尻にかけてのラインが素晴らしい。
「団長さん、凄くセクハラ的なこと考えてませんか……?」
「はぁ~……気持ちいいです~……」
「ソヨゴさん、ぐったりしてますけど大丈夫ですか?」
夏バテだろう。ウィンターローズ出身の花騎士には良くあるんだ。
「なるほど、それなら怪談なんてどうですか? 身も心もひんやり涼しくなりますよ」
「か、怪談……あ、あんまり怖くないやつからお願いします……」
ごくりと喉を鳴らすソヨゴ。そんなに怖いのなら無理しない方がいいのではないか。別に怪談が苦手だから子供っぽいとは思わないのだし。
「そうですよ。怪談が苦手な大人はたくさんいますからね。この前の怪談会でも泣いちゃう花騎士さんがいて……」
ハツユキソウは程々にな。
「そう言えば、ハツユキソウさんはバナナオーシャン出身なんですよね? ここより暑いでしょうし、大変じゃありませんでしたか?」
「いやいや! むしろ夏は私の季節です。この低い体温と怪談話で、そこかしこから引っ張りだこでした」
「凄いですね~」
「まあ、ブロッサムヒルに来てから、冬の間は……邪魔者扱いでしたが……」
「……」
言葉に詰まった二人に、外に出ようかと誘ってみる。
「でもお仕事は大丈夫なんですか?」
大丈夫だ。そもそもこんな暑くては進むものも進まない。一回外でリフレッシュした方が能率が良くなるはずだ。これはこれで仕事の内なのだ。
「そ、そうなんですか……?」
◇◆◇◆
というわけで、公園にやってきた。平日の昼間だからか、のどかな空気が流れている。
木陰に座り込むと、涼しい風が花騎士達の髪を撫でた。
「ふぅ~……涼しいですね……」
「ちょっと寒くないですか?」
「え?」
ハツユキソウの感覚は常軌を逸している。基本的に我々の暖かいは彼女にとっての寒いだ。ソヨゴも気を付けるんだぞ。
「ひ、ひどいですよ団長さん~……確かに寮で同室だった人には『この部屋暑過ぎる!』って言われて出ていかれましたが……」
そんなこともあったな……それからハツユキソウはずっと一人部屋か。
「はい。寂しいですよ団長さん~、たまに遊びに来てください~」
男女間だし、そう易々と遊びには行けないだろう。騎士団の規律にも関わることだし。
「うぅ~、そうですよね……」
「……」
しょぼくれるハツユキソウを、ソヨゴは無言でじっと見つめていた。
「あっ、団長さん、あれって……」
ソヨゴが指さしたのは移動式のアイスクリーム屋だった。
「やっぱり。あのお店、最近花騎士さん達の間で人気があるんですよ。甘さが評価できるって」
それは単なるダジャレじゃないのか?
結局三人分のアイスを買ってきて、再び日陰に戻ってきた。しかしウィンターローズ出身者にとってアイスは馴染みがないのではないか。
「そんなことありませんよ。ウィンターローズでは冬にアイスを食べるのが好きな人が多いんです」
確かに、以前そんなことを言っていた花騎士がいたような……。
「冬にアイスなんて……想像しただけでも凍えそうです……」
「だ、大丈夫ですかハツユキソウさん」
ブルブルと震え出したハツユキソウに、ソヨゴがそっと抱き付く。
「あぁ……暖かい……人肌ってこんなに安心するものなんですね……」
「大丈夫ですか、ハツユキソウさん?」
「大丈夫ですけど、アイスはあまり食べられそうにないので、良かったらソヨゴさんが食べて下さい。はい、あ~ん……」
そう言ってスプーンをソヨゴに差し向けるハツユキソウ。しかしソヨゴが恥ずかしそうにしていると、その手は直ぐに引っ込んだ。
「ご、ごめんなさい! 調子乗っちゃいました!」
「い、いえ……あむっ!」
「!?」
ソヨゴが引っ込んだ手に持っていたスプーンに食いつく。そのままあむあむと咀嚼を始めた。
「お、美味しいですか……」
「は、はい……」
頬を染め合う二人。何とも微笑ましい光景だ。
……しかしおかしい。何故私が蚊帳の外なのだ。こういうのは私がやる側かやられる側のはず……何故……。
「どうかしましたか、団長さん?」
いや、何でもない。二人が喜んでいるのなら水は差さないようにしておこう。
≪その後≫
「はぁ~……今日も一人寂しい夜が続く……」
ハツユキソウの部屋。蝉の鳴き声が聞こえる夜に、ハツユキソウはしみじみとキノコのスープを飲んでいる。その寂しい後ろ姿は、まるでくたびれた労働者の如し。
そんな彼女に、今晩は一人の来客があった。
「は~い」
ドアを控えめにノックする音に、ハツユキソウはすぐさま反応した。静かな夜には、どんな小さな音でも目立ってしまうのだ。
「夜遅くにすみません」
「ソヨゴさん。どうしたんですか?」
白く長い三つ編みに、ぱっちりとした赤い瞳。同じウィンターローズ所属の花騎士、ソヨゴだった。
「実は……同室になるのでご挨拶に来ました」
「え……ど、同室!?」
「はい。わたしから団長さんにお願いしたんです。わたしも一人部屋だったから丁度いいなって。勿論、ハツユキソウさんが良ければ、ですけど」
「良いに決まってますよ! 大歓迎です!」
ハツユキソウは舞い上がった。
人付き合いが苦手なわけではないが、その極度の寒がりから、他の花騎士と同室になるのは難しいと思っていた。そんな彼女にルームメイトが出来る。これが嬉しくならないはずはなかった。
「それじゃあ、詳しい日付などはまた相談しましょう。お休みなさい」
「お休みなさい」
ぱたりと扉が閉まる。その瞬間、ハツユキソウはその愛くるしい顔を目一杯緩ませた。
「ルームメイトか~、えへ……えへへ……」
その夜、鼻歌がうるさいと隣の花騎士から怒られたとかいないとか……。
ちなみに、花騎士は皆寮生活という設定です。
それぞれクコヘナ、ソリダゴコンボルちゃん、ヘチマブリオニアちゃん、ポーちゃんリシアンサスちゃんみたいに、仲良しの花騎士同士で同室で暮らしている、という妄想をしています。
ここまで読んで頂き、ありがとうございました。