フラワーナイトガール短編妄想集   作:イッチー団長

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本当に久しぶりのクコ回。
そして奇しくも夏のお話。第一話も夏のお話でしたからね。
あれから一年、季節の過ぎるのは早いですね……。


クコと真昼の夢

「団長、汗、びっしょり。水分補給、必須。クコ、水筒、持参」

 クコから手渡された水筒の水を一口ゴクリと飲んだ。

 

 熱く灼けた砂浜の上を、白いワンピースのクコと手を繋いで歩いている。遠くには水平線が揺らめいているのが見える。

「えへへ……幸福。団長と一緒、探検、楽しい♪」

 麦わら帽子の影から見えるクコの笑顔。夏の空の下、彼女と二人きりでいられることが、私にもとても幸福に感じた。

 

◇◆◇◆

 

「クコ、探検、希望。団長、同伴、所望」

 とクコが言い出したのは今朝のことだった。

 探検とは? 私が尋ねるとクコは嬉しそうに語り出した。

 

「夏、探検の季節。海、青空、蜃気楼、砂浜。冒険心、くすぐる」

 言われてみると確かに、そんな単語を聞くと子供のようにワクワクしてくる。クコは調査隊員なのだし尚更だろう。

「あい、ワクワク……クコ、高揚。冒険、クコ達、待ってる!」

 それはソリダゴの真似だろうか。しかしいつもの数倍テンションの高いクコを見ていると、彼女の希望を叶えてあげたいと思わせられる。

 

 よし、では行くか。仕事を途中で切り上げて支度を始めた。

「団長! クコ、準備万端。いつでも出発、可能!」

 扉を開けて入ってきたクコの姿を見て驚愕した。白いワンピースに麦わら帽子。これが夏の妖精か。

「?」

 麦わらの上からポンと頭を撫でた私に、クコは最初不思議そうな顔を見せていたが、やがて嬉しそうに私の腹を撫で返してきた。

 

 

 

「調査隊、出発!」

 隊といっても二人だけだがな。

「あい、二人。二人きり……」

 クコはそう言って私に身体をすり寄せてきた。

 

「トリトニア調査隊、皆大好き。一緒にいる、幸福……でも団長、特別。二人、居たい、いつまでも……」

 クコの体温が伝わってくる。夏の熱さの中でも、彼女の体温は不快ではない。むしろ心地好さすら感じる。

 

 小さな手を握る。どちらともなく心臓の音がトクンと鳴った。

 

 

 

 港都市ヨーテホルク。ブロッサムヒルで唯一海に面したこの地で、我々は一体何を見つけるのだろうか。

「あい、団長。アイスキャンディー」

 クコはいつの間にか出店に寄っていたらしい。しかしこれでは調査ではなく買い食いだな。

「否。夏、アイス、重要……超重要」

 まあ確かに重要ではあるが……。

 

「潮の匂い、クコ、これ好き」

 アイスキャンディーを頬張りながら、二人並んで歩く。

 頬に当たる海風。波の音も聞こえてきた。海が近い。

 

「海、特別。クコ、ブロッサムヒル、来るまで、海、知識無し」

 トリトニア調査隊は湖畔調査が主だからな。

「あい。湖、好き。でも海、湖、違う。どちらも違って、どちらも好き」

 

 

 

「砂浜!」

 クコがその白い素足を晒し、砂浜の上を駆けていく。

「熱い! えへへ、熱い」

 砂浜で踊るクコは、白い服も相まって天使のようだった。

 

「観光客、たくさん。賑やか」

 この暑い季節だと、観光客の足も自然と水辺に向かうのだろう。しかし春庭で海と言えば、バナナオーシャンのラカタンビーチかプラタノだろう。

「クコ、知識無し」

 機会があれば一緒に行こう。ラカタンビーチならキャロットに、プラタノならベッセラに言えば手配してくれるはずだ。

「あい♪ 団長と一緒、嬉しい、とても。旅行……新婚旅行、所望」

 そうだな。新婚旅行はクコの行きたい所に行こう。二人ならどこだって楽しいはずだ。

 

 

 

「団長、向こう、島、存在。クコ、行ってみたい」

 クコが指差したのは水平線に浮かぶ小さな離島だった。そこまで離れているわけではないが、泳いで行くのは相当骨が折れそうだ。

「ボート、貸し出し」

 なるほど、これはボートを漕いでクコにかっこ良い所を見せるチャンスだな。

 

………

……

 

「団長……平気?」

 平気だ。そう言いながらも呼吸が全く整わない。シャツも汗でびっしょり貼り付いている。数分漕いだだけで息が上がってしまった。体力には自信があったのだが、ボート漕ぎがここまでキツイものだとは……。

 

「団長、交代。クコ、漕ぐ」

 そう言って櫂を握ったクコ。その櫂捌きは見事と言う他無かった。流石水上のプロ……私とは技術が段違いだ。

「コツ、必要。団長も、慣れれば、クコと同じ、可能」

 ならば次来た時には教えて貰うか。そう言うと、クコの顔はぱぁっと明るくなった。

「あい! クコ、教える。何度でも」

 また来られることが嬉しいのだろうか。クコは夏の日差しよりも眩しい笑顔を輝かせていた。

 

 

 

 やがて浜辺に西日が差していく。賑やかだった海水浴場も、人がまばらになっていく。

「そろそろ、帰還?」

 クコの膝に頭を預けながら海を見ていると、何だか無性に寂しくなってくる。

 だがまた来られるのだ。明日になれば、また海は人で溢れるだろう。夏が終わっても来年になれば、またクコと一緒に来られる。

 

 

 

渚には語られなかった物語が眠っているんだ

熱く灼けた砂浜を歩く

真昼の夢を探しに行こうか

渚にて二人は冬を待つ

二人だけで季節を越えようか

麦わらを目深にかぶった

可愛いあの娘が微笑みかけた

 

 

 

 帰ろう。そう言うとクコは手を繋いできた。

「あい。帰還。帰還しても、団長と一緒。いつまでも……」

 

 結局、探索とは名ばかりのデートになってしまった。しかしそんなことは些細なことだ。クコと一緒なら、どこに出掛けてもどう過ごしても楽しい。

 

 夏が過ぎて冬が来ても、いつまでも一緒だ。そう思うと、いつもの日々も幸せに感じた。




一年間色々書いては来ましたが、あんまり文章は上手くなってないな……(笑)
これからもマイペースに続けていきますので、どうかよろしくお願い致します。

ここまで読んで頂き、ありがとうございました。
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