フラワーナイトガール短編妄想集   作:イッチー団長

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今回は、前々から書きたかったリクニスちゃんのお話。
真面目で小さくて可愛いですよね。


リクニスとお月見

「団長さん、こっちの書類はまとめておきました」

 テキパキと仕事を片付けてくれるリクニスに、感謝と申し訳なさを感じる。

「大丈夫ですよ。早く片付けちゃいましょう」

 

 暑くもなく寒くもない丁度良い気温になったからか、害虫が活発化、一部花騎士も活発化し、その対処に追われていたのだ。気付いた時には執務室は承認待ちの書類や書きかけの報告書で埋もれていた。そこにたまたま訪れたリクニスが手伝ってくれることになり、今に至ったわけだ。

 

「ふぅ~……大体は終わりましたね」

 すまぬ……すまぬ……。

「あ、謝らないで下さい。団長さんにはいつもお世話になってますし、そのお礼ですよ」

 その笑顔の明るさに涙が出そうになる。今度お礼をさせて欲しいと言うと、リクニスは顔を赤らめた。

「それじゃあ、今お礼をして貰っても良いですか?」

 

 

 

「団長さん……用意出来ました」

 こちらも準備万端だ。ぼんやりと照らされたリクニスの顔は、大きなソレを見上げる。

「うわぁ……凄く大きくなってますねぇ……」

 うっとりとした声をあげるリクニス。確かに、いつもより大きいな。

「それじゃあ、始めましょう……お月見を」

 

 忙し過ぎて忘れていたが、今日はお月見だ。まん丸の満月が夜を薄明かりで染めている。

 中庭にシートを敷いて、リクニスと二人で座る。シートの上にはリクニスの作った団子にちらし寿司、そして酒が置かれている。

 以前は見た目のせいで酒を買えなかったらしいが、今回は大丈夫だったのだろうか。

「そうなんです! 今回は買えたんですよ。私も大人っぽくなってるんでしょうか」

 言われてリクニスを見る。ぱっちりとした瞳に柔らかそうな頬。短く切り揃えられた赤髪は、彼女の明るさを存分に表している。そして小さな身体、少女のように細く短い手足、薄い胸……うむ、どう考えても大人には見えない。

 おそらく店の人がリクニスが花騎士だと知っていたから売ってくれたのだろう。とは本人には言わず、取り敢えず頷いておいた。

 

 

 

「団長さん、お酌しますね」

 徳利を手にしたリクニスは、こちらにお猪口を持たせて酒を注いでくれた。

「えへへ、遊女さんはこんな感じでお仕事してるんですかね」

 そうだなとはぐらかす。

 リクニスは幼い頃に母親を亡くし、桃源郷の遊女達に育てられたらしい。しかし遊女達は彼女に仕事の内容を教えていない。純真なリクニスへの配慮だろうし、私から教えるのは控えておく。

 

「そう言えば、遊女さん達は満月の夜は忙しくなるって言ってました。狼男が出るんですって」

 なるほど……。

「狼男なんて本当にいるんですねぇ……団長さんは見たことありますか?」

 実は私が狼男かも知れないぞ。どすの効いた声でそう脅すが、リクニスはにこにこと笑ったままだった。

 

「団長さんは狼男じゃないですよ~。優しいですから」

 そんなことはないぞ。男は狼なのよ、気を付けなさいとよく言うではないか。いくら優しい人間に見えても、心の中には狼の牙を持っているものだ。

「団長さんもそうなんですか……?」

 そうだ。そう言ってリクニスを羽交い締めにする。

「だ、団長さん!? も、もう……止めて下さい……えへへ」

 あまり抵抗してこないのを見ると、じゃれているだけなのが分かったのだろう。

 しかしこの柔らかい肌、着物が乱れてチラリと見える太もも……まずい、本当に狼男になりそうだ。

 

「も、もう、止めて下さいったら」

 途中からただのくすぐりになっていた。手を放すとリクニスは荒い息を吐く。笑い疲れたようだ。

 

「団長さんったら、実は凶暴なんですね……」

 そうだ。これから私に会う時は注意した方がいいぞ。

「はい! お師様にも言っておきます!」

 いや、ナデシコには出来れば言わないで欲しい……。

「えへへ」

 夜空の下、二人で笑い合った。

 

 

 

「……少し肌寒くなってきましたね」

 言われてみればもう9月、寒さが顔を覗かせる頃だ。ぶるっと身体を震わせたリクニスに、脱いだ上着を掛けようとする。

「駄目ですよ。団長さんが風邪引いちゃいます」

 大丈夫だと強がってみせる。正直かなり寒いし、全く大丈夫ではないのだが……。

 

「そういうことなら……」

 「えいっ」と掛け声を出して、リクニスはその小さな身体を私に預けてきた。

「これなら二人とも暖かくなれますね」

 確かに、リクニスが抱き付いている辺りから、身体の芯までじんわりと暖かくなるようだ。

 

 リクニスは体温が高い。普段炎属性の技を使っているからなのか分からないが、ポカポカとまるで太陽の日差しのような温かさを感じる。

 しかし今の暖かさはそれだけではないような気がする。見下ろすと、彼女は瞳をウトウトと閉じたり開いたりを繰り返していた。

「暖かくなったら、何だか眠くなってきました……」

 

 

 

「すみません、団長さん……」

 睡魔に襲われたリクニスを背負い、月明かりの中を歩く。今日が満月で良かった。足元まで良く見えるので転ぶ心配がない。それにリクニスの顔も良く見える。

 

「団長さん、今日は楽しかったです。またお月見しましょう、来年も、その次もずーっと」

 そうだな。そしていつかリクニスと一緒に酒を飲めるようになりたい。そう言っても返答が無かったが、やがてすぅすぅと吐息が聞こえてきた。

 

 リクニスを送り届けた後、楽しかった月見の名残に浸りながら、一人帰路に就いたのだった。夜を一人うろつく様を、まるで狼男のようだなと思いながら。

 

 

 

 翌日、団長がリクニスを襲い誘拐したという噂が流れるのだが、それはまた別のお話。




何だか久しぶりの季節回になりましたね。
家と会社を往復するだけの生活だと、七夕とかバレンタインとかお月見とか、そういう話題に疎くて……。

ここまで読んで頂き、ありがとうございました。
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