異世界で頑張ったので出戻りますね あるいは彼女は如何にして悩むのを止め、現代をエンジョイするようになったか   作:大回転スカイミサイル

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第106話「あぁら頑丈」

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「豚のぬいぐるみ……藁の家……」

 

「十中八九、アレだな。三匹の子豚」

 

椅子に座る豚のぬいぐるみを前に、ミナと空悟がそう言葉を発した。

 

「通りで見覚えがあるわけです。藁の家に小豚ですものね」

 

岬がそうして杖に頬杖をつくように寄りかかってため息をつく。

 

「念の為に聞きますが、それはどんな話なのです?」

 

ルルが頬に指を当てて疑問を呈すると、それに答えたのは恋だった。

 

「んーとだねぇ……ある三匹の子豚が親から独立してさ、それぞれ家を建てるんだよ。長男は藁、次男は木、末っ子はレンガで」

 

―――そうしてやがてならず者の狼がやってくる。

 

狼は一息に藁の家を吹き飛ばすと、長男をまるごと食べてしまう。

 

同じように次男もまた木の家を吹き飛ばされて食べられてしまった。

 

しかし、苦労して煉瓦の家を立てた末子だけは助かる。

 

2匹で我慢しておけばいいものをなんとしてでも三匹目の子豚を仕留めようとした愚かなる狼は、煙突から末子の家に侵入しようとするが、煙突の下の暖炉でぐつぐつと煮えたぎっていた湯に墜ちて絶命―――

 

かくして茹で狼となった哀れな獣は仇を討たれ、生き残った末子に食べられてしまう―――というストーリーは、日本人でもかなりの割合の人間が知っているだろう。

 

これはものづくりについての教訓話と言われており、「勤勉に働きものを作れ。だが拙速よりも巧遅のほうが後で役に立つぞ」という教訓が含まれている。

 

今のミナにとっては、勤勉はともかく巧遅についてはそんな事を言っていられない状況であり、皮肉られているかのようで若干うんざりした気分になった。

 

「勘弁してよね……」

 

額に掌を当てて頭を振ると、ミナは杖に魔力を込め始めた。

 

「どうします?」

 

「長男子豚の家は狼の起こした風によって吹き飛ばされるのがストーリーでしょ?」

 

ニッと笑って風の精霊に呼びかけようとして―――

 

『あーいけないんだいけないんだ!そんな危ないものを持ち出すなんていけないんだぁ!』

 

「!?」

 

目の前のぬいぐるみがブーブーと出来損ないのクッションのような鳴き声を上げながら喋りだしたのである。

 

「……今更この程度じゃびっくりはしねーけどよ……」

 

「いや、あたいはびっくりしたよ!びっくりしたって!」

 

親友同様のうんざりした表情となった空悟はそう言うが、恋はそうじゃないと怯えて彼の後ろに隠れつつ抗議する。

 

それを嘲るように豚のぬいぐるみはブーブーと笑い出した。

 

『ブーブーブー!そっかそっかー僕の家を吹き飛ばしに来た悪いオオカミさんなんだね!だったら僕もただでやられるわけにはいかないもんねー!』

 

「ふたりとも油断しないでくださいなのです!」

 

「ええ―――これはちょっと気持ち悪い」

 

岬とルルがミナと同じくぬいぐるみへ杖を向けると―――それは、一瞬で膨れ上がった。

 

見る間にそれは筋肉質の体と不気味でリアルな豚の顔を持つ着ぐるみに変化していたのである。

 

『ブーーハハハハ!兄よりすぐれた弟なぞ存在しねぇ!!この長男豚様の素早い拳を食らって死ねぇ~~!!』

 

いつの間にか黒い革ジャンなどを装備していて、言ってることも含めてまるでどこかの伝説的暗殺拳の伝承者の兄のようであった。

 

「うわキモっ!?」

 

「なんかどっかで見たような気がしすぎだろお前!!」

 

エルフとその親友は心の底から気持ち悪いと言わんばかりに大声でそんな事を叫ぶ。

 

『ブーフフフフ!あまりの恐怖に引き攣っているようだなぁ~!』

 

「ちげーよ!怯えてんの恋ちゃんだけだよ!ロリをビビらせるだけの生き物かよぉ!!」

 

テンションが若干おかしくなったミナがそう反論すると、『俺に殺されたものは皆そういうのよぉ~!さぁ死ねい!黒豚仁王撃ぃ~~~!!』と叫んでミナへと吶喊してきた―――が。

 

「スローすぎてあくびが出るわね」

 

自称素早い突きとやらを指一本で止めて、ミナはニッコリと笑った。

 

『な、なんだとぉ……!ならこれはどうだぁ!赤豚魔王断~~~!!』

 

狼狽して矢継ぎ早に技を放つ長男豚であったが、その拳がミナに届くことはなく、全て指一本で止められていく。

 

「三郎、俺、なんか頭痛くなってきたんだけど……」

 

「あたしもなのです……恋ちゃんも怯えちゃってますですし……」

 

こめかみに痛みを感じて頭を押さえる空悟と気持ち悪いものから隠すように恋の頭を抱く岬に言われて、ミナは「わかったーとっとと決めるわー」と返した。

 

『と、とっとと決めるだとぉ!舐めやがって!』

 

「舐めてないって。―――庚申流組討術、波打三段」

 

すっとそう言って、ミナはまるでイイコイイコと子供を撫ぜるように豚の頭を撫でると―――

 

『ぶぎゃああああああああああああ!?!?!?!』

 

長男豚の頭がブルブルとまるでこんにゃくをぶん殴ったかのように震え始める。

 

そしてそのまま。

 

眼から脳髄を吹き出して、『ぶわばぁぁぁぁぁ!!!』と絶叫を上げて地面にドシャリと叩きつけられ。

 

そのまま萎んでいき、やがて元のぬいぐるみ―――ただし、頭部が完全にズタズタに破壊されているぬいぐるみへと戻っていた。

 

ぬいぐるみはそのまま沈黙することはなく、ギリギリと歯ぎしり音を鳴らしながら浮き上がった。

 

「ぎゃあ!?」「だいじょぶなのですだいじょぶなのです……」

 

岬が恋の頭をよしよしと撫ぜながら、「ミナちゃん!ちょっとグロすぎますです!」とミナへ抗議した。

 

「あー、ごめん。でもぬいぐるみに戻ったんだからいいでしょ?」

 

「よくないのです!」

 

「うん、ごめん……とりあえず、抗議は後でね……」

 

ミナはそうして岬と恋に頭を下げ、歯ぎしりを続ける豚へと向き直った。

 

「まだやる?」

 

『あ、ぁぁぁぁぁ!ちくしょぉぉぉぉ!だが、俺が殺られてもまだ弟たちがいるぅ!俺の家を吹き飛ばしても無駄だぁ!』

 

続行するか否かを確認された長男豚はそうして悔しがりながら空中を転げまわる。

 

「……兄より優れた弟はいないんじゃなかったのか……?」

 

「うーん、この……」

 

ミナと空悟は呆れてため息をつき、そうしてしばらくして―――『はヴぁ!』と断末魔の叫びを上げてぬいぐるみは爆散したのであった。

 

「……あのさ、ミナねーちゃん……北●●拳使ってねーよな……?」

 

ぬいぐるみの残骸を検分するミナに、恋が恐る恐る聞いてくるがミナは「いや、秘孔押してピープーとかそんなん使えんから……」と疲れた笑みで答える。

 

明らかに●式防衛術な庚申流の浪打三段や緜貫はそのたぐいではあるのだが、それはそれとしてミナには内臓を抜くような必殺拳はあってもそのまま爆散させるようなものは持っていない。

 

勿論、暗黒魔法には相手に地獄の苦しみを与え続けながら好きなタイミングで爆散させることができる趣味の悪い術もあったりはするのだが……

 

それはともかくとして、ぬいぐるみはどうやら自爆したことが伺えた。

 

内部から風の精霊が彼をズタズタにする術式が刻まれていたのだ。

 

「負けたら起動するようになってたのか……」

 

ミナはやれやれと頭を振って、念のために備えて廻と夕どちらも地上に残してきたことを早くも後悔しつつあった。

 

―――ふと親友を振り返ると。

 

「うーん……?」

 

何故か親友が首を捻っていた。

 

「どうしたよ、空悟」

 

ミナが彼に人差し指を向けると、彼は「いや、これなんか見覚えがある展開だなぁ~って思ったんだわ」と唇をへの字に曲げた。

 

「またですか……念のために聞いておきますと、それは『三匹の子豚』の物語中にあるような展開ではないということで間違いないですね?」

 

ルルがそう聞いてくるが、日本人4人は空悟も含めて全員全力で手を横に振ってそんな展開は存在しないと否定する。

 

長男子豚が筋肉質の拳法家?になって狼に襲いかかる三匹の子豚など、まあ悪質なパロディとしか言いようがない。

 

「じゃあなんで空悟さんに覚えがあるのか……」

 

「うーん、なんだっけ……喉元まで出かかってんだけどだなぁ」

 

空悟は何度か首を捻り、ミナに「三郎はどうだ?」と聞いてきた。

 

「……いや、わからん。が、その件について考えようとすると頭が痛む……邪神に封印された記憶だな、それ」

 

ミナはそうしてこめかみを親指でぐりぐりと揉む。

 

多分、きっとあの展開に覚えがあるとすれば恐ろしく下らない小学中学時代の思い出に違いない。

 

そんな細かい記憶まで封じているあたり、本当に邪神ドミネーターというものは底意地の悪い存在であるようであった。

 

「気にしても仕方ないが……ぜってーつまんねー記憶だな、それ。100パー」

 

ミナがげんなりした顔で笑うと、空悟も「いやあの展開に覚えがある時点でつまんねーから大丈夫だ」と笑って親指を立てた。

 

それから表情を少し曇らせて、「とはいえ、俺ら自身でもろくに思い出せない記憶にまで踏み込んできたってことは、だ」と腕を組む。

 

「ええ、邪神めがミナさんの複製なりミナさんの記憶を利用するためにこのダンジョンを潜らせている可能性は否定できなくなった……」

 

ルルが深刻そうにそう言って、ミナをじっと見つめた。

 

「……どうします?」

 

「どうするも何も。結局あの糞野郎が生きてるんなら、どの道ここでドロップアイテム集めて失ったアイテムとか装備とかを作って、空悟たちも強化しないと邪神に負けるし……私のクローン作られるよりもそれは優先。私が量産されるより邪神に暴れられる方が100パー被害でかいから」

 

ミナはため息をつく。

 

最善が望むべくもないのなら、次善を目指さねばならない、と。

 

「第一そう簡単に私のクローンなんざ作られてたまるかい!腐っても私はハイエルフ!あの糞野郎にはせいぜい劣化品作って喜んでてもらおうじゃない!」

 

「その意気だ、親友!よし、じゃあとっとと次の階層へ行こうじゃねぇか!」

 

腕を振り上げてガッツポーズを取るミナの肩を親友は叩いて激励する。

 

その様子を見て、恋と岬も顔を見合わせて笑った。

 

「それはそれとしてどちらにせよ世界崩壊の危機なのですね……改の会が企む日本転覆、SMNが考える魔法少女国家建設、そして邪神がミナちゃんを利用して何かしようとしてること……」

 

その笑みをそのままに岬は心配事を並べていく。

 

「後は、秋遂さんの調査に……とりあえず目の前のぬえ子お姉さんの救出なのです」

 

「そうだな!ぬえ子ねーちゃんを助け出すんだからな!」

 

二人の魔法少女の言葉に、ミナは首肯してぬいぐるみの残骸を持ち上げた。

 

「みんな集まって。この家を『吹き飛ばす』わ」

 

「了解!」

 

空悟が叫ぶと、全員がミナの傍に集まり―――ミナはそのまま精霊に呼びかけ始めた。

 

「まずは藁の家を吹き飛ばさないとね。三匹の子豚的に。さっきは失敗したけどさ」

 

「なのです。先に子豚が食べられちゃいましたけど」

 

精霊を集める少女に、魔法少女がそう皮肉ると、妖精の少女はフッと笑って「言わないで……」と肩を落とし、そして。

 

そのまま精霊術を発動させる。

 

「暁の子、西に吹く希望王ゼビュロスよ!汝の吐息は竜の巣となり、竜の巣は全てを吹き飛ばし、もって清野をもたらさん!起きよ!風の竜!!」

 

風の精霊術で最も攻撃力に勝る術、タイフーンドラゴンが発動して。

 

ミナの手から放たれた精霊たちとその王は、風竜の姿となり周囲を風の暴威によって吹き飛ばしていく。

 

風は藁で出来た周囲をすべてを巻き込んで吹き飛ばし―――

 

後にはただ地面と食い裂かれたようなぬいぐるみだったぼろきれが残された。

 

風が収まり、暴威がそよ風へと変わっていく。

 

その風の向こうには―――

 

全てを樹木で作られたと思われる、どこかエルフたちの住居を思わせる「木の家」が建っていたのであった。

 

「ま、普通に三匹の子豚みたいね……」

 

「もうこの時点で吹き飛ばしていいと思うのです。三匹の子豚では長男次男の家にオオカミは侵入しないですよ」

 

頬を掻くミナに、岬はそう言ってニコリと笑う。

 

その表情にためらいというものはない……彼女の精神は子供のそれに近づき切っているとはいえ、割と子供故の残酷さを思わせる笑顔であった。

 

ともあれ、それが一番であることも確かである。

 

「末っ子の家はレンガだものね。もしかするとそっちはドロップするかもしれないし、あわよくばレンガの家そのものが不思議なレンガになってることに期待してサクサク行きましょう」

 

「じゃあ、さっきと同じか?」

 

空悟に聞かれて、ミナはニヤリと笑って「タイフーンドラゴンで吹っ飛ばす以外にやることはないな」と返した。

 

東西南北の風の精霊王のうち、ミナは西の王ゼビュロスと契約している。

 

このいずれかの精霊王の力を借りなければ使えない暴風竜の術で吹き飛ばないものはほぼ存在しないのである。

 

例え、それが先ほどの藁の家よりは吹き飛びにくいであろう木の家であれ。

 

それが地上にあるなら清野へと還し、それが水上にあれば藻屑と化すのだ。

 

「暁の子、西に吹く希望王ゼビュロスよ―――!?」

 

その時、ミナは屋根の上から誰かが出てこようとしていることに気が付いた。

 

気が付いて、眉をひそめて頭を振り、はぁ、と深いため息をつく。

 

「……そこにいるのはどちら様?隠れてないで出てきなさいよ」

 

『やらせはせん!やらせはせんぞ!我らの栄光をやらせはせんぞ!!この次男豚がいる限り、我らの栄光をやらせはせんぞ!!』

 

ハッチらしきものを開けて飛び出したのは、緑色のパイロットスーツらしい服を着た眼に傷のついた豚人間―――つまりは、子豚の次男のような何者かであった。

 

そのたくましい腕には機関銃が構えられていて、セリフと合わせて誰の真似事なのか一発で分かる様相であった。

 

「……三郎?これやっぱ覚えがあるんだけど……」

 

「あんまりにも下らなくて忘れてる記憶だな、これ……ガ〇〇ムのド○ル中将じゃないか……いくら次男だからっつってさぁ……」

 

先程、長男豚を始末したときとほぼ同じ感想が自然に口から出てくる。

 

そして、そのまま構わずにミナは詠唱を続けるのであった。

 

「汝の吐息は竜の巣となり、竜の巣は全てを吹き飛ばし、もって清野をもたらさん!起きよ!風の竜!!」

 

『ぐわぁぁぁぁぁぁぁ!!』

 

豚は家ごと吹き飛んで、大量の残骸とともに地面にたたきつけられる。

 

ミナはそれを見て「ごめん、私ジ〇ンのMSよりジ〇とかジェ〇ンの方が好きなのよね」と言って、萎んだぬいぐるみを持ち上げた。

 

「まあバグモンスターに聞いても仕方ないのだけど、あんたらナニ?どこの生まれのナマモノ?」

 

9割9分無意味と思いつつも、ミナはそう聞かざるを得ない。

 

少しでも情報があれば、こいつらが何者なのか、自分の何の記憶から生まれたものなのかわかるかもしれないからだ。

 

『うぐぐ……バカな……この俺がこんなにもあっさりと……!?』

 

片腕を持ち上げられ、ぬいぐるみは力なく項垂れそんなことを言うが、ミナは相手にせずに「いいから話せ」とにべもなく言い放ってただのパンチをぬいぐるみの腹に叩き込んだ。

 

勿論ただのパンチと言っても、ミナの膂力はオークキングの棍棒をあっさりはじき返すほどのものだ。

 

バァン、という金属を何かでひっぱたいたような音が次男豚の腹から発される。

 

『ゴヴァァ?!』

 

物凄い音ではあったが、それがぬいぐるみの腹を裂くことはなく苦悶を与えるのみ。

 

「あぁら頑丈」

 

ミナがニタリとしてぬいぐるみを覗き込むと、次男豚は『ごぉぇ……なんという力だ……』と絞り出すような声でうめいた。

 

無論、それでミナが拷問をやめるはずもない。

 

最早、半ば憂さ晴らしである。

 

―――出発してからおよそ3時間、今の所手に入れた不思議なレンガは最初のフロアで手に入れた7つの他には12。

 

合わせて19個しかなく、これでは明日の日が変わるまで―――つまり、工房を作り妖精の雫を作成するまでの時間に到底間に合わなくなってしまう。

 

それに間に合わなければ、月曜日までにぬえ子を家に戻せず大騒ぎになってしまうのだ。

 

そのことがミナをほんの少しだけ苛立たせていた。

 

バァン、とまたもう一つ巨大な音が響く。

 

『ぐごぼ!?ぐはっ!?な、南極条約による捕虜の―――』「悪いわね。うちらの世界じゃ南極条約って南極平和利用のための条約なの。もしかしてジュネーブ条約とかハーグ陸戦条約とか批准してる国の出?違うでしょ?」

 

ミナはあくまで笑みを崩さないまま、ぬいぐるみの腹を殴り続けた。

 

「……なんかクレヨ」「言わせないのですよ?わかってるのです」

 

岬はそうしてどこかの嵐を呼ぶ園児の話題を振ろうとした恋の口をふさぎ、ルルと空悟は仕方ないなあ、とばかりに目をそらしていた。

 

ミナの拳が10度ほど次男豚の腹に炸裂した後、ようやくそれは重い口を開く。

 

『ごぶぁぁぁ……わ、わかった……話すから……やめてくれ……』

 

「わかればいいのよ。まあ無意味だろうけど、あんたどこから来たの?」

 

息も絶え絶えなぬいぐるみに、にべもなくミナはそう詰問した。

 

豚のぬいぐるみは息を整えると、一息に『それは無論、貴様の心の―――記憶の中より来たりし者よ。覚えていないか?貴様がそこの男と共に作ったものを!』と嘲るような口調で叫ぶ。

 

その意味が、一瞬わからず首を傾げそうになった時―――ミナのこめかみに激痛が走った。

 

「ぐぅっ!?」

 

思わずぬいぐるみを取り落し、ミナは苦悶の表情を浮かべる。

 

「大丈夫か三郎!」「ミナさん!」

 

そして、心配して駆け寄った彼女の親友と従者を見遣り、青い顔で彼らに「―――やっぱくだらねえ思い出だったわ」と弱々しい声で呟くのであった。

 

 

 

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