異世界で頑張ったので出戻りますね あるいは彼女は如何にして悩むのを止め、現代をエンジョイするようになったか   作:大回転スカイミサイル

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第118話「ああ、これは賢者の石だ。間違いなくな」

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次の階層は、たとえ空を飛んだところで回転させられる、回転床ならぬ回転空間とでもいうべきトラップが多数設置されたフロアであった。

 

「空悟、こんなフロア設置した覚えあるか?」

 

「ないに決まってるだろお。ダンジョンの構造は大体ド○○エとF*とロ○○ガとB*Fからもろパクリした記憶しかねえって」

 

「ですよねー」

 

前階層もそうだったが、もはや記憶すらあてにならないダンジョンとなっていることにミナは「……ま、おもしれえじゃん」と小さく呟いて一歩踏み出す。

 

すると、方向の感覚が一気に狂わされ、まっすぐ歩くことができなくなる。

 

「―――右に曲がったつもりがまっすぐ歩いている感じ。ゲームの勇者も大変だな……」

 

眉をひそめて待機している仲間たちに伝えると、「なるほど90度歩行の感覚を狂わせてくるのですね」と床に刻まれている正方形の色が濃いほうを見てルルは微笑んだ。

 

色が濃い方向へ方向感覚をきっかり90度狂わせる罠。

 

その周りには露骨に奈落へ落ちる穴が開いているというわけだ。

 

「ゲームと違って命綱を使えるのが幸いね」

 

「そうだな。心配するな。最悪、今の俺なら女子供4人+荷物くらいなら余裕で持ち上げられる!」

 

空悟がそう言ってつながれた命綱を示してニカッと笑った。

 

「OK。じゃあ慎重にな……」

 

そうして5人はそろそろと空悟が使う命綱――― 一人一人につながれているそれを頼りに歩いていく。

 

一つのブロックを4人が踏破したら、空悟を命綱で引っ張ってそのまま引きずって連れてくるのだ。

 

誰か一人が落ちそうになったら、そこは空悟が踏ん張って引っ張り上げる。

 

そう言う作戦であった。

 

それを吹き抜け付き迷路に敷かれたブロックごとに行っていく。

 

階段までたどり着くまで40ほどのブロックで、時折現れる魔物を排除しつつ進んでいった。

 

「わひゃぁ!?ま、間違ったのです!?」

 

「うわぁ!?うそぉ!落ちる!落ち―――ありがとう、おじさん!」

 

魔法少女たちの悲鳴が上がり、そのたびに空悟が引っ張り上げていく。

 

悲鳴が上がったのは岬が4回、恋が2回。

 

流石にベテランであるミナとルルは危なげなく罠を突破していくが、魔法少女たちはそうもいかず時折失敗して落ちそうになったのは仕方がなかったと言える。

 

「回転空間ブロックでは魔物たちも方向感覚狂うのが幸いだったわね……」

 

ぜいぜいと荒い息を吐きながら、へたり込む魔法少女たちを見つめてミナはため息を吐いた。

 

「空間ごと縦方向に感覚を曲げられてしまうほどには意地悪くなかったのが幸いでしたね」

 

「そ、そんな……罠も……あったのですか……!?」

 

「バグダンジョンでは感覚を狂わせられるなんて日常茶飯事だからね。大半はこのブラックリボンで防げるんだけど……ここは私やルルにも効いたから、高度と言えば高度な罠ということになるね」

 

ミナは地面に杖をこすりつけて、陣を描きながらそう言った。

 

「ミナ・トワイライトが陣に問う。汝、なんと生まれしものか」

 

『我は静寂。言の葉を焼き捨て、吐息を飲み込み、永劫の闇を招くものなり』

 

「然り。汝の名は『窒息』なり!」

 

ミナが唱えた陰陽術は正しく発動し、そしてそれは術者たるミナとその仲間たち以外を沈黙させていく―――

 

そう、それは窒息の術。

 

陣の効果範囲内の仲間以外をすべて窒息させて殺すという雑魚ちらし用の術だ。

 

階段からわらわらと現れつつあった魔物たちのうち、呼吸を必要とする存在たちはフロアに出るたびに窒息して倒れていく。

 

「……なんですこれ……」

 

「息をする機能を麻痺させる陰陽術。もちろん、仲間には無効だから怖がる必要はないわ」

 

例によって怯えている恋の後頭部をよしよしとなでながら、岬は「そう言う問題ではない」とばかりにミナの顔をジト目で見つめる。

 

勇者はそのつぶらな瞳を無視して、「さー呼吸をしない連中が出てくるわよ!」とニタリと笑った。

 

翼の生えた悪魔や、前のフロアで倒した巨大トロールを小さくしたような魔物がバタバタと倒れていく中、影そのものとしか見えない黒い戦士や虚な光を面頬の間から輝かせる騎士の鎧などが10ほど階段から現れ、こちらにその剣や槍、戦斧や槌、そして弓を向けてくる。

 

「岬、恋ちゃん、空悟。任す!バフデバフは最大限に入れるから!ルルが!」

 

「「えぇぇぇぇぇ―――ッ!?」」

 

ミナがそう叫ぶと、空悟は「まあ前門の虎、後門の狼なんてゲームなら当たり前だもんな」と割と平然と一〇〇式機関短銃と―――博士からもらったロケットランチャー、即ち博士いわく「令●年試製タ弾改」を構えてニヤリと笑う。

 

「流石オレの親友だ。わかってんじゃねえか」

 

「そりゃそうだ。デモン●○ォールとかマジでトラウマだよなぁ」

 

ロケット弾をまずは騎士の鎧に一発ぶちかましつつ、空悟は笑う。

 

バグン、と言う発射音、シュルル、という推進音について起きたのはドゴォンという火薬が爆ぜる音。

 

そのロケット弾は鎧の戦士の胸部に寸分違わず命中して騎士の鎧をバラバラにしていた。

 

「よしっ!」

 

是と叫んでサブマシンガン、その後ろから岬と恋が魔力弾やエネルギーボルトで援護を始める。

 

「ミュージック・オブ・ヴァッサー!!」

 

「アナンファイヤーなのです!」

 

恋の撃ち出した水弾と岬の放った炎が空中で衝突して、バゴオンと爆発音を響かせて幾体かの影を吹き飛ばす。

 

「ミナねーちゃんの術にヒントを貰ったやつだぜ!」

 

恋が得意げにガッツポーズした。

 

それは、スチームデトネイターを真似た爆発の合体魔法である。

 

『……!』

 

爆発に次ぐ爆発によって、心を持たぬ影と鎧も危機感を持ったのか、そのまま進撃することを諦めて静々と陣を形成していく。

 

相手は群、こちらは個。

 

まとまられれば厄介なのは確かである。

 

だが、ここには今や銃撃戦だけではなく剣戟で戦うことすら出来る刑事が一人―――

 

「よしっ!ふたりともそのまま援護してくれ!」

 

鍛銀の剣を抜いた空悟は、そのまま左前に構えて吶喊する。

 

「全く、無理はいけませんよ。偉大なるロジックよ……炎の刃となり刃金に宿れ!ファイアウェポン!」

 

そうして鍛銀の剣に炎が宿り、空悟は振り向くことなく突っ込んでいった。

 

「こちらはこれでよし―――ミナさん、どうです?」

 

こちらに背を向けているミナに、振り返らずにルルは聞く。

 

「どうもこうも―――ま、どうにかなるわ」

 

笑いすら浮かべているミナの声音に、ルルはフッと息を吐いて「ま、成竜ごときでは今更、ですか」と肩をすくめた。

 

そんなミナの前には、回転床空間を文字通りに無視するかのように空を飛ぶ一匹の東洋竜が迫っている。

 

「ま、そういやアレは勇者の親父に殺されたって設定で四天王の一匹だったかな……」

 

ミナは客人碎をバッグにしまい、ここは弓を取り出す。

 

魔法金属の弓に番えられたは鍛銀の矢。

 

真銀ほどの威力は持たないが、銀と鉄、銅、そして錬金窯があれば量産できる鍛銀で鏃が作られたものだ。

 

「そんじゃあ、行ってみましょうかぁ!」

 

ミナが番えた三本の矢は、狙い違わず東洋竜の眉間へと突き刺さる―――が、流石に相手は龍。

 

その程度では痛痒もないのだろう。

 

頭を振ると刺さった矢はポロリと取れて奈落の底へと落ちていった。

 

「チッ……やっぱなんのバフもなしじゃ駄目か」

 

ミナはノータイムで古代語を呪文と唱え始める。

 

唱えられたのは、フィジカルエンチャント・オールボディとファイアウェポンだ。

 

「刺さるは刺さるからこれで十分でしょ―――次は目を潰したる」

 

真面目な顔でそう言った彼女は、また鍛銀の矢を今度は2本番えた。

 

「我が父、我が母、我が姉よ。我が矢に森の加護を―――」

 

精霊語にて祝詞のごとくに唱え、呪いとする。

 

それは特に意味があるわけではないが―――時々大事なものを弓にて穿つと時にそう唱える。

 

この世界に来てからは初めてのことであった。

 

「すりー、つー、わん……今!」

 

ミナがそうして矢を放つと、それは心で放つと世に言われる上古の森人の弓術に恥じることなき軌道を描いて―――

 

『!?グオオオオオオオオオ!!』

 

東洋竜の両目に深々と突き刺さったのである。

 

『ぎゃぁぁぁぁぁ!!』

 

方向を見失い、回避行動も難しくなった竜は空中で暴れ出した。

 

視界が失われたことに怒り、下手人を憎み、復讐せんと視覚以外のすべてを使って探し出そうと暴れている。

 

その様子に「やっぱそんなもんよねぇ」とミナは嘆息した。

 

そう、所詮鍛銀の矢は店売りの品としては強力というだけの代物に過ぎない。

 

おそらく数十秒、否、今にもその傷は回復し、復讐のためにミナへとまっすぐに襲い掛かってくるだろうことは疑いなく。

 

だからこそ、ミナはその数瞬かそこらの時間に準備をすることができた。

 

「氷原を駆けるもの。雪の乙女を従えし氷の魔狼。厳しき凍てつく蒼き孤狼フェンリルよ―――」

 

ミナは無限のバッグから、氷の力を秘める魔杖を取り出して石畳の間に思い切り突き立てつつ、氷の上位精霊へと祝詞を上げ始める。

 

「汝が牙を我が牙に、汝が視線を我が鏑矢へ、血も凍る畏れと不条理なる死を与えたまえ―――」

 

ミナが番えた真銀の矢に光が、蒼白き凍気と共に宿った。

 

同時に、魔法金属の弓が氷を纏い、弓矢全体が凍っていく。

 

ミナの握っている弓の持ち手と矢羽だけが、不思議と氷結せずに残った。

 

―――これこそ武具に魔法効果の賦与を行う精霊術の中でも、究極の一つに位置する「ロード・フォウ・フェンリル」である。

 

雪と氷の上位精霊、魔狼フェンリルのための道と名づくその精霊術の威力がどれほどであるかと言えば―――

 

『ゴォァァァァァァァ!!』

 

朱き肌の東洋竜は、目に受けた矢の痛痒から回復すると、口から怒りのファイヤーブレスを解き放つ。

 

赤を超え、既に白き炎となってその超高温の炎がミナに直撃する―――が。

 

「……フェンリル・ロッドでこの術を使った私に!炎も凍気も一様に効かぬと知りなさい!」

 

青き氷の魔杖はいやましに輝き、ファイヤーブレスはミナに触れることもできずに「凍っていく」。

 

「絶対零度の嚆矢にて、我が敵を滅ぼさん!!」

 

詠唱の最後が唱えられ、ミナの手から魔狼を宿した真銀の矢が放たれる。

 

瞬間、餓狼の形をした凍気が走る。

 

その走り抜けた跡は、まるで道のように空気が凍結して固体となっていき、すぐに淡雪のように消え去って。

 

氷の餓狼はそのまま朱い竜の喉笛へと躍りかかり―――そして諸共に氷像と化していった。

 

『―――!!!?』

 

喉笛に命中したが故か、かの者は悲鳴を上げることもできずに回転床空間を飛び越えて、そのままの勢いでミナの背後に落着する。

 

そして氷と砕けて消えていく―――後にはまた30ばかりの不思議なレンガが残っていた。

 

「よぅし!サラマンダーはサラマンダーでも、明らかに精霊のほうより厄介そうだったけど今の私の敵じゃなかったわね!」

 

ミナは魔法金属の弓から氷が霧散していったことを確認してから、汗を拭いて空悟たちを振り向いた。

 

「そっちは無事か!?」

 

ミナが無事を確かめると、大音声がすぐに帰ってくる。

 

「そっちこそ無事か!?こっちは見ての通り、まだ湧いてるよ!」

 

影の戦士と切り結びながら空悟は叫んで、「手が空いたなら加勢してくれ!数が多いっつうのぉ!!」と影の戦士の頭蓋を縦に割って吠えた。

 

瞬間、騎士の鎧が空悟を槍で突いてきて、彼は身を捻って躱すが頬に一筋の傷がついた。

 

「早くしろ―!間に合わなくなっても知らんぞー!」

 

転ぶように鍛銀の剣を跳ね上げ、鎧の兜を弾き飛ばして空悟は体勢を整える。

 

「よっしゃ待ってろ!今行く!」

 

ミナは金剛石の長剣をバッグから引き抜いて、それを構えて空悟のもとへと駆け出した。

 

10秒もなく戦場までたどり着いたミナは、影の戦士を一人靴で蹴倒して空悟の傍へと立つ。

 

「おめーどうやったんだ今の!?あの影みたいなの、剣しか効かなかったんだけどよ!つーかすり抜ける!」

 

「オレのは魔法のブーツだかんな!―――多分、階段までたどり着いてなんかせんと無限湧きするなこれ!」

 

ミナがそうして騎士の鎧を袈裟に斬り捨てて、ジリと前に一歩出る。

 

「わかってるんですけどねえ。どうにも、僕らが術を放っても階段にたどり着く前にすぐに次のが湧いてくるんですよねえ。純粋な前衛不足ですね」

 

「そうなのです!でもってそいつら、物理攻撃が効きにくいから、吶喊できるの空悟さんだけなのです!」

 

ルルと岬が後ろからそう言うのが聞こえたミナは「じゃあ問題は解決ね!」と笑って、空悟にバッグから先だっての冒険でドワーフの愚王を貫き通した「今津鏡」を手渡した。

 

「そっち使え。とっとと蹴散らすぞ!」

 

「おうさ!」

 

ミナの激励に空悟が応え、その後ろで魔法少女たちと勇者の僕は懸命に術を唱える。

 

敵が蹴散らされ、階段に設置された召喚陣のスイッチが消されたのはそれからすぐだった。

 

「これを壊せばいいんだな!?」

 

「ああ!それ以外は全部破壊不能オブジェクトだ!」

 

空悟が今津鏡を閃かせると、そこにあった猫のような置物は横に真っ二つに割れて、そのまま崩れ落ちた。

 

―――それを最後に、階段から新手が現れることはなく。

 

どうやらこのフロアの罠も敵も打ち止めのようである。

 

ミナが「よし」と言って、魔法少女たちに駆け寄っていくのとほぼ同時に空悟は腰を落として休みの態勢に入る。

 

短時間に多くの魔物を斬ったのであるから、それは仕方のないことであった。

 

「あー……しんどかった。15匹くらい叩き斬ったぞ……」

 

「4人合わせて100ほどですか。ミナさんがドラゴンの方を始末している数分の間にキルスコア増えましたねえ」

 

ハハハ、と何でもないことのようにルルは笑った。

 

「んなことどうでもいいから、あんたは手伝いなさいよね。空悟はもうちょっと休んでろ」

 

レンガを拾い集めている少女たちを尻目に話し込む男どもにミナはジト目でそう話しかける。

 

「はいはい」

 

「はいは一度でよろしい」

 

ルルがそうして作業に参加すると、すぐにレンガは片付く。

 

これで必要量の大半は確保できたことになるが、それでも若干数が足りないだろう。

 

結局は―――

 

「先進もうぜ。まだ足りないってんなら、な」

 

ようやく息が整った空悟がそう提案すると、ミナは無言で首肯した。

 

「カバ四天王もこれで後1匹だし、このまま進めば八岐大蛇とカバがいるだろうな……結局底まで行かなきゃならんか」

 

ミナは杖と弓をバッグにしまってそう独り言ちた。

 

「サクサク進みましょうですよ。日曜が終わるまでに解決しなきゃいけないのですから」

 

岬がそう促すと、恋も「ぬえ子ねーちゃんとぬえ子ねーちゃんのとーちゃんを早く助け出さないと!」とその意見を肯んずる。

 

「ええ、行きましょう」

 

と笑って下に降りるのであった。

 

 

 

―――後の階層はほとんど記憶にあるラスボスの城そのままであった。

 

ただし、出入り口の場所が逆―――本来は地底湖らしい水場を突っ切る橋があったはずだが、それより前に元のラスボスの城同様に宝物庫が存在し―――そこに大きな宝石が入っていたことが特筆すべきことだろうか。

 

その宝石は……強い魔力を秘めており、それはまるで……

 

「賢者の石、みたいねぇ」

 

そう言ってミナはその宝石を振りかざした。

 

すると不思議なことに、宝石から光が放たれ―――それは確かにその場にいる全員の体力を回復させていた。

 

「……賢者の石だな。間違いねえな」

 

「ああ、これは賢者の石だ。間違いなくな」

 

ミナと空悟はうんうんと首肯して、それが賢者の石であると認めて顔を見合わせた。

 

「……一般的な意味の賢者の石ではないですよね?」

 

「そりゃもう。ぶっちゃけ危険物なのは変わりないのだけれども」

 

ミナはそれをバッグにしまいつつルルの質問に答えて嘆息した。

 

「多分、中にリトルヒールあたりを使う水色っぽい魔物が1万匹くらい詰め込まれたマジック・アイテムよ……」

 

「なにそれこわい」

 

恋がもう何を怖がればいいのかわからない、といった目を見開いた無表情でそう言うと「そういう設定のもんだから……」とミナは遠い目をした。

 

元ゲームの現在ではなかったことにされている設定では、それは中に回復魔法を使えるスライムを数万匹詰め込んだ物体であるとされている。

 

もしそれがミナと空悟の記憶から作られたのであれば―――おそらくはそう言うふうな存在になっていることだろう、と嘆息する。

 

「回復魔法なら私もルルも岬も使えるから、これは封印で。割れたりしたら大惨事だからさ」

 

ミナはそうしてちょうどいいから、と全員を振り返って「マップ構成というか、出入り口が逆になってるからだけど―――多分、この宝物庫を出て暫く行くと地底湖かなんかがあって、そこを渡る橋の上で八岐大蛇めいたドラゴンと戦うことになると思う」と言った。

 

「そらいるわな」と空悟が返したところで、「そう簡単に倒せるかはわかんないから、気をつけろよ。最悪オレとルルを置いて退避してくれ」と真剣な顔で続けた。

 

時間を見れば、そろそろ7時。

 

「……休みの日もぬえ子ちゃんの親父さんの行方がわからないということは、多分休みの日は一日中囚われているはず……」

 

ミナは独り言つようにそう言葉を紡ぐ。

 

「少なくともこの城は―――さっきみたいに知らないフロアが増えていない限りは―――そろそろ終わりだ。油断せず、気を引き締めていきましょう」

 

そうして岬と恋、空悟にそれぞれ研究所上層で拾っていたポーションの入った水筒を渡していく。

 

「中身はスタミナとキュア、つまり体力回復と治癒のポーションだ。ヤバイと思ったらすぐ飲んでくれ」

 

「うーん、水筒に入ったポーションってのもなかなかなーポーションのイメージが狂うっつーか」

 

「落としたら割れるからなー店売りのガラス瓶のやつは。オレはもうそれが嫌で、自作したポーションは全部鉄瓶に詰めてたわ」

 

水筒を矯めつ眇めつしてからボディアーマーのポケットに突っ込んだ空悟にからかうように言われ、ミナはそう返した。

 

「―――さ、行くわよ」

 

そして、宝物庫での休憩を終えた5人は地底湖を目指すのであった。

 

 

 

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